闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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帰還

「う、ううん・・・・」

「目が覚めたか?」

「お父さん?」

 

 

目が覚めると、そこにはお父さんがいた。

私は辺りを見回す、ここは私たちが泊まっている宿屋の私の部屋だ。

私はさっきまでヘインズと戦っててレディに助けてもらって・・・気を失って・・・そうだ、あの後どうなったの!?

 

 

「お父さん!クオンは!エリンシアは!レディは!?」

「落ち着け」

「落ち着いてなんていられないよ!みんなは無事なの!?」

「だから落ち着け、今話す。」

 

 

その後お父さんは、あの後のことを話し始めてくれた。

先ず、クオンとエリンシアは無事らしい。

エリンシアは魔力を使い切った疲労で倒れただけなのでしばらく寝ていれば元気になるようだ。

 

クオンの怪我はかなりひどかったらしいが、早めに治療が出来たらしく今は怪我が治り安静にしている。

明日には元通り動けるようだ。

だが、レディは少し問題があった。

 

 

「なっ!なんでそんなことになるのよ!!」

「お前の気持ちもわかる・・・だがどうしようもなかったのだあの状況では・・・」

「そんな!!」

 

 

レディは動けなくなった私たちをこの街へと送ってくれたらしい。

クオンの怪我もあったし、私も怪我をしていたので早めに治療をした方がいいと判断したのだ。

レディの判断は正しく、私もクオンも早めに治療できなかったらどうなっていたかわからない。

 

・・・あの時、私が気を失わなかったら治癒魔法でクオンも自分も治せたのに・・・いや、あの時は魔力がもう殆どなかった。治癒魔法を唱えることは出来なかっただろう。

だけど、悔しいのだ。

 

 

なぜ悔しいのかというと、お父さんから聞いたその時のことを話して説明しよう。

 

 

《ヴィクトールside》

 

レディが私たちを送る為に5人纏めて担ぎ、街へと向かっていた。

その頃お父さんは、城でラインハルト騎士団長から紅の牙の情報を聞いていたところだった。

お父さんと騎士団長は昔、同じ冒険者としてパーティを組んでいたらしく、旧知の仲だ。

昔話に花を咲かせながら二人は情報を交換していた。

そして、ラインハルト騎士団長から教えてもらった紅の牙の情報は、盗賊は最近いきなり力をつけ始めたらしいとのことだった。

 

少し前までは名前も知らないような小規模の盗賊団で、いや、今も構成メンバーは4人と小規模であることは変わらないらしいが、

それでも不思議なことにいきなり強力な魔導具を手に入れその魔導具の力を使い、強奪や殺しの限りを尽くしているらしい。

 

だが、そのアジトは騎士団でも突き止めていないらしく現状は現れたと聞いてから討伐に出るため、現場に着いた頃には逃げられているしまっているのだ。

騎士団が把握している構成員は4人で、その中にクオンが探しているであろう男もたしかにいるらしい。

 

 

お父さんはヘインズと名乗る男の事やエリンシアから聞いた情報を騎士団長に教えていた。

その後、昔の話に花を咲かせ、気が付くと日が赤くなり始めていたとき応接室に走りこんでくる者がいた。

 

 

「団長!」

「なんだ、騒々しい?」

「すぐに門へ来てください!魔物が現れたようで!」

「魔物だと?門番たちでは対処できないほどの魔物か?」

「それが・・・とにかく来ていただければわかるかと!」

「わかった・・・ヴィクトール、悪いがお前も一緒に来てくれるか?」

「ああ、様子がわからんしな、行こう」

「助かる」

 

 

お父さんとラインハルトさんが門へと着くとそこには意外な光景が目に入ってくる。

緑色の魔物、恐らくオークの異常種と思われる魔物が女の子を腕に抱き、兵士たちに怒鳴っていたのだ。

 

 

「あれは・・・オークか?」

 

 

