フォービーストの指揮官の日常   作:デュエルしろよ

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過去話 レヴィとセイレーンと指揮官

 ドバンは焦っていた。

 

 第二次地上奪還戦でめぼしい活躍も出来ず、むしろ無意味に兵であるニケを消耗し、使い潰してしまった。

 

 副司令官という立場でもこの過剰な損失は本来であれば即座に降格処分が下されていてもおかしくはない。

 

 それがないのは新星ともてはやされ第二次地上奪還戦の先頭に立たされたヨハンが失敗した責任を全て背負う形でアークに捨てられたからだ。

 

 しかし結果がそうであるだけで過程はなくなりなどしない。

 

 他の副司令官は大なり小なり成果を上げていた、しかしドバンだけ成果を上げるどころか損失だけ、目に見えて立場は弱くなった。

 

 そんな状態のなかドバンが受け持つ部下の中に突出した才を見せる者が居た。

 

 その指揮官の指揮する部隊の生存率は100%、規模の大小に関わらずだ。

 

 作戦成功率は他と変わりはしないが第二次地上奪還戦、そして現在第二次地上奪還戦が失敗し、資源や兵力が貧弱となったアークではかなり目立つ要素となっていた。

 

 ドバンの下についていながら、というのもドバン自体は認識していなかったが目立つ要因になっていた、ドバンの部下は大半がアウターリムに関する雑務をこなし、地上に出ることを嫌がる臆病者のレッテルを貼られる指揮官達が多い中、同じ臆病者のスタイルで地上戦でも成果を出す彼はどう考えてもドバンの下にいて良い存在ではないと認識されていた。

 

 さらに拍車をかけるようにドバンが自身の利点であるアウターリム関連の問題解決能力を見せつけるため、まずは普通の指揮官では解決できないであろうことをしめすため例の指揮官にまず担当させるとものの見事にしかも平和的に解決してみせた。

 

 もはやアウターリムというドバンが副司令官で居られる唯一の利点すらなくなったのだ。

 

 ドバンはそう気づいた時、自身を向上させる方向に舵を切ればよかった。

 

 意外にも例の指揮官からのドバンの評価は高い、自身が非情に出来ないことを出来るからだ外道は外道だから出来るのであって良い人はそもそもその選択を選べないのだ。

 

 だからこそエニックもすぐにドバンを引き摺り下ろし例の指揮官を副司令官にあげることをしなかった、アークにはクズがいる、クズの対処はクズがするのが合理的だと理解しているからだ。

 

 だがその判断が間違いであった。

 

 エニックは後にこのミスを学習し、ドバンを置物とし、後に来るであろう才能ある指揮官への供物にしようと決断したのだ。

 

 ドバンの行動は早かった、例の指揮官と彼が抱えてる専属部隊を地上に逃亡したアウターリムの犯罪者を捕える任務に任命し、地上へと出撃させた。

 

 これにドバン自身も参加した、変に誰かを仲介させるとエニックや別の副司令官にバレる可能性が高いからだ。

 

 やり方はシンプルだった軍事車両で例の指揮官と部隊をアークに帰れない位置までつれていき置いていく。

 

 万が一すら起きないよう、燃料何日分が行きだけで消化されるほどの距離でだ。

 

 そしてこの作戦はスムーズに成功した。

 

 それは例の指揮官とその部隊がドバンを疑うことをしなかったからだ。

 

 外道であると認識していた例の指揮官もまさか部下を意味もなく置いてくなどするとは思っていなかったし、信頼をしていた。

 

 しかし信頼は信頼に価値があると認識している人にしか意味がない。

 

 ドバンにとって信頼とはそこら辺の泥と変わらなかった変に足元に纏わりつき落とそうとしても無駄にべたりと張り付く邪魔なもの。

 

 だがドバンはやっと自分の靴にへばり付いた泥を綺麗に落とすことが出来た。

 

 その泥が後にカウンターズに並ぶ最高戦力になるとも知らずに。

 

―――

 

 ドバンの作戦が始まる前。

 

「なぁ指揮官今日はカラオケ行こうぜ!」

 

 ベヒモス、今日もの間違いだろ?暇になるとすぐカラオケだな?

