剣丞の親友だけが外史に向かった話 作:まくろ
「いっつぅ。なんだこれ。」
剣が光ったと同時に俺は浮遊感に浮かばれ空を飛んでいたはずだ。
当然誰もいないが俺はなんとか助かったこともあり尻もちをついていた。
つーか何であの高さから垂直落下してきて死んでないんだよ。
てか雨ひどすぎるだろ。服もびしょびしょで気持ち悪い。
いや。外史に吹っ飛ばされるって普通王宮とかそっち側じゃないのと悪態をつくも身の回りものは全部無事らしい。
というよりもこの指輪に収納しているはずだから大丈夫だと思うけど。
するとかすかにだけど何かが駆けてくる音が聞こえる。この音は馬か?しかも雨音を蹴ってきているということはこっちに向かってきてる?
「ここか?光が見えたのは。」
そうして馬に乗ってきたのは凛とした少女で姿に俺はその姿を見上げる。
恐らく相当地位が高いのは見て取れた。衣服が派手でありながらその面影にどこか凛としたものを感じ取れ馬も相当な使い手。人は見た目によってある程度は予測はつけられる。俺とその少女は少しだけ見合う。一応警戒はするけど……一行に未来視が発動することがないので急に襲ってこられることはないが。
「おい貴様に聞きたいことがある。」
「なに?」
「一体どうやって天から落ちてきた?いやそもそもどうやって天に昇った。」
「……気になるところそこ?」
「あぁ。あの光は何だ?どんな油を使ったんだ?」
色々とキラキラと目を光らせているような感じの女性に俺は少し苦笑する。多分だけど、この人多分俺の親父と同じだ。興味があることには夢中になり目もくれぬことになるタイプだ。そういうタイプは大分めんどくさいときが多い。
「知らん。急に剣が光ったと思ったら雲の上にいて落ちた。正直死んだと思ってたけどなんか生きてるな。」
「ほう?」
「てか何者?んでここはどこだ?」
「知らぬのか?」
「まぁな。神奈川って地名は聞いたことあるか?」
「かながわ?」
「……了解。んじゃ日本は分かるか?」
「日本とはこの国であるが。」
「なるほど。」
つまり過去転移の可能性が高いと。
ということはこの子は一刀さんのいうことが確かであるならば。
何かの転機の可能性が高い。それも昔の日本としては蒸し熱いということは梅雨である可能性もある。
「おい。なんか言ったらどうだ?」
「いや普通に考えてただけだ。えっとここは結局何処?」
「ここは尾張だが。」
「……あぁ。なるほど。桶狭間か。」
「……いや田楽挟間だが。」
「いやこっちの話。」
桶狭間の戦い。まぁ田楽挟間の戦いともいうのだが。今川との合戦か。
「てかあんたさん大丈夫か?」
「何がだ?」
「織田方の兵なんだろ?さっきから馬の音が聞こえるけど誰か追いかけてくるんじゃないか?」
「馬の音?」
「馬の蹄の音だな。多分10騎ほどだけど。」
「殿!?何をしておいでですか!?いくら単騎とはいえ出陣なさるなど。」
するともう一人の女性が馬でかけてくる。久遠と並ぶとどこかお姉さんという感じだろうか?つーか会う人会う人美人ばっかりじゃんか。
「知らぬ。とろとろしておる方が悪いのだ。」
「いやせめて大将なら護衛つけろよ。」
「そういうわけにもならん。この戦は速度が大事なのだから。」
「まぁ戦するとなればそうなんだけど。」
土砂崩れとかいろいろと殺り方はあるだろうと思う。
「あの殿この方は。」
「知らぬ。光が落ちた先にこやつがいたのだ。」
「えっと。一応南雲旭です。」
「南雲?南雲って」
「ん?お主真名は持ってないのか?」
「真名?何それ?」
「真名を知らぬのか?」
「俺の名前は苗字と名前があるだけだよ。まぁそっちはいいよ。大体予想ついたし。」
恐らくこの少女が織田家当主織田信長であると。……なるほどこれが武将の女体化って奴か。
つまりあの嫁全員本当に三国武将だったぽい。それを全員彼女にしている一刀さんは一体なんだよ。
「んでなんて呼べばいい?俺は真名とか知らないから。」
「久遠でよい。それでなんだが。」
「ついてこいか?別にいいけど。」
「よいのか?」
「行先ないし。俺も結構戦えると自負してるしな。急兵でよければちゃんと賃金払ってくれるのであれば何なら味方につくし。」
「……ほう?」
「正直金ないから働かないとまずいっていうか。」
ちょっとなぁ。さすがに準備してなかったから非常食も買ってないしなぁ。
暫くは傭兵みたいにするのもありか。まぁ素性も分からない奴を雇うことはないだろうけど。
「うむ。よかろう。」
「えっ?」
「ちょっと殿!?」
「何で貴様が驚いているんだが。」
「いや普通刺客とか疑うだろ?こんなわけ分からない奴なんて。」
「それあなたがいうんですか?」
呆れたようにする女性に俺も戸惑う。
「別に刺客じゃないからな。さすがに言いたくもなるよ。正直警戒心どこかにおいていったって突っ込みたくもなるだろ。」
「それに関しては私も同意見です。」
「刺客としてはあまりにも目立ちすぎであろう。それに、このことを他国のものに使われる方が厄介だ。」
「…なるほどな。」
「お主分かったのか?」
