白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
聖地マリージョアの半壊という、世界政府800年の歴史上類を見ない大天地変から数日。
世界経済新聞社から発行された特別号外は、空を覆うニュース・クーによって世界中の隅々へと拡散され、人々に言語に絶する衝撃を与えていた。
『天竜人の都、崩壊!!』
『“白き翼の死神”レオン・ユイ、聖地マリージョアを単身襲撃――膨大な奴隷の解放』
『神々の平穏を脅かし、世界を揺るがす白き嵐』
新聞の一面には、凄惨に削り取られた聖地マリージョアの天竜人たちの豪邸の残骸と、焦土と化した聖地の上空で異彩を放つ純白の翼の影が鮮明に焼き付けられていた。
バルティゴの革命軍本部。
「まさか……単身でマリージョアへ乗り込み、あの聖地を半壊させて奴隷たちを解放するとは……」
手配書と記事を見つめるドラゴンは、深くフードをかぶり直し、静かに息を吐き出した。「レオン・ユイ……。君の巻き起こした風は、世界中の『解放の炎』に火をつけたぞ」
一方、海軍本部。
「ええい!! 何をしておるのだ世界政府は!! 聖地を守り切れずとは、威信は丸つぶれじゃ!!」
元帥となったサカズキは、デスクをマグマの拳で砕き割り、激昂のあまり赤黒い煙を吹き上げていた。
そして新世界、サウザンド・サニー号の甲板。
「うおおおおおっ! レオンの奴、また大暴れしたのかよ! マリージョアをぶっ壊して奴隷を助けたなんて、マジでヒーローじゃねェか!!」
ルフィが目を輝かせて叫ぶと、ゾロやサンジも呆れつつ笑みを浮かべる。
「あいつのやり方は相変わらず規格外だな……だが、スカッとしたぜ」
さらに、世界の虐政に苦しむ一部の紛争国や弱小国では、世界政府の抑圧を打ち砕いたレオン・ユイの姿を「神」や「解放の使者」として像を作り、崇め奉る勢力すら現れ始めていた。
だが、狂乱する下界とは対照に――。
聖地マリージョアは混沌と化していた。
「おのれ、下々民の分際で!」
「海軍は何をしておる!」
「さっさと、あの反逆者を死刑にするぇ!」
「いいや!あの反逆者は死刑では生温いぇ!」
「そもそも、なぜこの聖地に海賊がいるぇ!」
「ここは安全な場所ではなかったのかぇ!」
「責任者を殺さねば!」
聖地マリージョアが襲撃される前代未聞の事態に不安感で天竜人は冷静さを失い、政府に対する不満が高まっていった。
一方、一部の崩壊だけで免れたパンゲア城の最奥、『虚の玉座』の間は、凍りつくような不気味な静寂に包まれていた。
玉座へ続く階段の下。
世界の頂点たる五老星の5人が、冷や汗を流しながら跪いていた。
その頭上、誰も座ってはならないはずの虚の玉座に、静かに腰を下ろす一つの影――世界の真の王、イム聖。
「…………」
イム聖は、言葉を発しない。
ただ、その紅い三重の瞳で、平伏する5人を見下ろしていた。
そこに宿っていたのは、激怒でも憎悪でもない。世界最高権力という威信を与えてやりながら、たった一人に聖地を荒らされ、醜態を晒した配下に対する、極冷の失望。まるで、使い物にならなくなった「不良品」をゴミ箱に捨てる直前のような、無感情な蔑みだった。
身を削るような沈黙の果てに、イム聖の口から、短く冷酷な一言が下された。
「――……次は、もう無いと思え」
「っ……!!!!」
その一言が空間に落ちた瞬間、五老星たちの背筋に死の恐怖が走った。
言葉の圧力だけで自らの存在そのものが消滅されかねないという、絶対的な絶対者からの宣告。恐れおののく5人を残し、イム聖の影は静かに玉座の奥闇へと消えていった。
「ハァ……ハァ……っ……!!」
イム聖の気配が完全に消え去った後も、五老星たちはしばらく立ち上がることができなかった。全身から溢れ出た冷や汗が、パンゲア城の冷たい石畳を濡らしている。
恐怖で震えていたその瞳に、やがてドロドロとした黒いものが宿り始めた。
「……我ら五老星が……このような屈辱を味わわされるとは……」
「すべては……あのガキ……レオン・ユイ……!!」
恐れはやがて、激しい憎悪と怨念の炎へと変わっていった。世界政府の頂点としてのプライドを粉々に踏みにじられ、主君から「廃棄処分」の恐怖を突きつけられた元凶。
「許さん……絶対に許さぬぞ……!!」
「あのガキの身体を、骨の髄まで叩き潰し、灰すら残さず消し去ってやる……!!」
五老星たちは顔を歪ませ、お互いの瞳に血走った殺意を映しながら、固く握りしめた拳に不気味な黒い覇気を滾らせた。
「レオン・ユイ……! 貴様の死をもってしか、この恥辱は洗えぬ!!!」
崩壊したマリージョアの暗闇の中で、五老星たちの復讐の誓いが、不気味に、そして深く渦巻いていた。
次回:第三十六話 『白き死神の針路、氷と炎の実験場へ』