氷叢家の種馬(ガチ)   作:のりしー

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*AI作成による挿絵あり。嫌いな方はご注意を



『公式記録』から消えた一日

side AFO

 

(……あの(・・)氷叢零至の調査レポートを書いた張本人はとりあえず八つ裂きにして殺すとして……内容を確認した上で、自分よりもさらに上へとあげると判断した連中……僕の所までレポートが届くまでにその判断に関わってた無能な連中も全員同罪だね。全員処刑するとしよう)

 

 

 

氷叢零至は……偽の依頼で呼び出された倉庫に入り、初めて僕と目を合わせたその瞬間……その一瞬で、僕の事を『確実に殺さなければならない敵』だと判断した。

そして実際に僕に奇襲を仕掛けようして……その奇襲に僕が対応するような素振りを見せたのに気づき、すっぱりと奇襲を諦めた。

 

 

素晴らしい判断力だ。

あの一瞬で僕を殺す事を決めて、そして実際に実行しようとした辺りが特に素晴らしい。

 

 

あの憎きオールマイトが活動を開始してから、この国では急速にヒーロー・ヴィラン共に平和ボケが進んだ。

そんなこの国に産まれ育ちながら、一瞬で僕を殺すべきだと判断した能力。戦闘者としては極上に仕上がっている。

 

氷叢流だったかな?戦国時代から彼の家に伝わっているという超実戦派の古流剣術は。その師がよほど『当たり』だったのだろう。もしかしたら超常黎明期……は流石に無いだろうがオールマイト登場以前の暗黒期……その生き残りの凄腕でもいたのかもしれない。

 

 

 

 

 

この東京湾に面する寂れた倉庫の密集地区。

その調査依頼という楽な仕事。

依頼主が彼の顔のファンだという偽の設定にし、楽な仕事の割に多少高めの報酬を設定。

 

偽の案内人達に連れられて、ホクホク顔でニヤケてだらけきったしまりのない顔で倉庫まで来た彼は……倉庫の中で待ち構えていた僕と、僕を見て雰囲気の変わった案内人達……まあ僕の手下何だけど、その些細な空気の変化を鋭敏に察知し、瞬時に意識を切り替えていた。

 

 

 

『あ、これ……コイツ殺さないと自分が死ぬぞ』と。

 

 

 

(……コレ(・・)が才能だけに甘えてろくに努力もしていない無能だって?冗談じゃない)

 

 

 

能ある鷹は爪を隠すだなんて、そんなレベルじゃない。

 

 

 

才能に胡座をかいて昼寝してばかりの怠惰な豚……のフリをしていた危険な龍を僕の所にまで連れて来てしまったのだ。

 

この判断に関係した全ての連中は……間違いなく万死に値する。

 

 

 

「……ねえ、タバコ吸っていい?」

「ああ……かまわないよ」

 

 

ども……と言って懐からタバコを取り出しライターで火をつける。20歳越えてたっけな彼?まあいいか。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ちょっ!!アイスブレイド!!いきなり何を!!」

「これからブリーフィングの時間ですよ!!」

 

 

そんな彼の様子に配下の連中が慌て出す。

 

「……ふぅぅ……あ、もうそういうのいいんで。ね、そーでしょ?」

「うん。そうだね。君の言う通りだ」

 

 

「「「「ええええ…………????」」」」

 

 

先程の対面時の一瞬に行われた僕ら2人の攻防に誰も気づかなかったのだろう。

全く、これだから超常黎明期も、その後の暗黒期も経験していない平和ボケした連中は。

 

……少しはアイスブレイドを見習いたまえよ……なんて事を考えてしまい『ああ……コレが老害の思考というものか』と気づき少し反省。

 

 

 

……まあ、その程度には僕には余裕があった。

 

だから、こんな言葉がつい口から出る。

 

「……すまないね。部下からの報告に多大な誤りがあったようだ」

 

……彼は……実に優秀だ。

元々は個性を奪ってから殺すつもりだったが……それが惜しくなる程度には。

 

「私は普段はあまり表には出ないのだけど……たまにこうして外に出て、自分に力を貸してくれる『協力者』を探している」

 

 

