闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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レディ(化け物)登場

「では、カモメさんお願いいたしますわ」

「オッケー」

 

 

今、いろいろ考えてもどうせ答えなんかわからないし直接魔物を探しだして確認するしかないんだよね。

 

 

「|浮遊魔法≪レビテーション≫!」

 

 

私が魔法を唱えると私の体の周りに風の膜が出来る。

この風の力で私を浮かび上がらせるのだ。

浮遊しながら私はエリンシアへと近づき背後からお腹に手をまわしてエリンシアを抱きかかえた。

 

 

「わっ、本当に浮けますのね」

「信じてなかったの?」

「そういうわけではありませんけど、実際浮いてみるとちょっと驚いてしまいましたわ」

「そう?それじゃ、クオン。私たちは行くね、他の魔物もいるかもしれないからクオンも気を付けて」

「了解、カモメも気を付けてね」

「うん」

「あら、ワタクシには言ってくれませんの?」

「エ、エリンシアも気を付けて」

「ふふ、カモメさんのついでに気を付けますわ」

「な、ななな!」

「?」

 

 

エリンシアの言葉にクオンが顔を赤くする。

私のついで?どういう事だろう。

よくわからないがとりあえず空へと浮かび上がり辺りの探索を開始した。

 

 

上空からマーニャさんに教えてもらった魔物が逃げた方向を探す私とエリンシア。

 

 

「上空から探すとは言ってもなかなか見つかりませんわね」

「うん・・・あれ?」

「どうしましたの?」

「あそこに光ってるのって」

「行ってみますわよ、もしかしたら手掛かりになるかもしれませんわ」

「りょーかい!」

 

 

私は地面にいくつかキラキラと光るものを見つけそこへと着地する。

 

 

「これって・・・」

 

 

近づいてみるとそれが何かわかる。私もよく目にするものだった。

 

 

「魔石・・・ですわね」

 

 

そう魔物が絶命すると姿を変える魔石である。

 

 

「なんで、魔石がこんなに散らばってるんだろう?」

「不自然ですわね・・・いえ、よく見ると周りに争った形跡らしきものがありますわ」

 

 

本当だ、少しだけどある。争った形跡を消そうとした?・・・ううん、というよりは一瞬で戦いが終わったという感じだ。

冒険者が通った跡?いや、それならば魔石は回収しているはずだ。

 

魔石はお金になる。だから、普通は無造作に放っておかれるわけないんだけど・・・。

 

 

「どう思うエリンシア?」

「そうですわね・・・もしかしたら、本当にもしかしたらですけど魔物同士が争った跡なのかもしれませんわね」

 

 

なるほど、確かにそれなら魔石が残っていても不思議ではない。もしかしたらクレイさんをさらった魔物が蹴散らしていったのかも。

まあ、なぜ争う必要があるのかとか色々疑問はあるけど、もしそうなら・・・

 

 

「クレイさんを攫った魔物、ものすごく強い?」

「ですわね・・・」

 

 

落ちている魔石は七個、大きさから言って恐らくDランクの魔物だろう、その魔物をほとんど戦った痕跡を残さないほど一瞬で倒すとなるとCランクどころかBランクなんじゃ・・・。

私は自分の想像に喉を鳴らす。

 

 

「ですが、そうと決まったわけではありませんわ。それにクレイを見捨てるわけにはいきませんわ」

「だね、なら先に進むよ」

「もちろんですわ!」

 

 

そう言って私は再度レビテーションで空へと浮かび上がった。

しかし、もしBランク以上の魔物となればかなり厄介だ。以前お父さんがBランクの魔物と戦っているところを見たがCランクの魔物とは比べ物にならないほど強い。

クオンが駆けつけてくれても勝てるかどうか・・・。

 

魔石を見つけた場所からさらに進み、注意を払って辺りを探す。

一際大きな木が前に見えてきた。その木を避けるため方向を変えようとしたその時。

 

 

「いやだああああああああああああ!!!」

 

 

突如として男性の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「今のは!?」

「クレイの声ですわ!」

 

 

私は急いで声の方に急行する。声はあの大きな木の方から聞こえてきた。

少し飛ぶと大きな木の下にロープで縛られた状態の金髪男性がいるのが見えた、男性の顔は端正で好青年に見える。あれがクレイさんかな?