 

「しょうがねぇだろ騒げる所なんてそこぐらいなもんだし、てか本当にその呼び方で行くのか?」

 

 あぁ、いつまでも識別番号とかで呼ぶのもやだろ?ずっと前から何かしら名前つけたいと思ってたんだ。

 

「だ、だけど、も、もうちょっと可愛い名前がよかった」

 

 だからちゃんとジズって可愛い名前にしたろ?ジズキエルだと流石に可愛くないと思ってさ。

 

「オレ達量産型だぜ?ベヒモスだったりジズキエルだったりバハムートだったり、どれも大層すぎねぇか?」

 

 そんなことないだろ、名は体を表すっていうだろ?なら強い名前にした方がお得だ、なぁバハムート!

 

「もちろんだ、しかも賢いわたしが持ってた本に書いてた名だ強いだけでなく賢いぞ」

 

 ゲームの攻略本だったけどな、ある意味賢いのか?ゲームをスムーズにクリアできるんだし。

 

 バラバラバラバラ

 

 ん?ドバン副司令官から連絡だ………ふぅん明日早朝から地上に逃げた犯罪者を捕らえにいくらしい、結構遠方に逃亡中とのことで数日間はかかる予定らしい。

 

「おいおいまじかよ、じゃあ尚更カラオケ行こうぜ!」

 

 いや、そんな遠方ならもしかしてあれが見れるかもしれないし、勉強でもしよう。

 

「な、なんの勉強?」

 

 もちろん海だ!!

 

―――

 

「水族館なんてあったんだな」

 

 賢いバハムートも知らなかっただろ?最近出来たと聞いて行ってみたいと思ってたんだ流石に本物の魚や海水ではないそうだが資料から実際にいたとされる魚をロボットで再現してるらしい!

 

「あれっていうのは海のことか、見れるなら見てみてぇな」

 

 だろ?見れるどころか海で遊べるかもしれない、その時に何も知らず楽しめませんでしたじゃやだからな。

 

 それから閉店するまで水族館を見尽くした。

 

「た、楽しかった!ほ、本物の海見たい!!」

 

 ジズが珍しく大興奮してるな、明日からの任務中、見れるといいな。

 

「うん!!」

 

「オレは魚捕まえてみたいな、本当にあんな動きするなら楽しそうだ」

 

 なら、モリっていうのが必要らしい、後で作ってあげるよ

 

「マジか、サンキュー!!」

 

「わたしは本と見比べてみたいな、時間が経ってどれほど姿が変わってるか知りたい」

 

 きっと違いを見つけたら賢いって魚の研究者に褒められるぞきっと。

 

「楽しみだな」

 

 海、本当に終わりが見えないぐらい遠くて広くてそれでしょっぱいのだろうか。

 

 まぁどんな景色だろうと皆んなで見れたらそれが一番の景色だけどな。

 

―――

 

 唖然。

 

 唖然とした。

 

 ドバン副司令官が自分達を置いて軍事車両で走り去っていく。

 

 しばらく皆んな揃って呆然としてたが、頭が回り始めて真っ先に思ったことは、部下すらもなんだと何処か他人事な感想だった。

 

 次にこれからどうするかと思考をフル回転させた。

 

 どうにかしてアークに戻らなければベヒモスもジズも、バハムートも死んでしまう、自分はもうドバン副司令官、いやもう上司ではなくなったのだろう、ドバンに厄介な存在として認定されたと考えると戻ることは不可能。

 

 しかしまだベヒモス達は帰れる可能性がある、ドバンが量産型であるベヒモス達を正確に識別出来てるとは思えない、こっそり帰還すれば後はエニックが上手くやってくれるはずだ。

 

 問題はここまで来る途中にラプチャーの群れを避けて移動を二回ほどした、行きは軍事車両だったから交戦せずに済んだがその車両はもうない、交戦は確定、だがあの規模を犠牲者なしで突破は不可能………迂回、だがそれも迂回先にラプチャーがいれば確実に生存不可に陥る。

 

 考えろ………考えろ………考えろ………一戦だけならそこに全力を注げば犠牲はでないはず、なら二戦目で自分が囮になればなんとかなるかもしれない。

 

「指揮官、なぁに考えてんだ?」

 

 ベヒモス達が生き残る方法

 

「そ、そこに指揮官は?」

 

 いない。

 

「隠すかと思ったが正直にいったか、なら怒らないでおこう」

 

「………オレ達がそんなこと望んでないってわかってんだろ?」

 

 こっちもベヒモス達に共に死んでほしいなんて望んでないってわかっているだろう。

 

