side少年A
(緑谷だったか?あの不正入学ヤロウ……ズルだかコネだか何したんだか知らねえけど、上手く雄英高校のヒーロー科に入学しただけじゃなく、障害物競走で1位まで取りやがった!!)
校内を走りながら、胸を焼くその激しい怒りをグッと押し込める。大丈夫だ……焦るな俺。もうすぐだ。爆発の時はもうすぐ。だから、もう少しだけの我慢だ!!
オマエは
(なのに!!なのに何でオマエなんかが雄英に受かって!!真面目に試験でポイント取ってた俺が落ちるんだよ!!)
ズルだ!!何かズルしたに決まってる!!
もしくはコネとかか!?
とにかく!!なんかそんな感じの不正があったに決まってる!!じゃなきゃいくら筆記試験でいい点取った所で雄英ヒーロー科に受かる筈が無いんだから!!
オールマイトの取材に来たテレビ局のカメラにお前が映った時はホントに驚いたぜ!!
その後のヴィラン襲撃事件の時もテメエはテレビに映ってたよな!!
何で俺じゃねえんだ!!
何で俺じゃなくてお前がソコにいる!!
(許せねえ!!こんなの認められねえ!!こんなの受け入れられるワケがねえじゃないかよ!!)
ずっと納得いかなかった。
そして、今も納得出来ずにここにいる。
『アイツやアイツが受かってるのはまあわかる……でも……何で!!何でお前が受かってるんだよ!!お前!!試験で仮想ヴィランを全然倒してないじゃねえかよ!!俺の!!俺の方がちゃんとポイント稼いでいたじゃねえかよ!!』
……だから、全員じゃないけど『オマエ』がそこにいるのだけはどうしても!!どうしても納得がいかない!!
……そして、そんな結果にした雄英高校に対しての怒りが抑えられない!!
言ってしまえばそういう気持ち。
俺
……そう、つまり俺達3人はそういうメンバーだった。
「なあ!!この辺が良いんじゃねえか?」
「ああ!!だな!!」
「よし!!ここにしようぜ!!」
雄英高校の校内は広い。
だからメインの道から少し走って離れるだけで、こんなにも俺達にとって都合のいい場所が見つかる。
木に囲まれ、パッとすぐには見つかり難い所。
地面は芝生。
俺達がやろうとしてる事を考えれば理想的何じゃねえかここは?
俺達3人の個性。
シンプルな増強系の俺。
手のひらから火炎放射風に火を放てるコイツ。
そして、口から小規模の竜巻のような強いブレスを吐けるコイツ。
筋書きはこうだ。
本当にたまたま、それぞれ一人で雄英体育祭を見に来た俺達。
そんな俺達がささいな事でケンカする。
競技場でケンカしたら迷惑かけるから会場外の人気の無い所に3人で移動。
んで、ケンカする。
偶然。
偶然だ。
そんな
雄英体育祭の最中に起こる、
火事が危険だなんて事は俺達も知ってる。
(
だから、火事が酷い事になる前にヒーロー達に止めてもらえる筈だ、
そして俺達3人は。
『『『すみませんでしたー!!!ちょっと3人でケンカしてたらこうなったんです!!
みんなが言ってた。
俺達3人は子供だし。
わざとじゃないから許してもらえる、って。
大丈夫!!あんまり深く考え過ぎるな、って!!
会場の警備をしてるのはみんなヒーロー達だ!!被害が大きくなる前に火事は食い止められるし、わざとじゃないから子供の君達も許してもらえるよ、って!!
みんな!!そう言ってた!!
だから!!
「よっしゃ!!やったろうぜ!!これは俺達を落とした雄英高校へのちょっとした仕返しだ!!」
「見る目がねえな雄英高校!!」
「お前らが落とした能力の低い学生がこんな大きな事をするんだぜ!!テメエらの見る目の無さを反省しろぉぉぉぉ!!!」
そして、俺達による見る目の無い大人達への反攻作戦が始まる!!
(お前達が試験で落とした子供達は!!本気になればこんなスゲエ事も出来るんだぜ!!)
さあ!!後悔しろよ大人ども!!
俺達3人を試験で落としてしまった!!その見る目の無さをなぁ!!
そして仲間の1人が周囲の木に向かって火を放ち、もう一人が風を起こ……
「……録画、録音完了だ。辞めときゃいいものをマジでやりやがったなガキ共……鎮圧するぜ」
「「「…………は???」」」
……突如、木の陰から1人のヒーローが現れた。
「……………」
その男は、こちらに駆け出しながら手のひらから強烈な冷気の嵐を生み出し!!
「……あ!!俺の炎が!?」
「ヤベェ!!俺の風も!?」
強烈な冷気が俺達へとぶつけられる!!その冷気の所為で炎が消えちまった!!
そしてそのヒーローは片手で冷気を放ちながら俺達3人に向かって凄まじいスピードで迫ってくる!!
「……クソが!!このままやられるかよ!!」
身体能力を強化!!
走ってくるヒーローに、強化したパワーでカウンターをぶち込もうとした!!
