海賊マスターに俺はなる!   作:ことのはだいり

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第9話 VS チャカ

「じゃあ、その海賊団はアラバスタって国に向かった可能性が高いんだな?」

 

「「はっ。奴らが連れていた水色の髪の少女……あれは行方不明となっていたアラバスタのネフェルタリ・ビビ王女に違いありません。おそらく奴らが誘拐犯で、身柄と引き換えにネフェルタリ家に身代金を要求するつもりなのでしょう」」

 

 ドラム王国を滅ぼした海賊団を次の標的に定めたマシロはチェスマーリモの助言を受けてアラバスタという国に向かっていた。

 

「あはははは! ネフェルタリ家の奴を誘拐したのかよ。そいつらやべぇな! とんだ大悪党じゃん!」

 

 何が面白かったのか、ネフェルタリ家と聞いたコーラルは大笑いした。

 

「ネフェルタリ家ってそんなにすごいの?」

 

「血筋としちゃ最高のひとつ下ってとこだな。まっ、コーラルには劣るけど!」

 

 自己愛が強すぎるコーラルの自慢話がまた始まったと呆れながら、マシロはチェスマーリモからアラバスタ王国について教わることにした。

 

「チェスマーリモ、アラバスタってどんな国? 海賊には対処できてるの?」

 

「「はっ。アラバスタ王国は60万人規模の国王軍を保有するグランドラインでも有数の大国です。しかも国内にかの王下七武海のひとり、サー・クロコダイルが居座っています。まず間違いなく、海賊の対処には困っていないでしょう」」

 

 分からない単語を聞いたマシロは目線をコーラルに送って助けを求めた。

 

「七武海ってのは世界政府が非加盟国への略奪を認めた七人の海賊に与えられる称号だ」

 

「えっ……世界政府が海賊の略奪を認めちゃってるの!?」

 

 世界政府が良い存在だと思っていたマシロは、たったの七人とはいえ例外なく悪であるはずの海賊を世界政府が許してしまっていることに酷くショックを受けた。

 

「しゃあねぇだろ。政府も手が足らねえんだから。そういう条件で強い海賊を味方に引き込まねえとやってらんねぇんだよ」

 

「「コーラル様の言うとおりでございます。七武海は海賊を狩る海賊……世界政府非加盟国の者に多少の被害が出ることもありますが、それ以上に世界全体への恩恵が大きいシステムなのです」」

 

 略奪を認めていると言っても七武海の標的は基本的に他の海賊だ。

 いくら相手が非加盟国の人間でも民間人にばかり危害を加えれば世界政府に目をつけられて七武海の称号を剥奪されることになるため、その称号の恩恵を得るために政府の犬とも呼ばれる七武海の立場を受け入れた者たちは最低限の節度を持って略奪している。

 

「……ちなみに、俺がその七武海の海賊を捕まえちゃったらどうなるかな?」

 

「世界政府が困るし、何より七武海の存在にびびっておとなしくしてる小物海賊どもが暴れ出しちまうぞ。強い海兵がいなくなったローグタウンみてぇにな」

 

「そっか……じゃあ狙わない方がいいね」

 

 七武海に手を出すにしても他の海賊を全滅させてからにしようとマシロは決めた。

 

「でもさ、その七武海って奴がアラバスタにいるなら、ビビ王女を誘拐した海賊もそいつにやられちゃうんじゃないか?」

 

「「その可能性は大いにございます」」

 

「それか逆に七武海のワニ男の方がやられちまうってこともあるかもな! あはははは! マシロ的にはどっちがいんだよ?」

 

「そりゃ七武海に勝ってほしいよ」

 

 マシロは悩むことなく即答した。

 七武海のクロコダイルという人が勝てばマシロは無駄足となるがビビ王女は救われる。

 逆にビビ王女を誘拐した海賊が勝てばアラバスタ王国は身代金を払わなければならなくなるし、自国の防衛力となっていた七武海まで失うことになる。

 

「だよな、マシロはそう言うと思った。まっ、奇跡でも起きねえ限り望み通りになんだろ。王下七武海なんて称号くれてやってんだから、そこらの海賊に負けてもらっちゃ困んだよ」

 

 なんだかコーラルが称号をあげたような言い分だったが、コーラルの上から目線はいつものことなのでマシロは気にしなかった。

 

