お父さんとお母さんのお墓を後にし、私たちは王都に戻ってきた。
私とクオン、そしてラインハルトさんは王様に今回の件の報告をする為、お城に向かう。
エリンシアはそのまま家に戻って父親に報告をすると言うので分かれることにした。
「それでは、カモメさん。ワタクシの依頼を受けていただいてありがとうございましたわ」
「ううん、こっちこそエリンシアのおかげで色々助かったよ。ありがとう!」
「報酬は後日、ギルドに送っておきますので受け取ってくださいまし」
「りょーかい!」
私達はお互いに笑顔で握手をする。
本当、エリンシアの強さには驚かされっぱなしだった。
レディとの戦いのときもその後の妖魔との戦いのときも、12歳の女の子の強さとは思えないくらい、心も戦闘能力も強い。
それに、後から聞いたけど私たちが廃墟に戻る前にエリンシアは魔鬼を一匹一人で倒しているらしい。
私達の倒した魔鬼よりは弱いとヘインズが言っていたらしいがそれでも、Bランクモンスター並みの強さがあったと言うのだから驚きだ。
「ねえ、エリンシア」
「どうしましたの?」
「エリンシアってそのうち冒険者になるんだよね?」
「そうですわよ、成人してからになると思いますから後3年くらい後ですけれど・・・それがどうかしまして?」
3年かまだ結構先だなぁ・・・でも、今のうちから勧誘しても問題ないよね。
「ならさ、冒険者になったら私たちのパーティに入らない?」
「・・・・・っ!!」
私が声を掛けるとエリンシアの眼がキラキラと光る。
「あ、あら、パーティに誘ってくださるのですわね、まあ、トーゼンですわ、強く、頭もよく、そしてこの美貌を持ったワタクシをパーティに入れたいと言うのはトーゼンですわね!!!」
(めっちゃうれしいですわあああああああ!でもでも、淑女たるものどんな時でも余裕の態度でいなければ)
胸を張りながら、エリンシアはほっぺたをピクピクさせて高笑いをする。
思った以上に嬉しそうだ。
「し、仕方ありませんわね、初めての友達・・・じゃなかったですわ、ごほん。カモメさんの頼みならば聞いてあげなければなりませんわね!お~っほっほっほ!」
「ありがとう、エリンシア!クオンもいいよね!」
「もちろん」
クオンも笑顔で快諾してくれる。
「さあ、この話はまた後でゆっくり致しましょう、まずはレディさんを解放してきてくださいませ」
「うん!じゃあ、またねエリンシア!」
「ええ」
私達はお互いの報告の為、別れることになった。
別れ際、エリンシアが少し離れたところで天に向かってガッツポーズをしているところが見えた気がしたけど気のせいかな?
私達はエリンシアと別れた後、報告の為お城へとやってきた。
城に着いた時、兵士の人たちがあわただしく動いているのを眼にする。
それを訝しんだラインハルトさんが、近くにいた兵士を捕まえて事情を聴いてみた。
「一体、何を慌てている?」
「これは、騎士団長!?・・・実は・・・・っ!!・・・・・そちらは?」
「盗賊の討伐をしてもらった冒険者の者たちだ、それより何があった?」
「いえ、詳しい話は大臣に、奥でお待ちですので・・・」
「?」
結局、兵士の人は理由を言わず大臣に会えとだけ言って去っていった。
兵士さんが私を見たときの眼がちょっと怖かったけどなにかあったんだろうか?
あ、そっか、髪の色が黒くなってるから怪しい人間に見えたのかな?
この世界で黒い髪という人間は珍しい。黒っぽい髪というのであれば少しはいるようだけど、真っ黒という人間には私はまだ会った事が無い。
まあ、黒ってなんか暗いイメージあるしねぇ・・・不気味がられてもしょうがないのかな?
でも、イメージ悪くても冒険者として活躍すればむしろトレードマークになっていいかもね、今後の私次第でイメージなんて変わる変わる♪
そんなことを考えていると、私たちは以前王様に会った謁見の間まで来ていた。
謁見の間には大臣とその隣にはフードを被った男が一人、そして、入り口の近くには兵士が10人程待機していた。
以前あったときは大臣さんと兵士の人が一人くらいしかいなかったと思うけど、やっぱり何かあったみたいだ。
大臣ゴリアテがすごい形相で私を見ている。
なんか・・・すごく、嫌な感じだ。
「大臣、これは一体どういうことだ?私達が来るのを待っていたようだが・・・」
「ラインハルトよ、よくやった」
「ん?盗賊の事か?それをやったのは私ではないぞ?」
「盗賊などどうでもよいわ、ワシが褒めているのは闇の魔女を捕らえここに連れてきたことじゃ!」
「・・・なに?」
闇の魔女?そんな人捕らえたっけ?・・・うーん、私たちの知らないところでラインハルトさんが誰か捕まえたのかな?
んー、でもほとんど一緒にいたような・・・。
「一体何を言っているのだ、大臣よ」
「そこの黒い髪の娘のことじゃ・・・闇の魔女、魔族を操りヴィクトール殿を殺させたそうじゃな・・・。」
「・・・・え?」
黒髪って私の事?・・・私がお父さんを殺した?
