氷叢家の種馬(ガチ)   作:のりしー

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これからも頑張って更新して参ります!!


雄英体育祭3

日本が誇るトップヒーロー・エンデヴァー。

 

本名・轟炎司。

 

説明不要のNo.2ヒーローだ。

 

んではあるのだが……まあ俺からすれば『正直、色々と物申してやりたい相手』ではある。

 

 

……そりゃ無理もないだろ?

俺がガキだった時のあの辺(・・・)の事情を思えば……まあ皮肉の一つや二つやなんなら三つ四つ……それ以上の事をこの男にぶつけたとしても……まあ大概の暴言は許してもらえる確信はあるね。

 

だから俺は……自分からこの男に会いに行こうとまでは思っていなかったけれども、もしも会うことがあったならば一発(・・)ブチかましてやろう……そう思っていたのだ。

 

……けれども……

 

 

 

 

 

 

 

『………燈……矢………?………え?……あ……燈……矢……なの……か?……生きて………生きて……いた……のか?……本当に……本当に、生きて……』

 

 

 

 

 

 

 

 

……それは昔。俺がヒーローになってからの事。

とある事件での俺とエンデヴァーの初対面の時の話。

 

初手からこれである。

いや、俺もなんかしら皮肉でも言ってやろうとは身構えていたのよ?

 

でもそんな余分な隙間すらなく最初から最後までクライマックスだった。

 

 

トレードマークとも言える全身から吹き荒れる炎。

……その全てが、瞬間、消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

《……昔、自分の所為で(・・・・・・)死んだ筈の息子が突然目の前に化けて出た》

 

 

 

 

 

……俺との初顔合わせの時に、エンデヴァーは……この男はそんな……凡百の陳腐な言葉ではなかなか表現しきれないような……そんな酷い顔をしていた。していたのだ。その胸の中で暴れまわっているであろう感情に……どういう名前が相応しいのか?本当に自分でもわからない。そんな酷い顔だった。

 

つまりはまあ……そんな話だ。

 

……その顔を見て俺は、蓄えていた諸々の皮肉を全て引っ込めた。

つまりはまあ……そういう話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当に……本当に……頼むからさ……俺にそのクソデカ激重感情を向けるの辞めてくれねーかなー?いや……本当にマジで……)

 

 

 

 

面影がある?ってかその死んだ筈の息子が生きていてそのまんま成長していたら俺みたいになってそう?

 

 

……知らーんわそんなん……

 

 

「ええと……その燈……じゃないな氷叢くん……さ、最近は……ど、どうかな?」

 

「えー……あー……」

 

(……そら来たぞ!!)

 

 

……過去の回想が終わり、雄英体育祭の敷地内。

久しぶりに顔を合わせる事になってしまった俺とエンデヴァー……本来ならば威厳に溢れている筈の男がとても(・・・)苦しそうに口を開く。

 

「ぼ〜……ぼちぼちぼちぼちボボボーボ・ボーボボーって感じですかねー」

 

(……頼むから……頼むから……頼むからこの軽口で終わってくれ……)

 

 

 

しかし、世は無常……

 

 

「は、ははは……そ、そうか……ぼ、ぼちぼちボボボーボか……うん、ぼちぼちというのはそう悪い事ではないのだろうな。うん、安心したよ氷叢くん……」

 

「あ……はい……」

 

……嘘つけ。俺の怠け者ヒーロースタイルくらい知ってんだろがアンタは……

 

 

頼むから……頼むからお互いの為にもう口を閉じろ……そんな俺の願い。そしておそらくはエンデヴァーの心の底にある願い。そんな願いを無視して。

 

 

「……う……うむ。職業をヒーローとした以上、生涯に必要な資金を稼ぐ為に自分の勤務体制を調整するのは決して悪い事ではない。つ……つまり、そのぼちぼちの勤務体制が君にとって一番良いペースなのだろうな氷叢くん」

 

「あ……はい……」

 

(いや……頼むから俺の怠け者スタイルを肯定するなっての……アンタはトップヒーローだろが……)

 

 

……ああ、つまりはそういう事だ。

普段は厳格とか威厳とかの言葉が相応しいエンデヴァー。

 

……そんな男が、俺を目の前にすると途端にポンコツになる。

 

 

 

 

 

 

 

《多分、アンタ達はなるべく顔を合わせない方が良い》

 

 

 

 

 

 

 

……ってのは萌ことバーニンのセリフであるが、これに関しては100%俺も同感だ。

 

このエンデヴァーという男は後悔をしている。

 

昔、自分の所為で長男を追い詰め、そして殺してしまったのだと何年経っても悔やんでいる。

 

だから、その死んだ筈の息子の面影がある俺に対して、明らかにこの男らしくない行動を取るのだ。

 

 

 

それは果たして罪滅ぼし……贖罪の為なのか?

