白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。   作:キング・クリムゾン!!

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続きです。ゆっくりしていってね。


第九話:『魔の海の巨大な影と、死神の索敵網』

アイスベルク島の政府施設を完全に沈黙させたレオン・ユイ。彼の駆る『オーロ・ジャクソン号』は、その後も独自の航路を突き進み、ついに『魔の三角地帯〝フロリアン・トライアングル〟』と呼ばれる、一年中陽の光が届かない深い霧の海へと侵入していた。

 

視界は数十メートル先も見えないほどに白く染まり、不気味な静寂が海面を支配している。

 

「……システム。周囲への索敵を最大出力へ移行」

 

船のデッキの中央、レオンは微動だにせず腕を組んでいた。彼の脳内に構築されたゼロシステムは、この濃霧という最悪の環境下でも、空間の歪みや電磁波の乱れを冷徹に感知し、周囲の構造を三次元データとして網膜に映し出している。

 

『索敵データを更新……。半径5海里以内に、通常の島ではない「動く巨大な構造物」を捕捉。……質量、全長ともに通常の海賊船の100倍以上。……特定:王下七武海ゲッコー・モリアの根城、ゴースト島『スリラーバーク』』

 

「モリア、か。相手の影を奪って死体を動かすカゲカゲの実の能力……。死者の尊厳を汚す不届き者だな」

 

レオンの鋭い瞳が霧の向こうを睨みつける。

その時、ゴゴゴゴゴ……と不気味な地鳴りのような音を立てて、霧の向こうから「口を開けた巨大な城門」のような外壁が姿を現した。島そのものを丸ごと巨大な船へと改造した、世界最大の海賊船スリラーバーク。オーロ・ジャクソン号はその「口」の中へとゆっくりと吸い込まれていく。

 

その様子を、城壁の上から見下ろす3つの奇妙な影があった。

動物の死体を繋ぎ合わせたツギハギのゾンビたちを従えた、天才外科医ホグバック、そしてペローナだった。

 

「ホロホロホロ……! 見慣れない格好いい船が入ってきたわね。でも、あんな綺麗な白い羽をつけたお人形みたいなガキ、すぐに私のゴーストでヘにゃヘにゃにして、モリア様のゾンビの材料にしてあげるわ!」

 

ペローナが不敵に笑い、半透明のネガティブホロウたちをレオンに向けて一斉に放った。

 

「お前たち、全員ネガティブになっちゃえーー!」

 

宙を飛び、怪しげな笑い声を上げながらレオンの身体をすり抜けるネガティブホロウ。本来なら、このゴーストに触れられた者はどんな強者であれ「生まれてきてすみません……」と地面に膝をつき、戦意を完全に喪失するはずだった。

 

しかし――。

 

レオンはすり抜けられた瞬間も、眉ひとつ動かさずに直立したままだった。

 

「……? な、何で効かないのよ!?」

ペローナが目玉を飛び出させて驚愕する。

 

『外部からの精神干渉を検知。……ウイングゼロのプロセッサーにより、感情回路を100%遮断。……結論:ネガティブ思考の発生確率、0%』

 

「俺は任務のために最適化された構造体だ。元より『感情の起伏』という非効率な機能は、ゼロシステムによって制御されている。……お前の不条理なオカルトなど、俺の脳には1ミリも干渉しない」

 

レオンは冷淡に言い放つと、右腕をスリラーバークの不気味な森の地面へと突き立てた。

 

「ゼロ、地殻振動波を放射。この島(船)の『中枢』を逆探知する」

 

ドォォォン!!!

 

レオンの腕から放たれた目に見えない超音波のパルスが、スリラーバークの全域へと駆け巡る。地下の構造、潜んでいる何千体ものゾンビの配置、そして何より、島の最奥の玉座の間でふんぞり返っている巨体――ゲッコー・モリアの正確な位置を、わずか0.4秒で完全ロックオンした。

 

「――ターゲット捕捉。ゲッコー・モリア。これより、影の奪還および対象の鎮圧または排除を開始する」

 

「待ちなさい!モリア様のところには行かせないわよ! 私の可愛いゾンビたち、そいつをズタズタにしなさい!」

ペローナの叫びとともに、森の影から何百体ものツギハギのゾンビ兵たちが、武器を掲げて一斉にレオンへと襲いかかってきた。

 

「死体が動くなど、死者への完全な冒涜だ。……これ以上の罪は認めない」

 

レオンの手元に、重厚な二挺のツインバスターライフルがガチリと連結される。

 

「ゼロ、出力を0.01%に固定。……広範囲の分子振動による熱量照射。死体の結合組織を瞬時に分解する」

 

チィィィン……!

 

レオンがライフルの引き金を引いた瞬間、放たれたのは破壊の爆風ではない。針の穴を通すような無数の極細の熱線が、襲いかかるゾンビたちの足元、そしてその影の結合部分を正確に射抜いていく。

大爆発を起こすわけではない。しかし、レオンの精密すぎる熱照射を受けたゾンビたちは、影を縛り付けているカゲカゲの実の能力の「契約」を物理的に焼き切られ、次々とその口から、奪われていた影たちが大空へと解放されていった。

 

「ひぎゃあああ! 身体が動かない、影が抜けていくゥゥ!」

何百体ものゾンビが、ただの動かない死体へと戻り、解放された影が本来の持ち主の元へと霧を突き破って飛んでいく。

 

「な、何なのよあいつの器用さは!? ゾンビの仕組みを完璧に見抜いてるじゃないのよ!」

ペローナが恐怖で顔を引きつらせて後退りする。

 

レオンはバスターライフルを静かに構えたまま、モリアのいるマスト屋敷の方角へと、四枚の白い羽を静かに羽ばたかせた。

 

「モリア。お前が他者の影を盗んで創り出す『非効率な軍隊』など、ウイングゼロの予測演算の前にはただのガラクタだ。……待たせるのは非効率だ、すぐにスクラップにしてやる」

 

霧深き魔の海、スリラーバークの最奥に潜む闇の王に向けて、白き翼の死神は一切の容赦なく、その圧倒的な進軍を開始するのだった。




次回:第十話 『絶望の巨躯と、限界出力を超えし純白の閃光』
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