フォービーストの指揮官の日常   作:デュエルしろよ

12 / 14
9話

「指揮官、キレてるぞ」

 

 ベヒモスのその言葉でハッと我に帰る、いかんいかんついシックスオーからのメッセージで自分にキレてしまった。

 

 #000000

 

[ミシリス現CEOであるシュエンはあなたの妹です]

 

 多分お前の妹にいつでも危害を加えれるぞという脅しを兼ねた暴露なんだろう、ご丁寧にシュエンの写真もついていた。

 

 だが自分の中にあった感情は生きていたのかという驚きとそれを知らずのうのうと会わずに生きている自分への憤りだった。

 

 生きている可能性はもちろん考えた、しかしそれは歳をとっておばあちゃんになった姿だ。

 

 自分がエターナルライフを服用してないからとジエンもシュエンも服用していなかったからてっきりそのまま歳をとっていると勘違いしていた。

 

 おばあちゃんになったジエンやシュエンの前に1人だけ若いままの自分が行った時、どうすれば良いのかわからなかった。

 

 エターナルライフは若さを保つもので若くはなれない、歳をとった2人を前にして自分に最適な答えを出せる自信がなくそれならと変に探さずにいた。

 

 だが………若いまま生きてたんだな。

 

 一つ聞きたいのだが、ミシリスの現CEOの名前は?

 

『シュエンだ』

 

 シックスオーが嘘をついてるってことはなさそうだな。

 

 でも何も疑問も持たず答えてくれるなんて………もしかして知ってた?

 

『あぁ、意図してではないがな』

 

 そっか、まぁ話しがややこしくならなくて助かるか。

 

「会いに行くんだろ?」

 

 もちろん、さっさと会ってさっさと会ってないことを謝らないと、とりあえずフォービーストで会いに行こうと思うけど良いか?

 

「それこそもちろんだ、こいつらも悪さしなさそうだしな、フラジャイルはどうする?」

 

 リヴァリンが信用出来ないならルートの構築役が必要だろう、フラジャイルが良ければカウンターズを手伝ってあげてくれないか?

 

「は、はいぃ大丈夫です」

 

 よし、なら早速レヴィと合流して行くか。

 

―――

 

「シュエン!今度の任務はなんだ!」

 

 パリーン

 

「ちょっとラプラス!?それ聞くだけなら窓割って入る必要ないでしょ!」

 

「すまない!しかし最近ろくにラプチャーと戦っていない!ヒーローたるもの悪を倒さねば!」

 

「この瞬間は窓割ったあんたが悪よ………まったく、もうちょっと待ちなさい、カウンターズの地上調査にメティスも参加するよう掛け合ってるから」

 

「バードボーイの!?本当か!」

 

「嘘つく意味ないでしょうが、しっかり成果上げてきなさいよ?」

 

「わかった!なら早速地上調査に向けてトレーニングせねば!さらばだ!」

 

 パリーン

 

「………せめて割った窓から出なさいよ、たくあの子にはヒーローより常識を教えるべきだったかしら」

 

 いちいちこんなことで鉄クズを呼んで掃除させるのも面倒だし、自分でやりましょ。

 

 箒を取り出してガラス片を掃いて集めながら、地上のどこに兄さんはいるのだろうと考える。

 

 カウンターズの指揮官は全ては語らなかったがアークに居るなら流石に見つけ出せるはず。

 

 カウンターズが定期的に兄さんに接触してるなら、メティスも参加すれば会える可能性があるし、そうじゃなくても地上において一番信頼できるのもカウンターズなのだから安全に兄さんを探すなら調査に参加が妥当だ。

 

 自身の中で再度兄さんを見つける最適解を出して、掃き掃除を終えたシュエンはそういえばさっきラプラスには伝えたがドレイクとマクスウェルには伝えてないことを思い出して連絡しようと携帯を起動する。

 

 バラバラバラバラ

 

 #000000

 

[時間がありませんので簡潔に、貴方には人質になってもらいます]

 

 こいつって確か今流行りのシックスオーじゃない、ミシリスの専用回線まで潜り込めるなんてなかなかやるじゃない、まぁ脅しだけで直接何かしてきたという報告は受けてないから凄腕のハッカーってだけなんでしょうけど。

 

 コンコンコン、ギィィィ

 

「ちょっとまだ入って良いなんて言って………ッ!!」

 

 突然ノックしてきて返事を待たずに開けて来たから何処のクズか鉄クズかと思ったけど。

 

 鉄クズは銃口を真っ直ぐこちらに向けていた。

 

 激しい銃撃音がする前に素早くシュエンは自身のオフィスデスクに射線を切るように隠れる。

 

 遅れて騒音が鳴り響く。

 

 直接も直接になんかして来てるじゃない!人質にするって言う割に殺す気まんまんだし!?

