白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。 作:キング・クリムゾン!!
「ちょっとルフィ! だから待ちなさいって言ってるでしょ! 相手が誰だか分かってんの!?」
ナミの鋭い怒号が港に響き渡る。しかし、そんな制止が耳に入るような男なら、最初から海賊王を目指してなどいない。
「いいじゃねェかナミ! 天使の羽があって、大砲より凄ぇ鉄の銃を持ってて、しかもロジャーの船に乗ってるんだぞ!? お前、やっぱりロボなのか? 股間からミサイルとか出るのか!?」
ルフィはオーロ・ジャクソン号のタラップを勝手に駆け上がり、レオンの顔の前にぐいっと自分の顔を近づけた。目をこれでもかとキラキラと輝かせ、少年のように興奮している。
レオンは、鼻先が触れそうな距離まで迫ってきたルフィを、眉一つ動かさずに見つめ返していた。ボサボサの茶髪、緑のタンクトップ。その佇まいは、数十年前にガープやロジャーと渡り合った時と、何一つ変わっていない。
『ターゲット:モンキー・D・ルフィを至近距離で捕捉。……精神状態:極めて興奮。知能指数:演算不能(測定限界以下のバカ)。ただし、体内の生命エネルギー(覇気)の潜在値は計測不能。……推奨行動:速やかな脳の冷却、および日常的な対話による情報収集』
脳内の『ゼロシステム』が、処理落ちを起こしたかのように妙なノイズを混じらせながら警告を発する。レオンは心の中で「気にするな。こいつの祖父もこんな感じだった」とシステムを宥めると、小さくため息をついた。
「……小僧。俺の肉体は悪魔の実の能力によって構造化されているが、ミサイルは出ない。それに俺はロボットではなく、人間だ。……非効率な質問はやめろ」
「人間なのかー!でもカッケーから合格だ!ししし!」
「おいルフィ、勝手に合格させるな!」
ゾロが警戒を怠らない足取りでタラップを上がり、ルフィの首根っこを掴んで引き剥がす。その鋭い眼光は、レオンの腰のホルダーに収められたビームサーベルの柄、あるいは彼がまとう「常人離れした静寂」に向けられていた。
「ふふ……。あなたが『白翼の死神』レオン・ユイかしら……。歴史の闇に消えたはずの、ロジャー海賊団の『亡霊』が、まさかこんなところで生きているなんてね」
ロビンが自らの顎に手を当て、底知れない、しかしどこか艶やかな笑みを浮かべながらデッキに足を踏み入れる。彼女の知識にある「世界政府が最も恐れたバグ」の正体が、目の前の少年だった。
「……ニコ・ロビン。オハラの生き残りか。世界政府の追跡から今まで生存していた確率は、お前の執念の証明だな。……だが、過去の肩書きはどうでもいい。今の俺は、ただの『白翼海賊団』の船長だ」
「・・・・・・・・そうね、じゃあ私はこの辺で帰るわね。コーヒーありがとう、さよなら。」
そういいロビンは自分の乗ってきた船で帰っていった。
それを少し見てレオンは静かに振り返り、マストの上の白い翼の旗を見上げた。
「クロコダイルという男が、この国(アラバスタ)を裏から乗っ取ろうとしている。……お前たちのお人好しな王女を助けるのが、俺の現在の任務だ」
「え!? あんた、ビビを知ってるのか!?」
サンジがタバコをくわえながら、鋭く反応する。
「ああ。とある冬島で、妙なウサギ(ラパーン)の肉を使った飯を食わせてやった。その時に頼まれた。……俺は、頼まれると断れない、致命的なシステムエラー(お人好し)を抱えているんでな」
レオンのその不器用な言葉に、ナミやウソップは呆気にとられ、ルフィは「ハッハッハ! お前いい奴だな!」と再び大笑いした。こうして、伝説のロジャーの船『オーロ・ジャクソン号』と、麦わらの一味の『ゴーイング・メリー号』は、砂漠の王国アラバスタを目指し、並んで出航することとなった。
2
数日後。激しい嵐を越え、二隻の船はアラバスタ王国の港町『ナノハナ』へと到着した。
照りつける太陽、乾いた砂風。数十年ぶりの砂漠の気候に、レオンのゼロシステムは瞬時に周囲の温度と湿度を計測し、肉体の体温調節機能を最適化する。