「だからよ、海、見にいかねぇか?」

 

 ………どこがだからだ、一緒に死のうと変わらないじゃないか。

 

「いいや違うね、任務のため、指揮官のために死ぬんだ本望さ」

 

 だから………それのどこが違うって「違うよ!」

 

「ち、違うよ指揮官、わたし達は騙されたんじゃなくて最初から海を見るって任務をしてたんだよ」

 

「そうだ、賢いわたしの記憶ではそういう任務だったと記憶しているぞ」

 

 あぁ………なら………行こうか………海へ。

 

―――

 

「賢いわたしでもこれは想定外だったな」

 

 そう言うバハムートの目は赤く染まっていた。

 

「賢いわたしはこれ以上一緒は無理だと理解した、ここでお別れだ」

 

 何を………言っているんだ?皆んなで海を見るっていっただろ、まだ完全には侵食していない、海までもつはずだ!!

 

「自身のことなど賢くなくてもわかる、もう意識が薄れて来ている、もう、もたない」

 

 ………

 

「それに海なら、ほら、そこにあるだろ」

 

 バハムートが指差したのは海とは程遠い、べったりとした真っ黒な泥だまりであった。

 

「さぁ、行け、ラプチャーが来る、賢い指揮官ならどうするべきかわかるだろ?」

 

 指揮官は震えていた唇を静か噛んで止めた、そして一足先に移動し始めたベヒモスとジズに追いつくように足を進める。

 

 後ろはもう振り返らない、振り返りたくなどなかった。

 

―――

 

「や、やだなぁ今度はわたしだ」

 

 ジズは涙を流しながら赤く染まった目で言っていることとは違い覚悟を決めた表情をしていた。

 

「う、海どんな感じかちゃんと教えてね指揮官?じゃないとこんな泥を海だと思っちゃうよ?」

 

 そう言って黒い泥を触りながら、ジズは指揮官とは逆に歩き始める。

 

 ………

 

「バイバイ指揮官、だ、大好きだよ!」

 

 ジズは走りだした「やっと言えたー!」とはしゃぎながら、指揮官は歩きだしたジズとは反対に、喜ぶジズとも反対に悲しみながら。

 

―――

 

「ま、なんとなくなる気はしたぜ………絶対に感染するもんでもないのにな」

 

 ベヒモスの目も例外あらずで赤く染まった。

 

「海は見れねぇか………残念だぜ、でも、これを海だと思えば海………なのか?ジズとバハムートは天然だからな、いまいちわかんねぇことも多い………けど、今回はわかるきぃするぜ」

 

 泥を手の平にすくい、真っ黒なはずの泥に映る自身の顔を見てベヒモスは苦笑いする。

 

「いま、オレこんな顔してんのか、なさけねぇ………でもしょうがねぇか別れなんて辛いもんだしな」

 

 ………

 

「指揮官も、そんな辛気臭い顔せず笑顔で行ってくれよ、じゃねぇと………泣いちまうだろ?」

 

 ベヒモスと指揮官は笑いながら別れた、その笑顔はお世辞にも綺麗とは言えなかったが互いに指摘など出来るはずもなかった。

 

 笑いながらも溢れる涙を止めるのに必死だったから。

 

―――

 

 指揮官に眼前には終わりの見えない水の塊があった。

 

 これが本当に全部塩水なんて信じられない。

 

 バハムート、本には載ってないような魚が見えるぞ。

 

 ジズ、本当に海は大きくて、しょっぱいぞ。

 

 ベヒモス、魚捕まえるの大変だったぞ。

 

 ひとしきり、やりたい事をやって指揮官は疲れ果てたのか砂浜で仰向けになって倒れ込む。

 

 そしてそのまま寝た。

 

―――

 

 足元に海水の冷たさを感じて目を覚ます、寝た時にはここまで海は来ていなかったような気がしたが、時間によって変わるのか?

 

 まぁ………でも………もう良いか、やりたいことも知りたいことも知れた、後は………教えに行くだけだ。

 

 懐から侵蝕したニケを処刑するための拳銃を取り出し、頭へと銃口を持っていく、自身の誇れることはこれをニケに使うことはなかったことかな………。

 

「う!撃たないで!?」

 

 声がした。

 

 声がした方を向くと自分が獲った魚を持っていこうとする頭を黒い泥で包んだ変わったニケがガクガク震えながらしゃがみ込んでいる。

 

 そうか、このニケ、自分が撃たれると思ってしまったのか………………………………自分はまだ死ぬなって…………ことにするか。

 

 魚、それだけじゃ足りないだろ?獲ってくるから焚き火でもしといてくれ、あっちに確か洞窟があったはずだ。

 

「い、良いの?」

 

 グ〜〜。

 

 …ハハ、そんなお腹空かしているんだ、良いさ。

 

「ッ!あ、ありがとう」

 

 君………だと呼び辛いな、名前は?

