氷叢家の種馬(ガチ)   作:のりしー

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そして

sideAFO

 

「気分はどうじゃ?」

「当たり前の事を聞かないでくれよドクター……最悪の気分さ」

「そうは言うが、正直……あの状態から蘇生出来ただけでも御の字じゃと思うぞい」

「まあそれはね」

 

ここは僕が所有する隠れ家の一つ。

そこに最新の医療機器を持ち込ませ、僕はその一室で治療を受けていた。

 

まあ確かに。顔面をふっ飛ばされたにも関わらず、我ながら良く蘇生出来たものだ。

そのおかげで男前(・・)っぷりに大分磨きがかかってしまったが……まあそこは蘇生代と考えて割り切るしかないか。

 

「……オールマイトも殺し切れていなかったようだね」

「あちらはあちらでしぶとい……まあそういう事じゃろ」

 

……全く。しぶとい男だ。

だが、それでこそ我が宿敵。

君のために色々と仕掛けを仕込んでいるんだから、簡単に死んでもらっては正直困る。

オールマイトは……なるべく苦しめて……絶望させてから殺す。そう決めているのだから。

 

「とはいえ……あちらも生き残れたのが不思議なレベルの重傷じゃ。今回の件でかなりの力を失ってはいるじゃろう。どうする?オールマイトを殺す好機じゃとは思うが?」

 

「……急ぐ必要は無いよドクター。今回の件で、オールマイトは確実に僕を殺したと考えているだろう。その勘違いを利用し、僕は表だけでなく裏社会からも姿を完全に隠す。本当に僕が死んだとヤツに誤解させたままにしておく。その分、君のような一部の協力者達には今以上に働いてもらうけど」

 

 

元々時間はこちらの味方だったが、今回の件で更にそれは加速した。

高齢と呼ばれる年齢に刻一刻と近づいてくオールマイトは、更に今回の件で力を失った。この流れは早まる事はあれど減速する事はまず無い。時間は確実にこちらの味方だった。

 

だからこそ今はこれまでに撒いてきた大事な種を……さらに丁寧に育て上げて収穫の時を待つ……そういうターンだった。

 

そんな僕の説明にドクターは頷き。

 

「……承知した。氷叢零至に関してはどうする?」

 

「何もする必要は無いよ。アレは振りかかる火の粉に関してはキッチリと払うタイプだが……わざわざ自分のねぐらから出て来て、ヴィランに対しサーチアンドデストロイを仕掛けるような勤勉さは持ち合わせちゃいない。今回のようにこちらから手を出さない限りは、これまで同様に怠惰な豚のフリを続けるだろうさ」

 

「惜しいのう……個性・コキュートス……出来れば手駒として欲しかったが」

 

「……ドクターが自分の手駒だけ使って仕掛けるというなら止めはしないけど……」

 

……そこで、一拍。

 

 

 

「……本当に仕掛ける気なら『エンデヴァー』を仕留めるくらいのつもりで本気の戦力を整えてから行くんだね。氷叢零至は20歳くらいだったかな?うん『20歳時点のエンデヴァー』と同等の実力があると想定して仕掛けるのをオススメするよ」

 

 

「20歳時点のエンデヴァーって……確かすでにNo.2のヒーローだった気がするんじゃが……しかもNo.1が不動のアレじゃろ?」

 

 

「炎系最強個性であるエンデヴァーと対抗しうる程の才能……それ故のコキュートスという名付けは伊達じゃなかったという事さ。うん、多分……おそらく……本来なら彼は……」

 

うん……おそらく……彼は……

 

 

 

 

 

「本来……性的虐待を受ける事無く、健全に・真っ直ぐ・順当に彼が育っていたとすれば……氷叢零至は間違いなくNo.1ヒーローを目指せる男だった。年齢的にも今No.2のエンデヴァーよりは、オールマイト引退後の次代のNo.1ヒーロー……次代の平和の象徴として相応しい男として育っていたかもしれない」

 

 

 

 

 

「…………」

 

