海賊マスターに俺はなる!   作:ことのはだいり

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第5話 VS ユウ

 ローグタウン。

 そこはかつて海賊王ゴールド・ロジャーの死刑が執行された町。

 海賊王の命を奪った処刑台を観光名所として賑わうこの町は、日々人々の笑顔と活気に溢れている。

 

「……って話だったんだけど」

 

「人少ねぇし活気もねぇじゃん」

 

 通りを歩く人の姿はなく、開いている店も見当たらない。

 事前情報とは何もかもが違うローグタウンの様子を訝しみながらも、コーラルの希望で観光名所の処刑台を見物するべく、とりあえずマシロたちは町の中心部に向かった。

 

「……何これ」

 

「ぶっ壊れてんじゃねぇか」

 

 そこにあったのは黒焦げになって倒壊した処刑台だった。

 

「こりゃあれだな。雷が落ちたんだ」

 

 電撃による破壊の痕跡を見慣れていたコーラルは処刑台倒壊の原因を見抜いた。

 

「俺、博士に聞いたことある。雷は高いところに落ちるんだって」

 

「ま、そういうことなんじゃね? 町ん中も随分荒れてたし、嵐でも来たんだろ」

 

 コーラルは舌打ちしながら処刑台の残骸に背を向けた。

 

「行こうぜマシロ。もうここにゃいる意味がな……」

 

「きゃあああああ!」

 

「ごはぁ!?」

 

 肩越しにマシロに目を向けて、前を見ないで歩いていたコーラルに、正面から走ってきた誰かが衝突した。

 

「子供……?」

 

 それはマシロやコーラルよりも小さな女の子だった。

 

「君、大丈夫?」

 

 マシロは吹き飛んだコーラルを放置して見知らぬ女の子を助け起こした。

 

「おい! コーラルの心配もしろよ! ……つかなんでこいつコーラルに触れたんだ?」

 

「後にしろコーラル。海賊のお出ましだ」

 

 マシロは首を傾げるコーラルではなく女の子が走ってきた方角から姿を見せた明らかに海賊と分かる外見の武装した男たちに目を向けていた。

 

「ぎゃははははは! 追いかけっこは終わりかなぁ?」

 

「おい、ガキが二匹増えてるぜ」

 

「そりゃいい。まとめて捕まえて売っちまえ」

 

 マシロが海賊として認識しているその男たちは正確には人攫いと呼ぶべき存在だった。

 

「電気ショック」

 

「ギャアアアアア!」

 

 今のマシロの手持ち海賊は、シャム、ブチ、パール、チュウの四人で、どいつもこいつも子供を怖がらせてしまいそうな変な見た目の奴らだ。

 女の子に気を遣って他の海賊を出せずにコーラルだけで戦わせた結果、人攫いたちは処刑台と同じように黒焦げになって絶命した。

 

「また殺っちゃった……まあいいや。君、悪い奴らはもう追い払ったから安心していいよ」

 

「……ほんと?」

 

「ああ」

 

 子供に見せるものではないからとマシロは人攫いたちの死体を背後に隠し、絶命させたことにも言及しないでおいた。

 

「パパさんかママさんとははぐれちゃったの?」

 

 女の子はふるふると首を横に振った。

 

「ううん、おうちにいる」

 

「じゃあおうちまで送ってくよ。案内してくれるかな?」

 

「うん」

 

 女の子に道案内されてマシロたちはローグタウンの住宅街に向かった。

 

「コーラル! 電気ショック!」

 

「アビャアアアアア!」

 

「コーラル! 電気ショック!」

 

「ホゲエエエエエエ!」

 

 正確には人攫いや陸のギャングのような他職種も混じっていたが、道中に海賊と遭遇すること実に十回以上で、二桁から先は数えていない。

 全てコーラルの電撃で仕留めたものの、その遭遇頻度の高さにさすがのマシロも頭が痛くなった。

 

「グランドラインを目指す海賊のほとんどが処刑台を見るために立ち寄るって話だったし、そいつらを捕まえるために来たわけだけど……さすがに多すぎだって。この町絶対おかしいよ」

 

「おいチビ! この町の海軍は何してんだよ!? サボってんのか!?」

 

「ひっ……! わ、わかんないよぉ……」

 

 本来ならば海賊を取り締まる海軍がやっておくべき仕事をさんざん押し付けられたコーラルが苛立ちがこもった大声で問うと、女の子は泣き出してしまった。

 

