フォービーストがアークで娯楽を楽しんでセイレーン達の所に戻るとエイブは記憶を取り戻し、シンデレラは目を覚ましていた。
事情をセイレーンに聞くとどうやら色んなタイミングが重なったらしい。
でもよかった、何事もなさそうで、おっす!オラフォービーストの指揮官!よろしくな!
「どんな挨拶よ」
「フフ、ユニークな人、王子………指揮官と呼ぶわね」
あれ、今王子様って言おうとしませんでした?え、なんでやめたの?
「そ、そんなことないわよ」
たじろぐシンデレラに指揮官はさらに疑惑を深めて、ジィっとシンデレラと目を合わせていると、軽く目をそらされる。
も、もしかして………顔?
「ち、違、わなくないけど、悪気はないわ」
もはやそれが悪気なのでは?え、そんな顔悪い?
「惚れた弱みかもしれねぇがカッコいいと思うぞ?」
「う、うん」
「あぁ賢いわたしが思うんだ間違いない」
「でも王子様って感じじゃないわよね爽やかさはないし」
シンデレラが激しく首を縦に振る、そんな全力で肯定しなくても………もしかして。
指揮官は携帯を弄って写真を画面に映してシンデレラに見せる。
「王子様!」
シンデレラがこれだと言わんばかりにわかりやすく反応する、見せたのはカウンターズの指揮官でした、こいつすげぇ面食いだな!?
「というよりはやっぱ指揮官が王子様っていうか………」
「と、盗賊とかしてそうだよね」
「あぁ、確かに人相悪いわけじゃねぇのにな」
「爽やかが絶望的に足りないな」
そ、そんなにか、でも確かにカウンターズの指揮官はこう若い!って感じだし顔もカッコいいじゃなくてイケメン!って感じだし中身もイケメンだし………あいつ人間じゃないって言われた方が納得するな?
セイレーンはどうだ?自分の顔。
「………良いと思うよ!」
………グハッ。
「あ〜あセイレーンがとどめ刺しちまったよ」
セイレーンに必殺技を叩き込まれてのびている指揮官のもとにエイブがテクテク近寄っていき仰向けに倒れている指揮官を上から覗く。
「ふむ、シンデレラもセイレーンもイケメンが良いみたいだがわたしはこっちの方が良いな」
トゥンク、やだ、心に染み渡る惚れる発言、でもなんで?
「イケメン過ぎて………詐欺とかしてそう」
………あぁ。
皆んな口にはしなかったが確かにと思うのであった。
カウンターズの指揮官はイケメンハーレム種馬媚薬製造詐欺師にバージョンアップしたぞ!
―――
そう言えばフラジャイルはカウンターズと一緒にアークに帰ったのか?
「あぁそうだが………そうかフラジャイルは王国の子だったな」
エイブが思い出したかのようにそう言うから自分で待つとは言わなかったんだな………もしかして気まずかったか空気読んだ?
「いや………多分だけどよ、あのリヴァリンって奴が気になんじゃねぇか?友達ぽかったしよ」
確かに、異様な空気だったもんな、何事もなければ良いけど。
「どうせ迎えにいくしそん時になればわかるわよ、それでセイレーン達はこれからどうするの?」
「ヘンゼルとグレーテルを説得しに行こうってなったよ、上手くいくかわからないけど」
きっと上手くいくさ、ここまで順調なんだこれからも順調に決まってる。
「うん!」
セイレーン達はゆっくりと体を目的地へと向ける、もう行ってしまうようだ。
………それじゃ、またな!
「またねセイレーン!エイブもシンデレラも!」
「またね!指揮官!レヴィ!皆んなも!」
あっさりとした別れ、でもそれで良いんだと指揮官もレヴィもセイレーンも思った。
必ず会いたいと願っていればいつかは会えるんだとわかっているから。
―――
フラジャイル〜迎えに来たよ〜か〜え〜ろ〜。
ちゃっちゃかアークにフラジャイルを迎えに来たけど、アークの何処にいるんだ?携帯、一応全員に持たせようかな?