 

 鉄クズの様子を見るに雇われね、戦闘特化じゃない感じどっかのハウスキーパー紛いを脅したか大金積んだって感じ、じゃないと速攻わたしなんて蜂の巣でしょうよ。

 

 最悪死体でも利用価値があると考えてこんな雑な襲撃してるんでしょうけど、本当に時間がなく焦っているとも言える、ならこのまま携帯で助けを呼ぶのがベスト。

 

 #000000

 

[無駄です、この携帯をハッキングしています、外部への連絡は不可能です]

 

 チッ!ハッカーていう予想が当たってるじゃない、なら恥を忍んで。

 

「助けてぇ!!」

 

 ここはミシリス本社、人っこ1人居ないなんて状況でもないはず、誰か、誰か気づいて!

 

 #000000

 

[それも無駄です、一番手薄な時間を選び、警備がいなくなるよう誤情報も流しました]

 

 ………あれ、わたし詰んでる?

 

「助けてぇ!助けてよぉ!!」

 

 喉が痛い。

 

 でも叫ぶぐらいしか方法が思いつかない………あぁ嫌な思い出が蘇る。

 

「助けて!お願いだから!!誰か!!」

 

 嫌だ、嫌だ!嫌だよ!!やっと………やっと天国じゃなくて現実で兄さんに会えるかもしれないのに!!!

 

 兄さん………あの時みたいに助けてよ。

 

「た゛す゛け゛て゛ッ!!」

 

 喉が裂けても構わないぐらいに叫ぶ、でも誰も、誰も来てくれない。

 

 #000000

 

[シュエン、貴方の行動は無駄です]

 

 銃撃音が止んだ。

 

 地面に落ちたわたしの携帯を誰かが拾った。

 

「そんなことないさ」

 

 この声、懐かしい、あの時もこんな声で助けに来てくれた。

 

 拾った人の顔を見るため顔を上げようとしたら、上げる前に頭を優しく押さえつけられて。

 

 あぁ………あぁ………温かい、温かいよこの手。

 

 撫でてくれた手が離れる、今度こそ顔を確認しようと顔を上げるも何も見えなかった。

 

 涙でまともに前が見えなかった。

 

 だけど構わず目の前の人に抱きつく。

 

 あったらなんて言おうか沢山考えたけど、頭真っ白で何も出てこないや。

 

 でも………これだけは言いたかった。

 

 抱きついて埋めていた顔を上げて助けてくれた人の、兄さんの顔を見て言う。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

―――

 

 マクスウェルは急いでシュエンのいるであろう社長室に向かっていた。

 

 不審なニケがミシリス本社の中に入って行ったという情報を聞き、A.C.P.U.の仕事でしょ?と思いながらも念の為ミシリス本社玄関へと向かうと警備がいないことに気づく。

 

 嫌な予感をひしひしと感じる、そもそも不審なニケの情報をくれた人もわたしがメティスのマクスウェルだから教えてくれただけでもしそうじゃなきゃこの不穏な状況に気付きすらしなかったはずだ。

 

 いない、誰も、一番人が少ない時間帯とはいえ、最低限の人数はいるはず、なのにもぬけの殻みたいになってる!

 

 この時間に不審なニケ………この時間と言えば………シュエン!!

 

 気づいたのなら後は全力で社長室へ向かう。

 

 シュエン!無事でいてよ!

 

 広いミシリス本社とはいえ、メティスの1人であるマクスウェルには狭くあっという間社長室へと到着し、武器を構えながら扉を蹴破る。

 

「シュエン!!無事!?」

 

「い゛や゛た゛ぁ゛ぁ゛!!に゛い゛さ゛ん゛と゛く゛ら゛す゛!!」

 

「そ、そうは言ってもシュエンはミシリスのCEOだろ?お兄ちゃんそう言ってくれるの嬉しいけど、さすがに難しいんじゃないかな?」

 

「や゛め゛る゛!!」

 

「さ、流石にダメなんじゃないか!?」

 

 マクスウェルは真面目に心配して真面目に助けに来たのが入って僅かの間でバカらしくなった。

 