「「……む、ニュース・クー」」

 

 視線が高いため遠くまで見渡せるチェスマーリモが発見したのは帽子をかぶり首に鞄を下げて空を飛ぶカモメだった。

 ニュース・クーと呼ばれるそのカモメは空を飛ぶことで海に隔てられた島々を渡って世界中に新聞を届けられる優秀な配達員だ。

 

「おっ、確かに」

 

「えっ、どこどこ!?」

 

 コーラルは素の視力で、マシロは望遠鏡を使ってニュース・クーの姿を捉えた。

 

「あっ、ほんとだ。おーい! こっちだよー!」

 

 マシロはニュース・クーに大声で呼びかけて存在を知らせた。

 新聞を読めば大事件を起こす危険な海賊の情報が得られるし、おまけで海賊の手配書もついてくるので、ニュース・クーを見かけた時には毎回必ず新聞を購入しているのだ。

 

「クエー」

 

「ばいばい、またよろしくね」

 

 代金を受け取って飛び立ったニュース・クーに手を振って見送り、マシロは新聞を広げた。

 

「さーて、今日の一面記事は…………………………あっ」

 

 新聞というものは読者が一番最初に見る表紙にその日の最大のニュースを載せるものだ。

 そして今回そこに載っていたのは……王下七武海、サー・クロコダイル敗北!

 

「おいおい、マジで負けてんじゃねえかクロちゃんよぉ」

 

「「あの麦わら小僧……まさかここまでやるとは」」

 

 直前にその可能性を検討していたおかげで声をあげることはなかったが、コーラルとチェスマーリモは静かに驚いた。

 

「待って! 倒したの海兵さんだって! ほら、ここ!」

 

 新聞にはクロコダイルが裏でアラバスタ王国を乗っ取ろうと画策していて、それを正義の海兵スモーカー大佐が阻んだのだと書いてあった。

 

「海賊がクロコダイルを倒したなんてどこにも書いてないし、きっと俺たちが追ってた海賊は普通に負けたんだ! あっ、それにこのスモーカーって人、確かローグタウンの英雄さんだぜ! やっぱり正義の海兵さんは海賊なんかに負けないんだ!」

 

 海兵の活躍に目を輝かせるマシロを前にしたチェスマーリモの二つの顔が困り顔になり、コーラルは大きなため息をついた。

 

「あのなぁマシロ、その新聞……世界経済新聞ってのは、世界政府に都合の悪い情報は載らねえことになってんだよ。海軍の大佐程度に負ける奴が七武海になれるはずねぇし、そのスモーカーって海兵がクロちゃん倒したってのはたぶん嘘だかんな」

 

「えっ……なんで世界政府がそんな嘘を」

 

「そりゃ今のマシロみたくガキを騙して海軍に憧れさせるためだろ」

 

「そうだったのか……! くそぉ……こんなのってないぜ……!」

 

 純粋な子供の心を弄ぶ世界政府の策略にまんまと引っかかったマシロは本気で悔しがった。

 

「「それにマシロ様……やはり我が祖国を滅ぼした忌々しき海賊団は健在のようです」」

 

 チェスマーリモがマシロとコーラルに見せたのは新聞に挟まっていた二枚の手配書だった。

 懸賞金6000万ベリー、ロロノア・ゾロ。

 そして懸賞金1億ベリー……モンキー・D・ルフィ。

 

「いちおくぅ!?」

 

「でぃ〜い〜!?」

 

 マシロが前に惨敗した巨人の海賊と同じ懸賞金額であることに驚く一方で、なぜかコーラルはその海賊の名前そのものに驚いていた。

 

「コーラル……勝てる?」

 

「……正直ちょっと自信ねぇ」

 

 いつも根拠のない自信に満ち溢れているコーラルが珍しく自信がないと表明した。

 

「「ちなみにこの麦わらも能力者です」」

 

 モンキー・D・ルフィには『麦わら』の異名が付けられている。

 

「何の能力?」

 

「「おそらくゴム人間かと思われます」」

 

「神以前にコーラルの天敵じゃねえか!」

 

 コーラルの電撃はゴムの身体に無効化され、逆にコーラルは電気に変化する身体にも攻撃を通されてしまうのだ。

 

「コーラルは痛いのやだかんな! 今回ばかりは他の奴らにやらせろよな!」

 

