朝起きたらウマ耳と尻尾生えとるんやけど...!?!?!? 作:飽之七起
男の名前は寝玄神(ねくろ しん)。人間だ。
いや、人間だった。と言うべきか。
少なくとも、昨日までは...
「なにこれ凄ぇ...!!!」
昨日の夜は普段通りに寝た。
ただ、なんか無性に身体全体が熱かった気がする。特に頭と腰、そして...脚。
痛いわけじゃなかった。なんか熱かった。が、眠すぎたのでそのまま寝た。
そして朝起きたら───
「ウマ耳と尻尾生えとるんやけど!?!?!?」ピコピコ
テンション爆アゲだった。それはもうプチョヘンザだった。
寝玄はレースが大好きだった。見るのも自分で走るのも大好きだった。子供の頃から、自分もあんな風に走りたいとずっと思っていた。
しかし彼は男で、人間だった。そんな夢なんて叶うはずもない、現実を見よう、周りのみんながそう言っていた。でも彼は諦めなかった。
勉強をした。人間に関することだけじゃなく、ウマ娘に関することも徹底的に、頭に知識として叩き込んだ。
筋トレもした。いい感じに筋肉を付け、走るために最適な身体を創り上げた。
速く走るためのトレーニングもした。ランニングもした。彼の周りに、彼より速い人間はいなくなった。
妄想もした。もし自分がウマ娘になったら、どんな風に走ろうか───。
それが、今、現実に起こった。
「いややばいってこれマジでなにこれ意味分からへんねんけどどうなっとんこれ!?!?」ブォンブォン!
もうパニックである。尻尾も勝手に暴れまくる。テンションがだんだん戻ってきていざ冷静さを取り戻してくると逆にどうすればいいか分からなくなってくる。
「え!?なにこれ夢ちゃうよな!?やばいホンモンやこれ耳も尻尾もフサフs...」
ふと、気づく。
「耳あらへん......」
ヒト耳が無くなっていた。
「え...なにこれ...は...?」
さっきまでのテンションはどこへやら、途端に恐怖が押し寄せてきた。
「あかんあかんあかん...え?マジで耳あらへん...うせやろなにこれマジで意味分からへんねんけど...」
語彙力が無い。まあ元から無いのだが状況が状況なだけにいつもより酷くなっている。
「病院...?いやいきなりこんなんで行っても大騒ぎになるだけちゃうか...?いやでもこのままってわけにはいかんし...」
思考を研ぎ澄ます。今出来る最善の一手を導き出すために。
「そうや...」
そして、思い至る。
「トレセンに直接行って聞いた方がええんちゃうかこれ...」
────────────
「おはようございます!」
「おはようございま〜す」
生徒たちの元気な声が聞こえてくる。
「はい、おはようございます♪」
挨拶を返すのはトレセン学園の理事長秘書、駿川たづな。
今日も朝から学園の生徒たちを見守っている。
そろそろ朝のホームルームが始まる時間帯。そこに...
「...あら?」
目深にフードを被り、足まで届くコートを着た人物が現れた。
「............」
怪しすぎる。
それもそのはず、見た目からして思いっきり不審者である。コートの前も留めているので尚更である。
登校時間ギリギリの生徒たちもそちらを見てざわつき、すぐ学園に入っていった。
「あの」
「!?」
たづなが不審者に話しかけた。
「トレセン学園に、何か?」
「............」
ものすごい圧だった。大抵の輩であれば脱兎の如く逃げ出すであろう気迫を放つたづなを前に不審者は、
「........................めっちゃきれいやん......」
「えっ...?」
ヤバイ人物だ。
警戒心MAXになったたづなは何が起きても対処出来るように神経を尖らせる。
「すみません、トレセン学園の方ですか?」
「えぇ、そうですが...何か学園にご用件でも」
「質問したい事があります。」
「...どのようなご質問でしょうか?」
「男性に、ウマ耳と尻尾が生えることって、あるんでしょうか?」