闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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相棒

外に出ると、宿屋の庭に人影が見える、星空と同じ髪を煌かせながら自分の髪と同じ色の空を見上げていた。その姿を見て、私は安堵する。

どうやら、出て行こうとしていたわけじゃないようで、彼の服装は部屋着で装備などは持っていなかった。もし出ていくならあんな格好はしていないだろう。

彼は考え事でもしているのか時折、嘆息する。

私は、ゆっくりと彼に近づいていった。

 

 

「クオン」

「・・・カモメ、どうしたのこんなところに?」

「クオンの姿が見えたから・・・」

「あはは、出ていくと思った?」

「・・・ちょっとね」

「何も言わずに行ったりはしないよ、そんなことしてまた魔法を撃たれたら堪らないからね」

「・・・う゛っ」

 

 

悔しいことに、確かに私ならやりそうだと自分で思ってしまった。ぐぬぬ。

まだ、付き合いも短いというのに私の事をよくわかってるじゃない。

 

 

「それでクオンは何してるの?」

「・・・ちょっと、考え事をね」

「・・・そっか」

 

 

そう言うと私たちの会話は途切れる。

恐らく、クオンは死んだ家族の事を考えていたんだろう、遠い目をしながら寂しそうな表情をする彼を見て私はそう思った。

私もきっとお母さんのことを考えている時は同じ表情をしているんだろうなぁ。

どれくらい、そうしていただろう・・・1時間くらい二人で星空を見ていた気もするし5分もたっていないかもしれない。

彼の雰囲気になかなか口を開けずにいた。そんな私を見て、クオンは微笑みながら口を開いた。

 

 

「君でも気を使ったりするんだね、意外だ」

「なっ!?どういう意味よ!」

「あはは、君はお節介というか無遠慮というかそんな感じがしてたからね」

「ひどい!私だって遠慮くらいするよ!」

 

 

余りの言われように私はクオンを睨む。

クオンは「ごめんごめん」と言っていたが本当にごめんと思っているのだろうか・・・いや、絶対思ってないね。

 

 

「ねえ、カモメのお母さんは何をしている人?」

「私のお母さん?」

「うん」

「私のお母さんも冒険者だよ」

「あ、そうなんだ。冒険者家族か・・・きっと仲がいいんだろうね。今、お母さんは別の依頼か何か?」

「ううん、私のお母さんは七歳の時に死んじゃったの・・・」

「え!・・・あ・・・・ごめん・・・」

 

 

私が答えると、クオンはバツの悪そうな顔をする。馬鹿なことを聞いてしまったと落ち込んでいる。

 

 

「私のお母さんはね・・・魔物に襲われた私を庇って死んだの・・・」

 

 

クオンは黙ってしまったので私は話を続ける。クオンの目は無理に話さなくてもいいと訴えていたがなぜか私は彼に聞いてほしかった。

初めての同じ年くらいの知り合いで家族を失っているという意味では同じ境遇だからなのか、私は彼に親近感に近いものをすでに持っていたのだ。

 

 

「私のお母さんはとっても強かったんだよ、私の持ってるバトーネ()もお母さんの形見なんだ。でも、ある日、仕事で立ち寄った村に魔物が襲撃をしてきたの・・・。 その時、私は逃げ遅れてそれを見つけた魔物が私を襲った。大きな斧を私目掛けて振り下ろしたの・・・その時お母さんが私を抱きしめて魔物の斧から守ってくれた。私は暖かいお母さんの体に包まれて殺されずに済んだの。それで、それに気づいたお父さんがすぐに駆け付けて魔物を倒してくれたんだけど・・・助けてくれた時には私気絶しちゃってたみたいで・・・気づいた時にはもう・・お母さん・・・いなくなってて・・・」

 

 

私は当時の事を思い出し、涙が溢れてくる・・・私が逃げ遅れなかったらお母さんはきっと今も生きていた。

私のせいでお母さんは死んでしまったのだ。

 

 

「ごめん、カモメ・・・僕のせいで嫌なことを思い出させて・・・」

「ううん、こっちこそごめん、泣くつもりなんてなかったんだけどね」

 

 

私は泣いているのが恥ずかしくて無理やり笑顔を作る。

クオンはそんな私の頭を撫でた。いきなりの行動に私は顔が熱くなる。

 

 

「なっ・・・ななななっ!」

「あ、ごめん・・・つい」

「お、女の子の頭をいきなり撫でるなんて!・・・セクハラだよ!」

「セ、セクハラ!?」

 

