「おっちゃーん、コロッケ一個くんね?」
「はいよ!!『普通』のコロッケと『発情』コロッケ!!どっちのコロッケがいいんだい!?」
「普通で」
「……はい、100円ね(しゅん……)」
「どもー」
しゅん……とする肉屋のおっちゃん。
「あんた!!まだまだあんたの発情が足りないんだよ!!もっと気合入れて発情しな!!」
それを奥さんらしき人が店の奥から励ましていた。うん?励まし?まあ、いいか。
パトロール中にコロッケ買うだけでこれだよ。全く……相変わらずこの母須恵砂町のモブ連中は濃いなぁ。
「あーアイスブレイドがパトロール中に買い食いしてるー!!」
「旨そう!!ズルい!!アタシらにもおごってよ!!」
「ねーパンツ見てもいいからさー!!」
ここのコロッケ旨いんだよなー買うだけで煩いのがちょっとアレだけど……と、買ったばかりのコロッケを一かじりした所でいつものJKギャル共にたかられた。
「あん?別にお前らのパンツ見せられたくらいでおごる気はねーけど……何?お前らのレートじゃワンパンツSHOT=コロッケな訳?は!ウケるんだけど。ちょっとパンツの価値が暴落し過ぎじゃね?」
「「「いえーい!!!」」」
あ、いいんだ……まあどうでもいいけど。
そこで気づく。
「あれ3人しかいねーじゃん?どしたん?この前のだだスベリした四聖獣ネタに嫌気がさして脱退された?」
「んー違うよー」
「なんかねー知り合いの知り合いの知り合いくらいの人から、新しいダイエットサポート薬を勧められたから今日は家でそれ試してみるんだって」
「ダイエットは大切よねーギャル的にも」
「ふーん」
「「「マジでどうでも良さそう!!!」」」
全くもう……これだからイケメンは……とやれやれ仕草のギャル共。イケメン関係なくね?男は大概こんな反応するんでは?
「アイスブレイドは今日は一日パトロール?」
「んにゃ。この後ぱいせんに呼び出されててなあ、めんどいけど軽くパトロールしてから待ち合わせ場所に移動だわ」
「そっかー町の外行くのかー!」
「頑張ってねー!」
「我らが母須恵砂の星ー☆」
「……流石の俺でも、その送り出され方は嫌だなぁ……」
「「「いえーい!!!」」」
「……あ、コレ確信犯かこいつら……」
こんな感じで歯抜けのJKギャル四天王と戯れ、この後もこの町の濃いモブ連中に呆れたり何だりしながら俺は一通りパトロールを終え、そしてぱいせんに呼び出された場所へと向かった。
都内の某所。とあるビルの貸し会議室。
入口のドアを軽くノックしてから中に入る。
「ちっす」
「「「「「軽っる!!!!」」」」」
……あれ?思ったより人いるじゃん?
呼び出しを受けた会議室には20〜30人のヒーロー達が集まっていた。奥にデニムぱいせんがいて目が合ったので軽く頭を下げて挨拶。あ、紙ぱいせんもいるじゃん。そちらにも軽く頭を下げておく。
そんな入室したての俺に、
「は!!怠け虫じゃねえかよ!!テメエも呼ばれてたのか!!」
バニーガール姿で近づいて来る1人の女。
「なんだ駄ウサギじゃん。めずらしーねーこっちいんの。おたくの出現エリアってもっと西じゃなかったっけ?」
ミルコ。ミルコだ。
バニーヒーローだっけ?ラビットだっけ?まあどうでもいいか。
取り敢えずそのミルコが俺に向かってズンズンと近づいてきた。
「人の事をポケモンみたいに言ってんじゃねえよ相変わらず生意気なヤツだぜ……しかも、前も注意したのにそのへらへらとしたツラも直してねえ……尻でも蹴飛ばして気合いれてやろーか?」
「……んー?何?イケメン見かけたからって盛って近づいてきた訳?発情期かよウケるなこの駄ウサギ。金払ってくれんならもんでやっても良いぜ色々とよ」
「……相変わらずだなテメエ……」
「何だよ距離近くね?マジで発情期かよ?はは!!ウケるなマジで」
挨拶代わりにバチバチと睨み合いをする俺達。
