闇の魔女と呼ばないで!   作:遙かなた

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大臣ゴリアテ

再びギルドへとやってきた私たち、そこでふと疑問に思うことがあるので口にしてみた。

 

 

「ねえ、なんでエリンシアも一緒に来てるの?情報なら後で報告するよ?」

「あら、ワタクシが報告を待っているだけの筈がありませんわ」

「え、どういうこと?」

「ウチに手を出したおマヌケな盗賊さん達を懲らしめなければ気が済みませんもの」

「え・・・もしかして、盗賊退治にも一緒に来る気?」

「もちろんですわ!」

 

 

腕を組みながらしたり顔で言うエリンシア。

いや、いくら何でもそれは無理なんじゃ・・・。

 

 

「それはさすがに危ないよ・・・お父さんも駄目っていうんじゃないかな」

「そうだね、まだ子供のエリンシアを連れて行くわけにはいかないよ」

「あら、子供というならお二人も私と変わらないと思いますけれど?」

「う・・・そうだけど、私とクオンは戦いなれてるし」

「うん、それに登録したばかりとは言え、僕らは冒険者だ」

 

 

早速冒険者という言葉を使うクオン、簡単に名乗ってくれることで嫌々冒険者になったわけじゃないってのが分かってちょっとうれしい。

 

 

「あら、それならワタクシだっていずれ冒険者になりますわ」

「いずれであって、今なっているわけじゃないだろう?それに、僕らと違って君は戦えないだろうし」

「お~っほっほっほ、見くびってもらっては困りますわね!ワタクシちゃんと戦えましてよ?」

「え、でも、あんまり体鍛えてるようには見えないけど・・・」

「失礼ですわね、これでもちゃんと鍛えておりますわ。それにワタクシは魔導銃を使えますの」

「魔導銃?」

 

 

魔導銃って何だろう。銃って言ったら鉄の弾を出す武器だけど・・・かなり高価な物だからそうそう使う人がいないと有名だ。

威力も魔法よりは弱いしね。

でも、魔導銃ってことは魔力を通すことで威力が上がるのかな?私のバトーネみたいに。

 

 

「魔導銃は魔力を弾にして打ち出すことが出来ますの」

「へえ、なら魔力がある限り撃つことができるんだ?」

「弾を補充する必要がないのはいいけど、それが使えたからと言って連れて行くというわけには・・・」

「頑固ですわね・・・ですが、ワタクシは依頼主ですわ、冒険者なら依頼主の言う事は聞かないといけないのではありません事?」

 

 

痛いところをついてくる。だけど冒険者だって依頼をキャンセルすることはできるのだ。あまりわがままを言う依頼主の言う事を絶対聞かないといけないわけではない。

まあ、今回はそこまでエリンシアがわがままだというわけではないけど・・・自分の所の従業員を殺されているんだし、自分の手で報復したいとは思うよね。

でもやっぱり危険だし・・・どうしよう。

 

 

「とりあえず、僕らじゃ判断できないからヴィクトールさんに任せよう」

「そうだね、お父さん次第ってことで」

「わかりましたわ、ではとりあえず、カウンターに行きましょうですわ」

 

 

私達はカウンターのヴァネッサのもとに行く。

ヴァネッサは私たちを見ると笑顔で迎えてくれた。

 

 

「そのご様子ですと依頼はカモメ様たちに決定でよろしいですか?」

「ええ、その通りですわ、まだ、大して時間はたっておりませんけど募集は終了してくださいませ」

「かしこまりました」

「それで、ヴァネッサさん、少しお聞きしたいのですがいいでしょうか?」

 

 

クオンは早速、本題に入った。

 

 

「はい、どうされました?」

「実は、グラシアール商会を襲った盗賊の事なんですけど」

「紅の牙ですね」

「ええ、その紅の牙がグラシアール商会を襲ったっていうのは誰が知らせたんですか?」

「誰が・・・ですか?確か、グラシアール商会のヘインズさんという方でしたが」

「ヘインズ!」

 

 

ギルドに情報を流したのもヘインズという男だった。

詳しく聞いたところその報告を受けたギルド職員がそのヘインズの容姿を覚えていた。クオンの証言と同じで金色の長髪、眼鏡を掛けた優男だったらしい。

となると、ヘインズという男を探しださないといけないけど・・・その容姿だけで探すのは難しいよね。

 

 

「あの方がどうかされたのですか?」

「実は・・・」

「カモメ!」

 

 

私が、事情を話そうとするとクオンがそれを止める。

一瞬何事と思ったけど、そうだ、ギルドに話すことで盗賊もしくはヘインズに伝わってしまう可能性がある。

 

 

「ううん、ちょっと確認したかっただけだからなんでもないよ」

「そうですか、では依頼の方頑張ってくださいね」

「うん、ありがと」

 

 

そう言って私たちはギルドを後にした。

ギルドを出た後、私たちは大通りを歩く。

 

 

「どうしようか?結局何の手がかりもないんだよね?」

「うん、ヘインズさんが何者かもわからないし、盗賊の居場所もわからない、やっぱり地道に盗賊のいそうな場所を探して回るしかないかな?」

「それでは何日掛かるかわかりませんわね」

 

