白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
ヒュゥゥゥゥゥ……!
氷点下の極寒と溶岩の熱風が激しくぶつかり合い、歪んだ竜巻を巻き起こすパンクハザード島。
白き翼を休めたレオン・ユイは、かつてベガパンクが使用していた廃墟同然の「第研究所」の屋上に、音もなく舞い降りていた。
『環境計測完了。……大気中の危険物質:微量の毒ガスおよび高濃度ケミカル物質を検知。……ナノラミネート装甲の防護フィルターを起動』
「……相変わらず世界政府の実験場というのは、非効率で倫理を欠いたデータの残骸ばかりだな」
レオンがエメラルドグリーンの瞳で施設内をスキャンしていると、背後の吹雪の中から、長い刀を肩に担いだ一人の男が静かに歩み出てきた。
黒いロングコートに斑点模様のファー帽子。王下七武海の一角にして“死の外科医”――トラファルガー・ローである。
「……噂通りのお出ましだな、“白き翼の死神”レオン・ユイ」
ローは刀の柄に手をかけ、警戒を露わにしながら冷ややかな視線を投げてきた。
「マリージョアを半壊させ、懸賞金45億を付けられたお前が……なぜこんな捨てられた島にいる? 邪魔をするつもりなら、たとえ格上でもここから去ってもらうぞ」
「……トラファルガー・ローよ」
「貴様に一つ聞きたいことがある」
「?」
「貴様はDの一族か」
「ッ!」
レオンは迷うことなく、ローの隠された名前を瞬時に口にした。
ローは一瞬驚愕したが、すぐに冷静になり問いに答えた。
「どこでそれ」
「それだけでない、貴様はこの島で四皇であるカイドウのガキを引きずり下ろすための計画を開始することは知っている。……俺はお前たちの同盟を妨害する意図はない」
「……なっ!?」
ローの顔色がガラリと変わる。
自らの隠された「D」の名、そして秘密裏に進めていたカイドウを四皇から引きずり下ろす計画の全貌を、目の前の海賊が一瞬で見抜いたからだ。
「なぜそれを……! お前は一体何者だ……!?」
「私はシステムに従っているだけだ。……間もなく、モンキー・D・ルフィがお前たちの前に現れる。そしてお前たちは同盟を結び、ドレスローザ、さらにはワノ国へと針路を取ることになる」
レオンは四枚の純白の羽をわずかに揺らし、吹雪の向こう――島へと上陸してきたサウザンド・サニー号の反応を指し示した。
「……ルフィとの同盟は、お前の計算通りには進まん。あいつの存在そのものが『確率を無視する巨大なイレギュラー』だからだ。……だが、その不確定要素こそが、カイドウという強大なシステムを破砕する唯一の鍵となる」
ローは握りしめた刀の柄から手を離さず、悔しそうに歯噛みした。
「……フン、どこまで見通していやがる。……なら、お前はここで何をする気だ?」
「私のミッションは、この島に存在する『不条理な負の遺産』の処理、およびルフィたちの観察だ。……シーザー・クラウンが兵器として開発した毒ガス『シノクニ』、そして囚われた子供たちの回収は、私の手で効率的に処理する」
キィィィィィィィィン……!
レオンの背中から三十個のフェザーファンネルがハラハラと舞い散るように射出され、研究所全体を包み込むように広域展開された。
「なっ……なんだこの羽は!?」
ローの目が見開かれる。
「――フェザーファンネル・スキャニングモード。毒ガスプラズマの分解フィールドを展開」
三十の羽から放たれた極細のエネルギー粒子が空間に伝散し、シーザーが解き放とうとしていた殺戮兵器『シノクニ』の化学分子構造を、物理的に崩壊・無力化し始めていく。
「……これで、余計な二次被害は最小限に抑えられる。……行け、トラファルガー・ロー。ルフィとの『不合理な同盟』を結んでこい」
レオンは冷徹に言い捨てると、四枚の翼を爆発的に羽ばたかせ、吹雪く寒冷区の上空へと一気に飛翔した。
取り残されたローは、広大な毒ガスが一瞬で消散していく異常な光景を見上げながら、ポツリと呟いた。
「……まじかよ、あの野郎。……下手したら、四皇以上の化け物じゃねェか……」
氷と炎の島パンクハザードで、新時代を揺るがす巨大な渦が、今まさに本格的な回転を始めようとしていた。
次回:第三十八話 『爆煙の実験場、死神の冷徹な断罪』