氷叢家の種馬(ガチ)   作:のりしー

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職場体験2

「あー零至さん!!またタバコ吸ってるー!!ねえねえ不思議不思議!?どうして健康に悪いってわかってていつもいつもタバコを吸ってるの?タバコってそんなに美味しいのかな?でもSNSとかで調べてみると皆、美味しくない美味しくないって言いながら吸ってるよね!?ねえねえ何で何で?それなのにどうしてタバコ吸ってるの?タバコなんてやめた方が絶対いいのに!!不思議不思議!?」

 

「……ん?おー不思議女か。相変わらずうるさいねーおたくは。マジウケるんだけど」

 

雄英高校内に最近新しく出来た喫煙所。

 

そこでのんびりタバコを吸っていると、毎度おなじみのうるさいヤツが突撃して来た。

 

「うー!!やっぱタバコってくさーい!!」

 

いつもの様にやかましいその女は、喫煙所に入ってくるなり顔をしかめてそんな事を言った。なら入ってこなきゃいーだけなのにねー?ねえねえ何で何で不思議不思議の摩訶不思議なりー。

 

 

 

そんな事を考えつつ、俺は短くなったタバコを灰皿に押し付け火を消す。

 

 

「あっそ。じゃあ良かったじゃん。ちょうど吸い終わったタイミングだわ」

 

 

「……え?」

 

万が一にも火災に繋がらないように吸い殻を処理しつつ、

 

「……んじゃ、またな不思議女ー」

 

……し終えたので、一応の礼儀として別れの挨拶をして喫煙所から俺は立ち去ろうとして……

 

 

「ええええ!!!何で何で何で何で!!不思議不思議!!」

 

 

……して、その場を去ろうとした俺。お望み通りにタバコを吸うのを止めてやった俺に対し、何故か文句を言ってくる。

 

「不思議も何も無くね?吸い終わったからタバコを灰皿にポイして喫煙所から出ようとしてるだけなんだけど?」

 

「でもでも!!私!!今ココに来たばかりだよ!!もう1本くらい吸ってけばいいのに!!ねえそうしようよむしろ何でそうしないのかな!?ねえねえ何で何で不思議不思議!!」

 

「……えー……マジでめんどーだなコイツ……タバコをやめろって言ったり吸えって言ったり……一体どっちなワケ?」

 

「今は!!もう少しココで吸ってて欲しい!!」

 

「はい無理ですーこの後約束がありますーってかもう約束の時間ギリギリですー」

 

「ぶうううぅぅぅぅぅ!!」

 

「ぶーぶーぶーぶーうるせーなー……ブタさんかな?最近、なんか増えたよねー雄英内に」

 

「ぶーぶー!!」

 

「やれやれ……んじゃ、マジでじゃーなー」

 

「いつもの事だけど零至さんホント最低!!最悪!!バカ!!嫌い!!」

 

「はーい知ってますーなんなら言われ慣れてもいますー」

 

「もー!!バカー!!」

 

ぎゃあぎゃあとうるさい不思議女と別れ、俺は仮眠室へと向かう。

 

オールマイト絡みの事件で知り合った警察関係者と、オールマイトも交えて3人でナイショのお話をする為だ。

 

 

(やれやれ……美人って評判の妹さんを俺に紹介してくれる……ってな気楽な話で終わればいいんだけどね、全く……)

 

 

……当然、この後の話がそんな気楽なモノでは無いってことくらいはわかっている。

 

全く……困ったもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side緑谷

 

「誰だ君は!?」

 

「雄英から来た緑谷出久です!」

 

「何て!?」

 

「緑谷出久です!!」

 

 

(……困った……どうしようかなコレ……?)

 

 

職場体験受け入れ先のヒーロー事務所に到着した僕……を出迎え?てくれたのはちょっとボケ気味?というかちょっとかな?ホントにボケてないかなこの人……的なご老人だった。

 

 

(この人が……本当に?)

 

 

 

あのオールマイトがあんなにも怖がるお師匠で。

 

あのクズコーチが爺様(・・)と親しみを込めて呼ぶ人なのか?