「……だが、そうはならなかった。落ち目の氷叢家の延命措置の為に幼い彼は犠牲となり……そしてその芽は絶たれた。だがしかし……ソコからが本来の英雄となるべきだった男の資質……その真骨頂なのかな?彼は確かに歪んでしまったけれど……心が病んで自殺することもなく。安直に家から逃げ出し野垂れ死ぬ事もなく。社会への復讐の為にヴィランに堕ちる事も無かった。彼はその辛い少年時代を不屈の精神で耐え抜いた。そしてヒーロー資格を取り、しっかりと今後1人で生きていく為の生活の手段を手に入れた上で悠々と氷叢の家を出て行ったのさ。その心の強さ。将来の事まで考えて極めて理性的かつ合理的に行動出来る知性と忍耐力。そして……誰にも気付かれないように隠しながら鍛え上げたあの氷系最強個性……実際、大した男だと思うよ」

 

アレが勤勉なヒーローとして敵になれば厄介だった。

そんな彼をこうしてくれた氷叢家には金一封でも贈ってやりたい気分だった。

 

「……何というか……随分と高く買っているというか……気に入ってるんじゃな氷叢零至の事を」

 

敵であるヒーローを褒める僕に、ドクターが若干の呆れの声をかける。

 

 

 

「そりゃそうさ!!なんせエロマンガ媚薬だよ!!この僕の口からエロマンガ媚薬!!だなんて吐かせたんだ!!これだけで大金星ってもんさ!!ああ可笑しい!!本当に久方ぶりにこんなに笑ったよ僕はさ!!あーっはっはっはっ!!……あ、笑いすぎた……なんか大事な機械外れ……ちゃっ……」

 

 

 

「ええい!!いくら何でも笑いすぎじゃろ!!今つけ直すから笑うの辞めて大人しくせい!!」

 

あ……なんか意識も遠くなって……きた……

ただでさえ身体も回復しきっていないのだ。無理もなかった。肉体が休息を欲しがっているのだろう。

 

薄っすらと消え行く意識の中で、慌てた様子のドクターが僕に外れた機械をつけ直したのを確かめる。

 

……その後に、僕の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side氷叢零至

 

「わーたーしーがー……病室のベッドから身体を起こした!!」

「いやそ~いうのガチでいいんで。寝ろ。寝てくだせーオールマイト」

 

あの事件から数日後。

オールマイトが俺に会いたがっているという連絡を受けて、俺はオールマイトが入院している病院へ来ていた。 

VIP対応が可能な病院なんだろうな。セキュリティなど様々な対策が施され、厳重な警備をされた病室に俺は案内された。

 

んで、冒頭のこれ。

病室に来た俺をオールマイトはベッドから身体を起こして出迎えた。いやそーいうのホントいーんで。アンタ死にかけだったんでしょ?休め。頼むから休め。

 

「……まあ、当然休ませてはもらうけどその前に……」

 

そう言ってから、オールマイトはペコリと頭を俺に向けて下げた。

 

「ありがとう氷剣ヒーロー・アイスブレイド……あの時の君の決断が私の命を救った。本当に後一分でも病院へ辿り着くのが遅ければ私はこうして生きてはいなかったそうだ……だから、君のおかげだ。本当にありがとう……」

 

「……うっす」

 

 

……そっか。

なら……うん。なら良かった。

 

 

 

「……あ、ちょっとホントにキツイからここからは楽にさせてもらうよ……」

「ちっす」

「軽いなー君ってほんと」

 

そしてオールマイトは再びベッドに戻し。

 

「……今日、君を呼んだのは直接お礼を言いたかったってのが一つ。もう一つが今回君が関わった事件……あのAFOという恐ろしいヴィランと……裏社会におけるヤツの影響力について、ちゃんと説明しておいた方がいいと思ったからだ」

 

「えー……でもそれ聞いちゃうと俺巻き込まれる系じゃないすか?やだなぁ。面倒くさいのに巻き込まれるのとか俺ちょー嫌いなんすけど……やだなぁ……なんかその事情聞きたくないなー」

 

「はは!!ホント軽いな君は!!だが……君はすでに一度ヤツらと敵対した。積極的に関われと言うつもりは私も無いよ。だが……『こういう連中』がいる……と知っておく事は君の望む平穏な生活にとって大切じゃないかな?世の中には知っておくだけで避けられる災いというものもあるんだからね」

 

ふむ……まあ、確かに……それは一理ある、か。

 

「気が変わったっす。教えてくだせー」

 

「はっはっはっ!!段々と君との付き合い方がわかってきたよ!!じゃあ説明しよう!!」

 

 

 

そんで語られたのがオールマイトの……正確にはオールマイト含むワン・フォー・オール歴代継承者達と、オール・フォー・ワンと呼ばれる男の数世代に渡る戦いの物語。

 

