白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。   作:キング・クリムゾン!!

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続きです。ゆっくりしていってね。


第十話:『絶望の巨躯と、限界出力を超えし純白の閃光』

マスト屋敷の最奥、巨大な冷凍室の扉が内側から吹き飛ばされた。

世界政府の役人やゾンビ兵を無力化し、冷徹な足取りで進むレオン・ユイの前に立ちはだかったのは、ゲッコー・モリア、そして――かつて世界を震撼させた「国引き伝説」を持つ狂死体、超巨大ゾンビのオーズだった。

 

「キシシシシ! よくぞここまで来たな、白翼のレオン! だが、この特別製の巨体を見ても同じことが言えるかァ!?」

モリアが自らの影をオーズの腹部へと潜り込ませ、その巨躯を操る。このオーズには、モリアが新世界で拿捕した高額賞金首の狂暴な海賊の影が入れられており、その巨体に見合わぬ恐るべき敏捷性で、巨大な拳を振り上げた。

 

「――叩き潰してやる!!」

 

ドゴォォォォォン!!!!

 

オーズの放った超質量の一撃が、レオンの立っていた床を文字通り粉砕し、地響きとともにマスト屋敷を大きく揺らす。凄まじい砂塵が舞い上がる中、モリアは高笑いを上げた。

 

「キシシシ! どうだ! いかに未来の技術とやらを持っていようと、この圧倒的な質量の前には――」

 

「……質量の計算が甘い。非効率だ」

 

塵煙の向こうから、冷淡な声が響く。

レオンはオーズの巨大な拳の真下で、なんと左手の一握りだけでその巨躯のパワーを受け止めていた。彼の肉体を支えるウイングゼロフレームの関節モーターがガチガチと駆動し、ナノラミネート装甲が火花を散らす。

 

『警告。対象の運動エネルギー:通常フレームの許容値を32%超過。……ウイングゼロ・システム、リミッターの解除を申請』

 

「承認。出力を15%まで解放しろ」

 

レオンの瞳が、システムと同調して一瞬だけ鋭く発光した。次の瞬間、レオンの身体から凄まじい衝撃波が放たれ、オーズの巨大な腕を力任せに上方へと跳ね上げた。

 

「な、何ィィィ!? オーズの怪力を生身で弾き返しただと!?」

モリアが目玉を飛び出させて驚愕する。

 

「お前の能力は、死体の質量に依存しすぎている。……構造を解体する」

 

レオンは四枚の白い羽を激しく羽ばたかせ、音速の壁を突き破ってオーズの眼前へと飛翔した。手元には、二挺のツインバスターライフルがガチリと強固に連結される。

 

『ターゲット:オーズの脊髄、およびモリアの影の媒介ポイント。……推奨:ライフルの最大収束による『構造分子の熱解離』』

 

「ゼロ、出力を0.08%へ。……これ以上の稼働は、この島の生存確率をゼロにする。一撃で完全に停止させる」

 

チィィィィィン……!!!

 

連結されたライフルの銃口に、これまでとは比較にならないほどの高密度のエネルギーが収束していく。魔の海の濃霧が、その圧倒的な熱量によって一瞬で蒸発し、周囲に不気味なほどの真空の空間を作り出す。

 

「ひ、引き裂け! 『欠片蝙蝠《ブリックバット》』!!」

危機感を察知したモリアが、無数の影の蝙蝠を放ってレオンの視界を遮ろうとするが、レオンのゼロシステムはすでに「勝利の輪郭」を100%捉えていた。

 

「ローリング・バスターライフル――照射」

 

ズガァァァァァァァァン!!!!!!!!!!

 

放たれたのは、破壊の爆風ではない。夜の海を真っ白に染め上げるほどの、圧倒的な純白の熱線(ビーム)だった。

その閃光はモリアの放った蝙蝠の影を一瞬で焼き尽くし、オーズの巨躯の胸中央を正確に貫いた。

 

大爆発は起きない。しかし、オーズの巨体を構成していた数百年前の細胞、解剖組織、そしてモリアが縛り付けていた悪魔の実の能力の「契約回線」そのものが、ウイングゼロの圧倒的な熱量によって分子レベルで完全に焼き切られ、炭化していく。

 

「あ、熱いィィ! オーズの身体が、燃えずに消滅していくゥゥ!?」

腹の中にいたモリアが、熱線の余波だけで大火傷を負いながら転がり出た。

 

巨躯オーズは、一切の不条理な動きを止め、ただの静かな「灰の山」へと還っていった。それと同時に、オーズの中に囚われていた新世界の海賊の影、そして島中に残っていた全ての影が完全に解放され、本来の持ち主たちの元へと大空へ奔っていった。

 

「ハァ……ハァ……。馬鹿な……、俺の最高傑作が……一撃で……」

地面に倒れ伏し、激しく息を切らすモリア。勝負は完全に決していた。

 

レオンはバスターライフルを静かに消滅させると、冷徹な視線でモリアを見下ろした。

「モリア。他人の力を集めて作った『虚飾の玉座』など、新世界の前にはただの紙細工だ。……お前が過去の敗北から目を背け、死体に頼り続ける限り、お前の生存確率は0%のままだ」

 

レオンは振り返り、自らの船へと歩き出す。彼にとって、この海域を歪めていた「スリラーバークという不条理な悪」を消去することこそが、ウイングゼロシステムの弾き出した最適解だった。

 

数時間後――。

霧が少しだけ晴れたスリラーバークの外海。

『オーロ・ジャクソン号』のデッキに戻ったレオンは、激戦の後だというのに、相変わらず無表情のまま冷たい自家製コーラを喉に流し込んでいた。

 

「……システム。スリラーバークの機能停止による、世界データへの影響は?」

 

『演算終了……。ゲッコー・モリアの戦力喪失により、王下七武海の均衡が14.2%変動。……なお、長距離センサーが、上空1万メートルの『空島』にて、正体不明の電磁波が完全に消滅したことを感知。麦わらの一味の生存確率:依然として測定不能』

 

レオンはボトルを置き、フッと、ゼロシステムの予測すら介さない微かな笑みを浮かべた。

「本当に神を叩き落としたか。……あいつらの非効率な生命力には呆れるな」

 

レオンは立ち上がり、背中の四枚の白い羽を大きく広げて風を読んだ。

麦わらの一味が空島での冒険を終え、いずれ青い海へと戻ってくるように、白き翼の死神もまた、世界の歪みを正すために次なる進路へと舵を切る。

 

「システム、次の目的地は?」

 

『データ更新……。この先の海域、魚人島手前のシャボン玉が舞う不条理なる領域。――『シャボンディ諸島』への到達確率、94.6%』

 

「シャボンディ、か。世界政府の最も醜悪な天竜人が巣食う場所だな。……待たせるのは非効率だ。行くぞ、ゼロ」

 

新時代の風を背に受けながら、伝説の船オーロ・ジャクソン号は、世界の中心へと向かって再びその翼を広げるのだった。




次回:第十一話 『シャボンディの弾丸、そして交錯する二つの鉄拳』
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