「まぁ、天の使いや豊穣の女神とかで崇められているひとを身内やダチの父親にいますし、俺も隠れ蓑で扇動させたりしてるしなぁ。そういうことなら、俺は傭兵として稼がせてもらいますよ。」
「稼ぐって大したことはできんぞ。」
「情報を集めることとこの世界の常識とひと月くらい貧しくても生活できる金額くらいは払えるでしょ?正直腕が経つことには違いないですしね。」
「それくらいでいいのか?てっきり士官したいっていうと思ってたが。」
「傭兵のほうが楽でいい。正直領地とかそういう仕事嫌いだし、武で気楽に生きていくのであれば傭兵のほうが都合がいい。」
「それを久遠様の前でいうことですか?」
呆れたようにしているが俺は苦笑する。
だって面倒くさいし、正直そっちのほうが楽だし。
「まぁ詳しいことは仕事の後で話すよ。とりあえずこの戦はお世話になります。久遠様。」
「おけぃ。それでなんだが、貴様は一体武器とかはどうするんだ?」
「ん?小太刀使うけど。」
「槍働きができるわけじゃないんですか?」
「槍は使えない。刀は使えるけど本職は小太刀と、銃かな。」
「銃ですか?」
「鉄砲のこと。俺のは種子島ではないけど。」
「それは本当か?」
「本当だよ。種子島も使えるけど。この雨じゃなぁ。」
天候は最悪。てかちょっと寒いし。親父が俺用に作ってくれた火縄銃があるんだけど。ロマンとかっていいながらこのためだったのかなぁって苦笑してしまう。するとまた馬の足音が聞こえてくる。
「殿!!勝手に動かれては困ります!!」
「壬月か。」
「はい。一騎掛けはよしてくださいと申し上げておりますでしょうが。」
「知らん。説教なら後から聞く。それで兵数は。」
「はっ。私と麦穂の兵およそ2000弱でございます。」
「今川公は15000ほど。この差を覆すには至難の業でしょう。」
「そうか?その程度であれば勝ち目はあると思うけど。」
俺の言葉に壬月と呼ばれた女性と麦穂と呼ばれた女性は驚く。
「へ?」
「この雨で行軍速度は落ちてるだろ?日が沈むまでは後どれくらい?」
「半刻ほどであるが。」
「なら。どこか地図はない?どこかに拠点があるし今川方はほぼ休むだろこの中の強軍は得策じゃない。一息付けるところがあればそこに留まる。この雨で基本的には音や匂い、視界もこの草木と闇で消える。兵100程度なら隠せられるだろ。」
「兵100程度ですか?」
「あぁ。その代わりとびっきり精鋭のな。戦っていうのは簡単なもんで相手大将の頸級をとれば勝ちだ。完全に油断しているところにぶつかれば混乱状態になるだろ。そのすきに他の頸級を狙わずその総大将の頸級だけを狙いに行く。」
「なっ!」
その言葉に三人は言葉を失う。
「普通に戦をすれば負けるだろうけどここまで天候に左右され、視界も悪けりゃ足場も雨で足がとられる。それでもって相手側したら地の利もない。奇襲をかけるには今しかない盤面だと思うが。」
「しかし100では。」
「100以上は忍びに引っかかる可能性がある。安全に気づかれないように近づくには100が限度だろ。」
「忍びか。」
「そういうこと。正直俺は城攻めとかはしたことないからわからんけど。それだけ兵力の差があり、多分内通者も幾らかはいる中で勝てる策っていうのはほとんどないと思うんだけど。」
その言葉に壬月様と呼ばれる女性は納得したようにしている。
「うむ。」
「もし案内つけてくれるんなら俺が先導切ってもいいけど。」
「貴様がか。」
「その代わりとびっきりの精鋭が欲しいところ。今川の首を狙うのは数人だけ。後は時間稼ぎでいい。」
「それなら壬月様でしょうが。」
「そういえばそ奴は。」
「そこらへんは義元を討ち取った後に紹介する。旭。壬月を上手く使え。」
「俺がですか?」
「貴様に任せる。織田久遠信長一世一代の大博打。貴様に任せる。」
あっ。名乗るんだと思いつつ俺は言葉をかける。
「んじゃ。単純。足のある歩兵を数名頂戴。奇襲かけてくるから。壬月様だっけ。適当につっこんだらある程度騎馬で突っ込んでほしい。」
「騎馬でか?」
「奇襲を受けたっていうことを今川側に知らしめることが目的。相当腕の立つ武将なんだろ。やり方は任せるけど混乱状態になった隙を5~6名で今川の頸を取りに行く。」
「貴様は?」
「手柄もでかいけど逃げ場の少ない頸狙う役割。もし失敗したとしても壬月様は引けるだろ?」
「それもそうだが。だが」
「別に餓死するのが早いか戦死するのが早いかだろ。それに失敗するなんても思ってないし。これでも何度も死地を潜り抜けてきたんだぞ。」
実際これくらいならなんとかなると思っている自分がいるんだよなぁ。
何ならちょっと面白そうだし。
「それなら私の馬廻衆を旭につける。上手く使え。」
「殿!?」
「速さだけで言うならひよや新介、小平太もいる。数人であるがな。」
「まぁ、もらえるんならもらっとくよ。半刻後に策を開始する。連携はできないだろうし自分たちの仕事を全うする。それでいいでしょ。」
「あぁ。」
「久遠。」
「おけぃ。配置につけ!!」
「「は!」」
と必死な三人と楽観的な俺。
これが俺が織田家三本刀と呼ばれる二人と生涯共にするになる久遠との出会いだった。