フォービーストの指揮官の日常   作:デュエルしろよ

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過去話 シュエンと鉄クズ

 ミシリスは初代CEOがプロトタイプのニケを製作、二代目CEOはアークの通信網を確立と偉大な功績を残している。

 

 しかし現在のミシリスは二代目を継ぐ三代目の存在が危惧されていた。

 

 言ってしまえば二代目の息子が才能がないにも関わらず立場に甘え努力を怠った結果二代目が息子に継がせることを拒否したのだ。

 

 これにより息子は実質的なお飾りとなり三代目CEOとしての花道を失うことになる。

 

 さらに拍車をかけるように息子は荒み性に奔放にもなった。

 

 その結果生まれたのがシエン、ジエン、シュエン、それぞれ腹違いだ。

 

 息子をただの孫製造機としかもう見てない二代目は産まれた3人を自分の家へと招き直接教育し、育てることにした。

 

 3人はすくすくと育った、そもそも二代目は才能の有り無しで優劣をつける人間ではなかった、ただ孫製造機が終わっていただけである。

 

 シエンは才能がなかったが明るく努力家で長男なこともありジエンとシュエンの仲を取り持ってあげたりと気もきいた。

 

 ジエンは才能が秀でていて研究熱心なわかりやすい研究家な子であったが、性格に難があり研究の為の犠牲などを計算式の数字の一つ程度にしか捉えてない節がある。

 

 シュエンはそんなジエンに比べると才能が少し見劣りした、それでも他と比べれば優秀だが姉であるジエンとの才能の差にコンプレックスを感じている、しかし勤勉で努力の伸びは目を見張るものだ。

 

 二代目は、このまま順調に育てば3人共、三代目になれる可能性に大変満足していた。

 

 が、それを見届けることはなかった。

 

 二代目の急死、これにより三代目CEOは急遽、孫製造機へと白羽の矢が立った。

 

 シエン、ジエン、シュエンの生活は激変………などしなかった。

 

 3人の誰でもなれるなら成人してからCEOとしての責任感を持たせれば良いと、特に重積や使命などを背負わせなかったのだ。

 

 3人からしてみれば大切な育ての親が死んだ、もちろんそれも悲しいがそれだけなのだ、遺産も3人が生涯遊んで暮らしてもまだずっと残り続けるほどであったため生活水準が変わるなどもなかった。

 

「ジエン!ちゃんとピーマン食べなさいって言ってるだろ?」

 

「いややわ兄さん知らんの?一種の野菜を摂らへん程度で健康に影響なんて1ミリ程度しか変わらんのやで?」

 

「1ミリ変わるんじゃねぇか食べなさい」

 

「………いややわ」

 

「姉さんは好き嫌いが多すぎるのよ」

 

「ならシュエンもにんじん食べれるな」

 

「兄さん知らないの?サプリメントが主流なのだからパーフェクトを加工したこの野菜擬き1ミリ程度しか影響がないわ」

 

「やっぱ1ミリあんじゃねぇか食べなさい」

 

「………いやよ」

 

「今回は自分が食うけど次はちゃんと食べなよ、シェフに悪いだろ?」

 

「わかっとるよ〜」「………わかった」

 

「………ちなみに後でシェフに抜くようお願いしても無駄だぞ、しないでくれと言っておいた」

 

「「そんな〜」」

 

 こんな風な生活がずっと続くと3人揃って思っていた。

 

 思うだけで叶いなどしなかったが。

 

―――

 

「え、兄さん士官学校に入るの?俳優になるんじゃなかったの?」

 

 兄さんは男だからニケに、ヒーローになれないことを悩んでいたが、現実のヒーローでなく架空のヒーローになってやろうと吹っ切れて俳優を目指して勉強や運動をしていた。

 

「架空のヒーローはダサいと思ってな!それならヒーローじゃなく英雄になることにした!自分の圧倒的指揮で勝利を導く最強の指揮官!くぅ〜かっこいいなぁ!」

 