 

「えっと識別番号は」

 

 待て待て量産型だったのか、てっきりそんな泥かぶってるからネームドかと思ってた。

 

「これは………事故でこうなっちゃって」

 

 ………そっか、そりゃすまなかった。

 

 そうだな〜海で出会ったしレヴィアタン、なんてどうだ?

 

「それって………名前?」

 

 あぁ海の怪物の名前なんだがってジズが言ってたこと忘れてた全然可愛い名前じゃないな………なら省略してレヴィだ!!

 

「レヴィ………うん!良い名前!でもレヴィアタンでも良いよ?」

 

 なら本名がレヴィアタンで愛称がレヴィだ、これからよろしくなレヴィ。

 

「え、居てくれるの?」

 

 お互い一人じゃダメダメそうだしな、レヴィが嫌ならもちろんどっか行くぞ………魚はなしだがな!!

 

「魚無くなるのやだよ!居て良いから獲ってきてよ!」

 

 ハハハ、なら改めてよろしくレヴィ。

 

「うん!こちらこそよろしく!指揮官!」

 

 指揮官はレヴィアタンとの出会いを運命と思い、もう少し生きてみようと考えた。

 

 ただ死ぬのが怖かっただけかもしれないがそれでも前を向いた。

 

 なら歩くまでだ、この海に来たように。

 

―――

 

「ねぇ指揮官、この釣竿って道具、本当に魚が獲れるの?」

 

 あぁ本で読んだだけだが棒と糸と針と餌があれば餌に食いついて獲ることが出来るらしい、そしてその行為を釣るって言うんだそうだ。

 

「へぇ、でも何でまたこんなことを?直接捕まえたら良いじゃない」

 

 たまには別のやり方を試したかったのと、ほれ、もう一本あるだろ?レヴィと一緒に釣りをしたいと思ってさ。

 

「………せ、せっかくあるんだし、しょうがないからやったげる」

 

 素直じゃないねぇ、せっかくついでだ多く釣った方が料理しなくて良いってのはどうだ?

 

「良いわね、のった!」

 

―――

 

「ねぇ、本当にこれ釣れるの?」

 

 かれこれ1時間ぐらい海に糸を垂らしているが二人揃って1匹も魚が釣れない、作り方間違えたんだろうか?

 

「今晩のご飯すら釣れないってまずいんじゃ………」

 

 ………今からモリで獲ってくるか。

 

「お願い、じゃわたしは焚き火をしようかな………動いた」

 

 動いたって………竿が?

 

「竿が、ど、どうしよう」

 

 そんなもん………引っ張るんだよぉぉぉ!!!

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!重い!凄く重いよ指揮官!!」

 

 レヴィが重く感じるって大きいマグロとかサメなんじゃないか!?1週間ぐらい食うのに困らんぞ釣ってくれぇ!!

 

「そ、そう言われたって!ぐぬぬぬ!とりゃ!!」

 

 つ、釣れたぁ!!な、何が釣れたんだ!………え?

 

「ふ、ふふーんどうよ指揮官わたしもやる時はやるでしょ!どんな魚釣れたの?」

 

 ニケ。

 

「え?」

 

 ニケ。

 

「えぇ?嘘つかないでよ………本当だぁ」

 

 レヴィと指揮官の前にいる釣り上がった獲物は背丈が少し高いダイバースーツのような衣装を身にまとった長いツインテールのニケだった。

 

 明らかに量産型ではないな、ネームドっぽいがアークにいた時には見た事ないな特殊部隊とかかな?