 

さっきまで泣いていた筈なのにいつの間にか涙が引っ込んでいた。代わりに顔がものすごく熱い。

 

 

 

「ごめんごめん、女の子らしい君を見ていたら可愛く見えて手が勝手に動いたよ」

「か、かわいい!?」

「うん、妹を思い出しちゃって、妹にやってたみたいに頭を撫でちゃっ・・・だばぁ!?」

 

 

妹扱いされて右の拳がクオンの顔面に吸い込まれる。

 

 

「あ、ごめーん、つい右ストレートを打っちゃったよ♪」

「ついって・・・何がどうなったらつい右ストレートを打つのさ!?」

 

 

鼻を赤くしながら文句を言ってくるクオン、つい出るよね右ストレート。

 

 

「まったく君ってやつは・・・」

 

 

ぶつぶつと文句を言うクオン。鼻の頭が赤くなっているけどなぜかさっきより元気になっているみたいだった・・・なぜ?

 

 

「・・・・・僕のお母さんも僕を抱きしめながら盗賊に斬られて死んだんだ」

「ふぇ?」

 

 

さっきまでぶつぶつ文句を言っていたのにいきなり真剣な顔になって自分の事を話し始めたクオン。変化についていけず私は変な声を漏らした。

 

 

「盗賊に斬られながらも僕を守ってくれた・・・」

「そうなんだ・・・一緒だね」

「あんまり嬉しくない一緒だけどね・・・」

「うん・・・」

 

 

そしてまた、沈黙が流れる。

クオンはきっと私が辛いことを話したから自分だけ話さないでいることが出来なかったのだろう。クオンはかなりのお人好しだ。私が勝手に話したんだから無理して話さなくてもいいのに。

 

 

「ねえ、クオン」

「うん?」

「明日どうするか、もう決めた?」

「・・・・・正直、まだ迷ってる」

「探しても見つかるとは思えないし、私たちと一緒にいたほうがいい思うけど?」

「そうだね・・・でも・・・」

 

 

私にはクオンが何を迷っているのか分からなかった。

王都は広いし、もし王都の外にアジトを作っていたら闇雲に探しても見つかるとは思えない。それならギルドからの情報を待って情報が入ったらすぐ動いた方が可能性は高いはずだ。きっとじっとしていられないのだろうけど・・・焦って動いて敵に気づかれれば盗賊は別の街に移動してしまうかもしれない・・・ううん、もしかしたらクオンを殺しに来るかも・・・そんなのは嫌だ。

クオンは強いのは知っている。恐らく妖魔や盗賊たちに1対1ならまず負けることはないだろう。だけど、一人で全部を相手にするのはいくら何でも無理だ。

クオンだってそんなことは分かっている筈、なのに・・・。

 

 

「一体、何を迷ってるの?私は協力するよ?」

「・・・・・・・・・・・・だからだよ」

 

 

クオンが呟く。どういうことだろう?

 

 

「どういう事?」

「お節介な君を巻き込みたくないからだよ・・・君とヴィクトールさんは盗賊に復讐なんてしようとしている僕なんかに優しくしてくれた。普通、巻き込まれたくないだろうに」

「何言ってるの、冒険者なら困っている人を助けるのはあたり前だよ」

「普通の冒険者はお金にならない仕事はしないと思うけど・・・」

「む、そうなの?お父さんとお母さんは気にしてなかったけど?」

「お人好し家族だね・・・」

 

 

むぅ、普通はしないのか・・・でも、ウチでは人助けは当たり前だから気にしない気にしない♪

そう言う私に、クオンは困ったような顔を向けてくる。どうしても私たちを巻き込みたくはないようだ。

 

 

「んー、あ、そうだ!」

「?」

「だったら、クオンも冒険者になろうよ!」

「・・・・・へ?」

 

 

クオンはいきなり何を言い出すの?という顔で私を見てくる。

 

 

「だって、冒険者なら盗賊の討伐は当たり前じゃない、クオンが冒険者なら盗賊を討伐に行くのは当たり前、そして私も一緒に行くのは当たり前♪」

「君は何を言っているんだい?」

 

 

わけが分からないという顔で再度私をみてくるクオン。おかしいかな?