「えぇ〜俳優になったら周りに自慢したろぉ思ったのにぃ」

 

「そもそも自慢できんだろうが」

 

「実は彼女やねんって言うに決まっとるやん!」

 

 わたし達兄妹は一緒に暮らしているけど腹違いとかお祖父様に育てられたこともあってか兄妹であることは隠している。

 

 最初はそんなことしてなかったけど、お祖父様が急死してから兄さんがそうしようと言って戸籍から何まで綺麗に消したらしい。

 

 兄さんを表で兄さんと呼べないのは悲しいけど、姉さんが血縁関係が無くなったから結婚出来るやんと言った時はちょっとだけ嬉しかった。

 

「兄さん………本当になりたいの?」

 

「………当たり前だろ!」

 

 お祖父様が死んでから兄さんは少しづつ変わってる気がする。

 

 俳優だってあんなになりたがってたのに………。

 

―――

 

 兄さんは士官学校、姉さんミシリスの専門学校へと入り、わたしもどこに入ろうかと悩む時期が近づいていた。

 

 だけどわたしは兄さんのように目標があるわけでも姉さんのように才能があるわけでもない。

 

 何をしたら良いんだろうと悩む日々。

 

 そんな時期、ある事件が起きた。

 

―――

 

 ピンポーン、ピンポーン。

 

 兄さんも姉さんも未だ学校から帰ってこない時間、私だけ早く授業が終わったので家でのんびり宿題をしている時のこと、インターホンがなった。

 

 荷物かな?誰のだろう兄さん?でも兄さんが物を買ってるの見たことがないや、姉さんのかな?

 

 インターホンがなってもシュエンが出ることはない、防犯の為にメイドも兼ねたニケに基本は応対をしてもらう。

 

 ガチャ………ギィィ。

 

 お祖父様の家に未だ住んでいるがアンティークの見た目のまんま、少し古臭く建て付けが悪い、それが今回良い方に働いた。

 

 な、なんで扉が開いたの!?直接荷物を受け取るなんてこと絶対しないようにしてるのに!

 

 シュエンは何かを察して急いでクローゼットに隠れる。

 

 すると察した通りガサツな歩く音と扉が開く音が何度も聞こえてくる、賊が侵入してきたのだ。

 

 ど、どうしよう、と、とりあえずA.C.P.Uに連絡しなきゃ!!

 

 急いで携帯を使い、連絡しようとしたがその前に自分の部屋の扉が開く音、次に目の前のクローゼットの扉が無慈悲に開くのを何も出来ずシュエンは見続けるしか出来なかった。

 

 だが終わったと思った扉の先にいたのはウチのメイドニケであった、自分を助けに来てくれたんだ、そう思ったシュエンはほっと胸を撫で下ろすと。

 

「ガキがいたぞ!!」

 

 え?……………え?……………え?

 

 目の前にいるのは確かにいつも家の掃除をしてくれてるニケでシュエンのよく知るニケであった。

 

 だが………それだけだ、ニケが犯罪をしないなんて誰が保証する、ニケが犯罪の主犯格にならないなんて誰が決めた。

 

 ニケは強引にシュエンの腕を掴み、クローゼットから引きずり出す。

 

 希望だったニケが絶望に変わった、シュエンはこれからどうなっちゃうんだろうという恐怖に駆られながらもまだ出来ることをする。

 

「助けてえぇ!!」

 

「無駄だ、こんな豪邸の部屋の中じゃ遠くまで届くもんも届かねぇよ」

 

 ニケから無駄だと言われ泣きそうになるがそれでも力いっぱいに叫ぶ。

 

「助けてぇ!!」

 

「無駄だって言ってんだろ!」

 

「そんなことないさ」

 

 突然腕を掴んでいたニケが吹き飛んだ、誰かが殴ったのだ。

 

 そして今度はガッシリした手がわたしの腕を掴んで走りだす。

 

 温かい、兄さんの手だった。

 

「兄さん!」

 

「よくあの状況でちゃんと助けてって言えたな!偉いぞ!」

 

 兄さんは急いでわたしを連れて玄関から外に出ようとするが賊の一部が逃げ道である玄関を塞いでいた。

 

「シュエンってガキを置いてけ!そしたら見逃してやるぜ?」

 

 わ、わたし?な、なんで?