 

「い、生きてる………わけないよね?」

 

 流石にないだろぉ、意図的に海遊してたとかじゃない限り。

 

 そんな指揮官達の予想に反し、釣り上げたニケ、リトルマーメイドことセイレーンはゆっくりと瞼を開いて眠たそうに起き上がる。

 

「(わたし、寝てた?………そうだシンデレラを探してる最中に海に落ちて、そのまま休んでたんだ)」

 

 セイレーンは探すことに疲れ果てていたが再び地上に上がったのならもう少し頑張ってみようと、胸の前で小さくガッツポーズをとる。

 

「(まずは森とか探してみようかな?ここからだとどっちが森だ………ろ)」

 

 セイレーンは一人だと思っていた海流の自然な流れで漂流したのだと思ったからだ、しかし森を探そうと少し視界を右に向けると人間と少女が目の前に立ってこちらを覗いていた。

 

「(て、敵!?………じゃないよね男の人っぽいし服が資料で見たことある指揮官の服だし、それじゃお隣さんはニケ?)」

 

 ゾ

 

「ゾ」

 

「(ゾ?)」

 

「ゾンビだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 だぁぁぁぁぁ!!!蘇ったぁぁぁぁぁ!?ゾンビだからぁ!?

 

「(ゾ、ゾンビ!?ど、どこにいるの!?!)」

 

 3人揃ってパニックになりまともに意思疎通できるまで1時間はかかった。

 

 晩飯は結局抜きになった。

 

―――

 

 へぇそれでシンデレラや他の仲間を探して幾星霜と?

 

[うん]

 

「喋らないのは言葉に影響力があって、止まってとか言ったら本当に止まるから?」

 

[うん]

 

 セイレーンと言うらしい彼女が砂浜に字を書きながら何故海にいたか、何故喋らないかを丁寧に説明してくれた。

 

 もしかして凄いニケなのでは?ネームドは何かしら個性を持っているもんだが明らかに個人が持つ力としてはかなり強力だよね?何?言霊と自在に操れる液体金属って。

 

「わたしと違って何でもできるんだねセイレーンは」

 

 ほわちょー。

 

「イタッ」

 

 比べないの、ないものはないんだから。

 

「それって慰めてないよね」

 

 あぁ、劣等感なんて感じず受け入れろって話しだからね。

 

「………指揮官もあったの?」

 

 あったぞぉヨハンとかヨハンとか後ヨハンな?やろぉ全てにおいて自分より優秀だから劣等感しか感じない、なんなら今思い出しても感じるよ?やっぱ受け入れるなんて無理だなすまん。

 

「えぇ………こっちになびかないでよ」

 

[でもレヴィと指揮官がいたからわたしは地上に出れたよ、ありがとう]

 

「せ、セイレーン!!」

 

 レヴィがパァっと嬉しそうな顔をする、やだ、この子魔性の優しさを持っているわ!?

 

 こ、これからどうなっちゃうの〜

 

―――

 

「セイレーン!見てみて!ココナッツ!あっちにたくさんあったの!取りに行こ!」

 

[そんなにたくさん!よく見つけたねレヴィ!]

 

 なんということでしょう。

 

 多少は警戒していたあの頃のレヴィは。

 

 すっかりセイレーン大好きっ子に大変身。

 

 今じゃ、お姉ちゃん(セイレーン)に褒めて貰おうと頑張る姿が見られます。

 

 う〜ん劇的でビフォーなアフターですな、3人で過ごすようになって大きく変わった点と言えばこれだろう、なんもかんもセイレーンの魔性の優しさが悪いんだ!

 

―――

 

「え?頭の泥が取れるかもしれないの!?」

 

[うん、レヴィの体についてる黒い水、わたしの水泡と似てるからレヴィが操れば出来ると思うんだ]

 

「わたしが?でも一度も動かしたり出来た試しないよ?ねぇ指揮官」

 

 そうだなぁ、このレヴィに付いている………というか生成してる泥が液体金属ってのはわかって、生成してるなら動かせるのでは?とあれこれやってみたが成果なしだった。

 

[まったく別の感覚だから仕方ないよ、人間に尻尾生えても元が無いから操れない、みたいな?]

 

 実際に試せるもんではないが確かに操れなさそうだ、だがそれだと結局操れないってなるんじゃないか?