「明らかに相性が不利だって分かってるんだから、さすがに俺もコーラルは出さないよ。コーラルには電撃が通じる他の船員と戦ってもらって、その間に残りの全員でふくろだたきにしよう。ダイマックスも使えばさすがに何とかなる……はず」

 

 ダイマックスは巨人との戦いでチュウを巨大化させた技のことだ。

 発動後は約一時間の使用不可能時間が生じてしまい、持続時間も短いが、大きさの暴力は敵との相性を考える必要がないほどに強力だ。

 

「「では、戦いを避けられあそばされはしないのですね?」」

 

「それは当然。敵が強いからって逃げ回ってたらいつまで経っても海賊マスターになれないよ。むしろ強い海賊こそ捕まえなきゃ」

 

 戦闘能力を持たないマシロはこの場の誰よりも大きな恐怖を感じているはずなのに、それをおくびにも出さない気丈さにチェスマーリモは感極まり、コーラルはつられて戦意をたぎらせた。

 

「「それでこそ……それでこそ我が王にあらせられます!」」

 

「ゴムだろうがDだろうが、下々民に神がびびってちゃかっこつかねぇもんなぁ! ぶちのめしてとっ捕まえてやんよ!」

 

「二人ともその意気だぜ!」

 

 絶対に麦わらのルフィとその一味を捕獲する。

 そう意気込むマシロたちはやがてアラバスタ王国に到着し……その直後に麦わらの一味とは別の海賊団が港町の一般人たちを蹂躙している状況に遭遇した。

 

「みんな出てこい! 海賊たちを倒すんだ!」

 

 その海賊たちはグランドラインに入ってからいくつかの島を突破しなければ到達できないアラバスタまで来ているだけあってそこそこの強さだったが、旅の過程で鍛えられたマシロの手持ち海賊たちはそれ以上に強かった。

 

「海賊いっぱいゲットだぜ!」

 

 何人かやり過ぎて死なせたが敵海賊団のほぼ全員を捕獲したマシロは、続けて海賊被害に遭ったアラバスタの人々の救助を手伝った。

 

「ありがとう! 君たちのおかげで助かった!」

 

「へへ……」

 

「あはははは! これこれ! これが助けられた奴らのあるべき姿だよな!」

 

 感謝されることが目的ではないが、いざ感謝されるとなればそれはとても気分が良いもので、マシロもコーラルも誇らしげだ。

 

「ナノハナの民よ! 遅くなってすまない! 皆無事か!?」

 

 しばらくして後始末までほぼ終わった頃、海賊に対処するべく派遣されたアラバスタの軍の者が姿を見せた。

 

「チャカ様!」

 

「我々は大丈夫です! この少年たちが海賊を倒してくれましたから!」

 

 部隊を同行させずにたったひとりでこの港町に送られたおかっぱ頭の男の名はチャカ。

 ジャッカルの異名を持つ、アラバスタでも五本の指に入る強者だ。

 

「なんと……君たちが?」

 

「コーラルたちを疑ってんのか? ああ!? 遅れて来た役立たずの分際でよお!」

 

 ほんの一瞬チャカが疑念を持っただけでコーラルは因縁をつけ始めた。

 

「コーラル! 言い過ぎ!」

 

「いや……その娘の言ったことは事実だ」

 

 チャカは失礼なコーラルの物言いにも気を悪くせず、事実を粛々と受け入れた。

 

「我が国の民を守ってくれたこと、感謝する。見たところ海軍というわけではないようだが、君たちは旅の賞金稼ぎか?」

 

「だいたいそんなとこです」

 

「そうか。では……これより一週間ほど、この国で雇わせてはくれないか? 君たちの力でこのナノハナの町を海賊から守ってほしいのだ」

 

 チャカの唐突な申し出にマシロは困惑した。

 

「えっ……そんな急に」

 

「まったくその通りだが、どうか話だけでも聞いていただきたい」

 

「……わかりました」

 

 どうやら本気で困っているようだったので、マシロはチャカの話を聞いてあげることにした。

 

「ありがたい。立ち話もなんだ、あちらの店まで来てくれ」

 

