海賊マスターに俺はなる!   作:ことのはだいり

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第3話 VS パール

「もう魚飽きたー!」

 

 ある日の昼食時、コーラルが駄々をこね出した。

 ラプラス号の備蓄を食べ終えてしまったマシロとコーラルの食事は連日のように海から穫れる魚料理続きだった。

 

「野菜もあるだろ。倒した海賊の船に残ってたやつ」

 

 ひとのものを盗るのが海賊なのだから、海賊船の積み荷は基本的に全て略奪品だ。

 それを奪っては海賊と同じになってしまうからと多少の金品を見つけても手を出さず、元の持ち主への追悼を兼ねて船ごと海に沈めているマシロだが、野菜と果物だけは自身の栄養管理の都合で拝借させてもらっている。

 ただし海賊の食性は肉食寄りなようで、海賊船で野菜を見かけることは珍しく、甘い物が嫌いなのか果物はもっと珍しい。

 

「苦いのやなんだよ!」

 

「食べないと壊血病っていう怖い病気にかかっちゃうんだぞ」

 

 干し肉のような保存食ばかりを食べて植物性栄養が不足しがちな船乗りがかかる壊血病という病気があることを、マシロは昔オーキッドに教わった。

 

「病気だぁ? どうせ死なねぇんだろ」

 

「それもそっか」

 

 貴重な食料なのだから無理に食わせる必要もないかとマシロは納得した。

 

「コーラルはステーキが食いてぇんだよ! それかロブスター! どっかにレストランとかねえのか!?」

 

「こんな海の真ん中であるわけ……」

 

「あった!」

 

「え!?」

 

 コーラルが指差した方角を望遠鏡で確認すると、そこには確かにレストランと外壁に書かれた変な船が浮かんでいる。

 その船の船首は魚の頭を模していて、大口を開けた間抜け面が滑稽だ。

 それだけならば海賊の偽装の可能性もあるが、その船には明らかに一般人と分かる人たちの出入りがあるので、おそらく本当にレストランなのだろう。

 

「レストラン・バラティエ……ほんとにレストランみたいだ。コーラル、視力高いね」

 

 コーラルは肉眼で文字を読めていたが、マシロは望遠鏡がなければ船があることは分かっても文字までは判別できなかった。

 

「下々民とはものが違うんだよ! んなことより行こうぜ!」

 

 実はコーラルと同じように魚に飽きていたマシロはレストランに寄ることを止めなかった。

 

「いらっしゃいませイカ野郎」

 

「あ゙?」

 

 レストランの船着き場にラプラス号を停泊させると同時に店内に駆け込んだコーラルを出迎えたのは厳つい顔で不気味な笑顔を作った男の喧嘩を売っているとしか思えない挨拶だった。

 

「死んだぞテメェ!」

 

「よせコーラル」

 

 無礼者に電撃を放とうとしたコーラルを後から追いついてきたマシロが止めた。

 

「ここはレストランですよね?」

 

「へい。おととい来てください」

 

 キメ顔で親指を立てながら帰れと言われたマシロは食事を諦めた。

 

「コーラル、行くぞ」

 

「は? おい、食事は……」

 

「わあああああ! 馬鹿野郎パティ! お待ちくださいお客様ぁ! ただいまお席にご案内しまーす!」

 

 サングラスをかけた人相の悪い男が店を出ようとするマシロを慌てて引き留めた。

 

「ちっ……最初っからお前が対応しろよな!」

 

「すみませんねぇ。人手不足なもんで。こちら、メニュー表になります」

 

 一悶着あったが無事に席まで案内されたマシロとコーラルはメニュー表を開いた。

 

「わぁ……高い」

 

「んだよ、安モンばっかじゃねぇか」

 

 二人の金銭感覚には天と地ほどの違いがあった。

 

「うぅ……でもせっかく来たから……」

 

「まぁ、他に食うモンねぇしな。しゃあねぇ」

 

 どうあれ店に入ったからにはあるものを注文するしかない。

 マシロは控え目な値段の料理を、コーラルはメニューの中で最も高い料理をそれぞれ注文した。

 

