「界氷剣・アイスフィールド」
地面に刀の切先を軽く突き刺し、自分を中心に円形に冷気を走らせる。
「!!!!!」
それに警戒の姿勢を取り、また声もあげる脳無。
……そんなにビビるなよ、
そもそも、この冷気はオマエを凍らせるためのモノじゃない。
「……ただ単に、この辺り一帯の地面を凍らせてツルツルにするだけなんだからよ。はは!!ウケるね!!たったそんだけの事さ!!あんま焦んなっての脳無ちゃんよ!!」
俺の放った冷気が地面に広がっていく。
それは地面を凍らせ……ツルツルの氷で地表を覆った。
「……?……?」
自分の身体が凍らない事に不思議そうな脳無。
……そんな大した事はしてないよ俺は。
ただ単にこの辺り一帯の地面を凍らせて氷で覆い、滑りやすくしただけなんだからさ。
そう……慣れてないヤツだと走ったり飛んだりするのが大変なくらいさ。その程度のモノだ。
「……さあて、んじゃやろうか脳無ちゃんよ!!」
俺は足元から氷を生み出し、それに乗って高速で前へと飛び出した!!
「!!!!!」
そんな俺に対し、脳無も地面を
「……!?!?!?」
……凍ってツルツルの地面の所為で足が滑り、懸命に転ばないようにバタバタと無様に踊りだした!!
「縛氷剣・アイスバインド」
……当然、そんな隙を見逃してやるほど俺はお人好しではない。
転ばないように懸命にバランスを取ろうとする脳無の足元。そこに地を這うような低姿勢かつ高速で俺は飛び込み両足を刀で薙ぎ払う!!
「!!!!!」
言葉にならない苦悶の叫び!!
凍った地面の上で懸命にバランスを取っていた脳無が、両足を凍らされた事によってついに地面に勢い良く倒れる!!
「……さて」
(……ここからどう来るかな?)
両足を凍らされて凍った地面の上に転がる脳無。
それを見ながら頭を回転させる。
まあここまでは想定通り。
……そもそも増強系の身体能力バカに対し、真正面からアホみたいに殴り合いを挑むのは俺の流儀ではない。
身体能力が自慢の近接強者ならば、地面を凍らせてその優位性を速攻で奪う。
100%と100%の力で殴り合い?
あーまーマンガとかアニメなら嫌いじゃないよそーいう展開?
でも自分でそんな事をする気は欠片も無い。
俺は100%中100%の力を発揮するよ。
でもヴィランには100%中50%くらいの力しか使う機会は与えない。
なるべく楽して勝つべくして勝つ。
それが俺の基本方針だ。
今回なんか典型も典型。
俺みたいに普段から氷に乗って移動したり、こういう状況を想定して靴裏を氷で滑りにくい素材にしていたり、トレーニングを積んでいなければ、凍った地面の上で近接戦闘はかなり難易度が高い。
オールマイトと殴り合いが出来るレベルの身体能力?
じゃあ、その100%を発揮出来ない環境にするだけだね。
「……とはいえ、コレだけじゃないんだろ?」
多分だけど。
今回の事件がオールマイトを相手にし、可能ならば殺す事を想定していたのだとすれば……おそらく切り札である脳無の力にはもう一捻りあってもおかしくない。
「!!!!!!!!!!!!」
「……は?……マジ?」
……そして、脳無が動いた。
俺が凍らせた氷。
その氷を自分の足ごと超パワーで叩いて砕く!!
当然!!俺の氷も砕けるが!!俺の氷によって凍らされていた自分の足の肉も砕け!!そして抉れていく!!
肉が抉れて虫食いのようになった無残な足。
その足の抉れた部分から気持ち悪い程高速で新しい筋繊維が伸び、抉れた部分が再生していく!!
「マジか……超絶タフなだけでなく超回復?いや……超再生かコレは?虫食いみたいに抉られてた足の肉が綺麗に再生していく……コレがあったから今回の作戦に踏み切ったのか?」
正直、今のオールマイトとは相性がすこぶる悪い。
今回、相手したのが俺でマジで良かった!!
俺みたいに敵の長所を消しつつヒットアンドアウェイをするタイプじゃないからなーオールマイトは。
どちらかというと自分のハイスペックを活かして正面から殴り合いをして、正面から全ての敵を倒すのがオールマイトのスタイル。
衰えてなければそれでよかった。
何とでもなるのだ、オールマイトが衰えてなければ。
つまり……
「……っ……と!!」
……考え事をしていた俺。
そんな俺に足を再生させた脳無が襲いかかってくる!!
オールマイトと殴り合いが出来るスペック!!だとすれば軽視していい相手じゃないからね!!
凍った地面を気にして本来のトップスピードではないが、凡百のヴィランとは明らかに違う非凡なスピード。
「……とはいえ」
……正直、氷の上で俺の敵になるほどじゃない。
「はは!!鬼さんこちら!!ってね!!」
足元から生み出した氷に乗り右斜め前に高速移動!!
