side瀬呂範太
13号先生がやられてしまった。
そして相澤先生は……あんなに……ボロボロになって!!
クラスの皆は散り散りにされていて、全員無事なのかどうなのかわからない。
……そんな、絶望的な状況なのに……
「来る途中で飯田少年とすれ違って状況は確認した。今彼は、私達と一緒に来た校長とともに職員室に連絡を取っている。もうすぐ他の教師達も駆けつけてくるだろう」
……それなのに、ああ……もうこれで大丈夫だ……って、思わず皆が安心してしまう。そんな圧倒的なキャラクター。
轟音と共に吹き飛んだUSJの入口の扉。
そこから現れた2人のヒーローの姿を見て、さっきまで絶望に染まっていたクラスメイト達の顔が一気に明るくなる。
一人は説明不要のオールマイト。
そして彼と一緒にもう一人。
「……あんまり笑ってられそーな状況じゃないね。久々にマジになるしかないかねコレは」
氷剣ヒーロー・アイスブレイド。
氷叢零至さん。
普段はへらへらしてだらしない感じのキャラなのに、隠してるだけで実はスゲエ実力者!!
やる時はやるぜ!!って感じを地で行くヒーロー。
何か!!将来こんな感じのヒーローになりたい!!って思わず俺が思っちまうような人で!!……いやでも、流石に俺ならもう少し真面目にやるかな?
そんな昼行灯なヒーローがマジな顔をしてオールマイトと並んで現れた。
2人は俺達の前を歩いていき、そして、
「もう大丈夫!!私
眼下の戦いを見下ろしながら、ネクタイを引きちぎりオールマイトが吠えた!!
そして吠えこそしないが、もう片方のヒーローの背中には普段の気怠げな雰囲気が微塵も無かった。
味方には希望を。
ヴィランには絶望を。
それぞれに絶大な影響を与えるヒーローが、ついにUSJへと到着したのだった。
side零至
「零至くん。私は相澤くんを助けるからヴィランを頼むよ」
「りょ」
オールマイトの言葉と同時、俺達は動き出す。
足元から氷を生み出しトップスピードでUSJ入口付近の階段を駆け降り眼下の広場へ!!
「……な!!」
「速っ!!」
「縛氷剣・アイスバインド」
「ぎゃあ!!」
「冷た!!氷だとぉ!!」
広場に残っていたヴィラン共数人を氷の個性で凍らせて拘束する。
その隙にオールマイトは髭男先生を確保。お姫様抱っこで抱えたまま俺の横に並ぶ。
「相澤くん……すまない……」
……ボロボロになった髭男先生。生徒達の為に身体を張ったんだろう。打撲だけでなく複数の骨折……早めに終わらせて治療しねえとなコリャ……
そして彼を抱えたままオールマイトは親玉らしきヴィランの方を……正確には、その近くにいる3人の生徒達を見て、
(……3人まとめて一気に助ける気か?ならちょっとコッチに注意を引くかな)
「……はは!!ウケるね!!そこのおたくだいぶ個性的なファッションしてんじゃないの?何?今ヴィランってそーゆーファッションが流行ってるワケ?ウケるね!!センス悪っる!!」
「……なんだぁ……テメエ……」
全身に手をアクセサリーみたいにつけた男と、異形型?らしきヴィラン2人の注意が一瞬こちらに向く、
……お、イイ感じにコッチに意識が向いたかな?
「あーでもあれかなー?おたくアレな感じ?女には興味無いよー的な意識高い系の童貞とか?だからんな女モテ皆無そうな奇抜なファッション決めてるワケ?意識高い系童貞ヴィランか!!はは!!ウケるね!!」
とりあえず挑発を続ける。
「……あーコレだから顔だけが取り柄みたいな無名ヒーローはよぉ……とりあえず相手を童貞イジリしとけば面白いとか思ってるんだろ?『どどどど童貞ちゃうわ!!』とでも言えば満足かよ?胸糞悪ぃ……」
「んー……まーでもー童貞辛いよなー……俺もさーえーっと……ひー、ふー……ん、今日で3日だ。3日童貞なワケ。ツレーわーマジ童貞ツレーわーウケるー。おたくの気持ち3日分わかっちゃったわー。マジでツレーわー、ツレーわマジー」
「テメエ!!ふざけやがって!!」
「挑発ですよ!!落ち着いてください死柄木弔!!」
……ヴィランの意識が、正確には怒りが、完全に俺だけに集中する。
「………!!!」
「……なっ!!」
……その一瞬の隙を、オールマイトは逃さない。
ほんの一瞬だけ俺にヴィラン達の意識が集中した隙をついて、3人の生徒を超絶スピードで救出した!!
