白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
キィィィィィィィィィィィィン――――――――――!!!!!!!!
鼓膜を鋭く突き刺すような超高周波の駆動音が、マリンフォードの広場に冷たく響き渡り続ける。
クロコダイルの水分吸収攻撃によって完全に干からび、内部骨格が剥き出しになっていたはずのレオン・ユイの肉体が、不気味な地鳴りを立ててゆっくりと浮上を始めた。
その変化は、戦場にいる誰もが息を呑むほどに異常で、そして禍々しいものだった。
「な……んだ、あの姿は……!?」
フックを振り上げたまま、クロコダイルが本能的な戦慄を覚えて数歩後退りする。
レオンの全身を覆っていた生体組織は、自己修復の過程で完全に変質し、金属フレームごと炭化したように禍々しい漆黒へと染め上げられていた。
そして、かつて戦場を純白に彩っていた四枚の美しい鋼鉄の翼からは、まるで世界の寿命を削り取るかのように、不気味な紫色の瘴気がわずかに、しかし濃密に漏れ出している。
何より異様だったのは、その眼だ。
いつもは冷徹な光を宿していたエメラルドグリーンの瞳は跡形もなく消え去り、今はただ、すべてを無に帰すための狂気の赤へと血のように赤く染まっていた。
「……システム、覚醒。……これより、戦場の『完全抹消プロセス』へと移行する」
その姿は、かつてロジャーの船で笑っていた少年でもなければ、戦場を駆ける正義の兵器でもない。地獄の底から這い出してきた、無慈悲なる「堕天使」そのものであった。
『ウイングゼロフレーム、『ゼロシステム・Ω』へ完全同調。……出力120%突破。……これより射線軸上の障害物、および全バイタルサインの消滅を肯定します』
レオンの脳内に響くシステム音声は、すでにナビゲーションの域を超え、ただ破壊のみを命令する狂気のノイズと化していた。
「レ、レオン……お前、本当にレオンなのか……!?」
地面に倒れたまま、バラバラの身体をかろうじて繋ぎ止めたバギーが、恐怖にガタガタと震えながらその姿を見上げる。かつての船員が、自身の全く知らない「何か」に塗りつぶされていく恐怖に、バギーの顔から血の気が引いていった。
「……バギー。退いていろ。お前のバイタルデータを、破壊対象から除外するプロセスの猶予は、あと3秒だ」
レオンの声は、機械的な合成音のようでありながら、同時に数千人の呪詛を重ねたような恐るべき重低音となって響く。
「フ、フン……! 見かけ倒しがァ! 姿が変わったところで、砂の前に何ができる!!!」
クロコダイルが己の恐怖を掻き消すように叫び、再びレオンの懐へと砂嵐と化して突進した。水分を奪い取る、必殺の右手が再び漆黒のボディへと伸びる。
しかし、間合いに入った瞬間――レオンの姿が、陽炎のように掻き消えた。
「――遅い」
「なっ……!?」
クロコダイルが目を見開いた瞬間、彼の背後に、紫色の瘴気を纏った漆黒の堕天使が音もなく立っていた。その手には、いつの間にか二挺のツインバスターライフルが、極限の出力を蓄えて連結されている。
「まさか……! エースもろとも処刑台を撃ち抜くつもりか……!」
クロコダイルがハッと気づき、背後のエースもろとも消し飛ばす気かと思った。だが、今のレオンには、そんな制約など一切通用しなかった。
「射線軸にエースが存在するならば、その手前でエネルギーを『空間ごと圧縮・炸裂』させればいいだけの話。……演算するまでもない」
チィィィィィィィィン!!!!!!
ライフルの銃口に収束したのは、かつての純白の熱線ではない。空間そのものをドス黒く歪めるような、漆黒と紫の破壊エネルギーの熱線だった。
「ガ、ハ……ッ!!」
放たれるよりも早く、その圧倒的なエネルギーの圧力(重力波)だけで、クロコダイルの砂の身体が強制的に実体へと固着させられ、骨が軋むほどの暴圧が彼を圧迫する。
「消滅しろ、クズが」
赤く染まった瞳が冷酷に光り、レオンが引き金に指をかけた。
覚醒した堕天使の、世界を崩壊させかねない真の一撃が、今まさにマリンフォードで解き放たれようとしていた。
次回:第十九話 『黒き残光、引き裂かれた戦場』