 

 

(正直……あの2人(・・・・)がそんな強い想いを向ける人には見えないけれど……)

 

 

目の前で完全なるボケた老人ムーブをブチかましてくる人を見ながら、僕はそんな事を考えてしまった。

 

でもあの2人には見えてるものが僕には見えてないだけなのかもしれないしなぁ……

 

(うーん……どうしよう?)

 

……だ、なんて考えていた所で、

 

 

「……あ、そう言えば」

 

「ん?」

 

 

近所のスーパーで買ってきた手土産。

 

 

 

スーパーとかで売ってるような、極々普通の冷凍たい焼き。

 

 

 

それを入ってるビニール袋ごとおじいさんに渡す。

 

 

 

「コーチ……あ、いや零至さんからです。えっと『俺から』って言って渡しておいてくれとの事です。それでわかるって」

 

 

「……はっは〜ん。全く……あ〜の零至(悪ガキ)は……こーいうのだけはちゃんとすっからなアイツ……普段からもう少しちゃんとしてろ、って俺が言ってもちっとも聞かないクセによぉ」

 

 

「あはは…………って?あれ?」

 

さっきまでの様子とはまるで一変。

可愛がってる孫から好みのお土産をもらった。

そんな感じの、とても嬉しそうな顔でおじいさんが笑っていた。

 

 

その様子は、先程までの「ボケてるのかな?」って僕が疑っていた様子とはまるで違っていて、

 

 

「……あ、そう言えば」

 

 

そう言えば、コーチがこう言っていた。

 

 

『あの爺様は、真に迫り過ぎててちょっと笑えないレベルで「老人ボケのフリ」ネタが上手いから騙されないよーに気をつけろよー』

 

 

つまり……これは……

 

 

 

「ひょっとして僕……今、からかわれてます?」

 

 

真顔での僕の問いかけ。

それにおじいさんは「あっ……いけね!!」ってな感じで、一瞬、ちょっとだけバツが悪そうな顔をした後、

 

 

「……正確には、からかい半分、観察がもう半分ってトコだけどな……タネ明かしは悪ガキか?全く……アイツはホント子供に甘い」

 

 

やれやれ……まあ、バレちゃ仕方ねえか……

 

 

……そう言うなり、おじいさんがすっ……と背筋を伸ばした。

 

 

「………!!!」

 

さっきまでの様子とはまるで違う。

僕ですらハッキリとそれがわかった。

 

最初に会った時とはまるで違う……圧倒的な存在感。

 

 

 

「ヒーローコスチュームに着替えろ小僧。まず最初に、今、どの程度動けるかを見てやる」

 

 

 

その小さい身体から放たれる強烈なプレッシャー。

 

 

「この職場体験での指導方針を、これからのお前の動き次第で決める。そのつもりで、遠慮なく全力で来い」

 

 

それはコーチや相澤先生……トップヒーロー達から感じるモノと同種の、圧倒的な存在感だった。

 

 

 

 

「……ご指導、よろしくお願いします……」

 

(……ある意味で、良かったのかな?)

 

……最初に、このご老人に会った時とは全く違う種類の緊張感……

 

それに顔を強張らせながら、僕はこの職場体験が実りの多いものになる事を確信した。

 

 

オールマイトがアレほど怯え。

コーチが敬意を払う。

 

ヒーロー・グラントリノ。

 

 

 

僕の職場体験が、始まる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side峰田実

 

 

(思ってたんと全然違う!!違いすぎるじゃねえかよぉ!!)

 

 

「……で?他には?他に無いワケあのクズの雄英高校内でのエピソードは?まー私もアレだし?忙しい現役ヒーローなワケだし?そんな忙しい忙しい、とってもとーっても忙しい時間を割いてまであのクズの話なんか聞きたく無いワケ何だけどさ!!まーアンタが話したいって言うならね、仕方無いから聞いてあげなくも無いワケ。そう、特別にね。と・く・べ・つ・に!!」

 

 

(ああクッソぉ!!クソぉ!!最初に!!オイラの職場体験先がこの人に決まった時は『やったぜ大当たりだ!!』って思ってたのに!!)

 

 

正直!!思ってたんと違いすぎるじゃねえかよぉ!!オイラ!!何か悪い事したのかよぉ!!