 

[だから、わたしの水泡でその感覚をレヴィにコピーしようと思うの]

 

 さらっととんでもないこと言っては、ないから書いてるけど、えぇそんなことも出来るのセイレーン。

 

「それをやって、できるかな?」

 

[できるよ]

 

「………なら、やってみる!」

 

―――

 

 水泡による操作感覚のコピーはとくに問題なく出来た。

 

 レヴィ自体も操作の感覚には慣れが必要そうだが問題なく泥の、いや3人で考えて泥の名前はダークマターになったんだった、ダークマターの扱いに問題はなさそうだ。

 

 ただ、この水泡を使ったコピー、かなり強力なエネルギーが必要なようでその強力さが厄介な奴を呼び寄せてしまった。

 

「な、なにあれ!?」

 

 グラトニーだったか、本物は初めて見たな、戦略兵器などの高威力のものを食べて吐き出すから、こいつのせいで核兵器的なのが封じられたと聞いたな。

 

「そんなやばい奴がどうしてこんな所にいるのよ!」

 

 結構どこにでもいるらしいぞ?戦略兵器を封じるってことは点々とは居るんだろうし、問題はこっちを確実に視認してることか?

 

[ごめんなさい、水泡のコピーに引き寄せられたみたい]

 

 レヴィの顔が見れないのに比べたら、些細なことだよ、ただ完全に捕捉されてるから逃げるってのもキツイな。

 

[わたしが囮に「やだよ!そんなの!セイレーンも逃げようよ!」

 

 セイレーンがこちらを見る、レヴィを説得してくれってことなんだろうけど………するわけないよなぁ!

 

 セイレーンを見捨てるなんて選択肢にはない、そしてセイレーンと一緒にこの状況を切り抜けるには。

 

「た、戦うの?ど、どうにかして逃げれるとかは?」

 

 一瞬で遠くまで移動出来る方法をレヴィが新規習得する、いますぐ。

 

「そんなの無理に決まってんでしょ!?」

 

[いいの?わたしのために………]

 

 むしろセイレーンの為にやらない奴いる?いねぇよなぁ!

 

「や、やるよ!怖いけど、セイレーンと一緒にいたいもん!」

 

「………ありがとう!」

 

 直接声でお礼………だと?ふ、指揮官じゃなきゃ倒れてたぜ。

 

 なのでレヴィは倒れたのでグラトニーも近いので急いで叩き起こします。

 

 これが理由でやられたくないよ自分!

 

―――

 

 落ち着け、落ち着け、落ち着け、わたしなら出来る。

 

 大丈夫、ちゃんと普通のラプチャー相手にはダークマターを真っ直ぐ飛ばして倒せた、同じようにやれば大丈夫………のはず。

 

「セイレーンが以前交戦したさいはグラトニーのあの大きな口の中にコアがあったそうな、戦闘経験と水泡の技術力を加味してセイレーンがグラトニーの口を水泡でこじ開け、その間にレヴィがコアをダークマターで撃ち抜く、いいな」

 

 し、指揮官がいつもはおちゃらけてバカっぽいことばっかり言ってるのにグラトニーと本気で戦うってなったら急に真剣な声音で作戦を説明してくる、本当に指揮官だったんだって今更ながら思っちゃう。

 

「シンプルだがグラトニーの巨体を考えるとこじ開けられる時間は短い、やることやらないと死ぬぞ、ただコアが口内のどこにあるかわからないいじょう失敗する可能性もあるその場合、即座に逃亡にシフトする、全員で海にダイブだ、助かる可能性は少ないがな」

 

 ちゃ、ちゃんと見つけられるかな、だ、大丈夫だよね、ラプチャーのコアって大きいし、あんな山みたいなサイズならコアもきっとすごく大きい………よね。

 

「直接戦闘に参加できない分、自分が引くかどうかの判断はする、これでいいな?」

 

[うん]

 

 で、でも短い時間しか開けられないだよね、その間にいくら大きいコアだからって見つけられるかわかんないしもしかしたら、お、思ったより小さいかも!?そしたら見つけられないかも、ど、どうしよう、わたしが見つけれなかったら、見つけてもちゃんと当てれなかったら、失敗しちゃう、失敗しちゃったら助かるか全然わからない逃亡になっちゃう、どうしよう、どうしようどうしよう!!

 

「レヴィ!」

 

「え!?なに!!」

 

 は、話しかけてたの指揮官がわたしに?ぜ、全然気づかなかった。

 

「やめるか?」

 

 ………え?

 

「皆んな揃って今から海に潜ればセイレーンを狙って追いかけてくる可能性はもちろんあるが少なからず失敗してからやるよりは生き残れる、不安なら、そっちでも良いんだぞ?」

 

 ………うんって頷こうかな………あんな大型、ダークマターを被る前にも戦ったことなんてない………それにミスが許されないそんなの前からそうだけどわたし一人で全てを背負ってはいなかった。

 

「ううん、戦う」

 

 言っちゃった………言っちゃったよ………で、出来るかもわからないのに………言っちゃった。

 

「………わかった、レヴィ、セイレーン頼んだぞ」

 

 や、やらなきゃ!!皆んな死んじゃう!!!