「あーもううっせぇ!」

 

「おーよしよし。誰も怒ってないから泣かないで。コーラル! 泣かせるようなことするなよ!」

 

「ちょっと聞いただけじゃねえか!」

 

「ユウ! やっと見つけた!」

 

 女の子が泣き喚き、マシロとコーラルが言い合っていると、いつの間にか女の子の家に到着していたらしく玄関の前で待っていた女の子の母親が駆け寄ってきた。

 

「お母さん!」

 

 女の子……ユウが駆け出し、母親に抱き着いた。

 

「もう! 今は外に出ちゃダメって言ったじゃない!」

 

「ごめんなさい……でも、今日はアイスのお店が出る日だったから……」

 

「今はお店なんてやってないわ! ああ、でも……本当に無事で良かった!」

 

 娘を優しく撫でる母親の姿を見てマシロは微笑み、コーラルは親の目の前で子を惨殺して感動に打ち震えていた知人の姿を思い浮かべた。

 

「あの……あなたたちがユウを連れてきてくれたんですよね?」

 

 ユウが泣き止みひと息ついたところで、ユウの母親がマシロたちに話しかけた。

 

「あ、はい。処刑台の跡地で海賊に追われていたところに遭遇して」

 

「ありがとうございます! なんとお礼を言えばいいか……」

 

 マシロたちがユウと少ししか変わらない子供であることも忘れて、ユウの母親は何度も頭を下げた。

 

「いえ、どうか気にしないでください」

 

「つーか礼とかどうでもいいから教えろよ。この町何が起きてんだ?」

 

「それは……」

 

「ねえ、ママ。パパは?」

 

 コーラルの質問に答えようとした母親の言葉に割り込み、ユウが父親の行方を尋ねた。

 

「ああ、そうだわ! お父さんを呼び戻さないと……でもどうしましょう」

 

 どうやらユウの父親はユウを探しに出ているらしい。

 

「電伝虫とか持ってねえのかよ?」

 

 割り込まれたことに苛立ちを見せながら、どうせ止められるからと声を荒げることなくコーラルが連絡手段を提示した。

 電伝虫は特殊な念波を発して遠方の同種に音を届けられる生物で、人間に飼われた個体が通信手段として広く利用されている。

 

「あの、それはいったい……」

 

「あっ、俺知ってる! 確か殻がついたナメクジだよね? 本物は見たことないけど」

 

 マッサラ島に電伝虫は生息しておらず、マシロはオーキッドが描いた絵でしかその姿を知らなかった。

 

「それであってんよ。で、持ってねえの?」

 

 ちなみに見た目が気持ち悪いという理由でコーラルはラプラス号に電伝虫を持ち込まなかった。

 

「ごめんなさい、うちにはありません」

 

「ちっ、めんどくせえなぁ。おいマシロ、どうせコーラルたちで探そうって言うんだろ?」

 

 そろそろマシロの性格が掴めてきたコーラルは次の展開を予期していた。

 

「もちろん! 早くしないとなんかいっぱいいる海賊に襲われちゃうかもしれないだろ!」

 

「ならこうした方がはえーよ」

 

 コーラルは上空に向かって電撃を放った。

 ユウが「わ〜! ピカピカだ〜!」と喜び、電撃を放つ不思議な人間を見たユウの母親が驚いて腰を抜かした。

 

「コーラル? 何を……」

 

「自分ちの近くに雷が落ちたら普通心配して戻って来んだろ。家族が残ってんなら尚更な」

 

 コーラルの目論見は的中した。

 

「無事か!?」

 

「あなた!」

 

「あっ! パパだ!」

 

「ユウ!」

 

 息を切らして戻って来たユウの父親が妻と娘を抱き締めた。

 

「お〜、ほんとに戻って来た。コーラル頭いいね」

 

「当然だろ! 下々民とはデキがちげぇんだよ!」

 

 マシロが拍手を贈ると褒められたコーラルが得意げに平坦な胸を張った。

 

「あなた、この子たちがユウを見つけて連れてきてくれたのよ」

 

「そうだったのか……なんとお礼を言えばいいか……」

 

「あーもう! 夫婦揃っておんなじこと言いやがって! 礼はいいから情報よこせ! この町何が起きてんだよ!?」

 