 

 

「確かに冒険者として盗賊を討伐するのは当たり前かもしれないけど、僕個人の復讐はかわらないよ・・・」

「むぅ・・・あ、それなら!」

 

 

今度は何を言い出すの?と警戒をしているクオン。

そんなクオンに私は今思い付いたことを言う。

 

 

「だったら、私の相棒になってよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

目を丸くしてもう何を言っていいのやらわからないという表情のクオン。

そんなクオンを見ながら私は話を続ける。

 

 

「つまり、冒険者になって私とパーティを組もうってこと」

「パーティ?」

「うん、冒険者と言っても一人じゃ大したこと出来ないんだよ。だから、基本はパーティを組むんだって。お父さんも昔はパーティを組んでいたらしいよ。」

「そうなんだ・・・それで、どうして僕とパーティを組むことになるの?」

「だって、パーティなら仲間だよ」

「・・・・・・・・・・・うん?」

 

 

何を言いたいのか理解できないという顔でクオンは頭を捻る。

もうっ、察しが悪いなぁ。

 

 

「仲間の復讐は私の復讐だもん!協力して当たり前でしょ」

「・・・・いやいや」

 

 

今度は呆れた顔で手を顔の前で左右に振るクオン。

何かおかしなこと言った?

 

 

「結局、僕が君を巻き込んでいるし」

「いいじゃん、巻き込んでよ。私はクオンの手伝いをしたいんだよ」

「なんでそこまで・・・」

「だって、クオンに死んでほしくないし・・・今日みたいにまたお話ししたいし・・・」

「っ!?」

 

 

正直な気持ちを言うと、クオンは顔を真っ赤にする。

自分でも恥ずかしいこと言ってるのは理解しているのだからあからさまに引かないでほしいよ。

 

 

「ほう、わが娘ながらなかなかいい殺し文句だな」

 

 

いきなり、聞きなれた声がして私の心臓は飛び跳ねる。

 

 

「お父さん!?」

 

 

そう、お父さんがいつの間にか庭にいたのだ。

 

 

「って、殺し文句ってなんで私がクオンを殺さないといけないのさ!むしろ生きててほしいって言ってるのに!」

「いや、だから、それが殺し文句・・・いや、わかってないな娘よ・・・・」

 

 

お父さんは真っ赤になっているクオンをなぜか憐れむように目で見た。

そして、今度はニヤリと口の端を上げて話し出す。

 

 

「ふむ、だが、カモメの相棒になるということは家族も同然だな。ならば、クオンの家族の仇は我々の仇というわけだ」

「そうだよ!クオンのお父さんとお母さんは私にとってもお父さんとお母さんだよ!」

「っ!?!?!?」

 

 

私とお父さんの言葉に驚き、何か言おうとしたクオンが私の言葉でさっきよりさらに赤くなる・・・・なにゆえ?

そして、その様子を見て口に手をやり肩を震わせ笑いをこらえているお父さん。

 

 

「だから、クオン。一緒に冒険者になろう」

 

 

私はクオンに近づき手を取りながら言う。

クオンはさらに赤くなりながら慌てていた。

 

 

「苦労するな、少年」

 

 

お父さんは一体何を言っているのだろう?

クオンは顔を赤くしながらまだ迷っているようだった。だが、ここまで来たらもうクオンを逃がす気は私にはない。

よく考えてみたら、私と同じ歳くらいでダイアーウルフ7匹を倒せる実力なのだ。この上ない有望株じゃん。そんなクオンが相棒ならとっても心強いのだ。

 

 

「じゃ、決定だね、明日一緒に冒険者登録に行こう♪」

「・・・・え!?」

 

 

クオンに有無を言わさず決定にした私。

それに驚くクオン、無理もない。これは私も強引だなと思うがさっきも言った通り

もう相棒にすることを決定した私は逃がす気がない。

 

 

「僕はまだ、冒険者になるって言っては・・・」

「もう逃がさないよ、クオンは『ずっと』私と冒険者やるの♪」

「ぶふぉ!!」

 

 

私の言葉にクオンはまたも真っ赤になる。そしてその横でお父さんは盛大に吹き出していた。

 

 

「私からは逃げられないんだよ!」

 

 

そう言い放つ私に、クオンは顔を赤くしたまま茫然としていた。

もう、何を言っていいのか分からないといった顔だ。

明日、少し強引でも冒険者登録をさせてしまおう・・・そうすればこっちのものだ。私はあくどい顔をしながらそう考えるのだった。

 

・・・・・お父さんはまだ、笑っていた。

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