闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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友達

グランルーン王国の王都、グランルーンの首都であり多くの人が行きかい活気ある

『王都グランルーン』。私達はその首都でも有名な宿、まごころ亭に宿泊している。この宿の値段はかなり高いがその分、いい食事にいい部屋を提供してくれる。

なぜ、私がこんなにいい宿に泊まれるかというとお父さんのおかげである。

お父さんはその昔、王都でも伝説と呼ばれる冒険者のパーティに所属していた。今はもう解散してしまっているがその時に手に入れたアイテムや魔導具を売って稼いだらしい。

だが、その宿のベッドに寝ているのは私ではなく少年であった。

この少年は王都の近くの森でたった一人ダイアーウルフ7匹と戦ってその時の傷で倒れた。私の治癒魔法で傷は塞がっているが流した血が多かったからか、まだ目覚めてはいない。

 

 

「起きないね・・・」

「ああ、大分血を流していたからな」

「どうしよう?」

「そうだな、とりあえずギルドに彼のような冒険者が登録していないか確認してこよう。登録されていれば身元がわかるはずだ」

「わかった、じゃあ、私はここでこの子を見てるね」

「頼んだぞ」

 

 

そう言って、お父さんは扉を開け出ていった。

見た感じ、亜人ではなく人間であるこの子は歳で言えば12歳の私と同じくらいだと思う。

そんな間違いなく子供であるこの少年が、なぜあんな場所で、一人で魔物と戦っていたのか。

そういう意味では私も外で魔物と戦ってはいたんだけど、私はお父さんの監督の元、冒険者になる為の修練を積んでいたのだ。

だが、彼は一人で危険な森にいて、しかも7匹のダイアーウルフを怪我をしたとはいえ倒している。

戦闘力で言えば私と同じくらい強いんじゃないだろうか。

ダイアーウルフは私でも1対1なら問題なく倒せる相手ではある、だけど7匹相手となると負けはしないだろうが苦戦するだろう。

ダイアーウルフは一般的な冒険者が戦う相手としても十分強い敵である、まして7匹ならちゃんとしたパーティを組んだ冒険者でなければ命がない。

そんな相手をこの子は一人で倒したのだ。私も12歳にしては規格外と言われるがこの子もきっと規格外の強さなんだろうな。

 

 

「・・・・ん」

 

 

私が考えながら眺めていると、少年の眉がピクリと動く。どうやら目が覚めたようだ。

 

 

「・・・ここは?」

「ここは、『まごころ亭』グランルーン王都の宿屋だよ」

「君は・・・」

「私はカモメ、あなたはダイアーウルフと戦った時の傷で倒れたんだよ」

「・・・そうか・・・あれ?」

 

 

少年は自分の左腕を見て傷がないことに気づく。

 

 

「傷は私が治癒魔法で治したよ、あのままだと死んじゃうかもしれなかったし」

「君は魔法が使えるの?」

「まあね、これでも冒険者目指してるからね♪」

「そうなんだ・・・ありがとう」

「・・・わっ」

「?」

 

 

少年は宝石箱のようなキラキラした笑顔で私にお礼を言った。

余りにキラキラしていたからか私の心臓はなぜか跳ねる。

 

 

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない」

 

 

 

少年の夜空のように濃い藍色の髪の毛と、髪の色に会う白銀色の星のように明るい瞳が夕陽の光を浴び、その笑顔をさらに輝かせていた。

世の少年好きの女性が見たら確実にお持ち帰りされるであろう美貌である。

 

 

「迷惑をかけてごめん、それじゃ、僕は行くね」

「・・・・はい?」

 

 

いきなり立ち上がろうとする少年に私は素っ頓狂な声を出してしまう。

まだ、フラフラと覚束《おぼつか》ない足に力を入れようと踏ん張る少年。だが、かなりの血を失っている為、思うように立てないでいた。

 

 

「ちょっとそんな状態でどこいくつもりなの!?」

「君には・・・関係ない」

「なっ!」

 

