「さーて4人が戻って来たね!!じゃあ早速講評の時間と行こうか!!誰か意見のある人ー?」
モニタールームに戻ってすぐ講評が始まった。
はーいはーいはーい!!!……と手と声を揃ってあげるガキンチョたちが、母鳥にエサをねだる小鳥たちみたいに見えてしまいまーウケるよねホント。
「じゃあ……早かったのは切島少年かな?どうぞ!!」
「スッゲェアツい戦いだった!!4人ともアツくて最高だったぜ!!俺もああいう戦いがしてえぜ!!」
「うーんそれは講評ってよりは感想かなぁ?まぁでも!!君のアツい気持ちは十分に伝わったよ!!では他に意見がある人は!!」
「はいオールマイト先生!!」
「よし!!では次は飯田少年!!君だ!!」
暑苦しい
「はい先生!!今回の戦いはヒーロー側の勝利で終わりましたが、その勝利は薄氷の上を渡るような、かなりギリギリの勝利だったのではないかと思います!!」
「ほう!!その理由も教えてくれるかな?」
「はい!!今回の戦いですが、本来訓練に参加するはずだった葉隠くんがそのまま参加していた場合、最初の轟くんの個性攻撃で決着がついていたと考えています!!それが急遽氷叢さんが代打で参加したことにより、かなりギリギリの戦いとなりました!!2対2の戦いを2つの1対1に分け、双方拮抗した戦いとなっていました!!勝敗を分けたのは轟くんの『時間内に相手を倒すのではなく核兵器の確保を優先する』という決断でした。その判断自体は素晴らしかったのですが、轟くんも一人で氷叢さんを突破出来ませんでした!!勝敗を分けたのは、障子くんが尾白くんの攻撃によって吹き飛ばされ……吹き飛ばされた先がヒーロー側にとって有利な場所だった事です!!結果!!障子くんが轟くんの盾となる事で瞬間的に2対1の状況を作る事に成功!!そのままヒーロー側の勝利となりました!!ただし!!尾白くんの一撃で障子くんが倒されていたり、反対方向に吹き飛ばされたりしていた場合はまた違った結果になっていたと思います!!故に!!今回のヒーロー側の勝利は薄氷の上の勝利だと考えます!!」
(……んー……まーた思ったより言われちゃったー!!って顔してるねーオールマイト。ま、ウケるけど同感かな。思ったより言われたね)
真面目くんの意見はよく状況が見えていたヤツの意見だと思う。
実際ギリギリの所で勝ちを譲ったのだ。
ヒーロー側の連携と、躊躇わず勝利のために盾になったあの大柄なガッツくんの根性は良かったねマジで。
これで普通くんの振る舞いについて……目の前の敵を倒すのに集中するのはいいけど、2対2ならお互いの位置関係にも気をつけなきゃダメよ♡ってとこまで意見が出れば講評としてはイイ線いってるけど……ま、流石に初回の訓練でそれは無理かな。これから学んでいけばいーしね、そーいう事はさ。
その後は真面目くんの講評をオールマイトが褒めたり、他の生徒が意見を述べたりと……ウケる時間が続いたのだが……
「……なぁ……オイ」
「……あん?」
いつの間にかコチラに近づいて来ていた悪人面。その悪人面が、
「テメエ……最後の最後で手を抜いたのかよ?」
(……へえ?)
……正直驚いた。
まー確かに俺は最後の最後で手を抜いたよ。多少はね。
でも……それに気がつくのはオールマイトくらいかな?と思ってたし、例え気づいてもそれを咎める生徒はいないと思っていた。
……だから、それを指摘した悪人面に向けて、俺は思わずニヤリ……と笑っちまった訳なんだが。
「……っ!!テメエゴラァ!!何をニヤニヤと笑ってやがる!!ブチ殺すぞテメエ!!」
「ば!!爆豪!!ストップ!!止まれ!!止まれ!!」
「いくら何でも目上の人にキレ過ぎだぞオイ!!」
俺の笑いに反応し突然キレた悪人面……それを周りの連中が懸命に止める!!