何らかの個性で長く生きているオール・フォー・ワンが、裏社会に強い影響力を持っているという事。

それと関わった俺も、今後狙われる可能性があるという事。

 

まあオールマイトの言う通りで、もし狙われる事が無かったとしても、そういう連中がいるって知れたのは良かったかな。

 

 

「オール・フォー・ワン本人は私が倒したからもう心配は無いが……まだ、ヤツの配下が残っている。治療が終わり次第私はヒーロー活動に復帰し、そういう配下連中も倒していくつもりだが……君も狙われる可能性がある。十分注意してくれ」

 

「ちょいちょい。ステイ……え……マジで?ヒーロー活動復帰するのオールマイト?ガチ?」

 

事情の説明の終わり際。なんかトンデモナイ爆弾をオールマイトがぶっ込んで来た。

 

「……死ぬ寸前だったんでしょ?」

「うん。そうだね」

「……身体の中が大分ぐちょってるって聞いてるすけど……」

「はっはっはっ!!まあ君風に軽く言うとそんな感じかな!!」

 

 

ドン引きする俺……それに朗らかに応えるオールマイト。これマジだわ……こんな身体になったのに、マジでヒーロー活動復帰するつもりだわオールマイトは……

 

 

(……何で……そこまで……)

「……ん?何か言ったかい?」

 

 

「うっす何でもないす」

「……そうか」

 

何か俺に向けて言いたそうな顔をオールマイトはしたが……丁度ここで面会の時間が終わった。

まあそれはそう。

数日前まで棺桶に身体半分くらい突っ込んでいたのだから。

 

 

 

……こうして俺とオールマイトの面会は終わり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「れ〜い〜じ〜くん!!来ちゃった♡」

「どもー。土産だけ置いてまわれ右して出てってどうぞー」

 

「冷た!!君ほんと男に対して塩対応だよね!!」

「ちっす。それ程でも」

 

「毎度言うけど褒めてはないからね!!」

 

 

 

 

……これ以来、なんか俺を心配してなのか?ちょくちょく俺の自宅兼ヒーロー事務所にオールマイトが顔を出すようになった。

 

都内某所にある俺の自宅兼ヒーロー事務所。

事務所+1LDKという良くある作り。ヒーロー飽和社会と言われるだけあって、俺のような零細ヒーロー事務所向けのこんな物件が都内には山程あった。

 

そんな事務所にオールマイトならぬガリマイト……どっちがトゥルーでどっちが……何だっけ?何フォーム?忘れた。まあいいっしょ。

 

とりあえずヒーローしてない時の力を抜いたガリマイト……あれ以来急速に衰え、ヒーロー活動以外はこの骨と皮と僅かな肉……ガイコツ一歩手前みたいな姿で過ごしているそうだ。そんなオールマイトが今日もこうして俺の事務所に茶を飲みに来ていた。

 

そんなガリマイトは手慣れた様子で事務所に入り、あまり使わないけど一応用意している応接用の椅子に腰掛け、セットで置いてる応接机に買ってきたらしい茶菓子を並べている。

 

「まあまあそんな邪険にしないでくれ給えよ……私のこの姿を知っているのは君を含めてもかなり少なくてね。本来の姿のままで気を抜いて茶飲み話の出来る相手は私には限られているんだ」

 

「……それならあのサー・ナイトアイならぬサー・ストーカーアイ何とかしてくれません?あの人ウチにオールマイトが来ると、どっから知ったのかやたらと鬼電来るんすよ。やれ『彼の体調はどうだった?元気そうだったか?』とかそんなんばっかで……余りにもウザいから今はブロックしてるけど。何なんあの人?別れた元カレなの?それとも娘とケンカ別れしたパパ上なの?」

 

「それはなんか色々とホントにゴメン!!」

 

……全く……さっさと仲直りしろっての。2人ともいい大人なんだから……

 

こんな感じでしょーもない話をオールマイトとちょくちょく話す機会が増えた。

その縁でストーカーノッポやら頼もしい爺さまとかとも色々話したりするようにはなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして……これから約5年後…

 

 

 

 

俺はオールマイトに導かれ、ある1人の少年と出会う。

出会ったその当時はまだ小さな光。

 

……しかし、やがて大きな光へと成長する少年。

 

……緑谷出久という少年と。

 

 




こうして原作とリンクし!!スタート!!

……の前に一個サイドストーリー的幕間が入ります。
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