「かしこまりました」

 

「ヘボイモおそれいりますがお客様ぁ! 代金はお持ちで!?」

 

「おいパティ!」

 

「黙ってろカルネ! 大事なことだ!」

 

 マシロはともかくコーラルが注文した料理は子供に払えるとは思えない値段だったので、不安に思ったらしい無礼な店員の男が割り込んできて二人の支払い能力を尋ねた。

 ちなみに無礼な店員はパティで、サングラスの店員はカルネというらしい。

 

「コーラル」

 

「ほらよ。必要なだけ持ってきな」

 

 コーラルがテープで纏められた分厚い札束を投げた。

 ラプラス号にはコーラルが持ち込んだ現金が大量に残されていて、嘘をつくなと命令した上でマシロが確認すると他人から略奪したものではないとコーラルが言ったので、こうして二人の生活費として使われている。

 

「いっ!? 一万……いや、百万ベリー入りましたぁ! ザマありませーん!」

 

「いやおつりは返してよ」

 

 無事におつりも返却されて、マシロとコーラルは料理の完成を待つ。

 

「ん? なんだよそれ」

 

「新聞に挟まってた海賊の手配書」

 

 マシロは料理が到着していない空のテーブルに何枚もの紙を置いていった。

 それらは海賊の手配書で、賞金首の顔写真と、その賞金額が記載されている。

 

「よし、次はこいつを狙おう」

 

 しばらく手配書を眺めていたマシロがその中の一枚を手に取った。

 

「コーラルにも見せろ」

 

 どうせマシロが標的に決めた海賊と戦うのは自分なのだから、顔ぐらいは見ておこうとコーラルは手配書に手を伸ばした。

 

「うおっ!? こいつ魚人じゃねえか! 世界一醜い種族! なんでこんな奴選ぶんだ!?」

 

 その手配書に書かれた懸賞金2000万ベリーの海賊は、ギザギザで長い鼻と青い肌が特徴的な、普通の人間とはかけ離れた外見の男だった。

 ノコギリの異名を持つその男の名はアーロン。

 ノコギリザメの魚人だ。

 

「この前の戦いを見ていて思ったんだよ。やっぱり海に落ちた時の対策は用意しておいた方がいいって」

 

 オーキッドによると魚人は水中でも呼吸ができるという話だった。

 だから魚人の下僕がいれば万が一マシロが海の底に沈んでも救助させられると考えたのだ。

 

「コーラルはこんな奴に抱きかかえられるなんて絶対ヤだぞ!」

 

「助けてもらうのは俺だけだよ」

 

「ラプラスの中でも出すなよ。船内が生臭くなっちまう」

 

「言われなくても部屋が狭くなるから出さないよ。シャムとブチも普段は出してないだろ」

 

 捕獲した時には知らなかった二人の名前を、指示を出す時に困らないようにとマシロは少し前に聞き出しておいた。

 

「そういえば、二人にも何か食べさせた方がいいかな?」

 

「いらねぇよ。お前のボールの中にいた時は腹減らなかったぞ」

 

 ちなみに排泄も止まっていた。

 久しぶりにボールから出したら糞尿まみれだった、という事態は起きないようになっているのだ。

 

「じゃあいっか」

 

「へいお待ちぃ!」

 

 お喋りをしている間に料理が完成したようで、パティがレストランではなく居酒屋のようなかけ声と共に料理を並べていった。

 口調は乱暴だったが、料理がこぼれる勢いで皿を叩きつけることはなかった。

 

「はーん……匂いはいいじゃん」

 

「おいしそう……いただきます。ほら、コーラルも」

 

「へいへい……いただきます」

 

 何かを食べる時は食材となった命と、作ってくれた料理人への感謝を込めて、手を合わせながらいただきますと言わなければならない。

 オーキッドにそう教わったマシロはもちろん、マシロに日頃から強要されているコーラルも、しっかりいただきますと言ってから料理を口に運んだ。

 

「おいしいっ!」

 

「うめぇなおい! 安モンなのに!」

 