(……なんと言うか……まあ……)
……歪なヤツだな。
心からそう思う。
ギャースカギャースカ吠える悪人面。
それを止める男子生徒たちを見る。
少しだけ考え……考え、そして俺は。
「……なーけろ子?」
「……けろけろ……視線と感じ的に私ね。何かしら?」
「あーの悪人面……何であんな急にキレてるわけ?マジでウケるんだけど?ちなみに、今日2回目だぜ俺?」
……とりあえず、この場では煙に巻く事とする。
「……っ!!テメエ!!テメエはぁ!!」
「わー!!やめろ爆豪!!」
「皆手伝え!!爆豪を゙止めろ!!」
「爆豪くん!!落ち着きたまえ!!実際!!さっきから失礼過ぎるぞ君は!!」
「止めんなボケ共が!!テメエら悔しくねえのかよ!!あの野郎!!俺達をなめ……ムグ!!ムグー!!!!!」
暴れる悪人面をクラスメイト達が止める。
口を塞ぎ……俺から引き離していく。
(才能はあるけど……ガキだな、ありゃ……)
バタバタと暴れながら遠ざかる悪人面を見てそう思う。
(……そもそも、聞き方が悪過ぎる)
真面目くんがさっき言っただろ?ギリギリの戦いの直後だぜ?
……なのに、その直後に、皆の前で『最後の最後で手を抜いたのかよ?』と聞かれて『うん♡』なんて言えると思うかね普通?
……例えばこれがこの後……俺が喫煙所で一人でタバコ吸ってる時に『皆には内緒にするから教えろコラ。最後の最後で手を抜いたのかよ?』とでも聞かれたのなら……多分、俺も正直に答えてやっただろう。
つまり、そういう事だ。
(才能はあるけど……ガキンチョだなあコイツ……)
才能があるだけで、ソレ以外の全てがヘタクソ過ぎる。
正直、勿体ないとは思う。
まあでも……これからそういう所も成長すればイイのかね?
んな感じで適当に暴れる悪人面を見ていると。
「けろけろ……基本あだ名呼びなのね氷叢さんは」
「そーね。まーでもこのクラス含めて40人×3学年=120人覚えなきゃいけない訳よ俺。多少は許してちょ?」
「けろけろ……軽いわねーけろけろ……」
「あはは!!でも!!自分がどんなあだ名をつけられるかちょっと楽しみだったり?」
「んー?」
けろ子と話していると、さっき出久きゅんとコンビを組んでいた女子が混ざって来て……うーん……コイツは……個性でふわふわ浮いてた訳だし……
「……フワちゃん?……よし!!君のあだ名は今日からフワちゃんだ!!はは!!ウケるなコレ!!」
「ねえちょっと待って!!待って下さい!!それはホンマに嫌だ!!勘弁!!ソレだけはどうかご勘弁を!!」
なにとぞー!!なにとぞー!!……とコチラを拝むフワちゃん。その姿に若干の最悪感が生まれ、
「……じゃあ……フワ子?とか……?」
「うーん!!!それなら!!ギリ!!まあ!!OK!!」
ヨッシャギリセーフ!!とガッツポーズを決めるフワ子。
「……(……あ、これはもしかしたら最初につけられた不名誉なあだ名を後から変えるチャンスもあるのでは……)……あ!!あの!!わ!!私も!!」
「さーて!!思ったより講評に時間を取られてしまったけど!!そろそろ次の戦闘訓練を始めようか!!ホントに時間が押してるし!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーるまいとぉおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!恨みます!!恨みますわぁぁぁぁー!!!」
「ホントにごめんね八百万少女!!君に関して思うことは今君が思ってるより遥かに多くあるんだけど!!出来れば!!その全ての想いはそこのクズ零至くんにぶつけて欲しい!!」
「……へ……へへへ……八百万みたいなエロカワな女の子が不憫可愛い……オイラの知らないジャンルだ……捗る……捗るぜ!!」
「「「「やめろ!!もうこれ以上!!この場を忙しくするな峰田!!!!」」」」
「あーもう!!時間無いから勝手にクジひくよー!!さーて次の対戦はぁぁ……!!!」
……とりあえず……こんな感じで時間が常に足りない中で……まあ色々と頑張りつつ……何とか本日の全ての戦闘訓練が終わった。
(……ごめん零至くん!!今私!!かなり時間ギリギリ!!)
(りょー)
(軽っる!!)
そんな感じで全ての戦闘訓練が終わった。
時間的にピンチなオールマイトが最後を巻いて終わらせる。
「さーて皆見事だったよ!!今日勝った人も!!逆に負けてしまった人も!!この経験を活かして明日からの授業を頑張ろう!!それじゃ!!礼!!!!」
「「「「ありがとうございました!!!!」」」」
授業終了の挨拶。そしてすぐこの場を離れようとする俺達。
「……あの……氷叢……さん」
((おっとぉ!!マジか!!))
こういう時に絶対話しかけて来そうにない親戚くんが!!よりにもよって何か今だけ勇気を振り絞って話しかけて来た!!
(どうしよう零至くん!?)