 ただ一応警戒はする、やってることはシュエンが子供みたいに泣きじゃくりながら知らない人物に我儘を言っている構図だが、知らない人物だし、黒い衣装?のニケ?も4人呆れながらその様子を眺めている。

 

 ………とりあえずあの見守っている4人に話しを聞こうかしら、シュエンは藪蛇っぽいし。

 

「ねぇ、あれは………なに?」

 

「賢いわたしは注意するぞ、人に尋ねる時はそっちが名乗ってからだ」

 

「違うでしょバハムート、名前を聞く場合そっちが名乗れって言うのよ」

 

「しかもこっちが一応侵入者ではあるしな、名乗るならこっちからじゃねぇか?」

 

「えっと、ジ、ジズだよ」

 

 何故だろうそこはかとなくうちと似たものの雰囲気を感じるのは気のせいかしら………。

 

「わたしはレヴィ、こっちはバハムートとベヒモス」

 

「よろしくな」

 

「賢そうだな、メガネをしてるわたしの方が賢いが」

 

 フ、フレンドリー、一応自分達で侵入者って言ってたわよね?強者の余裕なのかただ単純にうちと一緒なのか………1人は確定ねとりあえず。

 

「マクスウェルよ、不審なニケの情報が入って、心配だからシュエンの様子を見に来たの」

 

「あぁそれならそこで伸びてる子のことじゃない?、わたし達は直接来たから見られようがないし」

 

 言われて床に倒れてる子を見てみると確かに教えてもらった不審なニケの特徴と合致した。

 

「この子で間違いないわ、この子は後でA.C.P.U.に連れてくとして肝心なあれは……やっぱり何?」

 

 よりいっそうシュエンが泣きじゃくってんだけど、もはや赤ちゃんと変わらないわね、それに比例して謎の人物もオドオドっぷりが増す、なんていうか初めての子育てを見てる気分ね。

 

「えぇっと何て言えば良いのかしら?あの2人は兄妹で久しぶりの再会なの」

 

「シュエンに兄妹?冗談はやめてよね」

 

「そ、そうなるよね〜」

 

「どうせ信じてもらえないなら全部話せば良いんじゃねぇか?しばらくはあっちはあぁやってるだろうしよ」

 

「なら賢いわたしが説明してやろう」

 

「わ、た、し、が、説明するわね?賢いバハムートの話しは理解してもらえないかもしれないし」

 

「そうか?なら仕方ないな」

 

「………苦労してるわね、わかるよ」

 

「もしかしてあんたも?気が合うわね」

 

 説明される前だけどレヴィにシンパシーを感じたマクスウェルは既にどんな話しでも信じてあげようという気になっていた。

 

―――

 

 いやぁ、シュエンには困っちゃったなまったく、あそこまで泣かれるなんて思いもしなかった。

 

「自業自得じゃない?おばあちゃんでも会ってあげようってなってたらもうちょっと大人しかったわよきっと」

 

 それはそう、でもとりあえず会えてよかった久しぶりにシュエンに勲章もあげれたし。

 

「で、でもよかったの?結局一緒に住んであげなくて」

 

 せめてCEOじゃ無ければ王国に来るよう言うがさすがにシュエンがやめちゃったら影響力凄いだろ。

 

「逆はねぇのかよ?」

 

 自分がアークにってことか?ないな、皆んなと一緒にいるこの生活が好きだからね。

 

「ならもう少しいてあげても良かっただろう賢いわたしだからわかったがまだ甘え足りなそうだったぞ」

 

 もう少しもう少しと粘ったらずっといたくなっちゃうだろ、舐めるなよ自分の妹大好きっぷりよ、それに妹はシュエンだけじゃないからな。

 

「そう言えばジエンって子も居るって聞いたことあるわね、シュエンに何処にいるか聞かなくてよかったの?」

 

 ジエンがシュエンと同じように若いまま生きてるなら大丈夫だ………そろそろかな。

 

 バラバラバラバラ

 

『兄さん、お久しぶりやなー』

 

 やっぱり………久しぶり、相変わらずだなお兄ちゃんに顔は見せてくれないのか?

 

『見せたいんやけど、秘密ぎょーさん抱えてるから表出れんくなってなぁ、今は声だけで我慢するわぁ』

 

 流石に自分が生きてることは?