オークといえばDランクの魔物だ、そして恐らくあれはその異常種、となればCランクかそれ以上の魔物となる、確かに兵士たちでは手に余る相手であるが、どうにも様子が変だ。

戦おうとする気配はまるでなく、人間の子供を丁寧に抱いており、その姿はまるで守っているかのようだった。

 

 

「あの女の子は・・・いや、他にも倒れている者が後ろにいるな」

 

 

そう、そのほかにも4人オークの後ろには倒れている者がいた、あのオークがやったのか?いや、後ろにいる者たちも丁寧に寝かされている。あのオークに襲われたようには見えないのだ。

 

 

「むっ・・・あれは!」

 

 

お父さんが声を上げた。

そう、オークの腕の中にいるのは私だったのだ。

 

レディは気を失った私たちと気絶してしまった冒険者、そして私たちがクオンの元にたどり着く前に怪我で気を失っていた冒険者の女性の五人をを抱えて走り、王都へと運んでくれた。

 

ヘインズに真っ二つにされた二人の冒険者はそのままその場に置いてきたようだ。仕方ないよね・・・。

そして、怪我をしている私とクオンをすぐに治癒師に見せてくれるよう兵士に頼んでいたのだが、魔物の言う事に従っていいものか兵士も迷っていたのだ。

 

 

「早くしてぇん!カモメちゃんたちが死んじゃったらどうするのよぉん!!!」

「ぐっ・・・だが、その娘たちが本当に人間なのかもわからぬし・・・」

 

 

不幸なことに私たちが出かけたときに門番をしていた兵士はすでに交代して帰宅してしまったらしく私たちの顔を知る兵士が今は居なかった。

 

 

「カモメ!!」

 

 

お父さんが私に気づき駆け寄ってくる。

 

 

「あらぁん、あなたカモメちゃんの知り合いなのぉん?」

「父親だ!娘はどうしたのだ!」

「変態に襲われたのよぉん!」

「なんだと!?」

 

 

変態・・・まあ、間違ってはいないが余計な誤解を招きそうだ・・・。

 

 

 

「怪我をしているわぁん、あっちの男の子も。他の子たちは気を失っているだけだけど、一応治癒師に見せたほうがいいかもねぇん」

「わかった・・・すまない」

「いいのよぉん、カモメちゃんは大事な友達ですものぉん」

「そうか」

 

 

お父さんはレディに感謝をし私を受け取った。

そして、すぐに治癒師に見せようとしたが、その時、待ったの声が入ったのだ。

 

 

「何をしておる!!!!!」

「こ、これは大臣。どうしてこのような場所に!?」

 

 

そう、大通りで自分の馬車を止めたというだけで子供を蹴り飛ばしたあの大臣である。

 

 

「ふんっ、街の視察をしていたのじゃ・・・しかし、騒がしいと思えば・・・一体何をしているのだ!」

「はっ、あの魔物が、怪我をした子供や冒険者を保護したらしく。真偽を確かめるために時間を取られてしまいました。ですが・・・」

「馬鹿者!そんなことを言っているのではない!」

 

 

兵士はですが、本当の事らしく、少女たちを治癒師に見せるところですと言うところだったのだが最後まで言う事はできなかった。

 

 

「魔物がいるのだ、討伐するのが仕事であろう!」

「・・・は?いや、ですが、あの魔物は子供を保護したようで・・・」

「だから何なのだ?魔物は魔物であろう、魔物とは存在するだけで悪なのじゃ!故に殺さねばならぬ!さあ、剣を構えるのじゃ!」

 

 

その掛け声に兵士たちは戸惑う。

人語を操り、5人もの人間を助けるため必死に走り、人間の街にまで来た魔物。その姿は異形ではあるものの悪には見えなかったのだ。

 

