転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜 作:電動ガン
「ちっくしょーーーーーー!!!!!」
ダンジョン1階層。花畑から吐き出され悔しがるスイーツ・ハリケーン一行。ジタバタと蠢くゆめみとため息を吐くまいこ。スマホでYouTubeを眺めるあかりはダンジョンイベント、『エンドレス・フラワー・ガーデン』の攻略に手をこまねいていた。
「3ウェーブから先が越えられねぇ!!!4ウェーブの敵が普通に陽動使って2方面攻撃してくんのは反則だろ!!!」
「だなー3ウェーブまでだと5000ptまでしか稼げないしなー」
「・・・・・・・。」
ゆめみは立ち上がり。泥を払う。まいこも埃を払って武器に傷が無いか見る。
「あかり何見てんの。」
「あかり?」
「これ・・・・・・・」
あかりが見ていたのはレプリカ武具を使用したコスプレ探索者の配信のアーカイブだった。少しでもEFGの攻略に役に立てられればと見ていた。コスプレ探索者は容易く10ウェーブまでクリアし、決めポーズを決めて1階層に吐き出されていく。そして1階層に戻っても立ち振る舞いは崩さずもう一度潜りに行く様子を見てゆめみはタフ過ぎる、まいこは疲れ知らずは装備の影響かと推測し、あかりはまた別な危険性を考えていた。
「すげーな。」
「私達もコスプレする?」
「いや、してもいいけど今からコスプレ装備全員分集めるにはいくらになんのよ。」
「それもそっか。」
「それにゆめみ達は全員がさつだからなりきりは無理じゃね?」
「否定出来ないの悔しいな・・・・・・」
「・・・・・・・。」
「あかり?」
「あかりどうしたの?」
「ちょっと・・・・・・フラワーショップいかない?」
「え?いいけど?」
「なんか交換したい物あるの?」
「ううん。シルバディアちゃんにちょっと相談したくて。」
「シルバディアちゃんに?」
「聞いてくれるかな。」
「とりあえず行ってみよ。」
「フラワー・ショップ・イン!!!」
▽▽▽
「いらっしゃい・・・・・ってあんた達ね。」
「こんにちはーシルバディアちゃん。」
「ちはー」
「こんにちは。シルバディアちゃん。」
「今日は交換かしら?それともポイント確認?」
「ううん。ちょっと相談したいことがあって。」
「相談?良いわよ。」
「ほんと?ありがとう。」
あかりはスマホを取り出しコスプレ探索者の動画を見せる。
「これすごく危険だと思うの。」
「ああ、コスプレのレプリカ武具ね。なんで?」
「あたし、精神科の看護師やってるんだけど、このコスプレ探索者はなりきりによる強い自己投影と自己陶酔に陥ってて、ダンジョンから出て日常に戻った時、解離性障害や分離性障害になる可能性が非常に高いと思うの。酷いと無双出来ていても心的外傷後ストレス障害を引き起こして日常生活を送れなくなっちゃう。」
「なる・・・・・・ほど・・・・・・・」
「レプリカ武具に強いなりきりを求めてそれに乗じた強さを付与したのは失敗だったかもしれない。」
「なるほどね。わかった。私は医者じゃないからちゃんとした医者に相談してみる。ありがとあかり。」
「ううん。早めに危険を教えておきたくて。」
「おっけ。いいデバッグだったわ。お礼に貴方たちパーティにご褒美あげる。」
「えっ。」
「え!!まじ!!」
「やった!!!」
「じゃあはい。イベント1万ポイント。」
「やったーーーー!!!」
「やったぜ!!!」
「わぁ・・・・・!!!」
「あとお願いがあるわ。」
「なに?」
「何でも言ってよ。」
「なんでもするよ。」
「ユーザーにデバッグさせるのはどうかとおもうんだけど。ユーザーからバグ報告させる窓口を作りたいの。1階層の入り口横に私の分身置くからそこでバグ報告とか不具合報告するように配信かなんかで宣伝して欲しいの。」
「おっけ。」
「りょうかい。」
「わかった。」