とりあえずカウンターズと帰ったのなら前哨基地にいるのかな前そこに基本暮らしてると言っていたし。
てなわけで前哨基地に既にいるんだが。
「す、凄い、なんでもあるよ!」
「賢いわたしは遊園地に行くべきだと思うぞ」
「屋外プールって態々ボディ換装してまでここに泳ぎに来るのかしら?」
「武器庫や工房なんかもあんな、圧縮した都市だなこりゃ」
何と言うか凄い敗北感を感じる、なんつうか無駄がないっていうか空間の使い方がすごいっつうか、ぎっしりと施設が並んでいるが圧迫感を感じない絶妙な配置には完敗だね。
レヴィ、前哨基地全部王国にもっていこうぜ。
「無茶なこと言ってないでさっさとコマンドセンター行くわよ、バハムートも遊園地行こうとしないの!」
レヴィに促されてコマンドセンターに向かう最中指揮官は真剣な表情で考え、答えが出たので口にする。
ヨハンの所も綺麗な建築だったし、もしかして圧倒的に建築技術持ちがうちって少ない………?
「真剣になに今更なこと言ってんのよ………」
―――
オレの指揮官室にフォービーストがやってきた、フラジャイルを迎えに来たそうだ。
「えぇ!?リヴァリンがクリスタル隠し持っててフラジャイルが激怒してリヴァリンを撃ち殺そうとした?覚悟決まりすぎてんよフラジャイル!」
セイレーン達と別れてからの経緯を簡単に説明すると、フォービーストの指揮官は何をしてんだと言った感じの反応を返す。
「ご、ごめんなさいぃどうしても許せなくて殺して自分も死のうかと」
さらっと言うなさらっと。
「クリスタルとか大丈夫だった?」
フラジャイルの心配も兼ねてそう訪ねてくる、丁度良い、こちらからそのことについて連絡しようとしていたんだ。
『リヴァリンの隠し持っていたクリスタルが割れて破片の一部が運悪くハンマリングの頭部に当たって現在はこうだ』
そう言ってフォービーストの指揮官に見せたのは頭部だけになって機能停止状態のハンマリングが入ったケースだ。
「あらま、フラジャイル、気持ちはわかるけどこれだと君が嫌っているシックスオーと変わらないよ」
「ッ!!そう………ですね」
ちゃんと叱るというか諭すんだなフォービーストの指揮官も、なんやかんや上の世代の先輩っぽいしそう言う所はしっかりしてるのかもな。
そんなフォービーストの指揮官は少し考え込む仕草をすると静かに口にする。
「丁度良いかもしれないな、フラジャイル、そんな死にたいなら」
フォービーストの指揮官はゆっくりとした動作で腰のホルスターから侵食したニケ用の拳銃を取り出し、なんの躊躇もなくフラジャイルに銃口を向ける。
『何を!?』
「死ぬと良い」
バンッ!!
―――
目の前の怒り心頭なカウンターズの指揮官を横目にささっと書類を書く、内容はフラジャイルの死亡手続きだ。
フラジャイルはもちろん生きてる、自分がwwwニケをwww殺せるwwwわけないじゃないかwww。
『結局何故そんな手続きをしているんだ?』
ここに来る前にバーニンガムに言われたんだよアークにいるニケを連れてくなら問題にならないように死亡手続きをしておけって、確かにこれからもスカウトするかわからんし、しなきゃ突然行方不明になるわけだし必要だ。
死亡理由は………カウンターズの指揮官との痴情のもつれと。
カウンターズの指揮官が物凄い速度で横までやってきて紙を奪ってシュレッダーにかけた、何してんの!?
『それはこっちのセリフだまともな理由を書け!後銃を撃った理由を聞いてないぞ』
何故って言われてもなぁ。
フォービーストの指揮官はいまだ撃たれて呆然としてるフラジャイルの側まで行って先程の銃を撃つ行動とはうって変わって優しく話す。
フラジャイル、さっきので君は死んだ、そう思ってはくれないか?
「え、えぇ、な、なんで、ですかぁ」
死んでほしくないからに決まってるだろ?リヴァリンがフラジャイルにとって大切な友人であると理解している。
だけどただの友人でもある、結果的にフラジャイルの妹を直接ではないにしても殺した相手でもある、君がやめてと訴えたシックスオーとの関係も続いているし、保身の為か金の為かはわからないが危険物であるクリスタルも独断でアークに持って帰ろうとした。
フラジャイル、君には見捨てれないほどに大切なリヴァリンとの思い出があるのかもしれない。
だから、さっきのでフラジャイル、君は死んだ、書類上でも死んだ。
だから、お願いだから死のうとしないでくれないか………お願いだから。
フラジャイルは後悔が波のように押し寄せた。
わたしのことをこんな涙を流してくれるほど大切に思ってくれてる人をわたしは裏切ろうとしてたんだ。
リヴァリンがわたしを裏切り続けるみたいに。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」
子供が謝っても許されないかもしれないけど謝ることしか出来ないから謝る、そんな光景が指揮官の目の前で、フラジャイルはしていた、いやするしかなかった。
自分がしたことの悪さ、相手がどれほど自分を心配してくれてるか気づいた時の戻れない後悔、どうすれば好きな人に失望されないかわからず、ただ謝ることしか出来ないことにさらに後悔がやってくる悪循環。
しかし謝った。
反省した。
なら目の前にいるフォービーストの指揮官は許すだろう、他が許さないと言っても許すだろう。
それはどんな毒よりも猛毒でどんな薬よりも益薬だ。
フラジャイルはもう前には戻れないだろう、裏切りとはつまりこの甘美な中毒を止めることに他ならない。
フラジャイルは既に指揮官に許してもらい、また中毒に戻れたことを喜んでいた。
しかし劇薬は追加された。
そうだ、これプレゼント!今来てる服ボロボロだろ?お気に入りだからずっと着てるんだろうけどたまには別のも着て欲しいと思ってさ、あ!もちろんずっとそのままでも良いけどね?