とはいえ、確かに魔物は魔物である。今は大人しくてもいつ暴れるかわからないのも事実ではあった。

だが、5人もの人間を助けた魔物にこの場で剣を向けてもいいものか・・・。

兵士たちは迷った。

 

 

「ふざけるな!この魔物は娘の恩人だ!剣を向けることは私が許さん!」

 

 

声を上げたのはお父さんだ。

お父さんはこれでもかなりの有名人である。伝説のパーティに所属し、今も拳のオーガの二つ名を持つ冒険者として数々の偉業を成し遂げてきた。

そのお父さんは当然大臣にも知られている。

 

 

「これはこれは拳のオーガ殿ともあろうものが魔物を庇うのですかな?もしや、その魔物を使って我が国に害をなすつもりではないでしょうな?」

「なんだと?」

 

 

ふざけた話である。

お父さんがそんなことするわけないじゃない。

自由気ままな冒険者が好きで国とはほとんどかかわろうとはしないお父さんだ。

そのお父さんがそんなことするわけがない。

 

 

「大臣殿、ヴィクトールは先ほどまで私と話しておりました。私が同行を頼んだのです。ここへ来たこと自体、偶然です」

「はっ、だから戦うしか能のない騎士団長は・・・、お主と共に来ること自体この者の作戦かもしれぬではないか!」

「は?いえ、そもそも、ヴィクトールは娘を引き取っただけですので・・・」

「やかましい!騎士団長ごときが私に意見をするな!」

「なっ・・・」

 

 

相変わらずめちゃくちゃである。

 

 

「さあ、そのオークとヴィクトールも捕らえよ!」

「ヴィ、ヴィクトール殿もですか?」

「当然じゃ!その者がその魔物を我が国に誘い入れたのだぞ!」

「あらぁん、私は自分の意志でここに来たのよぉん、そこのおじさんは関係ないわぁん」

「魔物の言う事を信じられると思うのか!」

「私はカモメちゃん達を治療してくれればいいのぉん」

「ふざけるな!魔物の手下になっているかもしれぬものを治療などできん!」

「なら、あなたをここで殺して治癒師の前にあなたの首を持って行って脅してもいいのよぉん?」

「なっ・・・正体をあらわしたな魔物め!今のを聞いただろう!さあ、こいつらを捕らえるのだ!」

「ま、待ってください大臣!この者をここで暴れさせればとてつもない被害が出ることになります!」

「臆したか!騎士団長ともあろうものが情けない!構わん!やれ!!!」

 

 

「待ってください!!」

 

 

騎士団長の制止を聞かずレディに攻撃を命令した大臣をさらに制止する声が響いた。

声を上げたのはクレイさんだった。

エリンシアの所の従業員であり、レディちゃんに攫われ告白をされていたクレイさんだ。

 

 

「なんじゃお主は!」

「私はグラシアール商会のクレイと申します」

「ただの商人が一体何の用じゃ!」

「あの魔物の後ろに倒れているのは我がグラシアール商会会長のお嬢様です、あの方に何かあれば国はグラシアール商会を敵に回すことになります」

「・・・・む、だからなんじゃ?」

「大臣、グラシアール商会は我が王国に多大な利益をもたらしている商会です、もし敵に回すようなことになれば被害は甚大かと」

「なんじゃと?・・・むぅ」

 

 

ラインハルトさんが大臣に説明をする。

やっぱり、グラシアール商会の事知らなかったよこの大臣・・・。

 

グラシアール商会は主に武器や防具、魔導具なんかを扱っている商会だ。

その取引先には当然国もいる。

そのグラシアール商会を敵に回すことになれば国は武器や防具などを仕入れるのが難しくなる。

他のお店から仕入れればいいのだろうが、ここ王都にある武器屋、防具屋のほとんどがグラシアール商会の息のかかったお店なのだ。

もし別のお店から仕入れるとなるとわざわざグラシアール商会の息のかかっていない街まで買い出しに行かねばならなくなる。

その分費用も時間も掛かるので国からしてみればかなりの大打撃になる。

 