「じゃああかり。このデバッグ報告は本体にもう行ったからすぐに精神科医と相談して武具をどうするか検討するわね。」
「うん。おねがい。」
「じゃあこれで終わり?お帰りはあっちよ。」
「うん。またね。」
「じゃーね!」
「ばいばーい!」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「どうなの。鳴海先生。」
「そうですねぇ・・・・・・」
ダンジョン庁。シルバディア専用ダンジョン管理室。今日はここに精神科医の医者を呼び寄せ、危険性を聞くことにした。
「まず乖離性障害の危険性から。」
「頼むわね。」
「こちらの動画を見た感想ですが、もうこちらの動画に映ってる方5人は既に乖離性障害を発症していると考えていいでしょう。」
「そうなの。」
「はい。表面的にはノリノリで遊んでいるように見えますが、あれは極限状態における人為的な多重人格の形成を行っています。」
鳴海は書類を一枚捲った。
「レプリカ武具はそれを装備していると、なりきり、行動した際。使用者の脳は本来の『自分』という自我を極限まで抑え込み活動を低下させ、新しく構築した『キャラクター』に主導権を渡しているんです。何故ならそうすればそうする度にレプリカ武具が力を発揮するからです。これはダンジョンから帰って来たときに問題が浮上します。」
「日常に帰った時に問題が出てくるのは匿名のデバッガーからも言われたわ。」
「左様ですか。日常に戻った彼ら彼女らはただの大学生であったり、上司に叱責されながら働く会社員だったり、生活苦に喘ぐ無職だったりするわけです。さっきまでダンジョンで無双するヒーローヒロインとして万能感を味わっていた人間が、一瞬にして無力な人間に逆戻りする。これに人間の脳は耐えられません。」
鳴海が書類をもう一枚捲る。
「結果として彼らは現実の自分を拒絶し始め、現実を生きている自分は自分では無い。ダンジョンの中の自分が本当の自分だ。これが進行すると、解離性障害を引き起こし、日常生活を送れなくなります。とある重症患者は現実世界で記憶を部分的に完全に失います。会社で働いてる記憶を完全に失い、気付いたら武具を持ってダンジョンの改札に立っている。心が苦痛から逃れるために勝手に意識を解離させ、記憶を吹っ飛ばすのです。」
「マズイじゃない。」
「まずいです。非常に。『キャラクター』という強固な殻が無いと生きていけなくなるのです。」
「まいったわね・・・・・・」
「まだありますよ。次は解離性障害のその先にある恐怖をお話します。」
「先があるのね・・・・・・」
鳴海は次のファイルを取り出し唾を飲んだ。
「シルバディア様。貴方の与えたレプリカ武具は、彼ら彼女らに取ってはただの武具ではありません。自分を無敵にする、『神器』であり、最も完璧で理想的な自分を形成する『願望機』でそのものなのです。それを脱ぐ恐怖は一般的な禁止薬物の比ではありません。」
「ええ。」
「これが分離不安症です。通常この病気は母親から離される赤ん坊が引き起こすものではあります。ですがレプリカ武具使用者においてはレプリカ武具に置き換わる。彼ら彼女らは武具を脱いでクローゼットにしまうだけで自分の魂を抉り取られるような激しいパニックを起こします。彼ら彼女らは『無防備で価値の無い自分』に殺されると思い込んでいるのです。」
「そんなに!?!?」
「そんなにです。なりきりが深ければ深いほど、武具と自己の境界線が融解する。彼ら彼女らにとって武具を脱ぐことは自己の消滅です。シルバディア様が用意したこれは、いつでも神になれる麻薬を与えたようなものなのです。先ほども言いましたが麻薬から引き離された人間がどうなるかはシルバディア様は想像出来ませんか。」
「で、できるわ。それで破滅した人類を何度も見た。」
「そういうことです。」
シルバディアはまさかこのような麻薬があるのかと震えた。少し容易に出し過ぎたかもしれないと。
「そしてコレが一番大きな問題です。」
「大きな、問題・・・・・・・」