仲違いしたまま死んだ息子との関係を少しでも修復したい……そんなどこにでもいる父親らしい感情なのか?

 

一体何の為なのか……きっと、それはエンデヴァー本人ですら正確にはわかってはいないのだろう。

 

 

「……お、お金に困っていたりはしないかな?もしもアレなら俺の方で貸すことも出来るが……」

 

「あーまー……金に関しては大丈夫ですかねー……」

 

「そ……そうか……後は……後は……」

 

 

 

少しでも長く話をしたい。

だがこうして今、話をしている瞬間が辛くて仕方が無い。

 

 

「後は……後は………………後は、後は………」

 

 

(……ああ……本日我が母校である雄英高校の……その生徒達の晴れの舞台である雄英体育祭は晴天なりー……)

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………………あ」

 

 

 

 

(……ただし……所により超☆絶☆曇☆天!!)

 

 

 

 

 

ほらまただ。

最初に会った時からずっとだ。

色々と話した後の最後の最後で、この男はいつもこんな顔で俺に対して手を伸ばす。

 

昔、届かなかった手を。

……そして、今も届かない手を。

昔、届かなかった言葉を。

……そして、今も届かない思いを。

 

 

 

……毎度毎度ホントに酷い顔をして……エンデヴァーは俺に対して会う度に伸ばすのだ。

 

 

 

 

(……ちっ……たく……)

 

 

この男が本当にトップオブトップのヒーローなのか?

とても信じられない。

 

そんな、酷い有様。

 

……そして俺はそれを見て、全ての皮肉やら毒舌を引っ込める。何時もの事だった。

 

自他共にクズと認める俺がだよ?

 

つまりそんくらい酷い有様なのだ……俺と会った時のエンデヴァーは……

 

 

 

《零至はクズだけど……本当に弱っている人に向かって石は投げられないでしょ?》

 

 

 

とはいつかの萌のセリフ。まあそーゆー事。

 

俺とエンデヴァーはこんな感じに不健全な付き合いをしていた。出会ってからずっとね。

 

 

 

 

「……えっと……あの……すんません。俺、この後行くとこあるんでこの辺で……」

 

 

 

……そして、この不毛なやり取りを終わらせるのはいつも俺の役割だった。

 

……今日はもうこれでおしまい!!

まあ実際!!この後予定もあるし!!

 

 

俺のその言葉を聞いて、エンデヴァーは名残惜しさよりは安堵の気持ちが勝っている……そんな複雑な表情で、

 

 

「う……うむ。そ、そうか……い、忙しいところ引き止めてしまってすまない……で、では……またな……と…、氷叢くん」

 

「へいー」

 

「………」

 

 

他の人ならば「軽いなー」といつもの反応があるのだろうが、当然この人にはそんなものは無い。

 

 

(……きっつー!!でもよし!!やっと!!終わった!!)

 

 

俺頑張った!!間違い無く超頑張った!!

 

 

じゃ!!と手を上げて最後の挨拶をすると、クルッとエンデヴァーに背を向けて歩き始め……

 

 

 

 

………………クイッ

 

 

 

 

「……んあ?」

 

「……ふ!?冬美!?」

 

「……あ?あの……その……」

 

 

 

 

 

(マジかよこのクソアマー!!!!!)

 

 

 

 

……歩き始めた瞬間、背中を誰かに引っ張られた……

 

振り向くとさっきまでずっと黙っていた女が、背後から俺の服を不思議そうな顔で引っ張っていた。何故だか自分自身ですら驚いているような顔。ひょっとしたら無意識だったのかもしれない。

 

 

まあ無意識だろうが有意識だろうがぶっちゃけ俺には関係無い!!引き止めんなマジで!!

 

だから俺は!!

 

 

 

「はいこれ俺の名刺ねー!!悪いけどホント急いでんのよ!!なんか聞きたいことあったらメールでどぞー!!返すかどうかは気分次第ですー!!」

 

 

「……え!!あ!?」

 

シュタ!!っとその手をやんわりと払って名刺を握らせる。んでシュバッ!!と挨拶して今度こそ早足で立ち去る!!