 

「可愛い可愛い妹を渡すバカがどこにいんだ?つか自分達じゃなくシュエンだけ?」

 

「一番拐いやすく言うことを聞きそうなのがそのガキらしくてな!」

 

「………いや素直に理由喋るなよ………まぁ………聞かなくても誰が大元かは知ってるけど」

 

 兄さんは知ってるの?こんな悪いこと考える人を。

 

「シュエン、ちょっとだけ離れて待っててくれ、お兄ちゃん、こいつら倒さないといけないから」

 

「で、でもこんないっぱい居るよ?」

 

「それがどうした?お兄ちゃんは元ヒーローを目指した英雄志望だよ?あぁでも勝つには一つ足りないかも」

 

「何が足りないの!?」

 

「応援だ、勝ってっていう応援があれば無敵だお兄ちゃん」

 

 兄さんはこんな時でもふざけてこっちを元気にしようとしてくれる。

 

 変わったように思えたけど根っこは全然変わらない。

 

 兄さんはわたしのヒーローだ。

 

「勝って兄さん!ヒーローでしょ!!」

 

「英雄だっていってんだろ!?でも勝つぜ!!」

 

 兄さんはそこから本当に屈強な賊を殴り倒していく1人、2人、3人と。

 

 そんな奮闘しているシエンを心配しながらも眺めるシュエンの背後に影が一つ、シュエンはそれに奇跡的に気付きそして恐怖した。

 

 さ、さっき兄さんが殴ったニケ!わ、わたしを捕まえるつもりなんだ、に、逃げなきゃ!

 

 急いで逃げようとするシュエンの足を止めようとニケは拳銃を取り出して足に狙いを定める。

 

 ピシュン

 

「に、兄さん!?」

 

 音がしたので後ろを振り向くと兄さんが足から大量の血を流して立っていた。

 

 兄さんは足から血が出ているにもかかわらず素早い動きでニケを再び殴って今度こそ気絶させた。

 

 ニケが最後だったのかあたりが静かになる。

 

 と、とりあえず兄さんの怪我の手当しなきゃ!!

 

「だ、大丈夫!兄さん!すぐ手当と救急車を!」

 

「ありがとうシュエン、だけどお兄ちゃん、すぐ行かないといけないんだ」

 

「な、何言ってんの!?こんな足を撃たれて血だらけなのよ!?」

 

「むしろ今じゃないとダメなんだ、それじゃ行ってくるね」

 

「兄さん!?兄さん!!」

 

 追いかけようとしたらA.C.P.Uが沢山やってきて兄さんを見失う。

 

 兄さん………大丈夫かな。

 

 その日のニュースはミシリス三代目CEOが二代目CEOを殺し、親族の誘拐未遂の疑いで逮捕されたニュースだった。

 

―――

 

 ニケの人権はゴッデスフォール事件、プリティー殺害事件のお陰で殆ど人間と同様になった、しかし『法』は別であった。

 

 ニケが犯罪をした場合、記憶消去か更生館に送られる。

 

 裁きは受けないのだ。

 

 記憶消去が実質的な死刑だとしても根っこが変わるわけではないし更生館にいたっては実力があれば任務ではあるが表に出て好きに過ごせてしまう。

 

 人間には寿命があるから時間という裁きが存在するがニケには存在しないのだから無意味だ。

 

 さらに人権は保証されてるから態度良く過ごせばいつかは出てこれる、いつかなどニケには関係ない、いつか出れるならそれはいつでもと変わらないのだ。

 

