夜に銃声が鳴り響く。
互いに持っている武器は同じアサルトライフル、しかも実力が同じであることを証明するためスペックは同等。
さらに技術も同等ともなれば、戦いは拮抗する。
………はずだが。
「ッ!」
戦況はラピの方が不利な状況になっていた。
理由は簡単、夜戦の実践経験の差、レッドフードの主兵装がスナイパーライフルであることもあり、普段はアサルトライフルのように担いで走りながら撃つなど第一世代の身体能力の高さをフルに生かした戦いをするが主戦場は狙撃によるサポート、そして一切自分にはヘイトが向かずかつラプチャー特有の赤いコアだけが浮き上がる夜が最大の力をはっきする時間帯だ。
視力と聴力をフル稼働させてレッドフードを捉えようとするラピだが、ニケの聴力でも聞こえない程静かに移動するため、夜の視界の悪さもあって本体を明確に補足できない。
(だけどパターンはわかってきた、物陰から物陰へオーソドックスな狙撃者の動き、次で当てる!)
………今!!
(居ない!)
ラピは対象がいないことで自分に攻撃が来ることを察知して、予測して回避行動を取る。
(正面から背後に回る時間はないはず、なら左右のどちらかからの薙ぎ払うような射撃、それなら前に!)
ラピは前にダッシュして岩を手を使い飛び越えてそのまま岩の背後に隠れる。
遅れてアサルトライフル特有の連射音が鳴り響いてラピの岩を表面を削る。
弾薬が無くなったのか射撃が止まったのを確認して別の岩陰にラピは素早く移動しようとすると。
バンッ!
単発で撃たれた銃弾がラピの肩を貫きダメージを与える。
痛みで動きを止めそうになるのをニケの痛覚遮断を利用して強引に走り岩陰になんとか隠れる。
(自分の愛用してるスナイパーライフルでもないのに弾数を正確に把握してる、音で弾切れか判断するのは無理ね)
近づかれないよう軽く威嚇射撃をしながら次にどうするかをラピは思考する、だがそれはレッドフードも同じ、そしてレッドフードの方が先に答えを出した。
夜とはいえ月明かりが存在するはずの状態で何故かラピの周囲に突然影ができる。
すぐに影の原因、頭上を確認する。
(ッ岩!?)
ラピは右側に跳ぶように避けて、勢いそのままで走りに移行する、そこに後を追うように弾の雨が横から飛んでくるが間一髪で再び別の岩陰に隠れることが出来た。
「ラピ、逃げてばっかりじゃねぇか、あたしを抜くどころか追いつけもしないぞ」
「そんなことはわかっているわ!」
ラピは感情に任せて髪を真紅に染めていく、そして隠れている岩を強引に掴み上げて、そのまま先程の声と銃声がした方へと岩を盾にして突撃する。
レッドフードはそれを冷静に後ろに下がりながら岩盾から僅かに見える足下を撃とうとしたら。
バゴォンッ!
岩が破裂した。
正確にはラピが岩を正面から殴り壊し、即席のショットガンへと変えたのだ。
これにはレッドフードも驚き急所を守るように腕で体を庇う。
腕、足、右脇腹、左肩、頭部右側上部。
被弾箇所は5箇所、ただし岩ということもあって明確に動きを阻害するほどのダメージは負わず、そのままレッドフードは防御から射撃に移行しようとするが。
(射撃戦は不利!なら近接戦ッ!)
レッドフードに撃たせる前に距離を詰めたラピが勢いそのままにレッドフードの顔面を殴ろうと拳を振るう。
しかし、拳はレッドフードの手の平に収まって止められてしまう。
「赤い髪、身体能力の向上、確かにあたしだし、追い付きはしたな、だが言ったよな」
『足りない』
ラピの今の姿はもし別の世界が存在し別の未来を辿っていればラピ:レッドフードと呼ばれて、セブンスドワーフゼロを使い空を飛びドリルで敵を攻撃し、縦横無尽に活躍していただろう。
だが別の世界の話し、この世界ならまだレッドフードに追いついただけ。
「なら………どうしたらレッドフードを………超えれるの?」
それは何もない少女の渇望だった。
何かになりたくてレッドフードになりたくなって、でもなれなくて。
追いついても足りないと言われて。
なら結局わたしは………なに?
「ラピ、前からそんなんだったか?」
え?