あぁ、もう、お終いだ。
フラジャイルは自分の中でリヴァリンが過去の友達になったのを感じた。
その証拠に次の日、フラジャイルは指揮官からもらった服着て、リヴァリンに貰った服をゴミ箱に捨てた。
―――
いやぁベヒモスがいて良かったな!ハンマリングのクリスタル取り除いたけど無事助かったらしいぞ、今カウンターズの指揮官から連絡きたよ。
「自分の所為じゃねぇが生み出したのオレだしな後味悪くならなくてよかったぜ」
………さて、ハンマリングは助かったがこっちは助かると思うか?
「おもわねぇな………どうすんだこれ?」
城の正面、クラウン王国中央広場にクリスタル地帯から持ってきた巨大ハーモニーキューブが鎮座している。
流石巨大なこともあり建築演算能力がかなり強力ですぐに建物が建つ………のだが。
「ど、どうすれば止まるのだ!?」
「アハハ!建物がチ○コみたいに高くそびえ立っています!」
「ちょっとこれいくら切断しても生えてくるじゃない!?動力どうなってんの!?」
「こ、これぇどうしたらいいんですかぁ」
「わ、わたくし用を思い出しましたわ!」
「お、お嬢様!?」
………自分も用事思い出したかも。
「ふざけてないでアイデア出して指揮官!?これせっかく運んだのに壊したくないんだけど!?」
巨大ハーモニーキューブによって生み出される大量の建築物の山を皆んなに破壊してもらいながらどうするか指揮官は考える、考えて考えて。
思いつかない。
「ちょっと!思いついてよ!?」
とりあえず………放棄して逃げるか………。
ハーモニーキューブを設置したその日にクラウン王国はハーモニーキューブによって陥落。
1日どころか半日でクラウン国民は国無しになったとさ。
―――
第一回ハーモニーキューブ操作出来る奴探そう会議を始めたいと思います。
何か案ある人。
「は、はぃさっさとキューブを壊す」
フラジャイル、会議のタイトル聞いただろ?却下だ。
「賢いわたしが再び弄れば元通りのはずだ」
却下………え、原因バハムートだったの?おやつ抜きね。
「は、はい!空からロボットに乗ったニケを見つけて連れてくる!」
………やけに具体的だなジズ?でも確かにロボット操れるなら機械の操作得意そうだしな!採用!さっそく頼む!
「うん!ここに既に連れて来ました!」
………3分人攫い?
―――
ここ、何処だろ?
目が覚めるとさっきとは別の場所にいることがわかった。
救助を待ってる間に寝ちゃったけど、誰かタロスごとアークに運んでくれてるのかな?
とりあえずお礼を言おうと周辺を見渡すと横に壁があることに気づく。
壁?………キロは自分で壁と形容したことに疑問を感じるぐらいにそれは壁というには簡素だし部分的過ぎた。
例えばこの城壁?サイズの大きい壁は何故か畳1枚分だけの幅立っている左右は普通に更地だ。
まだなんかのモニュメントと言われた方が納得する。
家も凄い雑だ勿論住めはするけど外側だけ真似て柱や工法などガン無視した作りだ、家のペーパークラフトだこれでは。
「起きたかい?」
!!お、男の人!指揮官ってことかな?わぁ初めて見たかも!部隊転々としてたけど指揮官が居るほど大きい部隊入ったことなかったや!