 またしても頭を下げる大人たちに気の短いコーラルは文句を言った。

 

「君たちはこの町の子じゃないのか?」

 

 町の住民であれば知っているはずのことを知らないと言われて、ユウの父親はマシロたちが遠方から来たことを察した。

 

「そうだよ! 悪いか!?」

 

「俺たち船旅の途中で立ち寄ったんです」

 

「それは……外は危ないので、中で話しましょう。どうぞお入りください」

 

 屋外で立ち話をするのは疲れるので、ユウの父親に促されたマシロたちは言葉に甘えてユウの家にお邪魔した。

 

「今はどこも店が閉まっていて、こんなものしかありませんが……」

 

 ユウの母親が出してくれたのはカットされたリンゴだった。

 

「ありがとうございます」

 

「また果物か……クッキーとかねぇの?」

 

「ごめんなさい。甘い物はこれしか……」

 

「コーラル、いらないなら食べなくていいぞ。俺が食べるから。いただきます」

 

「食わねぇとは言ってねえだろ!? いただきます!」

 

 不満を垂れ流していたコーラルがせっかくのみかん以外の甘い物を奪われてたまるかと急いで手を合わせた。

 

「……焼いた方がうまそうだな」

 

 りんごをひと口かじったコーラルは、生で食べるよりも焼きりんごにした方がおいしくなると思い付き、りんごを掴んで手の中で電撃を放った。

 

「わっ! またピカピカ!」

 

「うわっ!? なんだ!?」

 

「心配しなくても大丈夫。コーラルは悪魔の実の能力者で、身体から電気を出せるんです。なっ、コーラル」

 

「おう。言っとくけどピカピカじゃねえからな。ピリピリの実だ」

 

 喜ぶユウと裏腹に困惑している様子の両親を見かねたマシロがコーラルの能力について説明してあげることにした。

 

「悪魔の実って……あのスモーカー大佐と同じ……」

 

 希少な悪魔の実の存在すら信じない人が多いこの世界で、ユウの一家は身近に悪魔の実の能力者がいた稀有な例だった。

 

「スモーカー大佐?」

 

「この町の守護神のような方でした。とても強く、そして優しい方で……あの方がいる間は、今が大海賊時代であることを忘れられた」

 

「その言い方なら、今はいねえってことか。死んだのか?」

 

「コ……」

 

「いえ、そうではないのです」

 

 コーラルの率直すぎる物言いをマシロは叱ろうとしたが、それよりも早くユウの父親がコーラルの予想を否定した。

 

「スモーカー大佐は転属になりました。この町に現れた懸賞金額3000万ベリーの凶悪な海賊を追いかけて、グランドラインに向かったんです」

 

「3000万!?」

 

 これまで懸賞金額1000万を超える海賊にさえ遭遇していないマシロは聞いたことのない高額賞金首がこの町に来ていたと知って仰天した。

 

「この辺でその額はまあまあ大物じゃん。ひと足遅かったなぁ、マシロ〜」

 

 どんな凶悪な海賊なのだろうと内心で怖がっているマシロの脇腹を怖いもの知らずのコーラルが肘で突いた。

 それで正気を取り戻したマシロは怯えを隠して話を進めることにした。

 

「つまり、そのスモーカーという海兵さんが野放しにできない凶悪な海賊を追いかけた結果、この町の戦力が不足しているんですね」

 

「はい。スモーカー大佐がいないというだけでまさかここまで海賊が増えるなんて……」

 

「海軍も人手不足だしな。そいつが抜けた穴を埋めるにしても、すぐにとはいかなかったんだろ」

 

 ユウの父親が険しい顔で頷いた。

 

「海軍が悪いわけではないのです。もちろん、スモーカー大佐が間違っていたわけでもない。ただ……時代がどうしようもなく悪かった」

 

「スモーカー大佐がいなくなってからというもの、彼を恐れて息を潜めていた悪人たちが水を得た魚のように昼夜問わず略奪を働くようになりました。最初は残っている海兵の皆さんでなんとかこの町を守ってくれたのですが……海から絶え間なく押し寄せる海賊たちの前に傷つき、力尽きてしまいました」

 

「ママ……」

 

 暗い顔の母親に抱き締められたユウが不安そうな顔で母親を見上げた。

 

「今の私たちにできることは家に閉じ籠もって嵐が過ぎ去るのを待つことだけです。ですがそれは、幼いこの子には大変な苦痛だったのでしょう」

 