「うだうだ考えこんでよ、お嬢様もそうだが自分の在り方を必死に悩みすぎなんだよ」
「だって………そうしないと」
「そうしないと?何だよ、飯が食えなくなるわけでも仲間がいなくなるわけでもねぇだろ?」
それは………そうだ………別にご飯が食べれなくなるわけでもないし、技術がレッドフード並みなら仲間だってそう簡単に失うことはない。
「お前はもっと単純だったろ?あたしになりたいからあの時あたしにそう言ったんだし、口より先に手が出るタイプだったじゃねぇか」
言われてあの時を思い出す。
色の無いわたしの前に赤が飛び込んで来て、何もかも完璧に見えて、だからお願いした、赤になりたいと。
きっとその時から色の無いわたしは徐々にだけど赤に染まっていったんだと思う、そして今はレッドフードと同じ赤になった。
色は同じになった。
なら、これからは?………………いや……………今はどうしたい?
ラピの表情が変わったのを見て満足そうにするレッドフード。
「そうそう、そうやって目の前のことに集中してる方が何億倍も大切だぜ?で、どうしたいんだ?」
ラピは即答する。
「決まってるでしょ?あなたに『勝利』するッ!!」
もう言葉は不要になった。
お互いに拳を握り込んで全力で顔面を殴りつけた。
―――
(確実に動きがよくなったな。)
お互いに顔面を殴りお互いに吹き飛んだらすぐさま第二ラウンドの始まりといわんばかりに銃撃戦に切り替わる。
レッドフードは先程と同じように夜に乗じて位置を特定されないように遮蔽物に隠れて攻撃するが。
ラピも同じ手は通用しないと言わんばかりに強引に近づいて、こちらを見失わないように遮蔽物を殴りで粉砕して隠れ場所を無くしてくる。
このままだとジリ貧だが、このまま何もしないわけがない。
レッドフードは次の遮蔽物に向かう動作をして、そちらとは逆方向に地面を蹴るようにしてバックする。
ラピの不意を突く形になったが、ラピは遮蔽物を先程とは違い拳ではなく人差し指に指を合わせるドリルような手の形状にして遮蔽物である岩を壊さずに貫通し、そのままレッドフードへと力任せに放り投げてきた。
(岩が大きくてラピが見えねぇ、だけど左右に避ければ銃撃による被弾はさけれねぇ、なら!)
銃を下ろし、すぐさまパンチングマシンを殴るようにレッドフードは大きく振りかぶり岩を殴りつける。
岩は粉砕され、ラピの使った即席ショットガンを仕返した。
ラピに少しはダメージが入るだろうと、自分の有利な距離をとろうと後ろに下がろうとするが。
(おいおい!岩の真ん前でも立ってたのかよ!?)
レッドフードの視界には岩の即席ショットガンをゼロ距離で受けてボロボロになりながらもラピが自分の予想を大きく裏切る形でこっちに近接攻撃をしかようとする姿であった。
(ちっきしょ〜!?こちとら喧嘩ぐらいしかしたことないんだぞ!)
近接戦においてはレッドフードよりラピの方が有利だ。
ラプチャー戦において一部の例外を除き銃撃戦オンリーだからだ、だから最低限の知識は叩き込んであるが、本当に最終手段程度のものだ。
これに対してラピはアブソルートの訓練の一つの組み手を真面目にこなしていたし、本人が口よりも拳だし銃と拳どちらも届くなら拳の精神のためめっぽう強かった。
仕方なくレッドフードは近接戦に応じるも、どうしても喧嘩と格闘技では明らかに部が悪く、顔に腹と二、三発もろに右ストレートが決まってしまう。
このままではまずいとレッドフードは足で土を巻き込んで蹴り上げて視界を塞ぐように土埃をあげて、わずかに出来た隙でラピに威嚇射撃をしながら距離をとる。
(なんだよ………ちゃんと強いじゃねぇか)
レッドフードは軽く微笑む、うだうだ悩んでようが訓練などは欠かさなかったんだろう、しっかりと一番最初に教えたころより成長してるのがわかって嬉しかった。
(あたしになれないと大事な仲間も失うかもしれないとかそういうこと考えちゃうんだろうけどあたしになったって守れねぇっつうの)
レッドフードは寂しそうな表情を浮かべながら少しだけ思う。
(もし………あたしがもっと頑張ってたら地上は奪われずに済んだのかね?)
レッドフードはたらればを考えるもすぐさま思考を切り替える、ラピが近づいてくるのを捉えながら、どうするかを考える。
最初は負けても良いと思った。
ラピが成長さえしてくれればそれで良いと。
だけど、ラピの持つ赤に当てられちまった。
「ラピッ!勝つのはあたしだ!!」
牽制射撃をしながらある地点へと向かう、もし今回の戦いにラプチャーが乱入した時の念の為にと昨日仕込んでたとっておきを取り出す、とっておきっつうかいつも使ってるのだが。
「ウルフスベインッ!」
それはレッドフードが普段から使っている愛銃、スナイパーライフルのウルフスベイン。
だがかなり距離が近い状態でスナイパーライフル?と思うかもしれないがこのウルフスベインにはある特徴がある。
レッドフードは通常弾倉を急いで破棄し、赤い特殊弾倉を装填、そして本来オートマチックには必要ないボルトアクションレバーへと手をかける。
本来ボルトアクション操作は余計な部品が少ない分射撃の精度が上がるが1発1発手動操作を行わないといけないから連射出来ないのが特徴だ。
だがそれは人間の話しだ、ニケなら、第一世代なら、それを無視した圧倒的精度と連射を実現する。
その驚異的な精度、威力、連射は、赤ずきんの名を冠しているニケなのにこう呼ばれていた。
レッドウルフ
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!