 

『知ってたらこんな地下の地下暮らしなんてしてへんよぉ、シュエンと違うて、わたしはもうニケにはなぁんも期待してへんかったからなぁ』

 

 そっか、なら2人っきりで今度顔を会わせて話そうか、こっちからそっちに行くぶんには問題ないんだろ?だから電話したんだろうし。

 

『さっすが兄さん!わかっとるぅ!楽しみにしとくねぇ』

 

 次会う約束をしたからか単に名残惜しくないのかプツッとあっさりと電話は切られた。

 

「色々と怖いわね、監視してるわけでもないのにタイミングバッチリじゃない、どうやってんのよ」

 

 聞いても極上の兄弟愛が織りなす奇跡やね!とか言われるだけだよ、考えるだけ無駄さ。

 

「そう言えばオレらで揃うのも久しぶりだな、せっかくアークに居るんだしどっかよるか?」

 

「良いわね!何気に盗み以外で来たことなかったし」

 

 そう言えばレヴィは図面盗んで以降は来てないのか、急いで帰る必要もないし、カラオケでも行くか?

 

「で、でも流石にもう歌詞覚えてないよ、音楽たまにしか聴けないし」

 

 あぁ、それもそうだなゲームもそうだが地上に落ちてる奴で聞いたり遊んだりしてるから歌いたい曲とか選べないだよね。

 

「賢いわたしが賢い提案をしてやろう」

 

 ………とりあえず聞こう、なんだ?

 

「全て回ればいい、全て堪能すれば、確実に楽しめる」

 

 ………採用ッ!!

 

 その日の午後にちょっとだけ噂話があった、様々な娯楽施設で遊びまくる謎の黒服集団がいると言う噂が。

 

―――

 

 一方、クリスタル地帯。

 

 セイレーンは言霊を使い、皆んなの動きを封じていた。

 

 (な、なんでこうなったの〜!?)

 

 事情は少し前に遡る。

 

 指揮官からカウンターズという部隊がやってくるけど味方だから警戒しなくて良いよと言われていたセイレーンはせっかくだからと水泡のテーブルや水泡の椅子を準備して歓迎の準備をしていた。

 

 するとそこに新しく王国民になったというフラジャイルの案内のもとカウンターズがやってくる。

 

 最初は和気藹々と共通の話題であるフォービーストの話しをしながら仲良くしていたが、セイレーンの目的の話しになってからおかしくなった。

 

「セイレーンは何でこんな所にいるの?」

 

 アニスが聞いてくるのでセイレーンは隠すことでもないから素直に喋る。

 

「エイブとシンデレラっていう仲間を治療してるんだ、ここに居るのは変に動かすと危ないかもしれないからその場で治療してるの」

 

 シンデレラ、という単語を聞いた途端ラピが突然席を弾かれたように離れセイレーンに銃口を向ける。

 

「ど、どうしたのラピ!」

 

 セイレーンも動揺したがあっちも動揺しているのかアニスが困惑気味にラピに尋ねる。

 

「シンデレラ、いえ、アナキオールはヘレティックよ」

 

 な、何でそれを知ってるの!?とセイレーンはさらに困惑するがカウンターズは逆に少し落ち着いた様子でラピに話しかける。

 

「それは驚きですけど、ですがラピ、そこまで敵対するほどですか?クラウン王国にもインディビリアが居たじゃないですか」

 

「わたしにも正直わからない、凄く倒さないとって気持ちになって、理性的じゃないのはわかってるけど、ヘレティックが全員話し合いが出来るとは限らないわ」

 

 セイレーンは困り、カウンターズも困る、ラピは異様な執念に近い状態に陥っている、事情を話すにしても一旦はここから離れないと出来そうにないほどに。

 

「とりあえずセイレーン、シンデレラ、いえアナキオールまで案内して、状態を見てから判断するわ」

 

 どこか冷静ではないことを察したセイレーンはこのまま連れていってもまともな状況にならないのを感じて申し訳なく思いながら、言葉にする。

 

『動くな』

 

 ピタリと写真でも見ているかのようにセイレーン以外の生物が止まる。

 

「ご、ごめんね、ラピが普通じゃなさそうだから、念の為皆んな止めたんだ」

 

 だが止めたは良いがここからどうしようとセイレーンは考える、とりあえず水泡でラピの脳スキャンをしてみようかと動こうとする前に懐かしい声で懐かしい喋り方で声をかけられた。

 

「待てセイレーン、洗脳の類いなら脳スキャンでも影響を受けるかもしれない」

 

「エイブ!!無事目が覚めたんだね!」

 

 声のした方には皆んなで実戦で活躍できるよう日々訓練していたあの時のエイブが立っていた。

 

「記憶がない時の記憶があるから、大体何が起きたかは把握している、良い友達を持ったなセイレーン、そして記憶を取り戻してくれてありがとう」

 