「はい、指揮官の部隊が救助してくれたんですか?」
「………そう!そうなんだ!偶々見つけてねとりあえず助けようとここまで運んだんだ!」
『キロ、騙されてはいけません、その男の部隊の1人がわたし達を攫ってきたのです』
え!?人攫い!?………え、地上で?アークとかではなく?でもタロスが嘘つくとは思えないし、ど、どうしよう、攫われたってことはきっとあっちの方が強いよね………い、命乞いとかした方が良いかな?
そんなキロの心配を他所にタロスの発言に指揮官は汗を大量に流しながら、物凄く申し訳なさそうに謝って来てくれた。
「す、すみません、食事でもヘソクリでも何でも出しますので許してください!!」
さ、攫ったわりに腰低い人だなぁ、ど、土下座までされちゃうとこっちが申し訳なくなっちゃうよ。
「え、えっと、あんな所で立ち往生してたわたし達も悪いですし良いですよ」
『いいえ、キロ、ここは食事もヘソクリも要求し、こっちの懐と胃を満たすべきです』
「タロス!ご、ごめんなさいジョークを覚えてからずっとこんな感じで!」
印象悪くしてやっぱお前ら殺すとかなったら勝てないんだよ!?
「ハハハ、お互いダメダメっぽそうだな」
う、初見の人にもそう思われるってそんなわかりやすいのかなわたし………でもお互い?
「攫った人をどうするかなんて知らないから、とりあえず土下座して謝る………ダメダメだろ?」
確かに………ダメダメかも。
キロと指揮官はお互いにダメダメかもと思うと途端に笑えて来て互いに微笑み合う。
「えっとそっちのタロスが言ってたけどキロ………で良いかな?もし良ければ救助が来るまでの間この王国にいなよ、ここら辺のラプチャーはほぼゼロだけどいっさいいないわけじゃないからね」
キロは正直助かったと思った、あんな荒野の真ん中にいたら人攫いなんてまだ優しい、ラプチャーが来るかもしれないのだから。
「えっと、じゃあお言葉に甘えて」
キロとタロスは指揮官について王国へと入る。
結果だけ言うなら救助は来なかった。
しかしキロは驚きはしなかった部隊を転々とする役立たずではいつかそうなると思っていたから。
だけど王国は違った、建築にハーモニーキューブの操作など役があった。
そんなのなくてもずっと居たいし、居て良いと言ってくれるだろうけど。
ただこのキロとタロスのクラウン王国に対する感想はこの入国の日から変わらない。
((え、王国なの………ここ?))
―――
一方その頃エデンでは。
「キャハハ、レッドフード弱過ぎ〜」
「アハハ本当ですね〜」
「こ、このちびガキとメガネがぁ!直接の戦闘ならまけねぇぞ!?」
「えぇ〜ゲームで勝てないからって暴力とかダサすぎぃ」
「そうですよ、そもそもこれで勝負しようって言ったのレッドフードですよ?」
「グヌヌ………なら今度はこれで勝負だ!」
「何でやってもわたし達には勝てないと思うけど、ねぇネオン」
「えぇノア!最強の盾と最強の火力が揃い最高ですからね!」
のんびりしていた。
と言うのもラピの継承問題の解決のため、ハンマリング治療後、エデンにやってきたカウンターズであったが、いざレッドフードに会って話そうとなったらレッドフードが。
『うぅん、そうは言われてもな何を話せば良いかわかんねぇよ、ちょっと考えさせてくれよカッコいいの思いつくからよ!』
そう言ってから2日ほど経とうとしてる。
「ねぇパピヨン、イサベル、これ大分前のファッション雑誌じゃない、最新じゃないと意味ないわよ?」
「しょうがないじゃない、エデン以外に行けないんだから、それだってわたしがここに来る時持ってたやつよ?」
「そうね、空を飛べるからってアークに入れるわけでもないですし」
「なら丁度いいわ!地上のどっかで捨てようとしてたファッション雑誌ここに置いてったげる!いざ捨てようと思うとポイ捨てしてる感じがして捨てれなくって!」
「してる感じではなくしてるのですよそれ」
「そうよ!てか結局それも古いってことじゃない!」
カウンターズは特段急ぎの用事がないので変に急かして話し合いがうまくいかないのも困るとのんびり待つことにした。
「ねぇハラン、セシル、ウイルスは指向性を持たせたり手榴弾のように携帯は出来ないの?」
「自己増殖型だから量の増減は出来ても発生地点からコントロールはできないわ、手榴弾は………どうかしら?」
「難しいですね、そもそも素材単位で食い破るウイルスなのでハランと同じボディの手榴弾なんて作ってたら赤字です」