 

ひどい言いようだ。確かに、たまたま森で出会って、目の前で倒れたから回復させて連れてきただけだ。だけど、関係ないと言われると、元来、負けず嫌いでお節介である私は、行かせてたまるかという気持ちになる。

関係ないと言われるなら関係なくないようになればいい、私は短絡的にそう思った。

立とうとしている少年を片手でポンと押してベッドに戻す。

 

 

「あいたっ・・・なにするんだ」

「名前は?」

「はい?」

「私さっき名乗ったよ、名乗られたら名乗り返すのが礼儀だと思うんだけど?」

「はあ・・・一体なにがしたいのさ・・・」

「い・い・か・ら・な・ま・え!」

 

 

私はベッドに両手をついて前のめりになりながら少年を問い詰める。

 

 

「・・・はあ、クオン。僕はクオンだ」

「そっか、クオンよろしくね」

 

 

私は片手を前に出し握手を求める。

その手を訝し気に見て、ため息を吐いた後、クオンは手を握った。

 

 

「これでもういいかな?僕は行くよ」

「何言ってるの、これで私たちはもう友達だよ。関係なくないよね?」

「・・・・・はい?」

 

 

キョトンとした顔で私の顔を見るクオン。その顔がかわいく私は口元を緩める。

 

 

「だってさっき、クオンは私には関係ないって言ったでしょ。さっきまではそうだったかもしれないけど、もう友達だし、関係ないなんて言わせないよ」

「いや、君と友達になった覚えは・・・」

「友達ったら友達なの!」

 

 

私の剣幕にクオンは後退る。

自分でも強引で意味不明なのは承知しているが、ここで彼を行かせるとなんか負けた気がするのだ。なので、絶対に行かせない。

 

 

「私は友達をそんな状態で行かせたりしない」

「・・・はあ、友達だったとしても君には関係ない。僕は行かないといけないんだ」

「・・・なんでそこまで行きたいの?」

「話す必要はない」

「うがぁー!強情っぱり!理由言うまで絶対に行かせないからね!」

 

 

クオンの態度に私の我慢メーターは許容量をオーバーする。・・・もともと少ない容量だが。私はベッドから起き上がろうとするクオンに馬乗りになる。

 

 

「なっ!!・・・ちょっと!」

 

 

クオンは顔を赤くしながら慌てた。

別に取って食ったりはしないんだからそこまで慌てなくてもいいと思うんだけど・・・。

 

「大人しくするの!まだ、完全に回復してるわけじゃないんだから!」

「体が動けば十分だ、治療してくれたことは感謝するけど、これ以上は君に関係ない!」

「関係ある!」

「ない!」

「ある!」

 

 

お互いに一歩も引かず、終いには犬のようにガルルルと威嚇しあった。

 

 

「もういい!」

 

 

私がプイッっと視線を逸らし、クオンの上から降りた。

クオンは私が退いたことでやっと諦めてくれたんだと思ったのだろう安堵の息を吐くのだった。

 

 

「君には感謝しているし、悪いとも思うけど理由を話す気はない、だから行かせ・・・て・・・・・・ちょ、ちょっと?」

 

 

クオンが立ち上がろうとしながらまだ分からず屋なことを言っている。

そんな彼が、なぜ言葉を途中で遮って戸惑いながらも疑問の声を上げたのかというと・・・。

 

 

「言うこと聞かないなら実力で休んでもらう」

 

 

そう言いながら、私はバトーネを上に持ち上げ思いっきりクオンの頭に振り下ろした。ゴチンという良い音を上げ、クオンはそのままベッドへと沈んだ。

 

 

「ふう、やっと安静にしてくれた」

 

 

私は満面の笑みを浮かべ、白目をむきながらベッドで眠るクオンを見て満足する。

窓の外ではたまたま散歩していた白猫がクオンを叩いた時の音に驚いたのか足を踏み外し、2階の高さから落ちた。・・・まあ、猫なら大丈夫だろう。

クオンが白目をむいて寝てしばらくし、夕日も完全に落ちた頃に部屋の扉が開く。

扉から入ってきたのはオーガと見間違う大きな体をした男性・・・うちのお父さんである。

 