「うん!うん!!良かった!本当にあの時のエイブなんだね!」

 

「あの時とは違って、大分筋肉質なボディになったがな、仕方がなかったとは言え違和感が凄いな」

 

 セイレーンはやれやれと言った感じでそんな愚痴をこぼすエイブを見て本当に元に戻ったことを実感して涙を流しながら抱きつこうとするがエイブが手を前に出して止める。

 

「感動の再会はわかってるし、わたしもそうしたいがその前にまず目の前の問題を片付けるぞ」

 

「うん!………でもどうしよう?」

 

「………とりあえずどうしてこうなったか説明をくれ」

 

―――

 

「なら、洗脳ってことは無さそうだな、ヘレティックを潰すよう指示する意味がない」

 

 エイブは事情を聞いてさっさと状況を解決するため行動を開始する、エイブもセイレーンとの再会の喜びを早く味わいたいのだ。

 

「そのまま動きを止めていろセイレーン、とりあえずラピを見てみるか」

 

 エイブは動きを封じられているラピに近づき、軽く触診をする、僅かにだが見た目に反して重量があることに気づく、一応男がいるから口には出さないがこれは食事を多量に摂取して中に残っているでは説明できない重量だった。

 

「確かシンデレラの話しを出したら過剰に攻撃性を見せたといったな、なら恨みか?いや、それなら単純に恨みだと言えば良い同情出来るし協力も得られる」

 

 ラピの体を再び調べながらエイブは情報を整理する。

 

 恨みでないとすると単純に正義感?ならインディビリアに対しても過剰な攻撃性を見せていないのが謎だシンデレラの方が強いが単純に危険かどうかならどっこいどっこいのはずだ。

 

 シンデレラとしか対峙したことがない………とかか?

 

 ならラピの微妙な重量はVTCの技術か?だが確かあれは完全に倍の重さになるはずだが、ラピの表層に何も変化もないってことは残り………思いか何かが残っていて悪さしてるのか。

 

「ふむ………レッドフードとかか?」

 

「ッ!」

 

 セイレーンの言霊で動きを封じてはいるが表情など感情の僅かな変化は阻害されず動く。

 

「どうやらあたりみたいだな、確かに第一世代ならシンデレラと戦闘したことがあるから警戒するだろうし僅かな力でも意識に影響を与えるぐらいするだろうな」

 

「ねぇ………エイブ」

 

「なんだセイレーン」

 

「原因がわかって良かったけど………どうするの?」

 

 エイブは腕を組み数巡思考を巡らせると。

 

「どうするかぁ」

 

 セイレーンはこの抜けてる所も含めて本当に戻ったんだと再度実感した。

 

―――

 

『つまり、ラピの継承は完璧ではないと?』

 

「そうだ、話しを聞く限りお別れがちゃんと出来てないとも言えるな、レッドフード側というよりラピ側だな」

 

 どうするかは決まってないが原因が分かったのならラピ以外を自由にしようと、自由にして今のラピの状況がどうして起きたのかの確認のためエイブはカウンターズの指揮官にレッドフードとラピの関係を聞いてそう結論付けた。

 

『だがレッドフードはそもそもコアを移して今も生きてるぞ?』

 

「頭だけのラピがボディを新品に変えたらレッドフードのコアも新しく生まれたのだろう?なら引っこ抜いたところでまたラピのボディに新しく生まれるだけだ、まぁラピのボディにいる方は、思いだけになってるから後は継承さえすれば完全に無くなるだろうがな」

 

『その継承ってのはどうしたら良いんだ?』

 

「知るか、と言いたいところだがセイレーンが居るから問題ない、水泡でラピの記憶からレッドフードの幻覚を作り出すから、そこからはラピ次第だ」

 

 エイブはラピに三度近づき今度は調べるのではなく謝罪の言葉を口にする。

 

「すまない、確かにラピの言いたいこともわかる、だがわたしは………いやわたし達はシンデレラを信じているんだ論理的な証拠などありはしないが信じることに命を賭けろと言われたら躊躇いなく賭けるほどにな」

 

 ラピは眩しいと思ってしまった。

 

 自分は何もない、レッドフードに沢山教えてもらったのにレッドフードになれなかった。

 

 アブソルートを抜けてから変わったように見えて何も変わってなどいない、レッドフードの真似をして強くあろうとするだけ、エイブやアブソルート、レッドフードのように芯が自分には無い。

 