 

そう、王都は広い、しかも盗賊が王都の中にアジトを構えてるわけがない。となると王都の外、特に森や山、洞窟などをしらみつぶしに探すとなるとホント、どれだけ時間が掛かるやら・・・。しかもその間に盗賊が別の場所に移動してしまう可能性の方が高い・・・困ったね。

私達がこれからどうするかと話しながら歩いていると前の方から豪華な馬車が近づいてくる。

明らかにお金持ちのお偉いさんが乗っているのだろう、馬車の周りには騎士であろうか鎧に身を包んだ人たちが馬車を警護していた。

堂々と道の真ん中を走るその馬車に、街の人たちは道の脇へ避けて行く。なんというか迷惑だなぁ。今居るのは王都のメイン通りでかなりの広さがある。

普通であれば馬車が通ったくらいでこうも人が避けなければいないほど幅をとることはないのだが、今来る馬車の周りには鎧に身を纏った男たちがその馬車を囲んでいる為かなりの幅をとるのだ。

その為、人は必要以上に避けなければならない。何処のお偉いさんか知らないけど、ほんと迷惑だ。

そんなことを思っていると一人の少女が持っていたリンゴを転がしてしまい、馬車の前に飛び出し、ちょうど鎧を着た人たちの前で転んでしまう。

目の前に少女が現れたことで鎧を着ていた男たちが立ち止まり、その男たちで前をふさがれたことにより馬も止まる。

不運なことに、結果的に少女は馬車を止めてしまった。

 

 

「大丈夫か?」

「う、うん」

 

 

鎧の男が目の前で倒れた少女に手を伸ばし立ち上がらせる。

服に着いた汚れをはたいてあげ、転がったリンゴを少女に渡してあげた。

なんとも微笑ましい光景に私の口元は緩む、その時・・・

 

 

「一体、なんじゃ!なんで止まったのじゃ!」

 

 

後ろの馬車からちょび髭を生やした小太りの男が降りてくる。

 

 

「申し訳ありません、ゴリアテ様。少女が転んでしまったもので」

「なんじゃと?」

「ひっ」

 

 

如何にも腹立たしいといった顔で少女を睨むゴリアテ。

ゴリアテ・・・そうだ、確か大臣がそんな名前だった。ってことはあの人が大臣?

 

 

「貴様らはワシの護衛の兵士だろう!それなのにこんなガキが転んだくらいでワシの馬車を止めるなど・・・どういうつもりじゃ!」

「で、ですが・・・」

「このガキが暗殺者だったらどうするつもりじゃ!馬車を止めワシを外に出す企てかもしらんじゃろうが!」

「いえ、さすがにそれは・・・」

 

 

少女の年齢は8歳くらいだろうか?あんなに小さな暗殺者がいるかもっていくらなんでも・・・まあ、実際にいたとかいうことを聞いたことあるけど・・・それでも。

 

 

「貴様らはワシの馬車の邪魔になる者を排除するのも仕事だろう!なら、そのガキが馬車の前に出て来たなら蹴り飛ばしてどけるくらいせんか!」

「そんなこと!?」

「なんじゃ・・・ワシに逆らうのか?」

「い、いえ・・・ですが」

「ラインハルトといい騎士は身分をわきまえん奴が多い!貴様が職務を全うできないというのであれば騎士団すべての責任とさせてもらうがいいのか?」

「そんなっ・・・」

「わかったらそこのガキを蹴り飛ばしてどけよ!モタモタするな!」

「・・・・・・出来ません!自分にはそのような非道な真似はできません!」

「なんじゃと・・・?」

 

 

騎士を睨む大臣、騎士さんよく言った!そんな大臣の言う事聞くことないよ!

私が心の中で騎士を褒めていると、大臣が動き出した。

 

 

「もうよい、貴様の事は後で報告させてもらおう」

 

 

そう言って、騎士の横を通り過ぎる大臣、そしてそのまま少女に近づき。

 

 

「きゃっ!」

「なっ!?」

 

 

少女を蹴り飛ばした。

 

 

「平民がワシの道をふさぐとは何事か!!分を弁えろ!」

「な、なんてことを!」

 

 

大臣はさらに持っていた杖を振りかぶり少女を殴りつけようとする。

その瞬間私は走り出していた。いくら何でも酷すぎる!

私は少女と大臣の間に入り、振り下ろされた杖を右腕で受け止めた。

さすがに大人の力で振り下ろされた杖を右腕で受け止めるとかなり痛い、だがバトーネを出す暇がなかったので仕方ない。

私は右腕の痛みに顔を歪めながら大臣を睨んだ。

 

 

「いくら何でもこんな小さな子暴力を振るうなんてどうかしてるよ!」

 

 

私は倒れている少女の様子を見る。

 

 

「大丈夫?」

「・・・うん」

 

 

蹴られたときに地面に擦ったのか少女の頬には擦り傷が出来ていた。

だが、それ以外は特に問題なさそうだったのでひとまず安心をする。

 

 