「学校が休校となって友達とも会えず、大好きなアイスの店にも行けず……ごめんな、ユウ。我慢ばっかりさせちゃって。辛かっただろう」

 

「ううん……私こそごめんなさい。外が危ないってこと、もうちゃんとわかったから」

 

 罪のない家族が静かに涙を流している。

 そしてその原因は海賊だ。

 

「コーラル」

 

「おう」

 

 ならばマシロがやることは決まっている。

 

「行くぜ。海賊たちを捕まえて……この町の人たちみんな、海賊トレーナーにするんだ!」

 

          ◯

 

「ポッポッポッ! 来てやったッポよ! ローグタウン!」

 

「ここから俺たち、ハトポッポ海賊団の伝説が幕を開けるッポ!」

 

 ローグタウンの港に姿を見せたのは、旗揚げから間もなく、まだ船長にも懸賞金がかかっていない小規模な海賊団だった。

 

「聞くにこの町の海軍は壊滅状態! 東の海最強の海兵と謳われた白猟のスモーカーも不在! 俺たちを止められる奴はいないッポ! グランドラインに入る前の景気付けに……野郎ども! 思う存分暴れるッポー!」

 

「ポー!」

 

 海賊たちは威勢良く剣を掲げてローグタウンの住宅街目掛けて走り出そうとした。

 

「そこまでだよ!」

 

 そんな彼らの前に立ちはだかったのは、七段アイスを手に持った幼い女の子だった。

 

「なんだッポ? 威勢のいいガキがいるッポ」

 

「よく分からんが……踏み潰して進むッポー!」

 

 自分めがけて突き進んで来る海賊たちを前にした女の子……ユウは、余裕の表情でアイスをひと舐めして、それからポーチから取り出したボールを投げた。

 

「行け! 私の海賊たち!」

 

「……はっ?」

 

 ボールから飛び出てきた六人の人間を前に海賊たちの足は止まった。

 それは変な球から人が出てきたことに驚いたためではない。

 出てきた人間の顔ぶれに恐れ慄いたのだ。

 

「嘘だろッポ……? あれって、懸賞金200万ベリーの……」

 

「向こうの男は確か懸賞金400万ベリーの男だッポ!」

 

 賞金首すら珍しいこの地域において、少なくない賞金額をかけられた強力な海賊が六人、ハトポッポ海賊団の前に立っていた。

 

「それだけじゃないよ! やっちゃえエルドラゴ! ハイパーボイス!」

 

「ゴオオオオオエエエエエエ!」

 

「ぎゃあああああ!?」

 

 今しがた声の衝撃で海賊たちを吹き飛ばしたその男の名はエルドラゴ。

 懸賞金額1000万ベリーの大物海賊であり、世にも珍しい悪魔の実のひとつ、ゴエゴエの実を食べた大声の能力者だ。

 

「ここはやべぇッポ! お前ら逃げるッポー!」

 

「どこに逃げるって?」

 

 ユウたちに背を向けて逃げ出そうとしたハトポッポ海賊に先回りして彼らの海賊船の前に陣取っていたのは、ユウの両親を筆頭としたローグタウンの一般人たちであった。

 

「行け! 俺の海賊たち!」

 

「行きなさい! 私の海賊たち!」

 

 一般人たちがそれぞれユウと同じボールを投げて海賊を繰り出した。

 マシロから特に目をかけられたユウと違って彼等は強力な賞金首を所持していなかったが、それでも一般人よりは戦い慣れている百人ほどの海賊がハトポッポ海賊団を包囲した。

 

「なっ、ななな……なんなんだッポー! お前ら、見た感じ同業だッポ!? なんで俺たちを狙うッポー!?」

 

「うるせえ! 好きでやってんじゃねえんだよ!」

 

「まあお前らもすぐに分かるさ……」

 

「行け! みねうちだ!」

 

「行きなさい! みねうちよ!」

 

 最弱と揶揄されるこの東の海で数の暴力を覆せる強者は滅多に存在しない。

 ふくろだたきにされたハトポッポ海賊は半死半生の状態で縛り上げられ、ローグタウンの中央広場へと運び込まれた。

 

「まさか、俺たちを処刑するつもりかッポ?」

 