(ほへー……まー俺が何とかするよー後は任せろオールマイトーばりばりーばーりーばーりー)
(……あ!!コレ進研ゼミでやったヤツだ!!後で絶対に私か緑谷少年が苦労するヤツじゃん!!)
「あーと……な、親戚くんよ」
「……うっす」
(始まった!!始まっちゃった!!)
あわあわとギャルみたいに震えるオールマイト。
まー知らんけど。
「悪ぃ。この後色々あって時間無いんだわ。すまねえがまた今度な」
「……はい」
……しゅん……と、わかりやすく凹んだ親戚くん。
そんな彼に。
「……ま、俺もオールマイトの助手してるからさ。この後いくらでも話す時間は作れるからそんな顔すんなっての」
「……してねえけど……まあ……それなら」
親戚くんが顔をあげる。そんな彼に、
「ほれ……お近づきの印におにーさんが飴ちゃんやるからよ。2つのウチのどっちか選びな」
「……………あーー!!!!!!!!」
オールマイトが叫ぶ。
でも、もう遅い。遅いのだ。
俺は親戚くんへと2本のチュッパチャプスを゙差し出した。
『チェリー味』
『コーラ味』
「あーーーもーーー!!零至くんてば!!零至くんってば!!もーーー!!ホントにもーーー!!!」
そんなオールマイトの様子を見て、他のガキ共もコチラを見て!!そして気づく!!
「「「「「やりやがった!!!!!!やりやがったぞこの人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!!!!!」」」」」
「てへー♡」
「「「「「ヤベェ!!確信犯だぞコレ!!!!」」」」」
そんな俺達の騒ぎを他所に。
「……くれるってんなら……じゃあ……」
親戚くんが、片方の飴を取った。
→『コーラ味』
「「「「「マジかよぉ!!!!マジかよ轟ぃぃぃぃぃぃい!!!!!」」」」」
「はは!!ウケるね!!」
「……え?食いたい方取っただけなんだが……何か意味あったのかこれ?」
「「「「……あ!!!マジか!!!これただ単にわかってないだけだ!!!」」」」
「「「「お前!!!!この感じでガチの天然なのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
ギャースカギャースカ騒ぎ出す生徒達。
ソイツらを横目に。
「親戚くん。これは宿題にしようではないかー。今の飴2つにどんな意味があったのか?詳しくまとめて後日報告するようにーではまたー♫」
「はい……わかりました……また……」
「……ま、わからなかったら周りのお友達に聞くように。主に男共にね♡」
「……はい」
「「「「「最悪だ!!最悪だぞこの人!!!!」」」」」
「「「「俺達に投げっぱなしジャーマンしやがったぁ!!!!!」」」」
「ばいびー」
「ホントにごめんね皆!!また!!」
「「「「「マジで!?マジでこれで終わりなの!?」」」」」
んな感じで逃げるように2人でモニタールームから脱出!!
……こんな感じで、俺の初アシスタントの仕事が終わった。
side出久
……目が覚めた時、僕は保健室のベッドで寝ていた。
そして起きてすぐに説明をされた。
色々な問題があり、僕の負傷を今すぐ個性で完全に治す事が逆に良くないという事を。
夕暮れ時の校舎。治りきってない右腕を吊りながら僕は教室へと向かい。そして辿り着いた。思ってたより寝てしまっていた。相澤先生にまた怒られそうだなあ……なんて思っていたけれど。
「おおー!!緑谷来たぁ!!」
「ええ!!!」
……教室のドアを開けた瞬間の……予期していなかった歓迎の声。それに正直戸惑ってしまう!!