「……焦り過ぎだ」
「……な!!はや!?」
……けれど!!
ヒーローが、足元から氷を爆発させた!!
その氷にのって、ただでさえ速かったヒーローが更に加速!!まさかここでチェンジオブペースだと!?
一瞬で俺を振り切り!!
「……ほい、1人目ー」
「……ギャッ!!」
プロヒーロー用のスタンガン。
ヴィラン退治を想定した、一瞬で敵を気絶させるプロヒーロー用のスタンガンだ。
その高電圧を喰らい炎使いの仲間が瞬時に倒される!!
「……優先順位的に……次は、テメエか?」
「……ひっ!?」
仲間1人を気絶させたヒーローが、もう一人の仲間へと振り向く、
「……ああぁぁ……!!クソ!!クソ!!」
「……アイスバレット」
「……ぎゃん!!」
大きく息を吸いヒーロー目掛けて放とうとした所で、氷の弾丸が額を直撃する!!
「……が!!」
「はいーごくろっさんー」
氷の弾丸の衝撃で頭上に竜巻を放った仲間の懐に、ヒーローが素早く飛び込みスタンガンを押し当てる!!
「……!!!」
「……2人目、っと……」
倒れた仲間を冷たい瞳で見下ろすヒーロー。
正直、スゲエイケメンだと思う。
でも、本当に冷たい目をしていた。
(……まるで氷の魔王じゃねえか……)
恐ろしい程に綺麗な顔。
その表情を一切動かす事なく、最大効率の最小労力で俺達を鎮圧していく。
このヒーロー社会における……プロレス的とすら揶揄されるショーマンシップ溢れる戦闘とは全く違う……このヒーローの戦い方には……なんと言うか、暖かみみたいなものが欠片も無かった。
そう……
このヒーローの戦い方には『映え』とか『遊び』とかそういうものが一切無かった。
普通、今のヒーローは多かれ少なかれ絶対に気にする要素。
周囲の人々からの見た目を優先する……そういう遊びが一切無かったのだ。
そんなヒーローがこちらを冷たい目で睨み、
「……どーする?ここでやめて大人しくついてくるってんなら……まあ、コイツで黙らせるのはやめてやってもいいけどよ?」
そうスタンガンをこちらに向けながら言ったセリフに、俺は……
「……ふざ……」
「……あん?」
……そんな、上から目線の大人のセリフに怒りが抑えられなくなって俺は!!
「ふざけんな!!ついてくワケねーだろが!!」
そうだ!!
ふざけるな!!
何の為にこんな事をしたと思う!!
それは!!
「あの雄英高校ヒーロー科の試験は納得行かねえよ!!何であの緑谷とか言うヤツが受かってるんだよ!?何で俺が落ちてるんだよ!?コイツらも!!2人も同じ気持ちだよ!!何で!!何でなんだよぉ!!!」
「……………」
そうだ!!
あの仮想ヴィランを1ポイント分も倒せなかった緑谷!!
何でアイツが雄英高校ヒーロー科に入学して!!
そして!!
「何で!!あの緑谷って奴が!!障害物競走で1位になってるんだよ!!納得行かねえ!!納得行かねえよ!!何でアイツがあんなに祝福されて!!それで歓声を浴びてるんだよ!!そんなのズルい!!ズルいよ!!何でだよ!!悔しいよ!!悔しいよ俺は!!何で!!何でアレが俺じゃなかったんだよ!!」
そう!!
アイツよりも!!
あの緑谷って奴よりも!!
俺だ!!
俺の方が!!
俺の方がよっぽど真面目に試験を受けて!!ちゃんとポイント取ってたじゃねえか!!
だったら!!
だったら!!
「俺でも良かっただろ!!」
「……あん?」
そう!!だったら!!
「あの0ポイント野郎が受かるくらいなら!!障害物競走で1位になるのは俺でも良かったじゃねえかよ!!何でだよ!!何で!!何で俺達の間にこんなに差がつくんだよ!!何であの0ポイント野郎が受かって!!何で俺は落ちたんだよ!!何で!!何で何だよぉ!!!」
side零至
タイムリミットが迫る森の中で響くガキの慟哭。
どーしたもんか?
(……困ったもんだね)
このガキの意見は完全なる逆恨みだ。
出久はあくまで正当な判断基準の元で合格した。
それは間違いない。
とはいえ……
(……逆恨みによる心の底からの叫びが胸に響かないかって言うと……それはそれでまた別の話何だよなあ……)
雄英高校ヒーロー科の試験。
その隠しポイントと言えるレスキューポイント。
ゆーてレスキューポイントって『それって貴方の感想ですよねポイント』じゃね?ってオールマイトに言ったら苦い顔してたけど……まあそれはそれとして正当な試験結果として出久は合格したのだ。だからコイツのこの叫びは100%逆恨みなんだけど……
(……何とか、してやりたい……ったく、俺ってホント……ガキに甘いなマジで……)
そして、約束の3分まで……残りそんなに時間は無かった……