 レストラン・バラティエの料理は非常に美味で、マシロのみならず高級食品だけで作られた料理を日常的に食べていたコーラルの舌さえも唸らせた。

 

「おいマシロ! ここの料理人捕まえてこうぜ!」

 

「バカ言うな。俺が捕まえるのは海賊だけだ」

 

 途中でコーラルが不穏な発言をしたが、マシロに一蹴されたので問題にならなかった。

 それからは二人とも夢中で料理を食べ進めて、デザートまで残さずしっかり完食した。

 

「ごちそうさまでした!」

 

「ごちそうさん! あ〜、うまかった〜。今日はもう何もしないでこのまま寝てぇ〜」

 

「食べた後すぐに寝ると豚みたいに太るんだぞ。運動がてらそこらの海賊を倒しに行こうぜ」

 

「戦わないマシロは運動になんねぇじゃん……」

 

 不満があってもコーラルはマシロに逆らえない。

 マシロに続いてコーラルも席を立ち、出口に向かおうとした……その時である。

 

「ハーッハッハッハッハ! 戻ってきたぞ!」

 

 両手、両肘、両膝、腹……身体の至る所に金属製の円盾を張り付けた変な男が店に入ってきた。

 

「あいつは!」

 

「クリーク海賊団の盾男! 懲りずにまた来やがったのか!」

 

「海賊!」

 

「おっ……羽虫が自分から火に飛び込んできやがった」

 

 パティとカルネはどうやら盾男と因縁があるようだ。

 マシロたちは知る由もないことだが、このバラティエは少し前にクリークという男が率いる海賊団に襲撃された。

 その時にパティとカルネはパールに殴り飛ばされてノックアウトされたのだ。

 

「違うぞ君ぃ! 今の俺はパール海賊団船長のパールだ!」

 

 バラティエを襲撃したクリーク海賊団は偶然居合わせた別の海賊によって返り討ちに遭い、全船員を小舟に乗せて敗走した。

 定員を大幅に超過していた小舟は高波で揺れるたびに船員を振り落とす有様で、パールも海に落下して、海流に流されて小舟に戻れなかった。

 そこでパールは気を取り直してクリーク海賊団から独立することを決め、船を手に入れるためにかろうじて泳いで戻れる場所にあると分かっていたバラティエに襲来したのだ。

 

「お前ら! 客を避難させろ!」

 

「見た目は間抜けだが、俺たちじゃあいつには勝てねぇ! 海軍に通報しろぉ!」

 

「ハッハッハッハ! 逃げるというならそうしたまえ。この船さえ残してくれればそれでいい」

 

 パティとカルネは今のバラティエにパールを倒せる者がいないと冷静に判断し、海賊を取り締まる海軍を頼ろうとしていた。

 客も店員も慌ただしく動き始める一方で、マシロとコーラルだけが落ち着いていた。

 

「おーおー……どいつもこいつも慌てふためいてやがらぁ。で? やんだろ?」

 

「もちろん」

 

「よっしゃあ! 一発で終わらせてやらぁ!」

 

 満腹になって元気が有り余っているコーラルはいつも以上にやる気があった。

 

「待て」

 

「あ?」

 

「今回はこいつらにやらせる。行け! シャム! ブチ!」

 

 しかしパールを捕獲したいマシロはコーラルではなくシャムとブチに戦わせることにした。

 

「お呼びで、コマンダー・マシロ」

 

「お呼びで」

 

 ボールから出てきたシャムとブチがマシロの前に着地し、パールと相対した。

 この二人はコーラルと違ってマシロに反抗的な態度を取る様子はない。

 捕獲後にボルボルの実の能力についてしっかり説明を受けた二人は、逆らえないならせめて少しでも待遇を良くしてもらおうと考えて、ネコをかぶって態度を取り繕うことにしたのだ。

 ちなみにコーラルのように常にボールの外に出してもらえるようになるのが当面の目標である。

 

「なんだ!? 変な球から人間が出てきたぞ!?」

 

「まさかあの坊やも能力者か!?」

 