――――――――――――え?
「宮廷魔術師殿がその娘に良くないものを感じると言うから見張りを付け様子を伺わせていれば・・・まさか魔女だったとは・・・」
「ちょ、ちょっと!私魔女なんかじゃないよ!?」
「その通りだ、大臣、この娘はヴィクトールの娘だ、魔女などではない」
「ヴィクトール殿娘は黒髪などではない!大方、ヴィクトール殿の娘を殺し成り代わったのじゃろう!」
私は私だよ!?
何を言ってるのこの大臣・・・というか見張っていたならわかるでしょう!私はお父さんを殺してなんていない!そんなことするはずない!!
「ええい、話にならん・・・王はどこだ!王に直接話をする!」
「ラインハルトよ・・・王はもうおらんのじゃ・・・」
「・・・・なに?」
「魔女の呪いにより殺された・・・」
王様が・・・殺された?
・・・しかも魔女の呪いってまさか王様を殺したのも私って言うつもりなの!?
「馬鹿な!それこそありえん!我々とずっといたヴィクトールの娘にそのようなことができるはずがない!」
「いえ、それができるのです」
フードの男が言葉を発する。
その男は声から男であることはわかるが、フードを目深にかぶっていて人間なのか獣人なのかその区別すらつかない様相であったがその声はとてつもなく冷たく感じた。
「貴殿は確か宮廷魔術師の・・・」
「覚えていただいて光栄です、ラインハルト殿」
「そんなことはどうでもいい、出来るとはどういうことだ!」
「魔女の呪いはじわじわと体を蝕む類の物でした、そして、その者との謁見がある前にはそのような呪いは王にはかかっておりませんでした」
そんな・・・。
おかしいよ・・・私そんなことしてないのに!
「私はそんなことしていない!」
「そうです、カモメがそんなことをするわけない!」
クオンも私と一緒に否定をしてくれる。
一体どうしてこんなことになったんだろう・・・命を懸けて魔族とまで戦って・・・お父さんはその戦いで命を落として・・・。
それなのに、お父さんを殺したのは私・・・?そんなのあんまりだ・・・。
「それに、見張りをさせていた者が言っておったぞ、その魔女は人間が使えるとは思えないような魔法を使っていたと・・・そして、その魔法を闇の魔法と呼んでいたと」
「そ、それは・・・」
私の中にいる闇の女神であるディータの力であって、魔女の力なんかじゃない。
『飛んだ言いがかりね、カモメ、あいつに闇の魔法を喰らわせてやりなさい。身をもって知ればいいわ!』
そんなこと出来るわけないでしょ!?
私の頭の中でディータが怖い事を言う。
そんなことしたら現行犯で捕まっちゃうよ・・・。
「人外の力を使い、まるで不吉の象徴のような髪と眼・・・これだけでも十分じゃ!その上、狡猾にも魔族を使いヴィクトール殿を殺し、王までをも呪い殺した!」
「ち、ちがっ」
「黙れ!お主の様な人間の屑は生きる価値などないわ!!」
「・・・そんな」
違う・・・違うのに・・・。
私、お父さん殺してない・・・王様殺してないよ・・・私は・・・。
『カモメ!こんな奴の言う事を真に受けては駄目よ!・・・言いがかりで私のかわいいカモメを屑ですって・・・ふざけているわ・・・根暗坊主!あのガマガエルの首落としてやりなさい!!』
ディータが私の中で叫んだのを聞いて私は隣にいるクオンを見る。
クオンは本気で怒っていた、眼が座っていて今にも大臣に斬りかかりそうな雰囲気であった。
いけないっ・・・私は咄嗟にクオンの手を握る。
「だめ・・・クオン・・・」
「カモメ・・・くっ・・・」
『カモメっ』
「大臣さん・・・私はお父さんも王様も殺していません・・・信じてください」
「ええい、信じられるものか!兵士よ!この者たちを捕らえよ!」
入り口付近に待機していた兵士たちが私たちを囲む。
どうしよう・・・兵士さんたちを傷つけるわけにはいかないし・・・かといってこのまま捕まったらどうなるか・・・それにレディもまだ解放してもらってない・・・。
「大臣よ、あなたは何か勘違いしている!こんなことしていいはずがない!」
「ラインハルト・・・よもやお前もその魔女に操られているのではなかろうな!」
「なっ・・・そんなことはない!」
「魔女に操られるなど・・・騎士団長として失格じゃぞ・・・もしそうならば・・・」
いけない、このままだとラインハルトさんまで・・・。
・・・こうなったら・・・ほかにいい方法も思い浮かばないし・・・こんなの間違ってるけど・・・こうするしか・・・。
「ごめんクオン、ラインハルトさん」
「え?」
二人に謝ると私は黒い魔力を解放した。
その魔力の色に兵士たちは後退る・・・。
「な、なにをしているカモメ君!」
「・・・カモメ、もしかして君は」
驚いているラインハルトさんに対してクオンは何か気付いたようだ・・・勘がいいねクオンは。
そんな中、ディータ『やっとその気になったわね、さあ、あのガマガエルを切り刻んでやりなさい』と言っていた。
いや、しないからねっ!ディータ女神様でしょ!もっと穏やかなこと言ってよ!?