 

「ふむ、まだ起きないか・・・」

「ううん、さっき起きたよ」

 

 

私の言葉にお父さんは右眉毛をピクリと上げる。

そして、近寄ってくるとクオンの顔を見て自分の顔に手をやりながらため息を吐いた。

 

 

「なぜ、こうなった・・・」

「だって、出ていくって聞かないんだもん」

「そうか・・・まあ、無理をするよりはいいか」

 

 

・・・いいんだ?

そういえば、お父さんはギルドにクオンの身元を確認に行ったんだっけ?

 

 

「クオンの事何かわかった?」

「ほう・・・名前を名乗ったのか」

「うん、素直に教えてくれたよ」

 

 

私は事実を述べる、多少馬乗りになったりしたけど素直に教えてくれたったら教えてくれたのだ。

 

 

「素直にかどうかはわからんが、どうやらクオン=ドースティンで間違いなさそうだな」

「ギルドに情報があったってことは冒険者だったの?」

「いや、冒険者ではなかった。だが、ギルドの職員が彼を知っていてな」

「へぇ、有名人?」

「ある意味・・・な」

 

 

お父さんが渋い顔をする。どうやら、あまりいい意味での有名人ではないようだ。

 

 

「悪いことしてるの?」

「いや、むしろ被害者だ。彼の家族は2年前盗賊に襲われ命を落としたそうだ・・・」

「・・・!っ」

 

 

それを聞いて私は言葉を失う。

家族を失う悲しさは私でもわかる。私も7歳の時に母親を亡くしている。

大事な家族を失うことは身を斬られるような痛みを感じる事だ。それも、事故や病気でもなく誰かに命を奪われたとなったらとてもじゃないけど私はその相手を許すことは出来ないだろう・・・いや出来なかった。

そうか、クオンと会った時に見た眼。あの眼を見て不安になったのは昔の私と同じ眼だったからなのかもしれない。

・・・・・あれ?ということは。

 

 

「もしかして、クオンが一人で森にいたのって・・・」

「うむ、恐らく、家族の仇の盗賊を探していた・・・そうだろう、クオン=ドースティン?」

「・・・・・」

 

 

お父さんが、眠っているはずのクオンの方を向く。

私に殴られ・・・説得されて大人しく寝ていたはずのクオンが意識を取り戻し・・・目を覚ましてた。

 

 

「・・・そうなの?」」

「・・・・・・・だとしたら、何だっていうんです?」

 

 

どうやら、お父さんの言う通りらしい。

つまり、クオンの家族を襲った盗賊はこの辺りにいるということだ。

 

 

「ギルドの職員は君の事を気にかけていたよ、まだ子供の君が盗賊に戦いを挑んでも返り討ちになるだけだ・・・とね」

「・・・そうですか」

 

 

そういうと、クオンは立ち上がろうとする。

 

 

「どこに行くんだ?」

「決まっています・・・あの森に」

「あそこに、盗賊がいるの?」

「・・・2週間前、あそこで商人が僕の探しているであろう盗賊に襲われたんです」

「2週間前では、すでにそこにはいないだろうな」

 

 

お父さんの言う通りだ、盗賊がいつまでも同じ場所にいるはずがない。

 

 

「だけど、足取りが掴めるかもしれない、近くにアジトがあるのかもしれない・・・可能性があるなら、僕は行く」

「行くにしても回復してからにしようよ・・・まだ、血が足りてないはずだよ」

「必要ないよ・・・これくらい、なんてことはない」

 

 

そう言ってまた立ち上がる。だけど、やはり血が足りていないのかその足取りは覚束《おぼつか》なかった。

私はバトーネを取り出し、先ほどと同じように振りかぶる。

 

 

