剣丞の親友だけが外史に向かった話   作:まくろ

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第7話

「ひよ。」

「ひゃ、ひゃい。」

「いや。そんなに緊張しないでも。」

「そ、そんなこと無理ですよ~。お頭。」

「ん?お頭?」

 

俺の言葉にひよは少し首をかしげる。

その日の夜俺は町へ出ていた。

 

「あの、久遠様から聞いてませんか?」

「ん?いや、同じ部隊作るってことだろ?旭隊。いや、それ以前にお前俺の奥さんになっただろ?」

「あ、あの奥方になると久遠様が正室で。」

「ん?ん~まぁそうなるのか。ぶっちゃけると俺って久遠もひよも態度変えないつもりだぞ。組織的には久遠のほう優先するかもしれないけど。上下関係は俺に関してはないし。」

「……そうかもしれませんけど、一応部隊では旭様の隊の一員となりますし。」

「そうかもしれないけど今二人だろうが。いずれ祝言を挙げるってことだぞ?二人っきりの時は気楽でいいよ。」

「……それでも恐れ多いですよ~旭様は田楽挟間の天人とか弥勒菩薩の生まれ変わりとか。」

「ん?こんなガキがそんな大層なものであってたまるかよ。俺歳15だぞ?」

「……えっ?」

「何なら一番年下まであるぞ。こっちの世界でいう元服したてだよ」

 

実際中学卒業して高校入学してない中で転移したからなぁ。高校元よりあんまり興味なかったから別にいいんだけど。

 

「ひよのほうが織田家にいた時間も長いし、俺に仕えることになったってことじゃ久遠はひよを頼れっていうことだしな。何なら金銭管理とかはほぼひよに任せるからな。」

「えっ?私がですか?」

「元々戦場で活躍できるとは思ってないし、頸とかは俺が適任だろ?俺は将の一人とは言え後ろで引っ込むような将ではないからな。反対にひよは築城や財政で功を上げてるって聞いてるけど。」

「はい。金銭管理とかは得意ですけど。」

「だからそっちを中心に仕事を回す。戦場にも立ってもらうけど後方支援のほうが得意らしいし、将来的に麦穂様みたいな将を目指せばいいんじゃないかな。」

「麦穂様ですか?」

 

驚くひよに俺はうなずく。

 

「そう。裏方で目立ちにくいのは分かるけど麦穂様みたいな将は絶対に必要だよ。まぁ麦穂様は武功を挙げられるからそこらへんは別として、ひよは裏方や内政が主体でとってるし戦が苦手なのは田楽挟間で分かってるしな。」

「そ、それはそうですけど。」

「何なら次って稲葉山城攻めで墨又に城を建てるらしいぞ。ひよにも出番あるかもしれないぞ。」

「墨又ですか?」

「らしいな。」

 

するとひよはすこし考え始める。そうやって考えることができるんなら大丈夫だろう。

そうやって二人で歩いているときだった。

 

「ん?」

 

なんか変な音が聞こえる。何かを咀嚼するようなものだがどこかガシャガシャとどこか硬いものをかじるような音が。

 

「……」

 

そして俺はその音に聞き覚えがあった。それは何度も経験してきた目の前で魔物に嚙み砕かれるおと。

所謂骨混じりの肉を咀嚼している音に

 

「お頭?」

「ひよ。今すぐ後からくるであろう壬月様と麦穂様をなるべくはやく連れてきてくれるか?」

「えっ?」

「ちょっと化け物退治してくるから。」

 

俺は指輪から小太刀を取り出しその場を駆ける。

軽く舌打ちし俺は気配を感知すると多分民家の影になるがその姿を感じる。そこに急いで駆けるとそこには数体の大きめの魔物がいた。

まっくろな人型の魔物だが犬歯がとても発達しており歯がまるで牙のようになっている。知能があるか分からないが少し奥を見るとそこには血だらけの床に女性ものと思われる着物を着た下半身らしきものがあった。

 

「……」

 