容赦のないレッドフードの猛攻にラピは隠れるしかない。
と、誰が決めた。
(ッ!!本当に!本当にッ!!強くなりやがったなラピ!!)
ラピは近づく速度を緩めることなく、レッドウルフを回避し続ける。
感覚?レッドフードの視線?引き金の指の動き?見てから回避?それとも予測?
どれだ?全てだ。
ラピは限界を超えて動いていた、それはきっと赤くなる前のラピなら脳が焼き切れるほどのものかもしれない。
ラピは限界の限界を超えてレッドウルフを避けてレッドフードに近づいていた、それはきっと今の赤いラピでは脳が焼き切れるほどだろう。
だから、ラピは桜になった。
色の無い白い自分と真っ赤なレッドフードを合わせて、鮮やかでそれなのに淡い、綺麗な桜色へと。
ズドンッ!ズドンッ!ズドンッ!カチッカチッ
レッドウルフに使用する特殊弾薬が無くなった。
レッドフードの前にラピは立っていた。
勝負は決した。
夜が明けていく、レッドフードが夕日に赤い髪を靡かせていたように。
朝日がラピの綺麗な桜色の髪を輝かせていた。
―――
「指揮官、あーんしてください手が動かないので1人では食べれません」
『いや、自動で食べさせてくれる機能がこの医療用ベットにはついてるみたいだが』
「わかりませんか?食べさせて欲しいのです、言わせないでください」
『お、おう』
「………ちょっとレッドフード、うちのラピに何したのよ!?髪がピンクになって性格も積極的になってるじゃない!」
「指揮官、食べさせるのは苦手ですか?しょうがないので口移しで良いですよ」
『お、おう』
「………淫乱にもなってるじゃない!!」
レッドフードとラピがエデンに傷だらけで戻ってきた時は皆んな総出で心配して、特にカウンターズはラピを、ドロシーはレッドフードの心配をして、急いでメディカルルームへと叩き込んだ、これが朝にあったこと、そしてベッドに寝かせた瞬間ぐっすり眠った2人は今起きて昼だ。
「あたしに聞かれても!?思考転換とかではねぇぞ!吹っ切れたから元から思っていること言うようになっただけじゃねぇか?」
「………ラピはむっつりだったんですか?」
ネオンの発言にノアは軽く吹き出すが、ラピは違った。
「えぇ、きっとむっつりだったでしょうね、だからこれからはしっかり発散して行くわ、指揮官で」
『お、おう』
「これは………とんでもない怪物が生まれたかもしれませんねアニス」
「あぁ………ラピが見た目もピンク、中身もピンクに!せめて清いピンクであってね!」
「どんなのですか清いピンクって」
「もしかして………今の私はダメ………なのかしら?」
ラピがシュンと落ち込むのを見てアニスは言い過ぎたと急いで言い直す。
「あぁそんなことないわ!………むしろ、自分の中身を出してくれてるんだってちょっと………ううん凄く嬉しい」
「そうですね、クールキャラも良いですが内側を知れる今の方がありがたいですね」
『お、おう』
「指揮官も『オレもラピが良い方向に変わってくれて嬉しい』と言ってますね」
「お、おうしか言ってないじゃない!?指揮官様!戻ってきてぇ!!」
騒々しいベッドを横にしながらレッドフード側のベッドは隣と比べて静かに話し合っていた。
「本当、揃うとやかましいですねカウンターズは」
「ハハハ!そう言うなよお嬢様、でも漫画とかでよくある師匠を超える奴、する側はかっこいいけどされる側は寂しいな」
「超えてほしいからしたのにワガママですね?」
「そんなもんだろ、でもま、これであたしの師匠業務は終わりかぁ」
「なら次はライバル業務ですね」
「ありゃ、バレた?」
「目が負けてらんねぇって言ってますよ」
そう、レッドフードは負けた、なら師匠の役目は終わりだ。
しかし漫画のように死んではいない、なら次がある。
そしてレッドフードは負けっぱなしは嫌いなのだ。
メラメラと燃え上がる同僚を見て、ドロシーはレッドフードにはわからないよう紅茶を飲むふりをしてティーカップで隠した口元で微笑む。
ドロシーはフォービーストの指揮官にお願いして、レッドフードを連れ帰ってきてもらった。
ドロシーが望み、ドロシーが願った、紛れもないドロシーのワガママだ、だからこそ不安が残っていた。
選んだのはレッドフードだけど、死のうとしてる人を引き留めて良かったのかと。
だけど、その心配もしなくてよくなった。
だってこんなにも熱を持ったレッドフードはゴッデス時代でもドロシーは見たこと無かった。
―――
ブロロロンと軍事車両を走らせて、軍服を纏った人間が1人、荒野の真ん中へとやってきた。
理由はアークのどの通信も届かないようにするため、もちろんそれは秘匿回線も含めてだ。
軍事車両を降りて荒野へと降り立ち、態々通信が届かない所へ来たと言うのに携帯を起動しはじめる。
軍服は副司令官の立場が着るものだった。
となればもちろん着ている人物は副司令官であった。
名はドバン。
そしてドバンの携帯には何故か圏外でメッセージがこないはずのBlaBlaのメッセージが届く。
#000000
[調子はいかがですか?]