 

そしてその男性の前には全身が緑の恰幅の良い魔物が佇んでいた。オークだ。

普通のオークとは違い、髪がある。それも腰くらいにまで伸びた長髪だ。やっぱり異常種っぽいね。

 

 

「急ぎますわよ!」

「待って、その前にクオンに合図を!」

 

 

そう言って私は光の魔法を空へと打ち上げた。

その魔法は昼間の空でもわかるほど光輝く。これならクオンに見えるはずだ。

 

 

「同時に二つの魔法・・・本当にすごいですわねあなた」

「まあね」

 

 

同時に二つの魔法を操れる魔導士は稀少だ。

かなりの魔力と集中力、そしてセンスが必要となる為、普通の魔導士は使おうと思っても二つ目の魔法を発動できない。

だが、自慢ではないが私は魔法のセンスがある。そして、それを磨くための努力を人一倍している自身もある。

その努力が実って同時に魔法を発動させることが出来るようになったのだ。

 

 

「それじゃ、突撃するよ!」

「はいですわ!」

 

 

エリンシアが頷いたのを見て私はオーク目掛けて急降下する。

すると、エリンシアは魔導銃を構える。

オークに十分距離が近づいたところでエリンシアから手を離し、オークの背後に降ろす。

それと同時にエリンシアは魔導銃を撃ち始めた。

 

私はオークの上を飛んでクレイさんとの間に着地し、バトーネを構える。

 

 

私がバトーネを構えると同時にエリンシアの魔弾が着弾する。

オークの背中には大きなウォーアクスと言われる斧を背負っており、その斧のない場所にエリンシアは魔弾を当てた。

エリンシアの攻撃を喰らったオークが叫ぶ。

 

 

「いやあああああああああん!!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?

 

 

「いったいわぁああん!いきなりなにするよぉおん!!」

「どういう・・・ことですの?」

 

 

エリンシアが戸惑う・・・私も戸惑う。

だって、だって、魔物が喋ったよ!?

 

いや、確かに中には竜だとか吸血鬼だとか喋る魔物もいるけど・・・オークが!しかもいやーんって!?

余りの事に私の頭は動転する、エリンシアもぽかんと口をあけながら何と言っていいかわからない状態であった。

 

 

「どういうことはこっちのセリフよぉん!一体どういうつもりでいきなり攻撃をしてきたのぉん!」

 

 

オークが怒っている。

よく見ると腰まである長い髪は女性の特徴ともとれる、そして、唇には赤い口紅、胸には乳房らしき二つの球体・・・。

 

確かに体や格好だけを考えればちょっと太めの恰幅の言い女性とも見える・・・全身緑で顔はオークのそれではあるが・・・いやそれが問題なんだけどさ。

女性型の異常種オークということなのかな?

 

 

「オークの異常種かと思いましたが化け物でしたの!?」

 

 

あ、エリンシアはオークとは認めたくないらしい。気持ちはわかる。

 

 

「誰が化け物よおおおん!!」

 

 

化け物が吠えた。

大きな木の下でロープに縛られているクレイさんが「ひぃ」と悲鳴を上げる。私も上げる・・・だって怖いもん!

 

 

「こんな麗しの乙女を捕まえて化け物なんてひどいわん!」

「どこが乙女ですの!」

「この豊満なボディ!売れた果実のようなく・ち・び・る。長く綺麗な髪!どこどう見ても美しい乙女じゃなぁい!!!」

「どこがじゃああああああ!!」

 

 

・・・あ、つい突っ込んでしまった。

 

 

「どこもかしこよぉおおおおん!!!!」

「きゃあ!?」

 

 

余りの迫力に私は後退る。怖い怖い怖い。

 

 

「ともかくですわ!ワタクシの家の従業員を襲ってタダで済むとは思わないでくださいまし!」

「襲ってないわよぉん!!」

「問答無用ですわ!!!」

 

 

余りの敵の濃さに動揺したのかエリンシアは当初の目的であるクオンが来るまで時間を稼ぐということをすっかり忘れて戦いを始める。

もう少し、会話で時間を延ばしたかったけど仕方ない。

私も戦闘態勢に入ってエリンシアと共に戦う態勢をとる。

 

エリンシアが魔導銃を撃つ、あの魔導銃は込める魔力で威力が変わるとエリンシアは言っていた。

今は牽制なのか、撃つ魔弾すべてをオークっぽいものは拳で弾き返している。

私はふと、弾き返された弾の行方を目で追った。

一つは、地面に落ちて大地を抉る、一つは岩に当たり粉々に砕く、一つは木に当たり真っ二つに折る・・・・・・・・・・ちょっと。

 

なにあれ、一発一発すごい威力なんですけど!?