「!!!!」
はは!!わかるよ苛つくよな!!ツルツルに凍った地面の上で斜め後ろに振り向くとか大変だよな!!
「……ま、その隙は逃さねえけどよ!!」
「!!!!!」
「斬氷剣・アイスエッジ」
……ヒーロー活動は人死を出さないのが前提。
……だから、俺は普段持ってる刀の刃は潰している。
斬氷剣は、その封印を解く技だ。
潰している刃の部分に氷で代わりの刃を作る。
そして反転。未だ方向転換に苦労している脳無に対し、斜め後ろから全速力で飛び込み!!
「………シッ!!!」
その片足をぶった切る!!
「!!!!!!!!」
片足を失い、再び地面に転がる脳無。
切断した足。その根本は凍らせているけれど……
「!!!!!!」
「……ま、そうなるか」
……対・オールマイトを想定していただけあって……ホント凄まじいタフさだこりゃ。
「!!!!!!」
凍った足の根本。
……それを脳無が氷ごと凍った肉をむしり取る。
失った足を再生させる為にだろう。
理屈としては100%正しい。
ただし、理屈以外の全てがイカれているけれど。
(……何なんだコイツは……ベースの個性は身体能力強化?オールマイトの打撃に耐えるならショック吸収とかもあり?さらに超再生まで持ってる……最初はそういう個性を持った異形型かと思ってたけど……確実に、痛覚遮断的な個性も持ってるぞコイツ。複数の個性持ちだと?そんな事あり得るのか?)
複数の個性持ち……そんな事あり得ない……そう思っていたが、その一瞬で脳裏をよぎる5年前の記憶。
「……アレかよ……マジか……クソが!!」
5年前の事。
オールマイトと複数の個性を使うあの男との一大決戦。
脳天ブチ砕かれてたんだぞアレ。
確実に死んだと思ってたけど……
……いや、断定には早いか?でも……とりあえずあの男か?もしくはあの男のように複数個性を扱える後継者?そんなヤツがいるのかもしれない。
でも……とりあえず……
「!!!!!」
「……はは!!ウケるね!!とりあえず脳無ちゃん?君は殺さずに捕らえる必要がありそーなんだわ。いっそ死んだ方が楽かも知れんけどまあそれはすまんね」
5年前の事。
その面影をコイツに見て取り、俺は頭を更に切り替える。
死んでいたと思っていたアイツ。
それが本当に生きていたとして……もしくは、あの後継者的なポジションが今回の連中の親玉だとして……どちらも、無視する事は到底出来ない。
「……絶氷剣・アブソリュート ゼロ」
絶対零度。
全てを断ち切る氷の魔剣。
「……悪ぃけど四肢をぶった切る。ダルマにさせてもらうわ。やり過ぎって言われてヒーローランキング下がるかもだけど……まあ、いいか……それ程ランキングにこだわりねーし」
「!!!!!」
そして氷の魔剣が4度踊った。
その一太刀事にヴィランの四肢を奪いながら。
side緑谷
「……スゴイ!!」
USJの入口付近。階段上からコーチの戦いを見下ろして……思わず、そんな素直過ぎる感想が口から出てしまう。
コーチの必殺技で四肢を斬り飛ばされて、かつ断面を凍らされたヴィラン。それを悠然と見下ろすコーチ。
(……コーチが強いとは思ってた!!真面目にやってさえいればトップヒーロークラスだとも思ってて……でも『打倒オールマイト』を想定したヴィランに対してここまで一方的に勝つだなんて思ってもいなかった!!)
単純な個性の強さもそうだけど、その強い個性の使い方が本当に上手い!!
敵の長所を消して、一方的に自分の長所を押し付けるような戦い方。こんな戦い方は見た事が無かった!!
多分、それは僕がオールマイトに憧れすぎていて見逃していた部分なのかもだけれど……
「……それでも強い……やっぱり……あの人強かったんだ!!」
……こうして、今回の事件は幕を閉じる。
雄英高校のヒーロー科の教師達がUSJに到着。
オールマイトと協力し残っていたヴィラン達を倒していく。
コーチはその間タバコを吸いながら悠々とあのヴィランを監視していた。
『再生したらソッコーでそこからもっぺん斬り飛ばす』
そんな無言のメッセージが伝わったのか?
後に脳無と呼ばれるヴィランは大人しく拘束されていた。
「…………」
「……!!…………!!」
……そして、オールマイトとコーチは何か内緒の話をしていた。
……その内緒話の内容は、いずれ僕も知る事になるんだけど。
ワン・フォー・オールとオール・フォー・ワン。
……僕の代で終わる事になる、その長きに渡る血生臭い物語について。
先生たちに保護される僕達生徒。
警察に連行されて行くヴィラン達。
珍しく真剣な顔のコーチと、その話を真面目に聞くオールマイト。
……物語は、これから加速していく。
真面目な話が続いて疲れた……
次くらいは種馬話でいいですかね……(白目)