だから、まずは彼に手を差し伸べてみた。

 

「氷叢零至くん。君がこれまで表に出さず隠し、そして磨き抜いてきたその能力は実に素晴らしい。出来れば僕の協力者になって欲しい」

 

 

数多いる僕の協力者達。

その中に君も加われ、と。

 

「心配しなくてもかまわない。何もヒーローを辞めてヴィランになれと言っている訳じゃない。普段は今で通りに暮らしてくれてかまわない。ただ……僕が『ちょっと』だけお願いする時があったら、その時だけ協力して欲しいんだ。それは1年に1回有るか無いかだと約束しよう。どうだい?僕の協力者になってくれないかな?」

 

 

ふぅぅ……

僕の言葉を聞きながら、彼は気怠げに紫煙を吐いた。

 

「……それを信じろって?俺が受け入れるとでも?」

 

口元は気怠げな笑みだが、目が一切笑っていない。

 

「ああ、そうだよ。もし君がこの提案を受け入れてくれるなら、僕の方から君に素晴らしいプレゼントをしよう」

 

……そんな彼に、僕はニッコリと笑って告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「君は……幼い頃から酷い性的虐待を受けて来た。なあ、そうだろう?」

「(……ピクリ)」

 

 

 

 

 

 

 

……無表情を維持しようとしていたが、こういう所はまだ若いな!!片眉をピクと反応させてしまっていた!!

 

 

そう、普通のヒーローであれば交渉の余地など基本無い。

だが……

 

 

 

 

「君が僕に協力してくれるのならば……僕も君に協力してあげようじゃないか!!幼い頃から君を犯し穢し凌辱し暴虐の限りを尽くして来た薄汚い連中……そいつら全員を、法に引っかからないようにして全て君の足元に跪かせてあげよう!!君の復讐を!!僕が手伝ってあげるよ!!ああ!!僕ならそれが出来るからね!!」

 

 

調査レポートには氷叢零至が『児童性虐待』の被害者だと書かれていた。

 

 

そう……だから復讐だ。

彼にはいるのだ。復讐するべき正統な仇が。

 

そして僕の力があれば、その復讐は何の問題も無く無事に果たされるだろう。

実際、僕にはそういう力があるのだ。

法的・公的な問題などありとあらゆる壁を全てくぐり抜け、彼の元に加害者達を届ける、そんな力が。

 

僕の言葉に、彼は、

 

 

「……確かに、アンタはなんか……『そういう事』が出来そうだよな」

「ああ……出来るとも」

 

 

吸い終えたタバコを携帯灰皿に押し込み、新たなタバコに火をつけた彼。

 

 

「確かに……アンタの提案は非常に魅力的ではあるよ」

「だろう?」

 

 

恨んでいない訳が無いのだ。 

辛くない筈無いのだ。

人によっては世を儚んで自殺したり、家出をしその先でヴィランになり破壊衝動とともに暴れる……そんな醜悪さに、彼は幼い頃から脅かされ続けて来たのだから。

 

だから……復讐という言葉は……間違いなく彼には甘美に聞こえている筈だ。

 

 

「ちなみに……俺の前に加害者どもを引っ立てる事に成功したとして……もしもアンタが俺だったとしたら、ソイツらにどういう罰を下すんだ?」

「僕が君の立場だったらかい?そうだなぁ……」

 

しばし考え、そして、

 

 

「……まずは目を抉ろうかな。僕を見下し、嗜虐に満ちた目で見下ろして来た目を。次は口だね。縫い潰そうかな?焼き潰そうかな?まあどちらかで潰すとしよう。指は全て切り落とすよ。当然だね。穢らわしい手で僕に触れたんだから。そして股ぐらには焼けた鉄棒でも押し込んでやるさ。全ての欲望はソコから産まれたんだろう?ってね。最後までちゃんと死なないように苦しませて……それで苦痛と絶望の呻きを楽しむとしよう。ああ、人間って口が潰れててもちゃんと呻く事は出来るんだぜ!!どうだい!!気に入ってくれたかな!?」

 

「………」

 

僕の語った、おそらく彼にとっては甘美に聞こえたであろう惨劇の様子。

それを聞いて彼は瞑目……そして、

 

