闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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グラシアール商会

私たちは依頼を受けるためエリンシアの家が経営しているお店へと移動しその奥へと通される。グラシアール商会は主に武器や防具を取り扱う商会でこの王都では1、2を争うほどの大商会だ。そして今いるお店もものすごく大きい。普通のお店の5倍くらいはありそうだ。そんなお店の奥には商談で使うであろう部屋がありその一室に私たちは現在いるのである。

 

 

「ワタクシのお気に入りの紅茶ですわ、飲んでくださいまし」

「あ、ありがとう」

 

 

私たちは紅茶を頂く。なんか場違いな感じがしてソワソワする。

クオンは手慣れた感じで優雅に紅茶を啜る。・・・男の癖になんか絵になるなぁ。

優雅に紅茶を啜るクオンの隣でお父さんは作法もなにもなく一気に紅茶を飲み干した・・・オーガめ!私は手を震わせながらも紅茶を口に運んだ。口に入れた瞬間なんとも爽やかな香りが口に広がる。

 

 

「・・・おいしい」

「よかったですわ♪」

 

 

自分のお気に入りの紅茶を誉められて嬉しかったのかエリンシアは年相応な無邪気な笑顔を私に向けた。しかし、それも束の間、次の瞬間にはまるで私たちを品定めするかのような顔になる。

 

 

「では、早速ですが面接をさせていただきますわ」

「う、うん」

「まず、なぜワタクシの依頼を受けようと思いましたの?あ、貴方たちが盗賊討伐の依頼を探していたのは知っておりますので討伐依頼を探していた理由を教えてもらいたいですわ」

 

 

その質問に私はクオンを見る。理由は簡単だその盗賊の中にクオンの家族の仇がいるから少しでも情報が欲しいのだ。だけど、それを私が言っていいのかな?

 

 

「その質問には僕が答えても構いませんか?」

「もちろん、構いませんわ。ああ、それと敬語でなくて構いませんわよ。歳も同じくらいでしょうし」

「わかった、それで理由だけどその盗賊の中に僕の家族の仇がいるという情報を聞いたからなんだ」

 

 

クオンは自分の家族が盗賊に殺されたこと襲われたグラシアールの商人に盗賊の中にその仇らしき人物がいたことその為、少しでも情報が欲しくて依頼がないか探していたことを正直に話した。

 

 

「なるほど・・・クオンさんの理由はわかりましたわ。では、カモメさんでしたわね、貴方はなぜ彼を手伝うんですの?」

「?・・・なぜってパーティだからだけど?」

 

 

私が答えるとエリンシアがキョトンとする。

 

 

「・・・え?それだけですの?」

「え、それで理由は十分だよね?」

「ああ、そうだな」

 

 

私の問いかけにお父さんが頷く。

それを見たクオンが苦笑いしていた。

 

 

「お~ほっほっほ!貴方、本当に変わってますわね」

「え、私変わってる?」

「え・・・っと、・・・うん」

「ガーン」

 

 

クオンに尋ねるとクオンは困ったように頷いた。・・・・変わってるのか私。

 

 

「ですが、嘘を言っているようには見えませんし、信用は出来そうですわね。クオンさんの理由もワタクシの依頼と利害が一致してますし、裏切られることもないでしょう」

「裏切られる・・・か」

「なるほど、それで面接か」

 

 

お父さんとクオンは今のエリンシアの言葉で何かを悟ったようだ。ちなみに私はぜんっぜんわからない。

 

 

「さすが、元英雄のパーティにいた方ですわね。異名持ちは伊達ではありませんわ」

「ほう、俺の事を知っていたのか」

「当然ですわ、ワタクシも将来は冒険者を目指しておりますの。異名持ちは全員チェック済みですわ」

「ほう・・・」

 

 

つまり彼女はお父さんが名のある冒険者と知った上でなおこの面接をしたと言うことだ。普通ならエンブレム持ちというだけで無条件で信用しそうなものだけど自分の目で確かめないと信用しないということかな?

だとするとエリンシアはなかなかに(したた)かなのかもしれない。

 

 

「それで、裏切り者・・・内通者がいるのは商会かな?それともギルド?」

「もしくはその両方かもしれませんね」

 

 

お父さんとクオンが言う。

どういう事?なんでいきなり内通者の話に!?

 

 

「それはまだ分かっていませんわ・・・さて、では依頼の内容を話しますわ」

「ほえ?あれ、だって依頼の内容は信用されてからなんじゃ?」

「カモメさんは本当におバカちゃんですわね・・・ワタクシはあなた方を信用して雇うと言っているんですわ」

「あ、なるほど・・・っておバカちゃんって言うなー!」

 

 

とにかく、依頼は受けれるのか・・・よかった・・・かな?

