白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
ジュウウウウウウウウ……!!!
耳を瞑りたくなるような不気味な乾燥音が、処刑台の広場に響き渡った。クロコダイルの悪魔の右手がレオンの胸元へと完全にめり込み、その衣服と、ウイングゼロフレームを覆っていた表面の生体組織から、全ての「水分」を極限まで搾り取っていく。
「が、あ……っ!!!」
レオンの口から、かつてない苦悶のうめき声が漏れた。水分を失った皮膚は一瞬でひび割れ、剥がれ落ち、その奥にある鋼鉄の『内部骨格(ウイングゼロフレーム)』が痛々しく露出する。さらに、急激な分子構造の乾燥により、内部の精密回路に致命的な熱伝導が次々と発生していった。
バチバチバチッ! カハッ……!
『致命的エラー。生体マトリクスの94%が機能停止。……メインプロセッサーへの電力供給が断絶……。ウイングゼロ・システム、強制シャットダウンまで、あと30秒。……警告:機体大破です』
ドサリ、と膝から崩れ落ち、白煙を上げながら動かなくなるレオン。
その「無敵の死神」のあまりにも衝撃的な敗北の姿に、戦場の時間が一瞬だけ凍りついた。
「レ、レオンーーーーーー!!! 嘘だろ、お前がァ!!!?」
処刑台へ走っていたルフィが、目の前の光景に足を止め、信じられないものを見る目で絶句した。
「おいおいおい……! あの化け物じみた男が、一瞬で干からびちまったよい……!?」
一番隊隊長マルコが青い炎を震わせ、白ひげすらもその巨大な眉を険しくひそめて言葉を失った。
「フハハハハ! 所詮はただのデカブツだ! 懐に飛び込めば、乾いた砂の塵にすぎねェ!!!」
勝ち誇ったクロコダイルが、冷酷な笑みを浮かべてレオンを見下ろす。
「て、てめェ……よくも……よくもやりやがったなァ、ワニ野郎がァ!!!」
その時、誰もが予想していなかった怒号が響き渡った。
砂埃を撥ね退けて突進してきたのは、なんとインペルダウンの脱獄囚たちを率いていたはずの、キャプテン・バギーだった。その顔は恐怖ではなく、底知れない「激怒」に染まっている。
バギーにとって、レオン・ユイはただの生意気な人ではない。かつて海賊王ゴール・D・ロジャーの船で、シャンクス達と仲間として共に笑い、共に飯を食べ、同じ時代を駆け抜けた「かけがえのない家族」の一人だったのだ。
「レオンはなァ! ロジャー船長の船の、俺たちの数少ない生き残りなんだよォ!!! お前ごときが、傷つけていい男じゃねェんだァ!!!」
「何……? ロジャーの船だと?」
クロコダイルが眉をひそめる。
「死ねェ!!! 『バラバラフェスティバル』!!!!」
バギーの身体が何十ものパーツに分裂し、怒涛の勢いでクロコダイルへと襲いかかった。四方八方から飛び交うナイフと拳。普段のヘタレっぷりからは想像もつかないほどの必死の猛攻だった。
しかし、相手は自然系(ロギア)の砂人間。
「目障りだ。消えろ、道化が」
ズバァァァン!!!
「ぎゃあああああっ!?」
クロコダイルが軽く右腕を振るっただけで、バギーの放ったナイフはすべて砂に阻まれ、逆に強烈な砂嵐の塊(砂漠の向日葵)がバギーの肉体を直撃した。バラバラのパーツが悲鳴を上げて四散し、地面へと無残に叩きつけられる。覇気を持たないバギーの攻撃など、クロコダイルには1ミリも通用しなかった。
「ハァ……ハァ……、ちくしょォ……! 体が……動かねェ……!」
血を吐き、地面に伏してピクリとも動けなくなるバギー。
「ロジャーの残党が、揃いも揃ってこの戦場で果てるか。それも時代の因果だな」
クロコダイルがゆっくりと歩み寄り、倒れたバギーの脳天に向けて、鋭利な毒針のついた左手のフックを高く振り上げた。トドメを刺す。その一撃が振り下ろされようとした、まさにその瞬間だった。
キィィィィィィィィィィィィン――――――――――!!!!!!!!
マリンフォードの全域、いや、周囲の海や大気すらも激しく震わせるような、地鳴りに似たとてつもない高周波の機械駆動音が鳴り響いた。
「……!? なんだ、この音は……!?」
クロコダイルの手が、本能的な恐怖でピタリと止まる。
音の震源地は、瀕死のまま倒れていたレオンの肉体だった。
露出した鋼鉄の骨格の奥深さ、ジェネレーターの炉心が、これまでとは比較にならないほどの不気味な『漆黒の光』を放ち始め、ガチガチガチガチと、狂ったような速度で自己修復の駆動音を立てていた。
『リミッターの完全崩壊を確認。……セーフティシステムを破棄。……ウイングゼロ・システム、狂乱モード『ゼロシステム・Ω』を起動します』
ピピピッ、と赤く染まったレオンの瞳が、ゆっくりと、しかし確実に開かれた。その眼光は、もはや人間のものでも、合理的な機械のものでもない。世界のすべてを無に帰すための、真の「死神」の目覚めだった。
次回:第十八話 『堕天使への覚醒、ゼロ・システム・Ω』