「あちィーーー! 砂漠ってのは何でこんなに暑いんだよ!」
ルフィが干物のように干からびながら砂の上を歩く。一味の面々も、過酷な暑さに体力を奪われていた。
「……ルフィ、これを飲め」
レオンが無表情のまま、懐から冷え切ったガラス瓶を取り出し、ルフィやナミたちに手渡した。
「ん? なんだこれ……って、うおォ!? 冷てェ!!」
ウソップが瓶を受け取り、歓声を上げる。中に入っていたのは、微かに炭酸の気泡が弾ける不思議な白い飲料だった。
「これは前世の――いや、俺の独自の調合で作った『ヨーグルトソーダ』だ。体内の水分と糖分、そして塩分を最も効率的に補給できる。冷やすために、ウイングゼロの冷却ラジエーターの排熱(反転機能)を一時的に使用した」
「嘘、冷たくて美味しい……! 生き返るわね」
ナミが汗を拭いながら、嬉しそうに一気に飲み干す。
サンジは「レオン、あんた料理のセンスもプロ級だな……!」と感心しきりだ。口を開けば冷徹なことばかり言う割に、移動中も一味の体調を気遣って冷たい飲み物や特製の手抜き料理(冷蔵庫の残り物風)をサッと差し出すレオンに、一味は完全に胃袋を掴まれつつあった。
しかし、そんな砂漠のオアシスのような時間は、突如として破られる。
「おいおいおい……。妙なところで、妙な有名人に会っちまったなァ……」
砂埃の向こうから、数十人の武装した男たちを引き連れて現れたのは、バロックワークスのオフィサーエージェント――ミリオンズの群れ。参考として、その中心には、全身を爆弾に変える能力を持つ『M・5』と、体重を自在に変える『ミス・バレンタイン』が立っていた。
「麦わらの一味と……、それに、社長(クロコダイル)が昔、古い手配書を見ながら『この男だけには絶対に遭うな』と言っていた、あの【白翼の死神】ね……!」
M・5が冷や汗を流しながら、レオンの姿を見て銃を構える。
「……ターゲット確認」
レオンは飲んでいたソーダの瓶を静かに砂の上に置くと、ゆっくりと前に出た。その瞬間、彼の背中から、衣服を裂くことなく(ナノ分子結合により透過させて)四枚の鋼鉄の白い天使の羽がガシャインと展開された。
「ひ、本当に手配書通りだ! 背中から鉄の羽が……!」
ミリオンズたちが恐怖で後ろに下がる。
「ルフィ、お前たちは先に行け。ここは俺の『排除』任務の領域だ」
「おう! 頼んだぞ、レオン!」
ルフィは信頼の笑顔を見せ、仲間たちと共に砂漠の奥へと走り去っていく。
残されたのは、百人近い賞金稼ぎと、一人の18歳の少年。
『周辺の敵戦力を解析……。個体数104。平均戦闘力:一般海兵以下。ツインバスターライフルの使用は、アラバスタの生態系、および地形(砂漠の結晶化)に甚大な被害を及ぼすため、出力0.03%での威嚇射撃、あるいは格闘戦を推奨』
「……了解した。バスターライフルは封印する。ビームサーベル、起動」
チィィィン……!
レオンの右腕から、まばゆい緑色のプラズマ刃が伸長する。陽炎が揺れる砂漠の中で、その緑色の光は不気味なほど美しく輝いていた。
「やっちまえェ!!」
M・5の号令とともに、百人の男たちが一斉に襲いかかる。M・5自身も、鼻糞を爆弾に変えてレオンへと放ってきた。
「――予測通りだ」
レオンの身体が、爆風の中でブレる。ゼロシステムの未来予測により、すべての弾丸、すべての爆風の軌道は、彼が動く前に「青い線」となって砂の上に描かれていた。レオンは一歩も無駄な動きをすることなく、紙一重で爆発をかわすと、六式を遥かに凌駕する「ゼロフレーム」の脚力で砂を爆破するように跳躍した。
ズバァァァン!!
「ぎゃあああああっ!?」
すれ違いざま、緑色の刃がミリオンズの武器だけを正確に焼き切っていく。刃の熱量だけで、男たちの衣服が焦げ、砂がガラス状に融解していく。
「1キロギロチン!!」
上空からミス・バレンタインが体重を一万キロに変えて降下してくる。レオンの頭上へ向けて放たれた、質量という名の暴力。
しかし、レオンは逃げなかった。背中の四枚の白い羽が瞬時に前方に集まり、強固な『ウイングシールド』を形成する。
ガン!!!