「そう、一個だけでもあったら選択肢が増えて良いと思ったのだけど」
「一個ぐらいはいいんじゃない?ねぇセシル」
「………まぁ作っておきましょう、ですが本当に一個ですよ?地味にハランのボディの素材作るの大変なんですから」
2日もいれば、というよりはレッドフードがいるおかげで雰囲気が全体的に軽くなっているのかカウンターズとエデンの仲は深まっていた。
『シエンはヨハンと同期だったんだな』
「あぁ、あいつとは………まぁ………腐れ縁ってやつだ」
「凄い含みのある言い方ですね、そういえばヨハンからシエンの話しを詳しく聞いたことがありません」
『それを言ったらドロシーとシエンが仲良いのも驚きだがな』
「あれは一方的に好かれてるんじゃないか?」
「わたしも好いてますよ?裏表なく素直で可愛いじゃないですか」
『犬かな?』
「サインあげると、喜びますし」
「犬だな」
―――
「思いつかねぇし、ラプチャー倒しに行こうぜラピ!」
そう言われてラピはレッドフードと2人でラプチャーを倒しにエデンから少し離れた丘へとやって来た。
ラプチャーを1体2体と仕留めていくが銃声は一つしか響いてこない。
誘って来たのはレッドフードの割にレッドフードはラピからちょっと距離を離した岩に腰掛けいつもの大好きなカントリーミュージックを聴いてのんびりとラピの様子を眺めているだけだった。
「ねぇレッドフード、わたししか戦っていないのだけど」
「まぁまぁ、もうちょっと頑張ってくれ」
5体6体と倒していく、銃声の数は変わらない。
「ねぇレッドフード、わたししか戦っていないのだけど」
「まぁまぁ、もうちょっと頑張ってくれ」
8体9体と無理なく倒していく、銃声の数は変わらない。
「ねぇレッドフード、わたししか戦っていないのだけど」
「まぁまぁ、もうちょっと頑張ってくれ」
11体12体と怒りを込めて倒す、銃声の数は変わらない。
「同じことしか喋らない、侵食の可能性があるから処分するわ」
「わぁ!?待て待て!!悪かったよ!だから躊躇なく撃ってくるな!!」
しばらくラピの怒りの銃撃を交わしてお互いに少し疲れた所でレッドフードは真剣な表情になってラピに師匠としての一面を見せる。
「なぁラピ、ラピは全て受け継いでるぜ?少なからず技術面はな」
「………そんなことは!」
「そんなことあるさ、直接戦闘を確認してそうだと思ったし、今から確認をする」
そう言ってレッドフードはセシルに用意してもらったのかラピと同じ性能のアサルトライフルを構えてラピの真横に立つ。
「行くぞ?」
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12体、先程とは倍の速度でラプチャーを撃破する。
銃声の数は変わらない。
全く同じタイミングで同じ場所に弾丸は放たれ着弾していた。
「な、技術面は確かに受け継いでるだろ?」
「………だけど、わたしは………レッドフードみたいになれなくて」
「それだけどよ、あたしになるなって元から言うつもりだったけどよ、こうやって生きてて思うんだ」
『足りないってな』
「足りない?」
「だってそうだろ?あたし達ゴッデスは今のニケ達よりも変わらず強いんだろ?だけどあたし達ゴッデスはよ」
レッドフードは空を見上げ、丘の上の小さい岩に登り地平線を眺める、その視線の先には遠くではあるがラプチャーの群がうようよしていた。
それに深いため息を吐きながら。
「地上を奪われた負け組だぜ?」
悲しそうにそう呟く。
「違う!」
ラピは反射的に声を上げる。
「違くねぇさ、ハプニングが無ければ、アイツが居なければ、あの人が生きてれば、あたしが侵食されなければ、そんなの言い訳でしかねぇ」
そんなのきっとあっちも同じだ、そう言ってレッドフードは地平線に沈む夕日をいつもの呑気さを無くして眺めている。
夕日が完全に沈み辺りは暗くなる、地上は荒廃している、灯りなどなく、すぐさま星と月だけが頼りの夜が訪れる。
「だからラピ、お前はあたしになるだけでは全然足りないんだ、あたし、正直ちょっと怒ってんだぜ?まだそこで燻ってんのかって」
赤ずきんは狼のような獰猛さで獲物を睨む。
そこに師匠だから、可愛い弟子だからと手を抜くような優しさは感じなかった。
「武器を構えろラピッ!!殺す気で来いッ!!」
しかしこれから始まるのは一番の師事である。
夜は来た。
狼は吠える。
狩の始まりだ。