「俺はボルボルの実のボール人間! 監獄ボールで海賊を捕まえて従わせられる! シャム。ブチ。あの盾男を瀕死に追い込め」

 

 驚いて大声を上げたパティとカルネの疑問を律儀に解消させてから、マシロがシャムとブチに指示を出した。

 

「えぇ!? ぼくらには無理っすよ!」

 

「あいつの顔には見覚えがあります! この東の海で最強と名高いクリーク海賊団の部隊長だ! 勝てるわけがない!」

 

「君たち……茶番はやめたまえ」

 

 ふいうちのためにネコをかぶるシャムとブチをパールは冷ややかな目で油断なく見ていた。

 

「俺も君たちの顔は知っている。クロネコ海賊団のニャーバン・ブラザーズ……懸賞金アベレージが300万程度と言われるこの東の海で、二人セットでとはいえ船長でもないのに700万ベリーの賞金をかけられた猛者だ。そんな下手な演技を見せられたところで油断できるはずがないだろう」

 

「700万ベリーだとぉ!?」

 

「あの坊や、なんでそんな奴ら連れ歩いてんだよ!?」

 

 700万ベリーの賞金首と聞いた観衆たちがざわついた。

 最弱の海と呼ばれるこの東の海においては、賞金がかかっているというだけでも海賊の上澄みなのに、700万の首ともなると怪物以外の何者でもない。

 

「ちっ……なら仕方ねぇな」

 

「普通にぶっ倒してやるよ! 行くぜシャム!」

 

「おう! ネコ柳大行進!」

 

 シャムとブチが手袋に付いた金属の爪でパールを正面からひっかこうとした。

 

「シャシャシャシャシャ!」

 

「無駄だ!」

 

 連続して放たれるそれはいわばみだれひっかきとでも呼ぶべき攻撃で、一般人が受ければズタズタに引き裂かれる威力だったが、パールは全身に装備した盾でその全てを防いでみせた。

 

「てっぺき! よって無敵!」

 

「ぐわぁ!」

 

 パールが手に装備した盾をシャムとブチに叩きつけた。

 カウンター気味に攻撃を受けたシャムとブチは弾き飛ばされたが、ネコのように軽やかに着地した。

 

「ちぃ……やるじゃねぇか」

 

「ハッハッハッハ! そういう君たちこそ、俺のパールプレゼントをくらって倒れないとはな! さすがは高額賞金首だ!」

 

 強さが拮抗している男たちは互いの力量を認め合った。

 そんな様子をコーラルはつまらなそうに眺めていた。

 

「なんつーレベルの低い戦いだよ……」

 

 自分ならば盾を無視して電撃で簡単に倒せると確信しているコーラルにしてみれば、目の前の戦いは子供の喧嘩みたいなものだ。

 

「なんて激しい戦いなんだ!」

 

「これが700万……! 速すぎて動きが見えねぇ!」

 

「それを防ぎきったあの盾男の防御力もすげぇ! 絶対捕まえてやるぜ!」

 

 その一方で戦闘能力がない一般人たちと、本人の戦闘能力そのものは一般人と大差ないマシロは目を輝かせて戦いの行方を見守っていた。

 

「シャム! あの盾をはがしてくれ!」

 

「おう!」

 

「だから無敵だと……何!?」

 

 シャムはパールを再びひっかくように見せかけて、防ごうとしたパールの隙を突き、肩と膝の盾をネコババした。

 

「まずは予備を奪っとかねぇとなあ! でもって次は手に持ってるやつだ!」

 

 奪った盾を背後に投げ捨てたシャムはパールが両手に持っている盾を掴んだ。

 

「この……! そんなに欲しければくれてやる!」

 

 パールはシャムのひっぱる力に逆らわず、二つの盾を前に出してシャムの頭を挟み込んだ。

 

「パールクローズ!」

 

「ぷぎゃっ」

 

 頭蓋を潰されたシャムは倒れ、自動でマシロのボールに吸い込まれた。

 

「ハーッハッハッハッハ! 戦力半減だなぁ! ……ん? もうひとりはどこに……」

 