「先ほどの動画、彼女達は楽しそうに変身し、モンスターを薙ぎ払っていますね。実際、脳内にはドーパミンとアドレナリンで一杯の筈です。ここにレプリカ武具の最大の罠があります。彼女達の精神は、今、完全にスーパー変身ヒロインになっています。」
鳴海がファイルを切り替え書類を捲る。
「モンスターに恐怖を感じないためにした措置だけれど・・・・・・」
「それが一番まずいです。短期であればよかった。ですが彼女達は変身し、なんども戦場を周回している。いくらドーパミンとアドレナリンで強化しているといっても、大本の精神構造は現代日本で戦場を知らずぬくぬくと育った一般人であることに変わりありません。キャラクターになり切っている間はどれほど殺戮を繰り返そうとも、仲間の前で傷つこうとも、心がキャラクターという壁で守られているため、平気な顔をしていられます。しかし、ダンジョンを出た瞬間、なりきりが解けて、壁は消失する。」
シルバディアが息を呑む。
「いくらダンジョンのモンスターが血が出ず、五体がバラバラにならないと言っても、殺戮にかわりはありません。キャラクターの壁が消えると脳にには何が残ると思いますか?自分がモンスターを枯れ葉を掃く様に殺戮したという殺戮の記憶が流れ込みます。そしてなりきっていなければ自分は貪るように屠られていたという死の恐怖の記憶が身体を支配します。キャラクターの壁を失ったらこれが脳に滝の様に流れ込んで来るんです。」
「うわぁ・・・・・・・」
「これを心的外傷後ストレス障害といいます。それも、凄惨な戦場を体験して生き延びた軍人が発症するような強烈で重篤なものです。」
シルバディアは頭を抱えた。今までダンジョンを設置した世界ではそんなもの発症する探索者などいなかった。もしかしたらいたのかもしれないけど少なすぎて全然わからなかった。
「彼ら彼女らはただのコスプレイヤー。軍人ではありません。なのにレプリカ武具のおかげで、本物の戦場を体験している。現実に戻ったら日常の些細な音、ドアが閉まる音や電車のブレーキ音をダンジョンのモンスターの鳴き声と誤認し、パニックを起こす。夜は悪夢に魘され、自分が始末したモンスターの幻覚を見る。キャラクターになりきることで『恐怖の前借り』をしていたに過ぎないのです。そのツケは精神の崩壊という利子を伴って一気に支払われるのです。」
「ヤバすぎる・・・・・・」
「ヤバいですよ。」
シルバディアは今のうちに聞けて良かったと感じた。今のうちならなんとか出来る。
「じゃあ・・・・・・レプリカ武具、どうしたらいい?」
「完全禁止・・・・・・と言いたいところですが、私の娘も探索者でしてね。急に禁止にすると問題が出ると思います。」
「それはそうよ。一応目玉コンテンツだもの。」
「でしたら探索者には精神科の診察を義務づけて。レプリカ武具はリチャージタイムを設けるのはどうでしょう。」
「なるほど。」
「それとですが、モンスターを攻撃しても血が出ないエフェクトは大変素晴らしいと思いますが、感触は残ると聞きました。この感触をどうにかできたらなと。」
「感触ね。じゃあもっとゲーム的にしましょう。わざと派手なエフェクトを付けるの。そうすればこれはゲーム的なアトラクションなんだと認識させ逆流する記憶を緩和させるの。」
「おお。確かに多少は緩和出来るかもしれません。」
「大きな緩和は出来ないわね・・・・・・いちおう。精神科での診察結果をリンクさせて。ドクターストップが掛かってる場合はダンジョンに入れないようにするわ。鳴海が音頭取れる?」
「こうしたのも何かの縁。私が説明して回ります。」
「頼むわね。何か、そうすると見返りがいるわね。ダンジョン庁指定精神科クリニックはダンジョン庁から支援金を出させるわ。よろしく。」
「承知しました。」
時代に対応していく世界。アップデート。ナーフ。の繰り返し。少しずつ、お互いが適応していく。世界はまたひとつ変わったのだった。