 

 

「……はは、グッロ……俺はエロは好きなんだけどグロ耐性は無いんだよね……だからさ……どうやら、アンタとは趣味が合いそうに、無い……」

 

「へえ……でも復讐出来るならしたいって気持ちはあるんだろう?だから僕の話をとりあえず聞いたんじゃないかな君は?」

 

「まあね、でも……」

 

そして、氷叢零至という男は僕の目を正面からしっかりと見て、

 

 

「俺にとっての『アレ』への復讐は……そういうグロいのじゃなくて……ああ、そうだな……そう『エロマンガ媚薬』だ。そう。そんぐらいでいいのさ。だから、俺はアンタの手は取れない」

 

 

「……は?エロ……何だって?」

 

エロ……マンガ、媚、薬?

 

 

僕のそんな戸惑った様子、それを見て彼は意地が悪そうにニヤリと笑い。

 

 

 

 

「俺の前に引っ立てられた連中をとりあえず全員全裸に剥くんだ。んで致死量ギリのエロマンガ媚薬をたっぷり打ち込んでやる。ビックンビックン!!アッハンアッハン!!ってなるんだろ?知らんけど多分ね。んで薬の効果で発情しまくって狂ったメス豚ババア共は『お願い!!前みたいに私に貴方のチ〇コ入れて!!』って泣き叫ぶと思うんだよ。俺はそれをコーラとポップコーンを両手に離れた所からゲラゲラ笑って見ながらこう言ってやるんだ。『誰がテメエらの腐ったマ〇コに挿れてなんかやるもんかよ。二度とゴメンだブス共が』ってね」

 

「……」

 

「俺が望む復讐ってのはそういう種類のものだ。エロマンガ媚薬くらいでいーのさエロマンガ媚薬くらいでさ。だから、俺はアンタの協力者にはなれない」

 

そう笑いながら僕に向かって堂々と言ってのけた彼を見て……

 

「……ふっふっ……ふ…、ふふふ……」

 

……何故か僕の心は不思議と……

 

 

 

 

「ふふ……はは……はーっはっはっはっはっは!!!!」

 

「……お?もしやツボった?」

 

 

 

僕の勧誘を断った彼を見て……本来の僕であれば怒り狂う所なんだけれど……何故か不思議と、とても愉快な気分になっていた。

 

 

 

 

 

「エロマンガ媚薬!!エロマンガ媚薬か!!そうか!!そうかエロマンガ媚薬か!!いやあ驚いた!!傑作だ!!うん!!確かに僕と君じゃあ趣味が合いそうにないね!!いやーこれまでも僕の勧誘を断って来たヤツはいたけど!!エロマンガ媚薬!!エロマンガ媚薬が理由で僕の勧誘を断ったのは君が初めてだよ!!面白い!!実にユニークだ!!最高だ!!ああ!!君はホントに素晴らしいね氷叢零至くん!!」

 

「どもー」

 

 

 

ああ!!可笑しい!!可笑しい!!

こんなにも心の底から笑ったのなんていつぶりだろう?

それぐらい、僕は無心に笑い続けていた。

配下の連中の『あれ……あの……?』みたいな驚く様子すら面白い!!いや!!本当に!!実にいい!!

 

 

 

 

「……ああ……久方ぶりにこんなにも笑わせてもらった。本当に……今日、ここに来て君に会えて良かったよ」

 

「…………」

 

……やはり、優秀だね、彼は……

 

 

笑いをおさめた僕に、彼もまたニヤリとした笑いをやめる。

 

 

 

 

「実に残念だ……だけど僕の顔を見て、そして知ってしまった以上仕方無い。じゃあ……殺すね氷叢零至くん」

 

「………」

 

 

 

僕は彼を殺すと宣言した。

それに応えて、彼も刀を抜いた。

 

ヒーローが使用する為に、刃を潰した日本刀。

おそらく彼の個性と相性がいい特注の素材を使用しているのだろう。その刀身へと、彼の氷の個性が伝わっていく。

 

「……見事だ」

「どーも」

 

 

氷剣ヒーロー・アイスブレイド

個性・コキュートス

 