「ここさ」

 

 シャムが正面からパールを引きつけていた間に、ブチはパールの頭上を飛び越えてその背後に着地していた。

 

「猫殺!」

 

「しまっ……!」

 

 本来は背中にも大盾を装備しているパールだが、この前のバラティエでの闘いで盾を一枚破壊されてしまったため、正面と背後のどちらか一方しか盾で守れなくなっていた。

 そして戦闘は敵と向き合って行うものだからとパールは正面を守る選択をしてしまい、今こうしてブチに無防備な背中を晒す事態に陥ったのだ。

 

「キャット・ザ・フンジャッタ!」

 

「ぐぼぁ!」

 

 ブチに背中を踏みつけられたパールはブチの足と自身の頑丈な大盾に挟まれて潰された。

 パールの背骨は粉々になり、内臓もいくつか破裂して血を吐いた。

 

「今だ! 行け、監獄ボール!」

 

 瀕死のパールが絶命するよりも早く、マシロがボールを投げてパールを捕獲した。

 

「ブチ、こいつの名前何だっけ? 異名とか付いてる?」

 

「鉄壁のパールです」

 

「よし……鉄壁のパール、ゲットだぜ!」

 

 パールが入ったボールを掲げてマシロが勝利宣言をした。

 

「うおおおおお! あのおっかない海賊をやっつけちまった!」

 

「すげえぜ坊や! もしかして有名な賞金稼ぎとかか!?」

 

 闘いを見守っていた客たちや店員たちが歓声をあげてマシロに称賛を送った。

 

「へへ……」

 

 照れたマシロが鼻をこすった。

 

「ネコみたいなあんちゃんもやるなぁ!」

 

「へへ……」

 

 照れたブチが鼻をこすった。

 

「けっ……つまんねぇの」

 

 活躍の場がなかったコーラルが悪態をついた。

 

「うるせえな! 何の騒ぎだ!」

 

「あっ、オーナー・ゼフ!」

 

 上の階にいたバラティエのオーナーである右足に義足をつけた初老の男、ゼフが騒ぎを聞きつけて降りてきた。

 この海上レストラン・バラティエが海賊に襲われるのはよくあることで、普段は荒くれのコックたちだけで対処できてしまうため、少しうるさくした程度ではゼフもいちいち様子を見に来たりしない。

 しかし今回はマシロたちへの歓声があまりにも大きかったので、こうして姿を見せたのだ。

 

「聞いてくれよオーナー!」

 

「クリーク海賊団の盾男がまた襲ってきて、この坊やたちが倒してくれたんですよ!」

 

「ほぉ……」

 

 パールを倒したと聞いてゼフは感心した。

 わけあって荒事の経験が豊富なゼフの目から見てもパールは厄介な相手だった。

 

「そりゃあ礼を言わねえとな。あいつはうちの荒くれどもじゃ手に余る相手だった。ボウズ、うちの飯はもう食ったか?」

 

「はい。とてもおいしかったです」

 

 まだ食べていないのなら自ら腕を振るおうかと思っていたが、既に食後というなら別の礼にした方が良いだろうとゼフは考えた。

 

「長期間保存できる料理を作ってやるから持ち帰って食いな」

 

「いいんですか? ありがとうございます!」

 

「肉だ! 肉料理を多めによこせ! あとロブスター!」

 

「あの、コマンダー・マシロ……俺らの分は……」

 

「あっ、ブチはもう戻っていいよ」

 

 マシロは一切の慈悲なくブチをボールに戻した。

 温厚なマシロだが、海賊にかける慈悲はない。

 

「またなー! 坊やたちー!」

 

「おととい来てくださーい!」

 

 鉄壁のパールとたくさんの料理を手に入れたマシロは腕を組むゼフを中心に並び立った料理人たちに見送られてバラティエを出発した。

 

「ばいばーい!」

 

「気が向いたらまた来てやんよ!」

 

 世にも珍しい海上レストランと、粗暴だが腕のいい料理人たちに別れを告げて、マシロとコーラル、二人の旅はまだまだ続く!

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