「あ、もしもし 蒼?」
くすくす、誰かの笑い声がその部屋に響いた。
部屋の中はとても暗く、いくつもあるモニターだけが光源になっている。
「うんうん、アッキー了解なんだよ!」
『ごめんね? 蒼』
「ううん、アッキーの頼みなら何でもやるよ」
『……頼むから犯罪はやめてね?』
空色の髪を腰ほどに伸ばした少女は、携帯で明久と会話をしていたのを切った。それからとても楽しそうに笑う。
「にゅふふー アッキーに頼まれるなんて久々だなぁ。 了解なのだ。あっさりやってあげるんだよぉ」
《マスタ ハ アキ ガ スキ ?》
「うん、だぁい好きだよ♪」
パソコン画面にはクラゲのような一つ目の生き物が浮いていて、横から吹き出しが出ておりそれによって少女と会話をしている。少女こと紅凪蒼はやる気満々でパソコンに向かった。
NOside out
☆
蒼との電話やつばさ君への学校案内を終えて、僕は家に帰りつく。つばさ君とは途中で分かれた。文月進学のために一人暮らしを始めたって言ってたけど、夕飯ぐらい食べて行けばいいのに。そんなことを考えながら、僕は玄関の扉を開けた。
「ただいまー」
「帰ったか」
僕の召喚獣と全く同じ外見をした人物が僕に話しかける。彼こそ僕の家に居る同居人だ。彼はデジモンと呼ばれる種族の一種でバアルモンというらしい、身長は140cmとかなり小柄、僕はいつもヒイロって呼んでいる。まあ理由は後日
「今日はお疲れ様、ヒイロ」
「たまには戦うのも悪くないからな」
僕の召喚獣は言ってしまうとヒイロ本人なのだ。どこをどう間違えたのかはよくわからないけど、僕の召喚獣としてヒイロが召喚されてしまう。そのせいで観察処分者に任命されたんだけどね。
「それにしてもその荷物どうした?」
「あ、近所のスーパーが安売りしててねー」
ホールトマトが安売りしてたから買ってきちゃったんだよね。今日はこれを使ってパスタにしようかな。
「そういう時は俺も呼べ、荷物持ちぐらいはやってやる」
「あはは、ありがと ヒイロ」
「腹が減った、何か作れ」
「はいはい」
僕にとってはいつものこの光景、始まりは七年前。まだ稲妻町に住んでいた頃、町中に奇妙な霧が蔓延した。姿を消した大人たち、居るはずのない怪獣映画さながらの光景、一匹の赤い目をした怪獣(後でティラノモンと判明)から救い出してくれたのがヒイロだった。会った直後に
なんでもヒイロは自分のパートナーを探していたらしい。ヒイロ達デジモンは戦闘種族で、人間とかかわることでさらなる力を得るのだそう。そして僕をパートナーと決めたヒイロは僕と一緒にいる。
そんなこんなで早七年、後輩が出来たり色々あったなぁ。
「アキヒサ、こげるぞ」
「え?あっ!!」
フライパンの中身が普通以上にグツグツいっていた。
やっば、こげるところだった。よかったぁ。
「ごめん、ヒイロ 助かったよ」
「気を付けろよ」
「うん」
そんなこんなでいつもの夕飯時になりそうだ。
「アキヒサ、今日の夕飯は?」
「あ、パスタだよ」
ピンポーン チャイムが鳴った。こんな時間に来るのは星くらいだよね。
「ヒイロ、フライパン」
「わかった」
「はいはーい」
がちゃ そこに居たのは制服のままの星とオレンジ色で頭に翼の生えた不思議な生き物。うん、やっぱりか。
「明久、よう」
「こんにちわです」
星と星のパートナーのパタモンだ。パタモンは礼儀正しい子で、星ともとても仲が良い。ただアーク(僕たちのデジヴァイスの通称)からよく出てきてしまうのが玉に瑕なんだけどね。
「星、また門限までに帰れなかったの?」
「ああ、ごめん」
星の家はちょっと前から門限に厳しくて、時間通りに帰れないと閉め出されてしまう。まあ、厳しい原因は星にあるらしいから、星も甘んじて受けてるみたいだけど。
「わかったよ。今日はパスタね。いつも通り泊まってく?」
「頼む!」
最近星が泊まること多いなぁ。そろそろ星用の歯ブラシとか用意するようにしよっと。というか、パスタ足りるかな?