これからもエリンシアにおバカちゃん呼ばわりされそうな気がするけど・・・。

 

 

「先ず、あなた方は今回の件についてどれくらいの事を知っておりますの?」

「どれくらいって言っても、グラシアール商会の人が盗賊に襲われたのとその盗賊がクオンの家族の仇らしいってことくらいだけど?」

「そう・・・それを誰に聞いたんですの?」

「誰って・・・お父さんがギルドの人に聞いたんだよね?」

「ああ、私はな」

 

 

あ、そうか、クオンは商会の人に聞いたって言っていたね。

 

 

「僕が聞いたのはグラシアール商会のヘインズさんという人だよ」

「ヘインズ・・・そうですの、ヘインズはなんと言ったんですの?」

「王都に帰る途中、盗賊に襲われて積み荷を奪われたと・・・」

「それだけですの?」

「いや、その盗賊の特徴を聴いたら赤髪の隻眼の男がいたと言っていた」

「・・・そうですの」

 

 

そういうと、エリンシアは黙ってしまった。

クオンはなんか変な事言ったかな?

 

 

「どうかしたの、エリンシア?」

「・・・・・クオンさん、その方はヘインズと名乗ったのですわね?」

「うん、そうだよ?」

「だとしたらおかしいですわ、うちの従業員にヘインズという者はおりませんの」

 

 

え?どういうこと?だってクオンはグラシアールの人から話を聞いたんだよね?っていうかエリンシア、自分の店の従業員全部覚えてるの!?すごい人数居ると思うんだけど・・・。

 

 

「つまり、クオンに情報を流したものはグラシアール商会の者じゃないということか?」

「もしくは、名前を偽っていたのかもしれませんね」

 

 

お父さんとクオンが眉間にしわを寄せながら話す。

つまり、どういうこと?

 

 

「名前を偽っていた可能性もありませんわ、そもそも、ワタクシたちはそこまで盗賊の情報を知っておりませんもの」

「どういうこと?」

「襲われた従業員は皆、殺されましたわ」

「うん?だとしたら、なぜ、襲われた情報が?」

 

 

そうだ、ギルドにもグラシアール商会が盗賊に襲われたって情報が入ってた。だとしたら誰か知らせた人がいるはずだよ。

 

 

「仕入れをした従業員が予定の時刻を過ぎても帰ってこなかったので調べに行かせたんですわ・・・そこで従業員の死体を発見し、その従業員が仕入れに使った馬車がないことを知ったんですの。」

「ああ、それで盗賊に襲われたと・・・・あれ?」

 

 

エリンシアの話を聞いて私は疑問に思う。

 

 

「でも、それだと妖魔の呼び笛を使ったり、クオンの聞いた赤髪の隻眼の男のことはなんで分かったの?」

「確かに、従業員が全員殺されているなら、盗賊の情報なんてわからないはずだ」

「ええ、ワタクシもクオンさんの話を聞いて驚いてますの。その情報を教えた方はどんな方だったのですか?」

「眼鏡をかけた真面目そうな金色の長髪の男性だったけど・・・」

「その方はどこのお店で働いていたんですの?」

 

 

グラシアール商会はいくつも店を持っている、この王都でも武器屋や道具屋などいくつかの店があるのだ。

 

 

「東の大通りにある武器屋だ、ただ、店の前で話したから働いている姿を見たわけじゃない」

「そうですか、ですが、そのお店にその見た目の従業員はおりませんわね、なぜその方が従業員だと思ったのです?」

「お店の制服を着ていたからね」

「そうですの・・・」

 

 

つまり、従業員に変装していたってこと?しかも、盗賊の情報を知っていて、それをクオンに話してる。

・・・・・・その人、一体何者で何がしたいんだろう?

 

 

「うちの従業員でなくしかも盗賊の情報を知っているとなると・・・」

「盗賊の仲間?・・・・でもそれなら僕に情報を教える意味がわからない」

「ですわね・・・」

 

 

クオンの言う通りだその人本当に何がしたいのか全然わからないよ。

 

 

「その方が何を考えているかわかりませんが、とりあえず、こちらの情報も話しておきますわね。」

「お願い」

「先ずは、襲われたのは2週間前、王都の南にある森ですわ、そこに従業員の死体がありましたの・・・」           

「2週間前・・・しかし、なぜギルドに討伐の依頼をすぐに出さんのだ?いや、出す気がないと言っていたな?」

「ええ、お父様はギルドではなく騎士団に依頼を出したそうですわ」

「騎士団に?しかし、騎士団が動いてくれるのか?」

「お父様が騎士団長に直接、頼んだそうですわ、ですが・・・騎士団長は快く受けてくれたそうですが大臣がそれを邪魔しているそうですの」

「ふむ・・・確かにラインハルトなら動くだろうが・・・ゴリアテ大臣がそれを許すわけがないか・・・」

 

 

ラインハルト・・・お父さんから何回か聞いたことのある名前だ。確か今の王国騎士団の団長で昔お父さんたちと同じパーティを組んでいた人だったはず。

ゴリアテっていうのはこの国の大臣なのだけど、基本的に自分の事しか考えない人であまり国民にも好かれてないんだって、なんで大臣になれたんだろう?

