白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。   作:キング・クリムゾン!!

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続きです。ゆっくりしていってね。


第十九話:『黒き残光、引き裂かれた戦場』

「消滅しろ、クズが」

 

漆黒に変貌したレオン・ユイが引き金を引いた瞬間、マリンフォードの時空が、耐えきれずに悲鳴を上げた。

 

ズガァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!

 

ツインバスターライフルから放たれたのは、光線というよりも、空間そのものをドス黒く侵食していく漆黒と紫の濁流でできたエネルギーの暴風だった。

それはクロコダイルの砂の防壁を肉体ごと強引に実体化させてへし折り、正面からその巨躯を呑み込んだ。

 

「が、はあああああああああああっ!!!!」

 

砂漠の王の叫びが、破壊音にかき消される。レオンの放った『空間圧縮炸裂』のエネルギーは、クロコダイルを巻き込みながら、彼の狙い通り、処刑台のわずか数十メートル手前で、まるで目に見えない壁に衝突したかのように球状に大爆発を起こした。

 

ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!

 

凄まじい衝撃波と紫色の瘴気が、オリス広場を十文字に引き裂いていく。射線上のエースや処刑台には1ミリの掠り傷も与えない完璧な空間制御。しかし、その爆風の余波だけで、周囲にいた海軍の将校やインペルダウンの囚人たち数百人が、逃げることすら間に合わず一瞬で意識を失って吹き飛んだ。

 

「ぐ、あああああ……ッ!!」

クロコダイルは全身の衣服を焼き切られ、漆黒のエネルギーに骨まで軋ませながら、広場の遥か後方へと弾き飛ばされ、地面に叩きつけられて完全に沈黙した。

 

「おいおいおい……! 冗談だろ、レオンの野郎……!!」

一番隊隊長マルコが、冷や汗を流しながら上空で翼を止めた。

白ひげ海賊団の隊長たちも、そして大仏の姿のまま身構えていたセンゴク元帥すらも、その場から動くことができなかった。

 

爆煙の向こうからゆっくりと浮上してくる、漆黒の肉体と、紫の瘴気を纏った四枚の羽。

そして、血のように赤く染まった瞳。

その姿から放たれるプレッシャーは、先ほどまでの「白き死神」ではない。ただ目の前の存在をすべて消去するためだけに最適化された、冷徹な悪魔のそれだった。

 

『ターゲット:クロコダイルの戦闘機能停止を確認。……バイタルサイン低下。……次なる排除対象を索敵中。――候補:周囲の十万の生命体すべて』

 

「……そうだ。効率的な世界の調律には、これ以上の余剰な命は不要だ」

 

レオンの口から漏れる声は、複数の機械音が重なったような不気味なエコーを帯びていた。能力の「覚醒」、そしてゼロ・システム・ゼロの暴走は、彼の感情だけでなく、ロジャーの船で培った「仲間を守る」という最低限の教えすらも焼き切ろうとしていた。

 

ライフルが再び、不気味な駆動音を立ててエネルギーを充填し始める。その銃口が、今度は無差別に、ルフィや海軍兵たちが入り乱れる戦場の中央へと向けられた。

 

「おい、レオン!!! やめろォォォ!!!」

 

その絶望的な状況を引き裂いたのは、バラバラの身体を必死に繋ぎ合わせ、血塗れになりながら立ち上がったバギーの叫びだった。

 

「お前、何のためにここに来たと思ってんだァ!!! ロジャー船長の、エースを守るためじゃねェのかよ!!! 自分の正気が狂ったからって、仲間まで巻き込んでんじゃねェよ、このバカヤローがァ!!!」

 

バギーの喉がちぎれんばかりの怒号。

その瞬間、レオンの赤い網膜の奥で、二十数年前の『ある記憶』がフラッシュバックした。

 

オーロ・ジャクソン号のデッキ。

熱を出して寝込んだバギー。それを看病しながら、器用に体調に合わせたスープを作っていた、自分の姿。

 

 

『おいレオン、俺様がこの船を出て自分の海賊団を作ったら、お前を一番の船医兼コックにしてやるからな!だからその冷てェ顔をもうちょっと崩しやがれ!』と鼻を真っ赤にしながら生意気に笑う、見習いだったころのバギーとの記憶。

 

さらに、シャンクスとバギーがいつも通りくだらないことで取っ組み合いの喧嘩をはじめ、それを『非効率なエネルギー消費だ』と呆れながら見つめていた、温かな日々の残光。

ロジャーの「おい、レオン! 野郎ども! 宴の準備だァ!」という、魂を震わせる大笑い。

 

バチチチッ……!!!

 

レオンの頭部内にある頭脳(メモリー)から、激しい火花が散った。

 

『論理エラー発生……。過去ログの強制参照回数が上限を超過。……システム、暴走の抑制を試みます……。』

 

「バ、ギィ……」

レオンは頭を押さえ、空中で激しく身悶えした。赤く染まっていた瞳が、元のエメラルドグリーンへと激しく明滅した。そして、激しく点滅した後

 

「……システム、一時停止。……これ以上の戦闘は、脳内プロセッサーの完全大破につながる。……離脱する」

 

レオンはバギーを一度だけ冷徹に見つめると、四枚の黒い羽を大きく羽ばたかせ、マリンフォードの上空へと超音速で離脱していった。紫の瘴気の残光を残しながら、死神は戦場の一角へと姿を消す。

 

辛うじて最悪の無差別破壊は免れた。しかし、覚醒した「堕天使」の圧倒的な爪痕は、マリンフォードの全員の心に、消えない恐怖として深く刻まれるのだった。




次回:第二十話 『死神の帰還、そして少年は戦場を駆ける』
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