そして、私は大きく息を吸う・・・。
きっと、これをすれば私は追われることになるだろう、でもこのままじゃきっともっと酷いことになる。
私だけじゃなく、クオンもラインハルトさんも・・・レディも。
ならと、私は息を吸いきると意を決する。
「ふ・・・ふふふふ・・・あ~っはっはっはっは!残念・・・もうちょっとでこの国を乗っ取れると思ったのに・・・」
「カモメ君・・・何を言っているんだい!?」
「騎士団長さんは厄介だったわ・・・やたら正義感強いし、でも大臣さんが扱いやすくて助かったわね」
「な、なんじゃと!?」
私は、余裕たっぷりの笑みを浮かべて大臣を見る。
「貴方のおかげで騎士団長を私の近くに置いておけたし、騎士団長に私のアリバイを言って貰おうと思ったのに残念、失敗だったわ。騎士団長さんはしっかり見抜いていたのでしょう?」
「な、なにを言っているんだい・・・カモメ君」
ラインハルトさんは戸惑っている。
それはそうだ、さっきから言ってるのは口からの出まかせである。
このままだと、ラインハルトさんまで悪人にされてしまう、もしそうなったらきっとこの国は大変なことになるだろう・・・なんとしてもラインハルトさんとクオンは助けないと。
悪人は・・・私だけでいい。
「それにクオン・・・」
と、私はさっきまでクオンがいたほうを向く・・・しかし、そこにはクオンはいなかった。
「・・・・・あれ?」
私が間抜けな声を上げていると、後ろで剣を鞘から抜くときの金属の擦れる音が聞こえた。
「クオン君・・・・君まで!」
クオンはラインハルトさんに剣先を向けていた。
ちょ、ちょっとクオン!なにやってるの!?
「分かっています、主よ。使い魔である僕はあなたにどこまでもついていきますよ」
口調はとても穏やかでいつも通りのクオンだったがこちらを見る目がとても怖い。
あ、あれ・・・クオン怒ってる?
「ラインハルトさん、あなたはこの国に必要な人です。ヴィクトールさんが言っていた事を忘れないでください」
クオンがラインハルトさんに小さな声でそう言った。
お父さんがラインハルトさんに言っていたこと王様と殿下・・・つまり王子様を頼むだったっけ・・・王様はもういないから王子様をってことだよね。
そうだ、ラインハルトさんが騎士団長をやめてしまったらあの大臣を止める者はいなくなる。それに誰かわからないが王様を殺した者がいる筈だ。
もし、その者が王子様まで狙ったら大変・・・ラインハルトさんには王子様を護ってもらわないと。
「き、きみたちは・・・すまない」
そう言う、ラインハルトさんに私はウインクをしておいた。
さて・・・こうなったら完全に悪人にされちゃうだろう・・・とにかくこの城を脱出しないと・・・。
それにはレディを探さないとだね・・・。
「あのオークの異常種は恐らく地下の牢屋に入れられているはずだ。」
ラインハルトさんが小声でそう言った。
ありがとうラインハルトさん。
「まあ、失敗したのなら長居は無用ね・・・あ、そうそうレディは返してもらうわよ」
「なんじゃと!」
「ああ、そうそう、そういえば、レディを奪い返したらグラシアール商会に責任を取ってもらうとか言っていたわね・・・やってみると良いわ・・・自分たちが無能だったため魔女にオークを奪われました責任を取ってくださいってね」
「馬鹿にしおって・・・そ奴らを捕らえよ!!」
大臣が顔を真っ赤にして地団太を踏んだ。
あはは、魔女の振りってちょっと楽しいかも・・・ちなみに口調はディータの真似である・・・ディータ本当に女神だよね?
そんなことを考えていると兵士たちが一斉に槍を私たちに向ける・・・ホント長居は無用だ。
「捕まるわけないでしょう?・・・クオンこっちに」
私は解放していた魔力を集め風の刃を作る
そしてその刃で自分たちの下の床をを斬り裂いた。
床は崩れ下の階に落ちる・・・斬り裂いた先は厨房でいい匂いがした・・・そういえば、お腹減ったな・・・おっとそれどころではない、その床もさらに斬り裂く。
次はお風呂場であった、大きなお風呂で裸の筋肉のしっかりした男の人たちがいっぱいいた、恐らく兵士の人たちが使うお風呂場なのだろう・・・なぜ城にそんなものが・・・。
「きゃあああああ!」
乙女になんてもの見せるの!とりあえず、そこにいた兵士に理不尽フレイムエクリスをお見舞いし、さらに床を斬り裂いた。
すると・・・ビンゴ。地下牢らしきところにでた。
「き、貴様ら何者だ!」
恐らく、見張りの人だろう慌てて腰につけていた剣を抜く。
「レディ!いたら返事して!!」