地響きのような衝撃音が響く。しかし、一万キロの質量を受け止めたレオンの白い羽は、傷一つついていなかった。武装色の覇気でコーティングされたナノラミネート装甲は、物理的な衝撃をすべて周囲の砂漠へと受け流し、レオンの足元の砂がクレーターのように陥没しただけだった。
「な……!? あたしの一万キロを、ただの羽で受け止めるなんて……あんた化け物かい!?」
バレンタインが驚愕に目を剥く。
「……重さ(質量)だけに頼った攻撃は非効率だ。運動エネルギーの法則を学び直せ」
レオンは冷淡に言い放つと、シールドを爆発的に開いた。その風圧(ウイングスラスターの推進力)だけで、バレンタインの巨体は遥か彼方の砂丘へと吹き飛んでいった。
わずか数分。
砂漠の上には、武器をすべて焼き切られ、戦意を完全に喪失してへたり込む百人以上のエージェントたちの姿があった。レオンはお人好しゆえに、誰一人として命は奪っていない。ただ、その圧倒的な「技術の差」を見せつけただけだった。
「任務完了。……システム、クロコダイルの現在位置は?」
『現在の戦闘データ、および王国の動向から推測……。首都アルバーナ、あるいはレインベースに滞在している確率92%』
「待たせるのは非効率だ。俺から出向く」
レオンはビームサーベルを収めると、白い羽を羽ばたかせ、ルフィたちの後を追って砂漠の彼方へと消え去った。
3
その頃、砂漠のオアシス都市『レインベース』の、カジノ「レインディナーズ」の最深部。
豪華な革張りのソファに深く腰掛け、葉巻を燻らせているのは、王下七武海の一人――サー・クロコダイルだった。
彼の前に、息を切らせた部下(ミリオンズの生き残り)が飛び込んできた。
「し、社長! 大変です! ナノハナのエージェント部隊が……、たった一人のルーキーによって、数分で全滅させられました……!」
「フン、麦わらのガキどもか。ロビンの報告通り、少しは骨のある奴らが混ざっているようだな」
クロコダイルは金色のフックをいじりながら、冷酷に笑う。
「ち、違うんです! 麦わらの一味じゃありません! そ、その男は……背中から、鋼鉄の白い天使の羽を生やし、緑色の光る刀で、砂漠ごと我々の武器を溶かしたと……!」
「……何だと?」
クロコダイルの動きが、完全に止まった。くわえていた葉巻の灰が、ポロっと高級な絨毯の上に落ちる。
「その男の名前は……何と言った」
「『レオン・ユイ』……。政府の極秘ファイルにある、あの48年前の――」
ガタァン!!!
クロコダイルが、珍しく椅子を激しく蹴立てて立ち上がった。その顔からは、七武海としての余裕が完全に消え去り、額から一筋の冷や汗が流れ落ちていた。
「あの男が……、なぜ今更この時代に生きてやがる……! あの『白き死神』が……!!」
クロコダイルはかつて、新世界で白ひげに敗北し、世界の頂点(怪物たち)の圧倒的な暴力を身をもって知った男だ。外見は18歳のままであろうと、その本質はかつてロジャー海賊団の裏で海軍艦隊を塵にした化物だ。まともに正面から戦うのは自殺行為に近い。
「社長? どうされたのかしら。まるで、本当に幽霊でも見たような顔をなさって」
戻ってきたミス・オールサンデー(ロビン)が、わざとらしく小首を傾げてクロコダイルの動揺を観察する。その美しい瞳の奥には、レオンという存在がこの国の歴史をどう書き換えるのか、知的な好奇心が妖しく光っていた。
「……オールサンデー。計画を急ぐぞ」
クロコダイルは義手を強く握りしめ、自身の身体を砂(スナスナの実)へと変化させながら、奥の部屋へと向かった。
「あの『白き死神』が麦わらと同盟を組んでいるなら、のんびり構えている暇はねェ……。ユートピア作戦を最終段階へ移行させろ! この国ごと、奴らを砂に埋めてやる……!!」
アラバスタの覇者である七武海すらも、名前一つで極限のパニックへと叩き落とす男。
レオン・ユイの白き翼が、砂漠の王国の陰謀を、その圧倒的な「未来の力」で木っ端微塵に粉砕するために、刻一刻と近づきつつあった。
次回:第五話 『レインベース監獄のバグと、砂漠を結晶化する熱量』