 近くの飲食店に入り、砂漠の国では貴重ということで結構な値段がつけられた水を一杯ずつ奢られ、マシロたちはチャカの説明を聞いた。

 チャカによるとアラバスタ王国は海賊の対処をほとんどクロコダイル任せにしていたらしく、コーラルが予想した通り七武海という抑止力が欠けて増加した海賊の襲来頻度に対して、これまで経験を積んでこなかった国王軍の対処能力が追いついていないのだという。

 

「国王軍って60万人もいるんでしょ? それでも足りないの?」

 

「つーかそもそもなんでこの町に軍を常駐させてねぇんだよ。港町なんて真っ先に海賊が襲う場所だろ」

 

「……軍を常駐させるとなれば基地の整備と軍需物資の継続的な搬入が必要となる。だがこれまではこの町に海賊が出現してもすぐにクロコダイルが排除していたため、軍の常駐は費用に見合わないということで有事に首都アルバーナから派遣するのみだった」

 

 つまり軍はあっても置き場がなく、置き場を作るにしても金と時間の問題ですぐにとはいかないため、当面の間は軍の運用形態を変えられず、どうしても初動が遅れてしまう状態なのだ。

 

「だったら人数を減らしたら? 今ある宿に泊まってもらえば、十人くらいなら町にいられるんじゃ……」

 

 知識が乏しいマシロなりに頑張って考えた案だったが、チャカは首を横に振った。

 

「我が軍の兵士たちの力は単独では海賊の雑兵にすら遠く及ばないのだ。一般兵が十人いても海賊の足止めすらままならないだろう。せめてツメゲリ部隊が生き残っていれば……」

 

 マシロが無言でコーラルに視線を送るとコーラルは首を小さく左右に振った。

 どうやらツメゲリ部隊は七武海のようにマシロが知らないだけの有名な存在というわけではないらしい。

 

「コーラルたちの力を借りてぇ理由は分かったけどよ、そんな体たらくなのに一週間で足りるってのはどういうわけだ? いや別に延長されても困っけど」

 

「それだけの時間があればこのアラバスタ王国最強の男が十分に傷を癒せる。そう、世界に五種しか確認されていない貴重な飛行能力、トリトリの実モデル『ファルコン』を食べたアラバスタの守護神、あの隼のペルが……!」

 

「あのとか言われても知らねぇっての。つか飛行能力五種ってぜってぇ嘘だぞ」

 

 ペルという男はどうやらアラバスタ王国における英雄的存在のようで、チャカは過剰なまでに持ち上げて語ったが、コーラルにはまったく響かなかった。

 

「コーラル!」

 

「だってこの国ワニ一匹にいいようにされてんだぞ! 最強っつっても高が知れてんだろ!」

 

 酷い言われようだがクロコダイルひとりにアラバスタ王国の戦力のみで太刀打ちできなかったのは事実なので、チャカは悔しそうに目を伏せるだけで反論しなかった。

 そんなチャカの様子を見て不安になったマシロは、とりあえずこの国の実際の戦力がどの程度なのか確認してから対応を決めようと考えた。

 

「チャカさん。俺たちがやらなかったらひとりで海賊たちを相手にしていたはずのあなたは、きっとこの国でも指折りの実力者ですよね?」

 

「……上から三番目と言ったところだな」

 

 ここで自分を卑下してはペルまで侮られてしまうと懸念したチャカは正直に自分の力量を示した。

 

「なら、チャカさんの実力が分かればペルって人の実力もおおよそ掴めます。俺と……正確には俺の仲間とバトルしてください。その結果でどうするか決めます」

 

「模擬戦か……承知した。悪いが私にもこのアラバスタを守るという使命があるゆえ、どんな相手でも手加減はできぬぞ」

 

 チャカは勝負に勝てばマシロたちの力を借りられるのだと思ってやる気を見せた。

 実際にはチャカが惨敗した場合の方がマシロはこの国を放っておけなくなるのだが、わざと負けられても正確な実力が測れなくなるので、結果的にはこれで良かった。

 

「頼むぞチェスマーリモ!」

 

「「チェスマーリモ!」」

 

 町外れの砂漠に移動したマシロはチャカと向かい合い、チェスマーリモを繰り出した。 

 異形のチェスマーリモは町中で出しっぱなしにすると騒ぎになるため、本人に断った上で普段はボールに入ってもらっている。

 

「能力者か……! ならばこちらも!」

 