「……へっ?……えっ?あれ?」
一瞬の出来事な呆然としている3人の生徒達。
「皆!!入口へ!!相澤くんを頼んだ!!意識が無い!!早く!!」
「……は!!はい!!」
「けろ!!」
「オールマイト……コーチ……」
「行け出久。ここは任せろ」
「コーチ……はい、でも2人共気をつけて!!あの脳みそヴィラン……ワン・フォー……僕の腕が折れないくらいの力だけど!!ビクともしなかった!!きっとアイツ!!」
「緑谷少年!!大丈夫さ!!何せ零至くんもいるしね!!」
「ちっす」
出久を安心させる為、2人並んで横ピース☆ってしてやる。
「軽いなー……でも……はい!!」
……それで少し安心したのか?髭男先生を背負った出久と2人の生徒が入口へと避難していった。
それを俺達は見送り。
「さて……」
「…………」
オールマイトと俺。そしてヴィラン3人が向かい合う。
2対3の状況。
……だった、のだが……
「……下がりましょう死柄木弔。あの男がアイスブレイドです」
「……不真面目な強キャラって聞いてたアレかよ……今日ここに来るかどうかは半々って話じゃなかったのか?クソ……」
「……出目が悪かったという事でしょう。そのうち雄英高校の教師達も駆けつけてきます。ここらが引き時です」
「……チッ」
ボリボリと首筋を掻きむしる男。
「……おっとぉ!!ここまで色々と好き勝手にやっておいて!!」
「タダで帰れると思ってるワケ?はは!!ウケるね!!」
そうはさせないと飛び出した俺達2人!!
「脳無!!コイツラを食い止めろぉぉぉ!!」
「カロライナァァァ!!スマッシュ!!」
先行したオールマイトの一撃が脳無と呼ばれたヴィランに直撃!!
俺はその横を駆け抜け!!
「……いかん!!零至くん!!
「……はっ?マジ?うおっ!!」
……駆け抜けようとしたのだが、
マジか!?なんつータフネスだよ!?
オールマイトの一撃だぞ!!それ食らってすぐに俺に攻撃とか並のヴィランじゃねえ!!
慌ててその一撃を避ける。が、
「黒霧ぃぃぃぃい!!」
「……ちっ……」
それで稼がれた僅かな時間。
その一瞬で敵2人はワープゲートを生み出し撤退していった。
残されたのは俺とオールマイト。そして脳無と呼ばれていた凶悪なヴィラン。
「すまない。コイツを食い止められなかった」
「いや……流石にアレは予想外だろ。俺も想定が甘かった」
出久が言っていた。アイツがそこそこ制御出来るパワーで殴ってもビクともしなかった、と。
……とはいえオールマイトだぞ?流石にアレ食らったら多少は堪えると俺は思っていたし、オールマイトもそうだった。
その2人の予想を遥かに越えるタフさ……
そして攻撃を受けた直後に俺に追いつき攻撃を仕掛けられる高い身体能力。
(……………………)
……
「……オールマイト」
「……何だい零至くん?」
脳無を頂点とし三角形を描くように立つ俺達。
その一角のオールマイトに俺は、
「……ここの状況は落ち着いた。USJ内のあちこちに飛ばされた他の生徒達が心配だ。ここは俺に任せて、アンタは生徒達の安全優先で動いてくれ」
今、何よりも優先すべきは生徒達の安全だ。
ここの状況が落ち着いたならば、まだ確認出来ていない生徒達の安全確保の為に動かなければならない。
……そして、それには俺よりも速く動けるオールマイトが適任だった。
「………」
オールマイトは少しだけ考え込み……
「……そうだね。すまないが、少しこの場を任せるよ零至くん」
「りょ」
「ハッハッハ!!相変わらず軽いね!!では!!行ってくるよ!!」
そう言うとオールマイトが素早くここを飛んで去っていく!!
USJ内の各地域を確認し、安否確認の取れていない生徒達を助ける為に。
「……んで、そういう時間を稼ぐ為に、体を張るのが大人の役割ってもんだよね」
「…………」
……無言でコチラをじっと見てくる脳無とかいうヴィラン。
知性はあまり高く無さそうだし、さっきのパンチも手打ち気味で技巧の拙い攻撃だった。
高い身体能力と、圧倒的なタフネス。
……正直、それだけならばどうとでもなる。
時間稼ぎなら特に。
「……でも、ま……」
……別に、倒しちまっても構わねえだろ?