どうやら人食いの魔物がいたらしい。まるでオークにしては知能がなさすぎるし。

まぁでも結局は殺すことには違いないけど。

一人で10体か。まぁ余裕だろ

そんな中で急速に鬼が俺の方へ突進してくる。かなり早いが軽く受け流すとなかなかのパワーも持ち合わせるようだった。

……こりゃ足軽はきついぞ。

俺が舌打ちすると一匹で敵わないのか細い道で二匹が同時に突進してくる

まぁそれくらいならなんとでもなるけど久しぶりにつかうか

氣をまとい足元を強化跳躍して俺は軽く二匹の鬼からの攻撃を避けると頭を踏みつけ壁に足をのせる。

悪いなこういう狭い路地での戦いは既に履修済みなんだ。

今度は俺が狩る側だ。

足元に力を入れ壁を飛び回り自分の狩場を作る。

壁、鬼、塀全てを使い加速していく。最初は魔物も反応していたが徐々に目で追えなくなっていく。

頃合いかな。俺は小太刀を出すだけで鬼の体を貫く。

スペースを狙い確実に安全なルートを選択していることもあり自分でも安全であることは間違いない。加速していき、小太刀を添えるだけで鬼が切られていく。

 

「うがぁ。」

 

一匹また一匹と着実に減らす鬼。てかさっきから視線が増えているから誰かに見られてるのか?

すると残った二匹の鬼がその視線の方へ向かう。魔物でも俺に勝てないと悟ったのかすぐに逃げ出していった。

まぁ狩っておくか。

俺は壁を蹴り逃げた鬼を小太刀二刀で斬り伏せる。

 

「が、がぁ」

「化け物?お互い様だろ。人を襲った己を恨め。」

 

狩る側から狩られるものに回ったんだ。文句はいうなよ。

 

「お頭!!」

「旭様!!ご無事ですか!?」

 

すると気配の反対からひよと麦穂様が駆けてくる。

 

「大丈夫。ちょうど狩りつくしたところだけど、俺が行ったときには一人食われてたよ。」

「…えっ?」

「これって鬼ですか?」

「鬼?」

「旭様が全部やったんですか?」

「殺したけど残しといた方がよかったか?そこに隠れてみてる二人に」

「なんだ。気づいておったのか。」

 

その言葉に金髪の胸がほとんどまる見えで服の意味がなしていない女の人と虎の羽織を付けた少女が出てくる。

 

「桐琴殿、小夜叉ちゃん。」

「いや~驚いたぜ。あんたものすごくつえぇんだな。」

「まぁ、ある程度にはな。一応。織田家のものでいいんだよな。」

「はい。森三左門可成。娘の方は森長可ちゃんですよ。」

「あぁ。了解。南雲旭。久遠の旦那になったらしい。」

「……なったらしい?」

「まだ実感ないんだよ。何ならそこのひよも側室にもらっているわけだし。」

「うむ。」

 

桐琴と呼ばれた少女は少し考える。

 

「麦穂よ。この小僧があの田楽挟間のか。」

「は、はい。」

「なるほど。そりゃあの強さなら納得だ。今川兵を数時で一網打尽にしたとか聞いておったが小僧相当修羅を抜けてきてるのであろう?」

「まぁそれなりには。」

「ふふ。この小僧なら殿のことを護れるだろうよ。小僧。殿のことを頼むぞ。」

「元よりそのつもりだから大丈夫ですよ。」

「うむ。ならよい。小僧帰るぞ」

 

すると小夜叉を引き連れかえっていく二人。

…何かあべこべだけどいい親子なんだろう

 

「面白い二人だな。」

「それを言えるのはあなた様くらいですよ。」

「天下も黙る森一家っていわれるほど悪名名高いですし。」

「ふ~ん。まぁその分武功も立ててるんだろ?天下に恐れられてるそれがなによりも森衆が強いだけだろ。」

「……ふふ。そういった見方をなさるのですね。」

「正直今俺にとって味方になってくれるなら助かるしな。それにあぁ見えてちゃんと義理も堅い。案外憎めそうもなさそうだしいい戦友になれると思うんだけど。」

 

俺が答えると麦穂様はきょとんとしている。

そしてふふと微笑む。

 

「どうしました?」

「何となく旭様にひよさんが懐いたのが分かる気がします。」

「ん?」

「頼りにしてますよ。旭様。」

「まぁ、できる限り頑張りますよ。まぁ時間も遅いですし、二人とも送りますよ。変な化け物もいたことだし。」

「えっ?」

「あら。それならお願いしますね。」

 

クスクスと笑い多分ご機嫌な麦穂様に俺は苦笑する。

何となくだけど、この人が若くして家老である理由がわかった気がした

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