 

 

「そんな・・・ワタクシの魔弾がこんな簡単に弾き返されるなんて・・・」

 

 

エリンシアが驚きの声を上げる。私も驚いている。

そりゃそうだよ、この魔弾Dランクの魔物でも一発でも倒せそうな威力だもん・・・。

それをあんな簡単に弾くなんて・・・このオークっぽいものかなり強い。

 

 

「あらぁん!お嬢ちゃん結構やるわねぇん!」

 

 

でも、今ならあのオークっぽいものはエリンシアの方を向いている。

背後からなんて卑怯かもしれないけど、ここは一発でかいのをお見舞いしてあげるよ!

 

 

炸裂炎弾(バーストフレイム)!!!」

 

 

バーストフレイムは火の魔法の中級魔法でフレイムエクリスより威力の高い呪文だ。

もちろん使用者によってその威力はピンキリだが私のバーストフレイムならCランクの魔物でもかなりのダメージを与える自信がある。

それがオークっぽいものに直撃した。

 

 

「きゃああああ!化粧があああああああ!!」

 

 

・・・・・そこ?

 

 

 

「いきなりなにするのよぉん!あっちの子といい、ひどいわぁん!!」

 

 

いやいや・・・うそでしょ?

オークっぽいものは何処から取り出したのか手鏡を出して自分の顔を写し化粧を確認している。

まるで効いていないようだ。

 

 

バーストフレイムはかなり強力な魔法なのに・・・直撃したのに・・・うう、魔法には自信あったのにちょっと自信なくしそうだよ。

 

 

「カモメさん!あの化け物を足止めしてくださいまし!」

「わ、わかった!」

「化け物じゃないわよぉおおおおおおん!」

 

 

だから怖いって!

私はオークっぽいものに向かって駆け、ジャンプで重力を加えながらバトーネを振り下ろす。

私のバトーネも魔力を込めることでその威力を増す、弱い魔物ならこの一撃で絶命させられるのだが、オークっぽいものは私の一撃を片手で受け止める。

 

 

「化け物って呼ばれるのが嫌なら、なんて呼べばいいの?オークっぽいもの?」

 

 

私はバトーネに力を込めながらオークっぽいものに問う。

もちろんこれは、オークっぽいものの意識を私に向けさせるためだ。今、オークっぽいものの後ろではエリンシアが魔導銃に先ほどまでとは比べ物にならない魔力を込めている。

 

 

「あらぁん、私の名前を呼んでくれるのねぇん、私はレディよぉん!」

「レディ・・・だね!それならレディ!私は冒険者として人を襲うあなたを倒すよ!」

「だから、襲ってないわよぉおおおん!」

「カモメさん、離れなさいですわ!!!」

 

 

エリンシアの言葉に私は後ろに飛ぶ。魔力を込めるのが終わったようだ。

 

 

「お喰らいなさい!全力魔弾《フルブラスター》!!」

 

 

エリンシアは射線上に私とクレイさんが入らないように移動し、魔力を込めた魔弾を放つ。

さっきまでの魔弾とは違いまるでレーザー砲のような筒状の攻撃がレディに向かう。・・・すごい。

これなら、かなりのダメージを与えられるはずだ。

 

 

「いやああああああああん!!」

「すごい、さすがお嬢様だ!!」

 

 

クレイさんがエリンシアに賞賛の声を送る。

確かにすごい、これだけの威力の攻撃を繰り出せる人間はそうそういないだろう。

それを私と同じ12歳の女の子が繰り出しているのだから本当にすごい。

 

これだけの攻撃を喰らったのださすがに倒れ・・・嘘・・・。

 

 

「びっくりしたわぁん・・・一瞬世界が真っ白になったわよぉん・・・まるで天使になって天を駆けている感じだったわぁん♪」

「そんな・・・・」

 

 

エリンシアが愕然としている。それはそうだろう、恐らく今の攻撃はエリンシアの最大の一撃なのだろう。

それをまともに喰らって平然としている(なぜか恍惚としている)のだから、冗談ではない。

 

これはマジでやばいかもしんない・・・。

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