 ラピは水泡により自分を見つめ直せるか、正直不安であった、長い時を経てそれでも前に進めているかと言われればわからない。

 

 そんな自分に幻覚とは言えレッドフードに自分からさよならと、しっかり力を受け継いだと言えるだろうか………。

 

『エイブ、すまないが水泡の件、一旦保留でも良いか?』

 

「あぁ、構わない」

 

「指揮官!?どうしてですか!………喋れる!」

 

 ラピはセイレーンの方を見るとセイレーンは笑顔で手を振っていた、もう大丈夫と思われたのだろう。

 

『どうしてか………ラピ、悩んでるなら口に出した方が良いぞ、ラピの場合表情に出てしまっている』

 

「………それは!………すみません指揮官」

 

『謝って欲しいわけじゃない悩みを打ち明けて欲しいんだ、力になれるかはわからないがアニスとネオン、もちろんオレだって全力で協力する』

 

「そそ!迷惑だなんて思わないわよ?むしろ仲間の悩みを解決できない方が迷惑よ」

 

「そうですよ!ラピが悩んでいるとそれを見たわたしも悩んでそれを見たアニスも悩んでそれを見た指揮官も悩んでしまいます!」

 

「風邪かなんか?」

 

 ラピはじんわりと心の奥底が熱くなるのを感じた機械の体のはずなのに、でもこれは勘違いでも体調不良でもない、確かな信頼をしてくれる仲間に対する自分の信頼の熱なのだろう。

 

 ラピは喋った、自身の悩みを、時間をかけてゆっくりと。

 

 その間一切関係ないフラジャイル、エレグ、ハンマリング、拘束されたリヴァリンは流石に居た堪れないので皆んなの視界の入る範囲で真面目に調査してた。

 

((((き、気まずい))))

 

―――

 

『ふむ、なら水泡じゃなくいっそのこと本人が生きてるんだし本人と話そう』

 

 ラピの悩み、レッドフードになれなかった自分に対して出した結論がこれだった。

 

 もちろんアニス、ネオン、指揮官、それぞれがラピはラピであってレッドフードではないと伝えたが、それではいそうですと気持ちをすっと切り替えなど出来ないだろう。

 

 結局レッドフードと再び話すことが大事なら、本人存命なのだから本人と話す方がいいだろうとなった。

 

「その方が良い、水泡の幻覚にも限界があるからな」

 

 エイブからもそう推奨されたことで本人に会うで確定としたカウンターズは話し合い中ずっと真面目に採取をしてたエレグ達のおかげで後は無事帰宅するだけの状態になっていた。

 

「バイバイ!今度はフォービーストの皆んなと一緒にお喋りしようね!」

 

「次会う機会があればアークの技術者を連れてきてくれ、あっちの最新技術が気になる」

 

 カウンターズと調査隊を元気に見送るセイレーンとエイブ、皆んなが居なくなるまで手を振り続け、居なくなったのを確認したらゆっくりと手を下げた。

 

「騒がしい連中だったな」

 

「でも楽しかったでしょ?」

 

「否定はしない、だが、眠ったお姫様を起こすには少々うるさいな」

 

「だからいる間に起こさなかったんでしょ?」

 

「あぁ、わたしの望む再会とはひっそりとしてるのさ」

 

 エイブとセイレーンはそこから何も話さず歩き始める、向かう場所はもちろん決まっている。

 

 物語りが消えたならまた新しく書き直したら良い。

 

 だが、良い物語りが既に頭の中にあるなら真似したって良い、書き直すのはどうせ自分達なのだから。

 

―――

 

 むかーしむかし、ある所に悪いことをしてしまったが良いこともしたお姫様が眠っていました。

 

 お姫様は王子様のキスで目覚めるのでしょうか?

 

 いいえ、王子様なんて待っていられません、だってお姫様はやりたいことが沢山あるからです。

 

 だからお姫様は自分で目を覚まします。

 

 もちろん自分で目を覚ましたお姫様の前に王子様はいません。

 

 だけど、誰も居なかったわけでもありません。

 

 そこにはまだ見ぬ王子様よりも嬉しくて楽しくて輝いているお姫様の仲間がいました。

 

 お姫様は自然と微笑んでいました。

 

 こんなにも綺麗な物語りの始まりだとは思っていなかったからです。

 

 鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのはだぁれ?

 

 お姫様は自分の持つ鏡で自分と仲間を映しながらそう問い掛ける、しかしその問いは無意味です。

 

 だって最初から映っているんだから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。