まあ毎度の事。実際ダブルぱいせん達はヤレヤレ観戦モードなので、俺とこの駄ウサギを゙呼んだ時点でこれは織り込み済みなんだろうなぁ。
そんな周りの皆が話し掛けにくいオーラを出す俺たちに、
「……あ、あの〜……あのー!!!」
「ん?」「お?」
俺達のじゃれ合いを仲裁しようとしてるのか?初見の女性ヒーロー……なんかプロレスラーみたいなコスチュームをした女が俺達の間に割って入った。
「わあ……イケメンですねーお兄さん!!は!はじめましてですよね!!私は今年デビューした
俺達のじゃれ合いを止める為に、そう名乗り握手を俺に求める彼女。そんな彼女に毒気を抜かれて俺は、
「どもーアイスブレイドですーよろしくー」
と、取り敢えず握手し名乗った。
「……へ?アイ……ス……ブレイド?」
「ですー」
……のだが……
「ギャァァァ!!アイス!!アイスブレイド!!あのデビューしたての女性ヒーロー達に諸先輩方が皆口を揃えて『アイツはマジでクズ。超クズ。絶対に近づくな』って警告するあのクズヒーロー!!女の敵!!ヤダー!!握手しちゃった!!手を握っちゃったじゃん!!エンガチョ!!エンガチョ!!あー手を洗わなきゃーーー妊娠するー!!!!」
「おーついでにうがいもしといた方がいーらしーぞー」
「確かに!!ありがと!!ちょっと手洗いうがいしてくる!!」
「……いや自分で言うのかよお前……」
にこやかな握手から一変。バッ!!と俺から離れ叫ぶ彼女に俺が声をかけ、駄ウサギが何か言っていた。
そんな感じでギャースカギャースカ騒ぐ俺達に。
「すまないが手洗いうがいは後にしてくれMt.レディ。私としてはもう少しくらい皆で歓談の時間を取りたかったのだが……そこのクズ後輩がキッチリと時間ギリギリに来てしまった所為で定刻だ……」
そんな俺達に向けて。会議室の奥。そこにいたデニムぱいせんが口を開いた。
ファイバーヒーロー・ベストジーニスト。
その名の通りにぱいせんは身にまとっていたデニムから細い糸を伸ばし、デニム製のハンカチをなんちゃらレディに渡した。
「デニムにはクズの邪気を払う力がある。取り敢えずはそれで手と口を拭いておくといい」
「やー流石ぱいせんすねー流石デニムーさすデニー」
「……このクズ後輩……やはり私のこと舐めてるよな貴様……」
「えー何言ってんすか?俺めっちゃぱいせんの事尊敬してるっすよ。いやマジ。マジで。あ、ぱいせん?タバコ吸っていいっすか?」
「ここではNOTデニムだ。後で喫煙所で吸え」
「へいー」
「全く貴様は……いくつになっても……」
「……先輩」
「……うむ」
ため息を゙つくデニムぱいせんを紙ぱいせんがフォローするようにして声をかけた。紙ぱいせんことエッジショットぱいせんである。
「……コホン……あー……少し空気がおかしくなってしまった事に関してまず謝罪しよう。すまなかった。これでここからは仕切り直しとさせて頂く。今回、これ程多くのヒーロー達に協力を呼びかけたのは他でもない。とあるヴィラン組織の邪悪な企てを阻止する為だ」
「これから資料を配る。隣の者に順番に渡してくれ」
デニムぱいせんを補助する紙ぱいせんが資料を渡し、そこから隣のヒーロー隣のヒーロー……という具合に資料が渡っていく。
「……はい……あ!!私の手には触らないでよね!!」
「ういー」
「軽っる!!」
隣の煩い女から資料を受け取り、隣の煩い駄ウサギに資料を渡す。
そして回ってきた資料を眺めながらぱいせんの説明を聞く。
「今回皆に集まってもらったのは、未成年向けにヴィランが企んでいる悪しき計画を徹底的に潰す為だ」
「……へえ……」
そして、ぱいせん2人の声と手元の資料がリンクしていく。
「海外から輸入した違法