 シュエンを襲ったニケは更生館へ行ったらしい。

 

―――

 

 三代目CEOが逮捕されだれが三代目の代わりをするかとなったときシエンはもう古臭い世襲制をやめにしませんかと提案し、無事それは受け入れられ現在シュエンは名前すらも知らない誰かが三代目をしている。

 

 シュエンは結局何がしたいか具体的には決まらず、とりあえず姉と一緒のミシリス専門学校へと入学し、順調に勉学に励んでいた。

 

 ただシュエンはシエンに最近あまり会えていないことに少し不満を抱えていた。

 

 と言うのも士官学校では現在、実地訓練が行われているらしい、なんでも卒業試験では実際に地上に出て小型ではあるがラプチャーをニケを指揮して倒すそうで、失敗などないよう遅くまで訓練しているらしい。

 

 大丈夫なの?と思ってしまうが卒業して本当に指揮官になれば戦闘など日常茶飯事になってしまうのだろうから心配するだけ損なのかもしれない。

 

 でも、心配は心配なのだ、何事も無いと良いけど。

 

 シュエンの心配は杞憂にはならなかった。

 

 事件は起きた。

 

 卒業試験でシエンが指揮する部隊は順調に作戦を遂行していた。

 

 シエンの作戦は爆弾を設置し、小型のラプチャーが来たら発破するというもの、小型一体に対して少々過剰ではあるがニケを無意味に傷付けたくないシエンは成績に影響があろうとこれで良いと判断した。

 

 ニケとの意思疎通も問題なく出来ていた。

 

 ニケの人権問題もあってか実地訓練から卒業試験までの間の部隊は常に同じ部隊となりコミュニケーションをとることを推奨されていたがシエンは元からニケになりたがっていた人間だ、むしり仲良くなりすぎて叱られていたぐらいにはコミュニケーションはとれていた。

 

 爆薬を設置し、物陰に隠れ、後はラプチャーが来たら起動させるだけ。

 

 もし仮に失敗しても撤退ルートの確保も出来ている、試験自体は失敗になってしまうだろうが留年程度ニケの命には変えられない。

 

 ラプチャーと爆弾までの距離10メートル

 

 5メートル

 

 2

 

 1

 

「今だ!!」

 

 ………

 

 ………

 

 ………

 

 何も起きなかった。

 

 一瞬頭が真っ白になるシエンだったがすぐさま周囲を確認し状況を把握する。

 

 原因はすぐにわかった。

 

 爆弾の起動スイッチをもったニケが押していないのだ。

 

 ここに来て恐怖で体が動かなくなったのか!?そう判断してすぐさま近くの別のニケにフォローするよう指示する。

 

 しかしフォローに入ったニケをスイッチを持ったニケは銃を構え。

 

 フォローに入ったニケを撃ち殺した。

 

 ………は?

 

 何が起きたかシエンには理解不能だった。

 

 その隙にスイッチを持ったニケはラプチャーともこちらとも違う方向へスイッチを持ったまま逃走していった。

 

 現実のことなのかとシエンは夢を疑いそうになるが倒れているニケを見てすぐに意識を戦場へと戻す。

 

 逃亡したニケと殺されたニケ、残っているのは3人、流石に撤退するべきだ。

 

 シエンはすぐさま3人に事前に伝えていた撤退ルートへ向かうように指示して、試験官にも作戦失敗という名の卒業試験の失敗を伝える。

 

 しかし試験官の無線からは何も返事が返ってこない。

 

 ………まさか!!?あのニケとグルか!