 

現役No.2ヒーローであるエンデヴァーの炎系個性に対抗しうる程の才を持ち産まれ……故にその個性は『コキュートス』と名付けられた。周囲の希望の願いと共に。

 

 

最強へと至る事を望まれた氷の個性。

 

人知れず磨き上げられた強力な個性が……至高の領域近くまで高められた氷の力が、今、ここに顕現しようとして……

 

 

 

 

 

 

「私がぁぁあ!!倉庫の天井をぶち破って来たぁ!!!」

 

「ホント!!君は空気ってものを一切読まないねオールマイト!!!」

 

 

 

 

 

 

轟音!!それと同時!!

音よりも砕けた天井の破片よりも速く!!

憎きあの男が現れた!!

 

 

「良かった!!無事だね!!ヤツは私が引き受ける!!君は!!」

「……了解っす。周囲の敵をテキトーに相手しときますよ」

()っる!!でも頼んだよ!!」

「りょ」

 

 

そう彼と言葉を交わし、オールマイトがこちらへと飛び込んでくる!!

 

(残念だけど!!仕方無い!!)

 

流石にオールマイトの相手をしながらアイスブレイドの個性をじっくり拝見出来る程の余裕は無かった!!

 

(出来ればこの目で見て見たかったけど……)

 

あの瞬間、自分が感じた巨大な力の正体を。

 

……でも、すぐにそんな思考すらする余裕がなくなってしまう。

 

(ああ!!本当に!!君は!!最悪なヤツだよオールマイト!!)

 

 

……そして……戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side氷叢零至

 

あの後の戦闘の事は……正直、あまり思い出したくない。

 

オールマイトと、あの複数個性を使う謎の男の激しい戦闘。

寂れた倉庫街が壊滅する程の余波。

 

 

最強VS最強

まさにそんな戦いだった。

 

 

最後には……2人が相打ちになり……この戦いは終わったように思えたけど……

 

 

「オールマイト!!良かった……まだ、ギリで生きてる……急いで病院連れてけば助かりそうだな……」

 

うっわマジで?……メッチャ重そうじゃんオールマイト……え?コレって俺が担いで運ばなきゃいけない感じ?マジかよ……

 

 

しかし流石にそんな事を考える時間すら無さそうだった。

急いでオールマイトを抱えようとした俺。

そんな俺と死にかけのオールマイトを……

 

 

「……消えてくんね?マジで今おたくらを相手する余裕ねーんだわ」

 

 

あの男の部下なのだろう。さっきまでとは別の男達が……間違いなくヴィランが……俺達を囲んでいた。

瀕死のオールマイトを、ここで確実に殺すつもりなのだ。

 

……今すぐにでも死にそうな男に取る対応としては過剰な気もするが……まあそれがオールマイトだとするならば、ヴィラン達の過剰な反応も無理は無い。 

とはいえ、それに付き合ってる時間は本当に、無い。

 

 

 

「これが最後だ……さっさと全員消えろ……でなきゃ……全員、殺す」

 

 

 

手加減している余裕も、それに費やす時間も無かった。

だから俺は一度だけそう忠告して……それでも退かないヴィラン達を確かめて。

 

 

 

 

 

 

絶氷剣(ぜつひょうけん)・アブソリュート ゼロ」

 

 

 

 

 

 

 

本来、自然界に存在しない筈の絶対零度。

 

摂氏マイナス273.15℃

 

あらゆるモノを凍らせ同時に断ち切る地獄の刃。

 

「ひっ!!」

「……死ね」

 

 

俺は刀を振るい、その地獄の剣閃を全面へと解き放った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日……俺は初めて人を殺した。

1人だけでなく、5人も。

 

 

そしてオールマイトを担ぎ病院へと向かう途中、駆けつけたオールマイトの味方の人達と合流。何とかオールマイトを病院へと運び込む事に成功した。

 

 

 

 

……んで、その夜俺は……盛大に吐いた。

 

 

 

 

数日後……オールマイトがなんとか助かったと連絡を受けた。

 

……だから……まあ……きっと……これは、これで良かったんだろ。

うん。そーだな。

 

俺は、そう思う事にした。

 

 

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