 

 

 

 

「……あ!!あの!!」

 

「ばいならー!!」

 

 

 

背中に投げられた引き留めるような細い声……その声を振り払い、俺はようやくその地獄のような場所から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おー!!マジ?マジマジ?まーじかー!!やったじゃん出久きゅーん!!まさかの障害物競走1位!?やっるー!!」

 

 

突発的な俺的大損イベントであるエンデヴァーとの邂逅からしばらく。

俺は校長に指定されたポイントで例の3人のガキ共を待ち構えていた。

待ちながらもとりあえずスマホで体育祭をチェック。見事!!第一種目で1位になった出久の姿を見る事が出来た。やったじゃん。おめでと出久。

 

微かに緩む頬。しかしすぐに引き締め直す。

何せ待ち構えているのである俺は。

緩んでばかりじゃいられない。

 

 

 

 

 

『SNSの匿名性は悪い事も多いけど、上手く使えば自分達にとって物事を優位に運ぶ事も出来るのさ!!』

 

 

 

 

 

 

とは校長のセリフ。

校長は例のガキ共が使っていたSNSで今回用に捨て垢を作成。そのハイスペック過ぎる頭脳を使って上手いことガキ共を誘導する事に成功していた。

 

 

『……とはいえ、彼らを止める事は出来なかったのさ』

 

 

そう悔しそうに言った校長。

悪意に密度があり過ぎた。本当に悔しそうに校長はそう言った。

……相変わらず、民度が最悪過ぎるぜ我らが日本。

 

 

 

 

ではあるが、校長は悪意に負けぬ理を示す事で奴らの行動を制限する事に成功した。

 

 

『例年、雄英体育祭の第一種目は個人競技。そして第二種目は集団競技なのさ。そしてチーム決め&作戦会議&休憩として毎年第一種目と第二種目の間には15分ほどの時間が取られる』

 

 

その時間こそがチャンスなのだと、校長は連中に吹き込んだ。

 

 

『その15分でトイレに行きたい人はトイレに走る。喉が渇けば自販機へ走るし、小腹が空いたら屋台へ走るだろう。全員ではないが一定数の人々が慌ただしく動き回る……だからこそ、多少変な動きをしていても目立たない。焦って慌てた所為で変な行動を取る人は常に一定数いるものだからね』

 

 

つまり……この15分こそがガキ共が企む『ちょっとしたイタズラ』を仕掛ける大チャンスなのだと……捨て垢を使い、校長はSNS上でガキ共に吹き込んだ。

 

 

 

……そして、ガキ共はそれに乗った。

 

 

 

 

『オーダーなのさ氷叢くん。子供達がイタズラを仕掛けるのは第一種目と第二種目の間の時間。競技場の外。出入り口からそこまで離れていない人気の無い場所なのさ。頼むよ。体育祭を楽しむ生徒達の為にも。イタズラでは済まないイタズラをしようとする子供達の為にも。君の力を貸して欲しい』

 

 

不幸中の幸いで、犯行時刻とある程度の場所は絞る事が出来た。

 

後は、彼らを止めるだけだ、

 

 

『……申し訳無いけれど……校長としては雄英体育祭の成功を第一に考えなければならないのさ。イタズラをする子供達の未来も心配だけれど……私の立場としてはそれだけを考える訳には行かないのさ。だから氷叢くん……君に与えられる時間は3分だけだ』

 

 

『はは……マジ?ウケるねそれ』

 

 

『3分の間に3人の子供達の凶行を止め、なおかつ彼らを拘束して欲しい。3分が過ぎた時点で周囲のヒーロー達を応援に向かわせる。だからその3分の間に全てを終わらせて欲しいのさ!!』

 

 

 

……はは!!

 

 

全く……

 

「……俺に期待し過ぎじゃね校長?」

 

 

……とはいえ、

 

「……まあ、まさかのまさかで出久きゅんも1位取ったしなー」

 

 

 

クズではあるが一応、俺もアイツのコーチだ。 

 

 

 

 

「……まあいっちょやったるかね」

 

 

 

3分でガキ共3人鎮圧しろって?

はは!!ウケるね!!

 

コイツは確かに、裏の体育祭に相応しい競技だわ!!

 

 

 




ホントはもっと物語が進む筈だったのに………

うん、全てエンデヴァーが悪い。
だって無限に文字数が増えていくんだもん……曇らせても曇らせてもまだ味がするんですよねエンデヴァー……
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