 チャカがイヌイヌの実モデル『ジャッカル』の能力で半人半犬の獣人に変身し、チェスマーリモに突撃した。

 

「鳴牙!」

 

「「ドビックリマーリモ! クワトロアックス!」」

 

 ゾオン系の能力で強化された膂力を活かしたチャカの強烈な斬撃をチェスマーリモはどこからともなく取り出した四本の斧で受け止めた。

 

「「八方雪倒れ!」」

 

 斧を振り回すチェスマーリモのれんぞくぎりをチャカは俊敏に回避し、相手の懐に潜り込んだ。

 チャカの狙いは顎で、屈んだ姿勢から跳ね上げるように刀の峰を振り上げた。

 

「「それは対策済みだ! エレキマーリモ!」」

 

 エレキマーリモは静電気で敵にひっつく可燃性のアフロだ。

 本来はそれを付着させて火矢で着火させるためのものだが、今回のチェスマーリモは自身の顎に大量のアフロを付着させて緩衝材として使ったのである。

 

「くっ……ん!? 何だこれは!?」

 

 コットンのようなガードに防がれたチャカの剣には大量のアフロが纏わりついていた。

 

「ぬおおおおおっ!?」

 

 さらにアフロは増殖し、腕からチャカの全身へと這い上がってきた。

 

「なぜ増える!? これも能力か!?」

 

「「元より体毛は伸びるものだろう」」

 

 簡単にちぎることができ、身体から切り離した後も伸びて膨らみ、静電気を帯びて他者の身体に付着するチェスマーリモのアフロは、悪魔の実の能力でも何でもなく、ただ純粋にそういう毛質なのだ。

 

「「雪解けの矢マーリモ!」」

 

「!?」

 

 チェスマーリモの放った火矢の直撃をチャカは回避したが、火がかすめたことで全身を覆っていたアフロに着火してしまい、チャカはほのおのうずに閉じ込められた。

 

「ぐあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

 

「おいこれほっとくと死ぬやつじゃねえか?」

 

「「しまった! これほど燃えるとは……雪国との違いを考えていなかった!」」

 

「何だって!? 出てこいチュウ!」

 

「チュッ♡」

 

 巨人戦で見直されて以来コーラルからの扱いが良くなったチュウはかつての気力を取り戻していた。

 

「あの火を消してくれ!」

 

「任せてくれマシロさん!」

 

 それはそれとしてお仕置きへの恐怖は残っているため、今のチュウはマシロとコーラルに従順だ。

 人体を貫通しないように拡散させたチュウのみずでっぽうがチャカに命中し、火の勢いを一瞬だけ弱めたが、完全には消えなかったせいで再び燃え上がってしまった。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

 

「チュウ! もう一回だ!」

 

「チュッ……すまねぇマシロさん! 水を補給しねぇと……」

 

 周囲に水源がないかと探しても辺り一面砂漠しかない。

 町に戻ろうにも一般人を驚かせないように離れた場所でバトルをしていたせいでかなりの距離がある。

 

「あ゙……あ゙……」

 

 こうなってしまってはチャカはもはや数分の命……助からない!

 

「「マシロ様! この者を捕獲しあそばされてください!」」

 

 唯一ここからチャカが助かる方法を思いついたチェスマーリモが叫んだ。

 

「えっ、でもこの人海賊じゃ……」

 

「「今は他に命を繋ぐ手がございません!」」

 

「……わかった! ごめんチャカさん!」

 

 代案を思いつかなかったマシロはチェスマーリモに言われた通りチャカにボールを投げた。

 

「チャカさん……ゲットしちゃったぜ」

 

 人を石に変えたり玩具に変えたりするパラミシア系の悪魔の実の能力には基本的に解除手段が存在する。

 マシロのボルボルの実も例外ではなく、一度捕獲した人間をボールから解放することは不可能ではない。

 ただし捕獲に至るまでの条件が厳しいだけあって解放の条件も非常に困難で、少なくとも能力者であるマシロ本人が解放してやりたいと思っている現状であってもチャカの解放は実現できない。

 

「どうしよう……」

 

 もはやマシロにできるのはチャカが入ったボールを拾ってあげることだけなのであった。

 続く!




次回、持たせると攻撃するたびにHPが少し減ってしまうが技の威力があがる。
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