剣丞の親友だけが外史に向かった話 作:まくろ
「えっと、貴方が南雲様で間違いないでしょうか?」
「そうだけど。」
「私は織田三郎が妻、帰蝶と申します。どうぞよしなに。」
「…あ~。南雲旭です。こちらこそ挨拶が遅れました。よろしくお願いします。」
俺が頭を下げる。帰蝶の名乗る女性は可憐で礼儀正しいので少しだけ苦手なタイプではある。
「……久遠の夫になるのですか?」
「らしいな。」
「らしいなって。」
「いや普通に実感がないだけ。なんならひよもいつの間にか側室になってるしで困惑してるってこと。」
「……まぁ、そうですけど。貴方が了承したんじゃないですか?」
「了承しても実感できないことなんてあるだろ。ただでさえこの世界に来たばかりで困惑しているわけだし。」
「…確かに。」
「……まぁ、そっちも言いたいことは分かるけど、なったからには久遠の夢を叶えるために支えるつもりだから少しの間は様子を見てほしいってことかな。手柄はぶっちゃけ挙げれる自信はあるし。」
帰蝶姫は少しだけ驚いたようにしている。
すると恐る恐る俺に聞いてくる。
「何を言いたいのか分かるのですか?」
「久遠のことを心配してるんだろ?すでに散々振り回されてきてるから……」
「それに関しては久遠がごめんなさい。」
「いいよ。帰蝶が悪いわけではないし。振り回されるのは両親で慣れてるから。」
色々と問題があるけど、久遠はそれでこの厳しい世の中を生きてきたのであろう。
それに、心配していたけどちゃんと信用できる仲間もいることだし、織田家で慕われているのが分かる。想像してたより良い家に拾われたのかもな。
「……なんか、思っていたよりも普通ね。」
「ん?」
「田楽狭間で今川兵を百人撫で斬りにしたとか噂が広がってるから怖い人かと思ってたけど。」
「そんな噂広がってるの?」
「えぇ。天から舞い降りた少年が織田家の窮地を救うために今川兵を百人討ち取ったってね。全然そうには見えないけど。」
「残念ながら本当なのだ。帰蝶よ。何ならその倍を此奴一人で頸をとったのだ。」
「……えっ?」
すると久遠が歩いてくる。笑顔の久遠に俺は苦笑する。
「久遠言いたいことは色々あるけど。せめて自分の嫁さんくらいには伝えておけよ。」
「知らん。どうせ帰蝶は反対するだろうからな。それに旭のことは話そうと思えば何日あっても足りんわ。」
「えぇ。んじゃひよの件は?」
「知らん。いつの間にか好かれてるお主が悪い。」
「……ちょっと、久遠。どういうことよ。」
「旭はたった一人でひよを守りながらも小太刀で斬りこみ敵兵を蹂躙した。それも四半刻も経たずにだ。麦穂と壬月、ひよからも話を聞いておる。」
「……」
絶句する帰蝶に俺は始めてこの世界に入りまともな反応されたと思った。
「化物って思うか?」
「……えっ?」
「別に言われ慣れてるしな。俺だってこんな奴がいたら化物って思うし。」
その言葉に帰蝶は少しだけ俯く。
まぁ気遣っていることが分かったのであろう。帰蝶姫はとこか苦笑する。
「優しいのね。」
「別に。自分が人離れしていることは自覚してるつもりだしな。それに武人としては褒め言葉だから気にするなよ。」
「……ごめんなさい。」
「だから気にするなって。しいていうなら説明も何もせず勝手に見知らぬ者を夫にした久遠が悪い。」
「…お主が悪人であればきっておるわ。サルや壬月、麦穂からの慰留もあった。」
「それは知らなかったんだけど。」
「まぁ、それなら安心ね。それで貴方はどうするのよ。」
「ん?……ん?まぁ、好きにやらせて貰うけど基本的には戦に出る感じでいいんだよな?」
「うむ。旭には部隊を持ってもらうつもりだ。最初はひよとの二人になるだろうが。」
「了解。ついでに、ぶっちゃけ内政とかあんまり分からないからひよは本当に助かる。」
「うむ。サルはあぁ見えて金銭管理は織田家随一に当たるが出処が農民であるからか余り引き取ってもらうところがなかったからな。」
「……あ~そこら辺気にしない。使えたら使うし、基本的に出処が農民でも商人でも使えるなら使うけど……例え武士や家系が優秀でも使えなければ要らないかな。」
「……厳しいなお主は。」
「まぁそこら辺はオレが判断するよ。実力主義。出世とかしたかったら身分とか関係なく俺は優遇するつもりだけど。」
「まぁ、優秀な味方が増えるのであれば構わん。そこら辺の決定は任せる。」
「了解。」
結構規則としては自由にやれそうかな。暫くは監視がつくのであろうけど……
できれば帰蝶姫とも同じ婚約者を持っている同士仲良くできればいいなって思うのであった。