「なんじゃ・・・またガキか・・・身分を弁えぬガキが多すぎる。これもラインハルトが民と心を通わせるためと城下の警邏といいつつ街でさぼっているからじゃ!」

「そんな!団長は本当に国民の為を思って!」

 

 

騎士が大臣に異を唱える。

ラインハルトという人はいい人っぽいね。

 

 

「ええい、黙れ!戯言ばかり言いおって!国は納める者を民が崇めておればいいのじゃ!心を通わせる必要などない!これ以上ワシに楯突くなら貴様らの団長に責任を取ってもらおう!」

「そ、そんな!」

 

 

なんて横暴な人だろう・・・。

 

 

「最低・・・こんな人が大臣なの・・・?」

「なんじゃと?」

 

 

私の言葉が聞こえたのかいかにも不機嫌という顔をして近寄ってくる大臣。

持っている杖を強く握りしめ、明らかに私に危害を加えようとしているのが分かる。

私は先ほど蹴られた少女を腕の中に抱いている、この状況で何かされたらこの子までさらにひどい目に合うかもしれない。

どうしよう・・・さすがに魔法で吹っ飛ばしたりしたらまずいかな?・・・まずいよねと悩んでいると私の前に影が立つ。

クオンとエリンシアが私の前に立ち大臣との間に立ってくれているのだ。

 

 

「あら、一国の大臣ともあろう方が随分と器の小さいことですわね」

「なんじゃと!!」

「お~っほっほ、耳も悪いみたいですわね!それとも言葉が理解できないんですの?」

「貴様・・・誰に向かって口を聞いておる!」

「あら?ワタクシちゃ~んと『大臣ともあろう方』と言いましたわよね?」

「うん、間違いなく言っていたね。大臣は歳でボケ始めてるのかもしれない」

 

 

エリンシアの言葉にやれやれと首を振りながら答えるクオン。

 

 

「なるほど、それなら仕方ありませんわね。お~っほっほっほ!」

「ふ、二人とも・・・?」

 

 

いきなり大臣を煽りだす二人に私は戸惑う。

 

 

「むきぃいいいい!貴様ら!こやつらを捕らえよ!!」

「はっ・・・え?」

「何をしておる!こやつらはこの国の大臣であるワシを馬鹿にしたんじゃぞ!罪人じゃ!捕らえて死刑にせよ!」

 

 

死刑ってただ馬鹿にされただけで死刑なの!?

そんなのいくら大臣でもできるわけ・・・まさかできないよね?

二人が死刑なんて嫌だよ!?

 

 

「捕らえたいなら自分で捕らえればいいと思いますが?それとも小さなまるごしの子供相手に暴力は振るえても、武器を持つ子供には怖くてなにもできないんですか?」

 

 

そう言いながら腰につけている剣をくいっと持ち上げる。

その仕草に一瞬たじろぐ大臣、どうやら本当に武器を持っているというだけで警戒されているようだ。

私の武器のバトーネは魔力を流さなければただの筒だ、見た目では武器とは思われないからさっきまで強気だったんだね。

 

 

「そもそも、馬鹿にしただけで捕まるんでしたら、あなたが一番に捕まるんじゃありません?」

「ば、ばばば馬鹿にしおってえええ!大臣であるワシが貴様らを馬鹿にするのと平民である貴様らごときがワシを馬鹿にするのを一緒にするな!!」

 

 

大臣が顔を真っ赤にして汽車のように湯気を出しながら地団駄を踏んでいる。

ふ、二人ともよっぽど頭に来ているのか容赦がない・・・。

 

 

「平民ですか?申し訳ありませんが僕はこれでも貴族の生まれです。まあ、家族は他界していますし領地は譲ってしまったので名前だけの貴族ですが」

「ワタクシは言わずと知れたグラシアール商会の娘ですわよ?大臣ともあろう方がこの国一の大商会の娘を知らないなんてお勉強が足りないんじゃありません?」

 

 

クオンって貴族だったんだ・・・びっくり。

だから紅茶を飲む姿も様になっていたんだね。

そしてエリンシア・・・大商会の娘でも平民は平民だからね・・・というか大臣より偉そうだよこの子。

 

 

「貴族だと?ならば、ワシに従わぬか!貴族の位を剥奪されたいのか!」

「構いません、特に未練はありませんから」

「なんじゃと!?」

「貴族の身分だけでは大切なものは守れません。あって困る物ではないですが貴方のように身分を振りかざして他者を踏みにじるのが貴族というのなら僕には必要ありません」

「ぐぬぬぬぬ・・・」

 

 

さっすがクオン!いいこと言う!

そして、触れられもしないエリンシアが頬を膨らませている。

もしかして、大臣グラシアール商会自体知らないんじゃない?大臣なら自分の国の有名店くらい知っておこうよ・・・。

 

 

「お主等の顔しかと覚えたぞ・・・わしに歯向かったこと後悔するがよい・・・行くぞ!」

 

 

そう言って大臣は馬車に戻って城に向かって走り出した。

護衛の兵士たちがこちらに申し訳なさそうに頭を下げながらそれに追随する。

兵士さん達も大変だ・・・。

しっかし、あんなのが大臣だなんて・・・グランルーン王国の未来が不安だよ・・・。

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