「最悪に決まっている、貴様が考えていたシュエンを人質にする作戦は失敗に終わり、せっかく用意した人が撃てないリミッターを外した貴重な奴を無駄にしおって」
#000000
[まさか、あそこまで人外に近い移動手段を持っているとは思いませんでした、最初から直接シュエンを狙えば良かった]
「言い訳は良い、まぁ更生館に送られたなら結局オレの作戦には支障はないだろうが、そっちは順調か?」
#000000
[滞りなく、エニックが気づくころには既に手遅れになってるでしょう」
「なら貴様をここに放置することはなさそうだな」
#000000
[こちらも、貴方の汚職をエニックにリークする必要がなくて安心しました」
互いに外道、信用などまとわりつく泥としか思っていない2人、だからこそ気兼ねなく利用する、気兼ねなく裏切るし切り捨てる。
しかし外道は外道にしか始末できないように外道を理解するのもまた外道であり皮肉なことに互いに一番使い勝手が良いのはこいつだと思っていることだろう。
出会ったのは偶然、否、必然であった。
シエンという存在を邪魔者だと感じていた2人からすれば手を組むのは時間の問題であっただろう。
そしてさらにここにクズが1人追加される。
「あら、もう来てらっしゃたんですか?言ってくだされば早く来ましたのに」
外道2人がお互いを利用するなら、このクズはリスクを負わず利益だけ得ようとする寄生虫のような存在だ。
名はミラー。
「それで、ダークマターに関するデータや実物は手に入りましたか?ニケのリミッターを解除してあげてるのですからそれぐらいしてくれても良いですよね?」
「ふん、高みの見物をしといて図々しい、ホラ、微量だがしっかりあいつらフォービーストが使用してたダークマターだ、この薔花ってのに渡せば良いか?」
「えぇ、そうしてください」
ミラーは薔花にダークマターをよく見えるように掲げてもらう。
ダークマター、それはクイーンの血、クイーンの無限にも近い再生力を支えてるのはこれのお陰だ、どうやらフォービーストはこれを地球が生み出した物質と考えているが元はクイーンの物だ。
そう、『元は』だ地球だって生きている、それこそ適応してみせる、ダークマターの無限の増殖に地球は適応し、本当に地球産のダークマターを生み出し今やその境界線は曖昧となった。
ただ徹底的な違いがある。
ダークマターに被爆したさい、ニケが適応するかどうかだ。
本来ダークマターはクイーンしか扱えないしかし地球産ダークマターはニケであるフォービーストにも適応しダークマターを扱えるようにした。
まだ実例がフォービーストだけだから確かめようがないがほぼ確実だろう。
そしてこのフォービーストの使うダークマターから必要要素を抜き取ることが出来れば。
ダークマターの被爆というリスクを冒さずにダークマターを扱えるようになる。
ミラーはこれからを考えると微笑まずにはいられなかった。
「次会う時は作戦のときですね」
「あぁ、準備しておけよ」
#000000
[貴方もですよドバン]
「ふん、すぐミスする奴に言われたくないな」
ここに外道2とクズ1が揃った。
幸せだけを描いた御伽噺は存在しない。
幸せにはそれ相応の悪がいる。
ラピ:フードオフ
彼女はレッドフードに憧れ、レッドフードになりたくて赤ずきんを被り、レッドフードを超えるために赤ずきんを脱いだ。
ラピ:レッドフードを超える身体能力と情報処理速度を実現した第一世代型フェアリーテールモデルすら凌駕する姿。
その驚異的な性能で弾丸予測、行動予測などあらゆる予測を演算し未来予知に近い精度で相手の行動を把握し先んじて動くことが可能、逆転不可能と言われる戦況すら可能と覆す『勝利』の象徴と後に語られる。