戦闘訓練の反省会をしていたという皆。
その歓談に混ぜてもらいながら、
「………………」
「……えっ!!ちょっと待って!!轟くんが何故か何でかブチギレてない!?」
「「「「「あー………………」」」」」
……直感的に、あのクズコーチ……まーた何かやらかしたなコレ……とは思ってしまう。
そんな僕に、
「けろけろ……私、思ったこと正直に言っちゃうの。轟ちゃんはね、多分初めて個性の使い方的にも尊敬出来て、かつ家族の事も相談出来る様な人に出会ったのだけど……そんな人にね、出会った瞬間から滅茶苦茶からかわれてたのが後からわかってものすごい拗ねてるのよ。今日はそっとしておいてあげて」
「……勘違いするな蛙吹。俺は拗ねてなんかいねえ……あのふざけきったあの人に勝てなかった自分が情けなくてムカついてるだけだ……俺はそんな俺にムカついてるだけだ。あんなクズなんて知らねえし関係ねえよ」
「……けろけろ……まあ……こんな感じなのよね……けろけろ」
「うーん……基本的にあの人、僕らより歳が10歳上なだけで標準がクソガキムーブだから……あまり真面目に考え過ぎない方が良いと思うよ轟くん。むしろ真面目に相手すると確実にコッチが損するし」
「……そうか」
……そんなタイミング。そんなタイミングでまた教室のドアが開き、
「……あれ!!デクくん!!ケガ治してもらえなかったの?」
「あ!!いや……これは僕の体力のアレで……」
麗日さんと上鳴くんが教室に来た。
麗日さんは、僕にとってとても嬉しい事に僕に近づいて来てくれて、
「でも良かったよー!!デクくんのおかげで戦闘訓練に勝てたし!!お礼言いたかったんだ!ありがたやー!!」
「ああ!!いや!!その!!結局最後は麗日さんの機転で勝てた訳だしそんな!!」
そんな僕たちの会話。それに周りの皆がひそひそと。
「……でも、緑谷ってスゲェよな。特にあのパワー!!」
「あれな!!最後のパワーとか凄かった!!」
「けろけろ……それだけじゃなくて、序盤に爆豪ちゃんの猛攻を捌いた所を評価するべきだと思うのよねけろけろ」
「……それより、あの氷叢さんに一人だけ名前で呼ばれてたのがスゴイと思うんだけど。緑谷以外あだ名だよ全員」
「「「「確かに!!耳郎!!その通り!!」」」」
「あ……あは……あはは…………まあでも……出久きゅん……ってのも、なんか……あだ名っぽくない?」
「うーん……でも『くん』じゃなくて『きゅん』ってのも可愛いよねーー!!私もデクくんじゃなくて『デクきゅん』って呼ぼうかな?」
「5回に1回でいいので『デクきゅん』でお願いします!!!!」
「緑谷きゅん!!……あ!!すまない!!ごめん間違えた!!でもソレはソレとしていいのかいそれは!!求め過ぎじゃないのかい!!緑谷くん!!緑谷くんーーー!!!!」
「……はっ!!ご!!ごめん!!普段相手にしてる変態達みたいな対応してた!!ホントにごめん!!」
「「「「それはそれでどうなんだ緑谷きゅん!!!!」」」」
「あはは…………」
……この後、皆ともう少し話をした。
そんな教室。
……そんな教室に、かっちゃんが……いない?
だから僕は教室を出て……かっちゃんを追いかけた。
茜色に染まる校舎を全力で駆け抜けた。
廊下を走り、階段を駆け降り……校門へ至る道を走り抜けて……ようやく彼を見つけた。
「……かっちゃん!!!」
「…………」
校門付近で追いついたかっちゃん。
……その背中が……今にも……ああ今にも……泣き出しそうで……だから……
……だから、僕は。
母にも言ってない……秘密……でも……
「コレだけは……君には言わないといけないと思って……僕の個性は……人から授かったモノのなんだ。誰かからは絶対に言えない。言わない……でもコミックみたいな話だけど本当で……」
……そんなしょうもない話を無限にして……僕は……
「……何だ……そりゃ……」
「あっ……」
「わけわかんねえ事言って……これ以上コケにしてどうするつもりだ……ああ……だから何だ……今日……俺はテメエに負けた……そんだけだろが……そんだけ……氷のヤツ見て……敵わねえんじゃって思っちまった!!クソぉ!!痴女の言う解説に納得しちまった!!クソが!!クソぉ!!テメエもだデク!!」
そこで、かっちゃんは、、
「あのへらへら笑ってるヒーローに!!相手にすらされてなかった!!お前なんか!!その辺のモブ生徒と同じとしか思われて無かったんだよ!!何だよコレは!!テメエは出久きゅんで!!俺は悪人面だぞ!!何だよ!!何なんだよコレはよぉぉ!!!」
「かっちゃん……」
「テメエもだデク!!こっからだ!!俺はこっからだ!!いいか!!俺はここで一番になってやる!!俺に勝つなんて二度とねえからな!!」
……そう言って、僕に背中を向けて去って行くかっちゃん……
「……いたぁーー!!!爆・豪・少年!!」
オールマイト!!が!!かっちゃんの所に行った!!
「へろー出久きゅん」
「……なんか諸悪の根源みたいな人が来たなあ」
「てへぺろー」
「……せめて言い訳くらいして欲しいけど……」
……そうして騒がしい一日が終わっていった。
オールマイトの手を振り払うかっちゃん。
それを見送る僕。
こうして今日が終わっていった。