「……未成年に広める為の理屈はこうだ『個性の使用にはカロリーを大量に消費します。つまり強力な個性を゙使うと、人はその分多くのカロリーを消費します。このダイエットサポート薬は、貴方の個性の力を高める効果があり、それによって個性を使う貴方の消費カロリーを増やす事でダイエットをサポートします』とな。ようは、このトリガーを使うと貴方の個性は強化され、そしてその強化された個性を使えば普段より多くのカロリーを消費し、効率的なダイエットができます……という事だ。家の外で個性を使えば咎められるが、自室でバレないようにダイエットの為に個性を使う分には目立たないし罪悪感もない。上手く考えられている」
「……実際のところ、この薬によるダイエット効果を証明するデータはない。だがそれらしい理屈で、未成年も手を出しやすいダイエットサポート薬というネーミングでこの悪質な薬を゙広める。それがこの計画の悪質な所だな。ダイエット薬としての根拠がなくとも、手が出し安い名前と価格で常習性のある麻薬を未成年に勧めようとしている」
「そうして未成年達に上手いこと麻薬を使わせ……中毒性が出た辺りで薬の値上げだ」
「……結論……薬を゙買うために麻薬に侵された未成年……おそらくダイエット薬に手を出す以上女性が多いだろう。彼女達は手っ取り早く金銭を稼ぐ為に風俗……立ちんぼやデリヘル、ヴィラン相手の違法風俗に手を出す事になる」
「……今回のこれはヴィラン相手の違法風俗に従事する未成年を大量に捕まえる……そんな狙いがあると予想している」
「……最低!!」
隣のなんちゃらレディの吐き捨てるような叫び。
その叫びを聞きながら、俺はふと……とある会話を思い出していた。
『なんかねー知り合いの知り合いの知り合いくらいの人から、新しいダイエットサポート薬を勧められたから今日は家でそれ試してみるんだって』
(…………)
ギリ……っと。誰かが奥歯を噛み締めた音が聞こえた気がする。
そんな俺を見て、デニムぱいせんがニヤリと笑い。
「これは我らヒーローが必ず潰すべき、潰さなければならない悪しき企みだ……そんな訳で、私とエッジショットの2人であらかた必要な調査は済ませてある。この件に関わった全てのヴィランをブチのめしてとっ捕まえる。その為に必要な全ての調査をな。これからその総仕上げを手伝ってもらうために皆には声をかけさせてもらった」
「これより具体的な作戦の説明に移る。違法薬物を溜め込んでいる倉庫を強襲するチーム。そしてブレーンとして働く首魁共を捕まえるチーム……このメンバーを二手に分けて、ヤツらを本日中に全て殲滅する!!」
前に立つ2大ぱいせんのその力強い声。それに皆が、
「おお!!」
「胸糞悪過ぎる!!」
「絶対!!全員ブチのめしてやる!!」
そう盛り上がっていた。
……そして、俺はそんな連中を静かに見回していた。
「どうだクズ後輩?貴様の先輩は
「……えー……何言ってんすかデニムぱいせん……前から言ってるでしょ?俺ぱいせんの事はマジで尊敬してるって」
「……フッ……抜かせ」
「へへん」
「……やるぞ」
「……ちっす」
盛り上がる周囲……その間隙を縫うようにして俺に近づき肩をぽん……と叩きながらそう言ったぱいせんに、俺はそう返した。
「……フッ」
ぱいせんはそのまま俺以外の色々な人達の所にも行き、そして声をかけていく。そして声をかけられた奴は気合とやる気に満ちあふれた叫びを上げ、まあホントに尊敬出来る先輩だなぁ……と俺はそれを見て実感するのだが。
「…………(じぃ~〜〜)」
「……ん?どしたん?」
……そんなぱいせんを見ていた俺。
……そんな俺の横に、身を屈めて下から俺を覗き見上げるなんちゃらレディがいた。
「…………ふーん」
「ん?何よ?」
「……別に。アンタそんな顔も出来るんだな……って思ったの。まあそれだけよ」
「そか」
「……軽いわねーホント……」
まぁでも……と、そこでソイツは身を起こして。
「取り敢えず……ムカつくヴィランは全員ブチのめしてやらないとね」
「……だな」
そう名前なんだっけ?なんちゃらレディが笑った。
俺もそれに笑い返す。
どーもぱいせん流石っすわ。
……クズ以下の外道共……ブチのめしてやる。