 

 なら、撤退ルートの先に待ち構えてくれてるはずの試験官はいないことになる。

 

 実質的な撤退不可、さらに追い討ちをかけるように撤退ルートへ向かったニケから無線で中型のラプチャーが居ることを知らされる。

 

 確実に殺しに来てる。

 

 試験の不慮の事故として。

 

 シエンは覚悟を決めニケ達に別の撤退ルートを指示する、自分が囮になればニケ達が逃げれる時間を確保出来ると思ったからだ。

 

「いやだね、騙されておめおめ逃げるなんてな」

 

「う、うん指揮官はここで死んでいい人じゃないよ」

 

「賢いわたしにはわかるこの4人なら勝てるとな」

 

 結果としてシエンと3人のニケは小型一体、中型一体のラプチャーを撃破し帰還、死ぬはずだったシエンが生還したことにより試験官と逃亡したニケは捕まった。

 

 捕まったニケは記憶消去を受けたらしい。

 

―――

 

 兄さんは卒業試験が終わった後から少しおかしい、何かあったのだろうか。

 

 聞いてもはぐらかされるばかり、姉さんから聞いても答えてくれないみたい。

 

 ………本当は兄さんが卒業する時に伝えようと思ったけど、もうちょっと後にしようかな。

 

 わたしにはどうやらニケを作る才能があるみたいで将来はミシリスのニケ制作に携わろうと思っている、正直、まだ昔の誘拐未遂のこともあってかニケにあまり良い感情を持ってないけど、それでもニケの制作をしたいと思うのはヒーローなニケを作って兄さんの夢を叶えてあげようと思ったからだ、ヒーローなニケを指揮する兄さんもまたヒーローだと思うから。

 

 そうだ!兄さんには内緒で進めようかな、出来たら兄さんの部隊にサプライズ編入してあげよ、きっと大喜びね!

 

 しかし、このサプライズが叶うことはなかった。

 

 第二次地上奪還戦後しばらくして。

 

 兄さんが死んだことを知らされた。

 

―――

 

 兄さんが死んだ。

 

 嘘だと最初は思った、しかし兄さんは帰ってこないし、連絡しても返信がない。

 

 遺体すら無いと言われた。

 

 姉さんは兄さんが死んだことを聞いてから、家に帰らず、ずっとミシリスの地下で研究をしているらしい、体壊してないと良いけど。

 

 わたしはと言うと休暇をもらい家にずっといる。

 

 何もやる気がでないし何かしたいとも思えない、姉さんの体調を気遣うぐらいなら自分の体調を気遣うべきだろう。

 

 ポトッ

 

 軽く寝返りをうったらベッドの棚から何か落ちた、これって兄さんの手作りの勲章だ、懐かしい。

 

 姉さんと比べて才能がなかったわたしは小さい頃いっつも落ち込んでいた。

 

 それを見かねた兄さんがわたしが何か頑張るごとにこの手作りの勲章を作ってくれた、最初は雑だったけど年月が経つほどにクオリティが高くなり近年のは本物の勲章と見分けがつかないレベルにまでなっていた。

 

 ………。

 

 シュエンは落ちた勲章を胸につける、これは確かしっかり知りたいことを調べることが出来た時の勲章だ………流石に甘すぎるわねこの勲章。

 

 でもとりあえず休暇の間にやることは思いついた、兄さんの死を調べよう、せめて死亡位置が特定出来たら遺体を見つけることが出来るかもしれない。

 

 しかしいくら調べても、何も情報などでなかった、まるで意図的に隠されてるように。

 

 ジエン、シュエンは表向きはただの一般人であった、お祖父様が死んだ時兄さんが自分以外の戸籍を普通の家庭の戸籍に変えたのだ。

 

 だからこそミシリス専門学校、現在のミシリスでも正体がバレずに普通に過ごせている。

 

 だが逆を言えば権力を使い調べるなんてことも出来なかった、あくまで調べると言ってもハッキング技術で他より少し情報をディープに知れるだけだった。

 

 権力、わたしがお祖父様の孫だと明かす?いや、兄さんはそんなこと望んでないだろう、なら実力での仕上がるしかないわね。

 

 ミシリスは今、現状維持の状態だった三代目が逮捕、三代目が代わり世襲から実力主義になったが、なっただけ、誰も目立った業績を上げることが出来ずただただ徐々に右肩下がりになっている状態だ。

 

 なにか、一気にトップの座につける何か………そうだ!ヒーロー!量ではなく質、それも飛び切りの強さのニケを作り出せればいけるはず!