 

「じゃが・・・魔物をこのまま逃がすわけにはいかん」

「あらぁん、なら私だけが捕まればいいのねぇん?」

「なんじゃと?」

「カモメちゃんたちを治癒師に見せてくれるなら私は大人しく捕まるわよぉん」

「馬鹿な、それではお主が・・・」

「大丈夫よぉん、カモメちゃんのお父さん、カモメちゃんをよろしくねぇん」

「・・・・・すまない」

 

 

レディはそう言うとお父さんにウィンクをしながら前へ出た。

国に捕まるということはそのまま死を意味する。

捕まえた魔物をそのままにしている訳がない、捕まえた後、処刑するのが普通だろう。

 

 

「・・・よいじゃろう、じゃがもし、グラシアールの娘たちがその魔物に操られていると判断した場合、責任はグラシアール商会に取ってもらうからな」

「・・・いいでしょう」

「よし、その魔物を連れていくのじゃ!」

 

 

レディは抵抗することなく兵士たちに連れていかれた。

 

 

 

《メインside》

 

 

 

つまりレディは今、城に捕まっているということになる。

私達を助けるためにレディは捕まったのだ。

少しでも早く私たちを治癒師に診せる為に、その結果、私とクオンの怪我は大事になる前に治った。

 

私は助けられてばかりだ、このままレディをみすみす殺させるわけには行かない!

そう思い、私は城へと駆けだそうとするがお父さんに腕を掴まれ止められた。

 

 

「お父さん、放して!レディを助けに行かないと!」

「駄目だ、そんなことをすればグラシアール商会が責任を問われる!」

「なっ!?なんでエリンシアのところに・・・」

「我々がもしこの事で何かをしでかせば、その皺寄せはグラシアールに行くことになっている」

「そんな!」

「考えなしに城に行けば大臣の思うつぼだ」

「確かに、何も考えずに行くのならばそうかもしれません、ですが交渉であればレディさんを助けられる可能性はあります」

「クオン!」

 

 

扉の方を見るとクオンが壁にもたれながら立っていた。

治癒を掛けてもらったとはいえまだ、体力が回復していないのだろうその息は荒い。

 

 

「大丈夫なの、クオン?」

「うん、体力が回復していないだけで傷はほとんど塞がっているよ」

「クオン、何か考えがあるのか?」

「はい、カモメも聞いていたと思うけどヘインズは去り際に盗賊のアジトの場所を明かしていきました」

「うん、王都の南の森にある古い廃墟だっけ?」

「そう、それを交渉材料に使うんだ」

 

 

つまり、アジトの場所を教える代わりにレディを解放してもらうって事?そううまくいくかな?

 

 

「でも大臣って、騎士団長が盗賊討伐を引き受けたとき邪魔したんじゃなかったっけ?」

「うむ、あの大臣はラインハルトを毛嫌いしているからな、ラインハルトのやることに何かと難癖をつけようとする」

「ええ、なので僕らが盗賊を討伐してその手柄を大臣に上げるんです」

「なるほど、その交換条件としてあの魔物の解放させるわけか」

 

 

なるほど、大臣の手柄になるならあの高慢ちきな大臣も乗ってくるかも。

 

 

「交渉はヴィクトールさんに任せていいですか?」

「ああ、任せておけ」

「とにかく、レディが心配だよ!早く行こう!」

「うん、そうだね」

「クオン、休んでなくて大丈夫?」

「うん、大丈夫。それに休んでなんていられないよ」

 

 

 

そうだ、紅の牙にはクオンの家族の仇もいるんだ。

本当ならすぐにでも行きたいだろうな・・・。

これで、その盗賊団の中にクオンの仇がいなかったらあのヘインズってやつ絶対に許さないんだから!

 

 

私は心の中でそう呟き、大臣に会うために城へと向かった。

 

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