 

―――

 

 グラトニーが………目前まで迫ってきてる。

 

 もう………後戻りは出来ない。

 

 だ、大丈夫、パッと見つけて、パッと撃てばいいだけ!

 

「レヴィ、行くよ!!」

 

 セイレーンが普段喋らないようにしてる口から始まりの合図を声に出す。

 

 グラトニーがセイレーンを大きい口で飲みこもとうする前にセイレーンは水泡で上顎下顎が閉じないよう突っ張り棒りを作り出してグラトニーの口に挟み込む。

 

 最初のステップは完了し、次はレヴィの番だ。

 

 え………え………どこ………?

 

 落ち着いて冷静になって端っこから順番にでもそれだと間に合わないかもしれないから真ん中から外にいやそもそももう時間がないのかな失敗になっちゃってるもうでもまだ何にも指揮官いってないしいやもう声が聞き取れなくてわたしの逃げ待ちなのかなでもセイレーンがまだしてるからやっぱり終わってないんじゃならやっぱり見つけないとどこどこどこ全然見つからないどうなっての―――。

 

「落ち着け、レヴィ」

 

 え………なんで指揮官がここに?危ないからかなり後方にいたはずじゃ。

 

「セイレーン!!後30秒!もたせてくれ!」

 

「うん!!」

 

 ど、どういうこと?何がどうなってんの!?

 

「レヴィ、自分の言葉にだけ集中しろ、目を閉じて深呼吸、これは命令だ」

 

 動揺が隠せないレヴィはそれでも指揮官の言葉を聞いて目を閉じて大きく深呼吸をした。

 

 20

 

「そのままゆっくりと目を開けて、何が見える?」

 

 手………指揮官の手が視界いっぱいに前が見えないように目の前で手を広げてある。

 

「手、指揮官の手」

 

「よし、ならそのまま自分の手を見ていろ、この指先には何がある?」

 

 視界いっぱいだった手を今度は指差しに変えて指揮官はグラトニーを指差す、正確にはグラトニーの口の中。

 

「グラトニーの口」

 

「コアは?」

 

「ない」

 

「ならあっちは」

 

「ない」

 

「こっちは」

 

「ない」

 

 指揮官の指示のもと、コアのあるなしの答え合わせをしていく、さっきまで動揺して冷静な探すことが出来なかったけど、今なら。

 

「そこは?」

 

「ある」

 

「よし撃つタイミングを合わせろ」

 

 10

 

 見つけたコアは動いていた、もし、指揮官のいない状態のわたしなら頭が真っ白になってたと思う、だけど今は居る、隣に居てくれる。

 

 指揮官の手が上がる、それに合わせるようにレヴィもダークマターを練り上げていく。

 

 ………

 

 3

 

 ………

 

 2

 

 ………

 

 1

 

 ……手が下がった。

 

 レヴィのダークマターは驚くほど静かに飛んでいった。

 

 しかしそれは威力が低いからなどではない、逆だ。

 

 ダークマターは真っ直ぐにコアへと突き刺さり。

 

 貫いた。

 

 グラトニーは咆哮をあげながら、空気の抜けた風船のように萎んでいく、本当に、本当に!倒せたんだ!!

 

 セイレーンがこっちに嬉しそうに駆け寄ってくる、やった!やったよ!!セイレーン!!!

 

 ドサ。

 

 何か、倒れ込む音、指揮官が地面に座り込んだのかな?

 

 レヴィが背後を振り向いた先に居たのは。

 

 心臓にポッカリ穴が空いて死んでいる指揮官だった。

 

―――

 

「セイレーン!指揮官が!指揮官がぁ!!」

 

 セイレーンは先程までの喜びが一瞬で冷えていくのを感じる。

 

 指揮官の状態的にグラトニーの触手が放つレーザーに当たったのだろう、レヴィの横まで来たことで攻撃範囲に入ってしまったのだ。

 

「ど、どうしよう、わたしの、わたしのせいだ!!」

 

 大粒の涙を流しながら自分を責め立てるレヴィにセイレーンはかける言葉がなかった。

 