 

 シュエンはすぐさま休暇であることも忘れ仕事を始め、休暇から復帰後一大プロジェクト、プロジェクト・メティスを始動。

 

 無事最初の成功体、ラプラスを作り出し、ミシリスはやっとちゃんとした三代目を迎えることが出来た。

 

―――

 

 これは………なに?

 

 シュエンは自身のCEOとしての立場を利用し、シエンの死を再び調べた。

 

 具体的な証拠は出なかったが、状況証拠はこれでもかと残っていた。

 

 ドバン、それが兄さんを殺したやつの名前、どう考えても状況はこいつが犯人だと言っているが、証拠はことごとく消されていた。

 

 さらに胸糞悪かったのが兄さんの死を調べてる最中一部の人間が唯一お祖父様の孫であることを明かしていた兄さんを殺そうとあの手この手を尽くしていたことが明らかになった。

 

 世襲を廃止し、本人もなる気はなかったがそれでも可能性を排除しようとする連中から狙われていたらしい。

 

 そしてその方法が自分の中で何かを終わらせた。

 

 ニケの制作をメインでしていることでニケのリミッター解除、人間、ニケを撃てない制限を外すことが可能なのを利用して意識外から殺そうとするものだった。

 

 もちろんリミッターを解除することしか出来ず意識を操れるわけではない。

 

 ニケ達は自分から裏切ったのだ大金を積まれたり願いを叶えると誘惑され。

 

 わたしを襲ったあのメイドニケもそうだった。

 

 襲撃の数はざっと50、これはあくまで調べて出てきたもので実際はもっと多いのだろう。

 

 兄さんが士官学校に入ってからは襲撃しづらかったことも調べてるうちに出てきた。

 

 だがそれでも襲撃はあり、卒業試験ではニケと試験官の裏切りという直接的なこともしたらしい。

 

 ニケは………兄さんの憧れだ。

 

 兄さんにとってのヒーローだ。

 

 なのに………こいつらは兄さんの憧れを穢した!!

 

 さらに追い討ちをかけるように調べていくと驚愕の事実に気付く。

 

 先程の50あまりのニケは全員普通の生活を送っているということだった。

 

 あのメイドニケは更生館に入っていたが任務の成績と従順な態度で異例の釈放となり、なんならそれがニケの人権を訴える人達には良い話に見えたのか本すら出版されていた。

 

 卒業試験の試験官とニケは試験官は更生館送りとなったがニケの方は記憶消去を受けて、今は配送業をしているらしい。

 

「ふざけないで………ふざけんじゃないわよ!!」

 

 人を殺そうとしといて実力と良い態度をすれば許される?ふざけないで!じゃあ兄さんは良い態度じゃなかったって言うの?兄さんに実力はなかったって言うの!!?

 

 記憶を無くせば犯罪はなかったことにされるの!?記憶が無ければ無罪だってんならいくらでも犯罪しほうだいじゃない!!

 

「なんでこんな奴らが生きてて兄さんが死なないといけないのよ!!」

 

 許せない。

 

 許せない。

 

 許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。

 

 クズが。

 

 鉄クズが。

 

 兄さんが指揮官になって言っていたことを思い出す、今になって思えばそれはドバンをさしていたのだろう。

 

 外道の相手は外道だからできるんだと。

 

 ならクズの相手は?

 

 わたしの中で何かが終わり、何かが始まった気がした。

 

 わたしはとりあえずエターナルライフを服用した。

 

 兄さんがしていなかったからわたしも姉さんもしていなかったけど目的が出来た今寿命で死ぬわけにはいかない。

 

 兄さん、待っててね、全て片付いたら、兄さんの所へ行くから。

 

 だから。

 

 沢山の勲章を用意してね。

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