白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
シャボンディ諸島での激動から二日後。
『偉大なる航路(グランドライン)』のどこか、深い霧が立ち込める海域を航行するオーロ・ジャクソン号のデッキに、レオン・ユイは佇んでいた。彼の手元に、一羽のニュース・クーが落としていった新聞の「号外」がある。
一面に躍る大文字を見て、レオンの網膜の奥にあるプロセッサーが一瞬、奇妙なノイズを発した。
『天竜人襲撃の首謀者――“麦わらの一味”、海軍大将および王下七武海により完全に“壊滅”』
「……っ」
レオンの指先が、無意識のうちに新聞の紙面を強く握りしめていた。いつもの冷徹な表情に、ほんのわずかな、しかし確かな動揺が走る。
『警告。メインプロセッサーに原因不明の動揺を検知。……麦わらの一味の生存確率:算出不可。……なお、連続する重要ログを検知。海軍本部より、四皇“白ひげ”海賊団二番隊隊長、ポートガス・D・エースの“公開処刑”が正式発表されました』
レオンはさらに新聞をめくり、エースの処刑記事を睨みつけた。
彼の脳裏に、かつてロジャーの船のデッキで共に過ごした日々、そしてロジャーが最後に遺した言葉が、鮮烈なデータとして蘇る。エースは、ロジャーの血を引く実の息子。世界政府は己の権威を誇示するためだけに、その血脈を根絶やしにしようというのだ。
「……海軍め。自分たちの統治システムを維持するためだけに、過去の血筋を不条理に抹殺するか」
レオンの胸の奥から、構造化された感情回路を突き破るような、激しい「苛立ち」がせり上がってくる。ウイングゼロフレームの関節各部が、主の怒りに呼応するようにガチガチと鋭い金属音を立てた。
「世界政府、そして海軍本部。お前たちの独善的な歪みは、これ以上見ていられない。……待たせるのは非効率だ。俺自ら、お前たちに宣戦布告してやる!!」
レオンはシャボンディ諸島で事前に済ませていた、愛船のヤルキマン・マングローブの樹脂コーティングを起動。オーロ・ジャクソン号を完全に海中へと潜航させ、処刑場である海軍本部『マリンフォード』へと針路を急速転換した。
海中を音速で突き進む中、レオンの長距離ソナーが、前方の深海から発せられる凄まじい規模の「質量」と「覇気」を感知した。
通常の海王類などではない。世界最強の男が率いる、巨大な船団の気配。
レオンはオーロ・ジャクソン号を一時的に海底の岩陰に隠伏させると、背中の四枚の白い羽を羽ばたかせ、単身でその巨大な影――白ひげ海賊団の本船『モビー・ディック号』のデッキへと着底した。
「おい、侵入者だァ!!! 白い羽のガキが降りてきたぞ!!」
「待て……! あの姿、まさか手配書の『死神』レオン・ユイか!?」
一斉に武器を構える隊長たち。しかし、デッキの中央に鎮座する巨体――“白ひげ”エドワード・ニューゲートは、巨大な薙刀を傍らに置き、不敵な笑みを浮かべてレオンを見下ろした。
「グララララ……! 珍しい野郎が降ってきたな。ロジャーの船でコックをやってた、生意気な鉄のガキじゃねェか。何しに来た、レオン」
レオンは腕を組み、冷徹な瞳で白ひげを見返した。
「ニューゲート。お前たちの目的が『エースの奪還』であることは知っている。……俺の目的は、海軍の馬鹿なやつらをスクラップにすること、そしてロジャーの忘れ形見を救出することだ。利害は一致している」
白ひげの鋭い眼光が光る。「ほう……、ロジャーのために動くってか」
「効率的な提案をしよう。俺の船はコーティングを施し、この真下の深海に待機させている。俺自身がお前たちの船に乗り、お前たちの矛として海軍本部に風穴を開けさせてやる。――俺と一時的な同盟をする気はないか?」
その言葉に、一番隊隊長マルコがニヤリと笑った。
「へぇ、頼もしい助っ人じゃねェか、オヤジ。こいつの火力の噂は、新世界(しんせきかい)まで届いてるぜい」
他の隊の隊長たちも頷いた。
「グララララ! 面白い! ロジャーの残党が、俺の船に乗るか! いいだろう、レオン! 海軍の小童どもに、時代が変わる瞬間って奴を叩き込んでやろうじゃねェか!!」
同盟は一瞬で成立した。
オーロ・ジャクソン号を海中に隠したレオンは、モビー・ディック号の船首、白ひげのすぐ傍らに並んで立ち、静かにマリンフォードへのカウントダウンを始めていた。
彼の脳内では、ウイングゼロ・システムがすでにマリンフォードの地形、海軍の総戦力、そしてこれから始まる戦争のあらゆる未来の局面を、超高速で演算し続けている。
「……システム。俺たちの参戦による、ポートガス・D・エースの救出確率は?」
『演算終了……。白翼海賊団と白ひげ海賊団の共同戦線により、作戦成功確率は42%向上。……なお、マリンフォード周辺に、予測不可能な巨大な不条理の接近を感知。……この特異な波形は――“麦わらのルフィ”』
レオンの瞳が、驚愕で微かに見開かれた。新聞には「壊滅」と書かれていたはずのあいつらが、やはり計算外の生命力で、この戦争の中心へと向かって走っている。
「……フン。本当に、あいつらの生存確率は演算するだけ無駄だな」
レオンの口元に、どこか頼もしげな、冷徹な死神らしからぬ笑みが浮かぶ。
「ニューゲート、行くぞ。海軍本部を絶望の底へ叩き落とす時間だ」
「グララララ! 舵を取れ野郎ども! 時代の変わり目を見届けるぞ!!」
四枚の白い羽を静かに休め、しかしその内部の炉心を爆発前夜のように沸き立たせるレオン。最強の布陣を得た白ひげ海賊団とともに、伝説の死神は、世界をひっくり返すための絶対的な戦場へと、ついにその牙を剥くのだった。
次回:第十三話 『深海からの進撃と、開戦のカウントダウン』