 ローグタウンの処刑台は有名なので、ハトポッポ海賊団の男たちはそこで首を落とされるのだと震え上がった。

 しかし広場で待ち構えていたのは処刑台ではなく、ユウよりも少し年上に見える少年と少女の二人組だった。

 

「マシロさん! 海賊を捕まえたのでボールお願いします!」

 

「ああ! 行け、監獄ボール!」

 

 少年……マシロは休む間もなくボールを作り出しては海賊たちにぶつけていた。

 

「マシロさん! こっちもギャングを捕まえてきました!」

 

「今はマシロの手が空いてねぇ! いったんそっち並ばせとけ!」

 

 少女……コーラルは行列の整理に駆り出されていた。

 

「これは……何やってるッポ?」

 

 二人の子供の前にできた行列を見ても、ハトポッポ海賊団はそれが何を目的に並んでいるのか理解できなかった。

 

「教えてあげようか?」

 

 呆けた海賊たちにアイスを舐めながら歩くユウがコーラルの影響を多分に受けた大人を苛立たせる嘲笑を向けた。

 

「マシロお兄ちゃんはボルボルの実の能力者! 魔法のボールで海賊を捕まえて、捕まった海賊はお兄ちゃんの命令に逆らえなくなるんだよ!」

 

 ハトポッポ海賊団は自分たちを襲った海賊たちが変なボールから出てきたことを思い出した。

 

「ポッ!? それじゃ、さっきの連中は……」

 

「うん! お兄ちゃんが捕まえて、私の命令も聞くようにしてくれたの!」

 

 ボルボルの実の能力で捕まえた海賊に対する命令権は能力者本人が最上位であることは変更できないものの、それに次ぐ命令権保有者を設定することは可能だ。

 

「じゃあ、俺たちもお前らの言いなりにされるッポ!?」

 

「いやだッポー! そんなの奴隷じゃないかッポー!」

 

「おい! ポッポポッポうるせえな! そこの連中黙らせとけよ!」

 

「ごめんねコーラルお姉ちゃん! 今やるから! やっちゃえエルドラゴ!」

 

「ゴエェ!」

 

 泣き喚くハトポッポ海賊団にコーラルが怒鳴り、それを聞いたユウがエルドラゴに指示を出して海賊たちを痛めつけさせた。

 やがて列は進み、ハトポッポ海賊団の順番が来た。

 

「こ……この……悪魔め……」

 

「そうだぜ。俺はお前たち海賊にとっての悪魔だ」

 

 海賊に罵倒されたマシロは無表情でそれを肯定した。

 

「そしてお前たち海賊はユウみたいな善良な人たちが暮らしてるこの町にいちゃいけない悪だ。恨むなら、海賊になることを決めた過去の自分を恨みなよ」

 

 マシロが手の中にボールを作り出し、動けない海賊に向かって軽く放り投げた。

 

「ポオオオオオ! やめるっポオオオオオ!」

 

 断末魔のような叫び声をあげながら海賊がボールに吸い込まれて消えた。

 ハトポッポ海賊団の旅は、こうして終わりを迎えたのであった。

 

          ◯

 

「マシロお兄ちゃんたち……もう行っちゃうの?」

 

 ローグタウンに十分な戦力を与えたマシロたちはついにこの町を離れることにした。

 旅立つマシロとコーラルを見送るために町中の人間が港へと押し寄せていて、その先頭に立っているのはローグタウン最強の海賊トレーナーと名高い女の子、ユウだ。

 

「ああ。最近はもうこの町に来る海賊も減ってきたし……別の町でも、きっとユウみたいな子が海賊に脅かされているはずだから」

 

「ま、この町にコーラルは役不足ってこったな!」

 

「そっか……」

 

 今この瞬間にもかつての自分のようにマシロの助けを必要としている人がいるかもしれないと想像できたユウは、マシロたちを引き止めたい気持ちを抑え込み、涙を堪えて笑顔を作った。

 

「マシロお兄ちゃん! コーラルお姉ちゃん! いってらっしゃい!」

 

 たくさんの海賊トレーナーに手を振られて、ラプラス号はローグタウンを出航した。

 

「うぅ……うわぁぁぁぁぁん!」

 

 背後から聞こえる泣き声に後ろ髪を引かれても、全ては大海賊時代を終わらせるためだと自分に言い聞かせて、振り返ることなく前だけを見据えるマシロとコーラル、二人の旅はまだまだ続く!

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