星の導きと銀河の旅路   作:花咲 凛香

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星を見つめる少女

宇宙――それは無限の広さを持つ箱。

 

銀河――それは数え切れない可能性が詰め込まれた箱。

 

星々――それは無数の未来を映し出す、小さな箱。

 

そう、宇宙とは無限の星々に満たされた巨大な箱である。

 

そして可能性とは、無限に枝分かれする選択肢。

 

一つの選択が新たな未来を生み、一つの未来がまた別の可能性へと繋がっていく。

 

終わりなき分岐。

 

果てなき未来。

 

それは誰もが持つ、無限への道標だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

少女は星を見ていた。

 

大都市を覆う灰色のスモッグ。

 

光に汚された夜空。

 

そこでは本来見えるはずの星々はほとんど姿を隠していた。

 

けれど、その中でたった一つだけ。

 

か細くも確かに輝く星があった。

 

少女は毎晩のようにその星を見上げていた。

 

幼い頃からずっと。

 

物心ついた時から抱え続けていた大きな孤独を紛らわせるように。

 

誰も知らない名前も分からない星。

 

けれど彼女にとっては特別だった。

 

月は毎日姿を変える。

 

満ち、欠け、形を変え続ける。

 

だがその星は違った。

 

変わらずそこにいて。

 

変わらず光り続けていた。

 

だから彼女は月よりもその星を見ていた。

 

遠く離れていても。

 

小さくしか見えなくても。

 

名も知らなくても。

 

その星は確かにそこにある。

 

それだけでよかった。

 

少女は夜空を見上げながら小さく呟く。

 

「綺麗……」

 

その言葉を聞く者はいない。

 

けれど彼女は何度もそう呟いた。

 

まるで宝物を見るように。

 

まるで大切な誰かを見るように。

 

その星を見つめ続けた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

ある日。

 

少女は山奥へとやって来た。

 

都会から遠く離れた場所。

 

人工の灯りなど存在しない世界。

 

そこで彼女は初めて見た。

 

息を呑むほどの光景を。

 

夜空いっぱいに広がる無数の星々。

 

まるで銀河そのものが降り注いでいるかのような満天の星空。

 

彼女は思わず立ち尽くした。

 

見渡す限りの光。

 

どこを見ても星。

 

どこまでも続く星。

 

その美しさに心を奪われながらも――

 

彼女の視線は自然と動き出していた。

 

探している。

 

ただ一つの星を。

 

無数の光の中から。

 

他の星々に埋もれていても。

 

位置が違っていても。

 

距離感が変わっていても。

 

彼女は探し続けた。

 

そして。

 

「あっ……」

 

見つけた。

 

確かに見つけた。

 

少女はゆっくりと指を伸ばす。

 

その先にあったのは。

 

いつも都会の夜空で見上げていた、あの星だった。

 

特別な色を持つわけではない。

 

特別大きいわけでもない。

 

誰も注目しないような、ごく普通の星。

 

けれど。

 

「見つけた♪」

 

少女は嬉しそうに笑った。

 

まるで旧友との再会を喜ぶように。

 

その星はどんな場所から見ても同じだった。

 

何も変わらない。

 

ただそこに在り続ける。

 

だから彼女にとってその星は――

 

紛れもなく。

 

世界で一番美しい星だった。

 

一番星だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

人は変わる。

 

時も変わる。

 

住む場所も。

 

見る景色も。

 

出会う人も。

 

何もかもが変わっていく。

 

けれど。

 

それでも変わらないものは確かに存在する。

 

例え居場所が変わろうとも。

 

例え遠くへ旅立とうとも。

 

例え自分自身が変わってしまったとしても。

 

心に焼き付いたものはそう簡単には消えない。

 

あの星がそうだった。

 

少女にとってそれは希望であり。

 

憧れであり。

 

孤独な夜を照らしてくれた光だった。

 

星は何も語らない。

 

ただそこにあるだけだ。

 

それでも。

 

それだからこそ。

 

彼女は惹かれ続けた。

 

遠く離れていても。

 

決して届かなくても。

 

星は変わらず輝き続けているのだから。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

それから約十年の月日が流れた。

 

人類は銀河へ進出し。

 

星々を結ぶ航路が築かれた。

 

無数の世界を繋ぐ列車。

 

銀河鉄道。

 

夢と浪漫を乗せて銀河を走るその列車は、多くの旅人たちの憧れとなっていた。

 

そして今日。

 

銀河鉄道へ乗車できる最低年齢である二十五歳を迎えた彼女は、一枚の切符を握りしめていた。

 

ホームに響く発車ベル。

 

蒸気のように漏れるエネルギー音。

 

銀河を走る列車が静かに待っている。

 

彼女は窓の向こうに広がる宇宙を見つめた。

 

幼い頃から見上げ続けてきた夜空。

 

変わらず輝き続ける、あの星。

 

その光を思い浮かべながら彼女は告げる。

 

「あの星に……連れて行って」

 

車掌は微笑み、帽子のつばに触れる。

 

列車はゆっくりと動き出した。

 

未来へ向かって。

 

可能性へ向かって。

 

無限へ向かって。

 

そう――これは一人の少女が追い続けた星へ辿り着くための物語。

 

遠く。

 

長く。

 

果てなど見えない旅路。

 

数え切れない出会いと別れが待つ旅。

 

無数の可能性が交差する銀河を巡る旅。

 

そしてそれは――

 

彼女自身もまだ知らない未来へ続く、

 

終わりなき銀河の旅の始まりだった

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