 

 

「ま!!まーアレよ!!あれあれ!!アレあれ?アレってヤツね!!ホントは私もあのクズ!!(・・・・・・)の事なんか一切一ミリ一コンマも興味なんて無いんだけどね!!ホントよ!!ホント何だからね!!まーそれはそれとして!!私のいない所で、知らない所であのクズが何してるか知っておいてもいーかな?って!!つまりはそーいう事なのよ!!うん!!それだけなの!!それだけよ!!」

 

 

 

そんな事を思っているオイラに詰め寄ってくるヒーロー。

詰め寄って来る!!ってのは弱めの比喩表現ってヤツなんだぜ!!実際は!!滅茶苦茶に圧がスゲエ!!

 

 

そんなオイラを激詰めしてくる美女ヒーロー。

 

 

ヒーロー名・Mt.レディ。

 

 

そのヒーロー事務所に来るなり、オイラはずっとこんな感じ!!

 

いくらなんでも!!思ってたんと違いすぎるだろぉ!!

 

ちょっと(!!!!)だけ人より性的な好奇心が強めなオイラだからさ!!

そりゃこんな美人が一人でやってるヒーロー事務所に職場体験に来れるだなんて!!当然!!多少のピンク(!!!)なイベントも期待してはいたけれども!!

 

 

 

 

 

「コレは!!マジで思ってたんと全然違ぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

色っぽい恋愛的な話でキャッキャッウフフ!!は期待してたよ!!

神様!!ごめんなさい!!許して!!浅はかなオイラを許して!!

 

 

 

「……あー……ごめんごめん……ちょっと色々と聞くのを焦り過ぎたわねー……うんうん……ごめんごめん。私も反省するわ」

 

「……あ……ああ……」

 

 

 

オイラの荒ぶる感情を色々と察したのか?

ようやく「ごめんねーごめんねー」と少し落ち着き、反省の様子を見せる美女。

 

「……まーアレなのよねー……色々と雄英高校内でのアイツの事を聞きたいのは山々何だけど……Mt.レディ的にね。これは山ジョークってやつよ。笑いなさい。てか笑え」

 

「はっ……あは……あはは……」

 

 

 

 

 

配点・全然笑えない。怖過ぎて。

 

 

 

 

真顔でそう詰めて来る美女。

ごめんって……さっき言ったばかりなのに……全然、ごめんな感じがしない……

 

 

 

 

「あー……ホントごめんって。マジで私も焦り過ぎたわねー……いや、色々と聞きたいのはホント何だけど……結局のところ、本当の本当に聞きたいのは一つだけなのよねー……それだけ教えてくれれば大丈夫。うんうん……もうそれ以外はあのクズの事を、コレ以降は一切聞かないって約束するから。うんうん……これはホント。コレだけ教えてくれたら金輪際もうあのクズの事は聞かないから。うん!!約束約束♡」

 

「……え!!ほ、ホント!!マジで!!」

 

「うん!!マジマジ。マジよ♡」

 

 

そして、さっきまでのゴン攻め顔を崩し、仏様ってか菩薩様みたいにニッコリと目の前の美女は笑う。

 

 

 

 

 

「……ねえアナタ……出久きゅん(・・・・・)……って?誰か?知ってるかしら?」

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

「あの怠け者の超絶クズが……わざわざ雄英高校に出かけるのよ?絶対……雄英高校に関係あるわよね出久きゅんは?ねえ……アナタ……出久きゅんの事を何か知ってるかしら?」

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………ひゅっ」

 

 

……ああ……緑谷……

 

 

 

 

オマエは職場体験充実してるか?

 

頑張ってるか?

 

良いヒーローとの出会いとかあったかよ?

 

オイラは……

 

 

 

 

「……ふ〜ん」

 

 

「………………………………………っ………………………………………ひゅっ!!………………………ひゅっ!!」

 

 

……オイラは、もう皆のところには帰れないかもしれません……

 

 

なぁ……緑谷……

 

なぁ……皆……

 

 

(……女は怖い……怖すぎるぜ!!)

 

 

 

オイラの職場体験が、始まる!!

 

 

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