 だがそれは何を言えば良いかわからないからではない、そんな暇などないからだ。

 

『動いてレヴィ』

 

「セ、セイレーン?」

 

 セイレーンが言霊を使用してきたことにレヴィは困惑するが、セイレーンは意に介さず急ぎ指揮官の容態を細かく確認する。

 

『時間がないの、指揮官はまだ助かる、でもそれはレヴィも頑張らないとダメなの、だから動いてレヴィ』

 

 本当に一刻の猶予もないのか、レヴィの返事も待たずして水泡で今からレヴィがすべきことを脳内に流し込んでいく。

 

 急に脳内に情報を流されて、酷く頭痛すらしてくるがレヴィは泣き言も言わずにすぐにセイレーンと同じように動き始めた。

 

 先程のグラトニー戦とは違い動揺もパニックもない、そんなことしてたら指揮官が生き返る可能性が下がるかもしれない、還ってこないかもしれない。

 

 そんなのはいやだから。

 

―――

 

「ダークマターで作った心臓と血液で指揮官は今生きている」

 

 そうレヴィから言われた時は何を言っているんだと思ったが心臓部分がダークマターになっていることと実際に心臓を止められてわかった………最後の確認いらなくね?

 

「丁度指揮官とスワンプマンの話しをしててよかった!」

 

 セイレーンが嬉しそうにそんなことを言ってくる、確かに水泡コピーの話しの続きでそんな思考実験の一つを話したがそれだと自分、記憶以外別物なんすか?

 

 後セイレーンは自分への治療の応用で喉に水泡を使うことで言霊を発動しないように出来たらしい、天才かな?

 

「もちろん本物だよ!血と心臓以外は本物だもん!」

 

 ………もしかしてやろうと思えば出来ます?スワンプマン?怖いよセイレーンさん。

 

「指揮官………ごめん、わたしのせいで………」

 

 レヴィ、気にするなって言ってもしちゃうんだろ?ならそうだな今度はこんなことにならないようしっかり守ってくれ!今回のことを反省してな、できそうか?

 

「うん、もちろんやるよ、絶対守るね」

 

 さて、なんやかんやあったが結果的にはレヴィはダークマターを操れるようになったし、グラトニーは倒せたし、セイレーンも喋れるようになったし、自分は寿命が伸びたし、良いことづくめだったな!

 

 そして良いことばっかりの時はパーティに限る!!早速大きい魚を捕まえて豪勢に行こう!!

 

「あ!?まって指揮官!!」

 

 う?どうしたレヴィズボボボボボボ。

 

「体の血液全部ダークマターに変わったから凄く重いの指揮官………」

 

 スボボボボボボボボ

 

「それを利用して海底から魚捕まえてる………すごいね!」

 

「凄いけど………執着がすごいんじゃない?食への」

 

 海底から魚選べて良いなこれ!!

 

―――

 

「本当に行っちゃうの?セイレーン」

 

「うん、仲間を探さないといけないから、レヴィ達こそ大丈夫?指揮官の仲間を探すっていってたけど」

 

 グラトニー討伐パーティの後、きっかけとして丁度良かったのかセイレーンと自分、両方から仲間探しのためにここを出ていくことをレヴィに伝えた。

 

 最初は嫌がったり、一緒に探せば良いじゃん!!と色々言ってたが最終的に渋々納得した表情を見せていた。

 

「大丈夫、しっかりわたしが指揮官を守って見せるから!」

 

 ご覧の通りレヴィは自分の旅について行くことになった。

 

 セイレーンの方じゃなくて良いのかと聞いたら。

 

「約束したじゃない守るって、それに今のわたしじゃセイレーンの足手纏いだしね」

 

 と、言っていたのでよくわかってんじゃーんと返したら心臓止められた、これ主従関係決まっちまったな。

 

 セイレーンは足手纏いとかそんなこと気にしないだろうがこっちが気にしてしまうのだからしょうがない、自分もそう感じるから別れることにしたんだし。

 

「セイレーン!!また会おうね!!!」

 

「うん、必ずまた会おうね!!」

 

 なんかしばらく会わなさそうな雰囲気してるでしょ?お互いに会いたくなったら会えるように水泡とダークマターの小さいの渡してるんすよ。

 

「指揮官も!また会おうね!!」

 

 ………ま、それでも別れは寂しいし、再会は嬉しいか。

 

 また会おう!セイレーン!!

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