「待つんだカモメ」

 

 

 

私が何をしようとしたか理解したお父さんがそれを止める。

そして、その制止にクオンが振り返り、私がバトーネを振りかぶっていることに気づきギョっとする。

 

 

「だって、お父さん」

「クオン、君も少し待ちなさい」

 

 

力尽くで行くしかないよ?という私を無視してお父さんがクオンに話しかける。

私は無視するお父さんにバトーネの対象を変えてやろうかと思ったが、きっと何か考えがあるんだろうと思いとどまった。

 

 

「しばらく、私たちと行動を共にしないか?」

「?・・・そんなことをして何になるんです?」

「私と一緒ならば、ギルドから情報を得るのも楽になる。こう見えてもエンブレム持ちなのでな」

 

 

エンブレム持ちというのにクオンは一瞬驚く、だが、首を振りながら口を開いた。

 

 

「ギルドからの情報は特に必要ありません、すでにここでの情報は商人から聞いてますし」

 

 

そうだ、ここで商人が襲われたということをクオンはすでに知っていた。ということは情報収集はすでに済んでいて当然だ。

 

 

「ふむ、確かにそうかもしれんが、その後の盗賊の足取りはわからんのだろう?」

「ギルドならそれがわかると?」

「そうだ、私がギルドに依頼をすれば調べてもらえる。その後、その盗賊の目撃情報があれば私の所に入ってくるだろう・・・どうだ?」

 

 

お父さんが「ん?」と挑発的な目でクオンに言う。

クオンは迷ってるのか、お父さんから視線を床へとそらし考える。

そして、考えが終わったのか視線を床からお父さんに戻す。

 

 

「申し訳ありませんが、やはり、お断りさせていただきます」

「え、なんで?」

 

 

お父さんの提案をクオンは丁寧に断る。

私はお父さんと行動を共にしているからわかるけど、ギルドの情報網はかなりすごい。それもそのはずで、各街にあるギルドすべてが情報を共有しているのだ。

どうやって共有しているかというと遠く離れていても通信できる魔導具があるとか・・・。便利だよね。

 

 

「怪我を治療してくれたのは感謝してます・・・でも、僕はまだあなた達を信用してはいませんから」

「なっ!」

 

 

そう言って、クオンは再び後ろを振り向き扉へと歩き出した。

そして、次の瞬間、クオンは鈍い音と共にその場に倒れた。なぜかわからないが私のバトーネがクオンの頭に激突していたのだ。なぜかわからないが。

 

 

「お前というやつは・・・」

「バトーネが勝手に動いたんだよ・・・びっくりだね」

 

 

そう、バトーネが勝手に動いたのだ、決してクオンの態度に怒って私が振り下ろしたわけではない。決して!

 

 

「とりあえず、ベッドに戻しておこう・・・カモメ、お前ももう休みなさい」

 

 

その言葉に私は外を見る、いつの間にか外は暗くなっていた。

 

 

「私、ここにいる・・・またクオンが一人で出て行こうとするかもしれないし・・・」

「ほう・・・なんだ、惚れたか?」

「そんなわけないでしょ!?・・・・・なんか放っておけないだけだよ・・・」

 

 

おバカなことを言うお父さんの頭にバトーネを振り下ろす、力加減はクオンの時と同じなのにお父さんは頭にバトーネの直撃を受けながら全然効いていないのか「照れるな照れるな」と笑っていた。・・・むぅ。

別にクオンに惚れたというわけではない、まあ、確かに顔はちょっといいかなーとは思うけど・・・って、そうじゃなくてっ。

・・・クオンを見てると不安になるのだ。まるで、闇に飲み込まれて消えてしまいそうなそんな感じが・・・。

だから、見張っておきたいだけだ・・・私はそう心で呟きながら椅子に逆に座り背もたれに腕を乗っけてその上に顎を置き、クオンを見る。

さっきと違って白目は向いていないが、その顔はどこか苦しそうだった・・・強く叩きすぎた?

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