 

 

「でも、それなら、ギルドにも依頼し直したほうがいいんじゃない?なんで2週間も依頼を出さなかったの?」

「お父様も最初はそうしようとギルドに向かいましたわ、ですが、そこで可笑しな話を聞いたそうですの」

「おかしな話?」

「ええ、グラシアールの人間を襲ったのは紅の牙という盗賊たちだと・・・」

 

 

うんうん、私たちもギルドでその情報をヴァネッサから聞いたね、でもそれの何がおかしのかな?

 

 

「そういえば、可笑しな話だね」

「え、なんで?」

「だって、エリンシアの話が本当なら襲われた商会の人は全員死んでいるんだよ?誰が紅の牙だって気づいたの?」

「ええ、それに、ウチはまだギルドに報告をしておりませんでしたわ。ウチが襲われたとなぜ知っているのでしょう」

「なるほど・・・」

 

 

つまり、クオンに盗賊の情報を教えたのと同じで誰かが意図的にギルドに情報を流したってこと?

 

 

「それで、グラシアール商会はギルドと商会のどちらかもしくは両方に内通者がいると思ったのだな?」

「ええ、そういう事ですの」

 

 

つまり盗賊の内通者が嘘の情報を流している可能性もあるのか。

そして、その情報に踊らされている間に別の所を襲うかもしくはこの王都を離れるかする可能性もある。

それとは別にその紅の牙をよく思ってない人間が情報を流している可能性もあるわけだ。

 

 

「あれ?でもそれじゃあ、なんでエリンシアはギルドに依頼を出したの?エリンシアが依頼を出したら盗賊が逃げちゃうかもしれなんじゃ?」

「そうですわね・・・ワタクシとしても出来ればウチの従業員を殺した盗賊と捕らえたいと思っていますわ、だから面接までして信用できる人間を探そうと思ったのですし・・・ですが、それでも見つけられない場合は最悪、盗賊がこの王都から離れてくれれば良いと思っての事ですの。」

 

 

なるほど、つまり、捕まえられれば万事オッケー。捕まえられなくても盗賊が王都から離れてくれればグランシアールの商人が襲われる可能性は減るという事か。

出来れば捕まえたい・・・そう言った時のエリンシアの表情は本気だった。出来ればじゃなくて絶対捕まえたい、そう思っているんじゃないだろうか

だけど、捕まえる方法を考えている間に盗賊はまた商人を襲うかもしれない。

だから、逃げられる可能性があってもギルドに依頼を出しに来たんだろう。

 

 

「ふむ、となればやることは決まったな」

「ですわね」

「はい」

「・・・・ほえ?」

 

 

あれ、何が決まったの?

 

 

「やっぱりおバカちゃんですわね・・・」

「おバカじゃないもん!!!」

 

 

反射的に怒鳴る私であった。

 

 

 

「それで、どうするの?」

「僕が情報を聞いたヘインズかもしくはギルドに情報を提供した人を探すんだよ」

「あ、なるほど」

 

 

その人達を探せば何らかの情報が得られるかもしれないね。

もしくは、その人たち自身が盗賊の仲間の可能性もあるのか・・・あ、もしかしたらギルドに情報を提供した人とヘインズと名乗った人は同じ人かもしれないのかな?

 

 

「それじゃ、もう一度ギルドに行ってみる?」

「そうだね、それがいいかも」

「ですわね」

「ふむ・・・」

 

 

私とクオンとエリンシアが頷くとお父さんが何か考えるように声を漏らした。

 

 

「どうしたのお父さん」

「すまないが私は別行動をとろうと思う」

「え、どして?」

「うむ、騎士団のラインハルトに会いに行ってみようと思うのだ」

 

 

ラインハルトっていうとさっきも話にできた騎士団長さんだよね。

でも、大臣に邪魔されて動けないんじゃ?

 

 

「おそらくラインハルトの事だ、騎士団としてではなく彼個人として盗賊の足取りを捜査しているはずだ、もしかしたら何か情報を得ているかもしれん」

「なるほど、騎士団長のラインハルトは情に厚い方だと聞きます。頼られた以上無碍にはしないかもしれませんね」

「ああ、あいつは超の付くお人好しだからな」

「じゃあ、ギルドには私たちだけで行ってみるよ。夜に『導き亭』でいい?」

「ああ、それで構わん」

「よし、それじゃ、出発しよ!」

 

 

そう言って私たちは席を立ちお父さんと別れギルドへと向かった。

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