朝起きたらウマ耳と尻尾生えとるんやけど...!?!?!? 作:飽之七起
「とりあえず用意するか...」
トレセン学園に行くことは決定した。
こういうことは専門機関に聞くのが一番良いと寝玄は判断した。
ひとまずベッドから立ち上がり、一歩目を踏み出した瞬間、
「うぉあ!?!?」ビターン!
壁に激突した。
「え!?なにこれやば!!!」
初速がやばい。例えるならランニングマシンで走りまくった後に降りた直後みたいな、世界を置き去りにする感覚、そんな感じだった。
ただ、それだけじゃなかった。
たった今心の奥底から湧き上がってきたこの感じ、これは...
(めっっっちゃ走りたい!!!!!!!)
今すぐにでも外に出て全力疾走したい。そんな衝動に駆られた。だがこの状況でそんなことが出来るはずもない。とりあえず我慢する。
「...まず着るもんやな...」
寝玄はウマ耳と尻尾を隠せそうないい感じの服を探した。帽子はあった。が、尻尾を隠せるくらい長い服はコートくらいしか無かった。フード付きだったのが本当にありがたい。さすがにこれに帽子は余計怪しくなるので置いておく。まあ、怪しいことに変わりはないのだが...
「動きづらいなぁ...」
持っているズボンは人間用なのでもちろん尻尾穴など無い。ので安めのジャージの尻部分に穴を開けて無理矢理通した。パンツはまあズラせばギリなんとかなる。
ウマ耳と尻尾を隠すためにコートの前部分を全部留めてフードを被る。服装的にも非常に動きづらいのだが、歩く時の感覚がずっとランニングマシンを降りた後みたいな感じから戻らない。明らかに昨日までとは違っていた。
「まあ行ったら何かしら分かるやろ多分知らんけど」
多少の不安を抱えながらも寝玄は家を出てトレセン学園へと向かった。
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(やっぱでっかいなぁ...)
不幸中の幸いと言うべきか、寝玄の家はトレセンに歩いて行けるほどの距離にあった。
(近くてよかったわほんま...来る時めっちゃ見られたけど...)
やはりというか、明らかに不審者と呼べる格好をしているためかなり目立っていた。
(でもどうやって入ろか...絶対無理よなぁこんな格好じゃ...)
トレセン前に着き、どうやって中に入ろうか色々考えていると...
「あの」
「!?」
正門前にいた女性が話しかけてきた。
「トレセン学園に、何か?」
「............」
トレセン学園理事長秘書の駿川たづなだった。
レース好きで彼女を知らない者はいないだろう。
ただ、ものすごい圧だった。大抵の輩であれば脱兎の如く逃げ出すであろう気迫を放つたづなを前に寝玄は、
「........................めっちゃきれいやん......」
「えっ...?」
完全に目を奪われていた。
テレビや雑誌で何度も見たことがあったが、実際に会ってみると別格だった。かわいすぎてやばい。
「(あっ!?やっば声に出してもうた完全に怪しいやつやんこれ早よ誤魔化さんと!)すみません、トレセン学園の方ですか?」
「えぇ、そうですが...何か学園にご用件でも」
「質問したい事があります」
「...どのようなご質問でしょうか?」
「男性に、ウマ耳と尻尾が生えることって、あるんでしょうか?」
「......はい?」
(まぁ...そうなるわなぁ...)
めちゃくちゃ警戒されていることは寝玄も理解していた。なので自分が怪しい者でない事を説明する。
「こんな格好なんで疑われてると思うんですが、怪しい者じゃないんです。その、朝起きたらウマ耳と尻尾が生えてたんで、トレセン学園の方に聞けば何か分かるかなと思ったんですが...」
「...申し訳ありません。仰っている意味が分からないのですが...」
「そのままの意味なんです。起きたらウマ耳と尻尾が生えてたんですよ。ほら、これなんですけど...」
フードを少し上げてピコピコと動くウマ耳をたづなに見せる。
「............」
「あとコートの中に尻尾も隠しているんですけど、これ...」
コートの前を開けて尻尾を見せる。
「........................」
「あの、こういうのってよくあったりするんでしょうか?」
寝玄は確認する。しかしたづなは固まったまま動かない。
「あの...」
「......そういう、コスプレとかではないんですか?」
「違います。本物です。なんなら触って確かめてもらってもいいです」
「!?」
たづなの顔がこわばる。
「...冗談に付き合っている暇はありません。お帰りください。」
「いや本当なんですって!ウマ娘に詳しいここなら何か分かると思って...」
「これ以上続けるなら警備の者を呼びます」
「!!!」
トレセンの警備員が来る。ということは...
(これ捕まった方が手っ取り早いんじゃね!?)
寝玄は閃いた。
「お願いします!多分その方が早いです!」
「!?!?」
たづなの顔が驚愕の色に変わる。
「警備の方に確認してもらってください。これが本物だと分かります」
「......そこから一歩も動かないでください」
「分かりました」
たづなが携帯端末を取り出し電話を繋ぐ。そのすぐ後、警備員っぽいウマ娘が2人やってきた。
「こいつですかぁ、ウマ耳と尻尾が生えたって自称してる不審者ってのは」
「見るからに怪しいわね...」
ケダモノを見るような目でこちらを見る警備ウマ娘たち。
「連絡した通りです。わざわざ警備員を呼ばせた以上、イタズラにしては度を超えています。確認を」
「了解ぃ。おいテメェ、両手上げてこっちに来い。妙なマネするんじゃねぇぞ」
「少しでも変な動きを見せたら即刻拘束するわよ」
「大丈夫です」
正門裏の外から見えない場所でボディチェックを行うようで、寝玄は指示に従い警備ウマ娘の前に立つ。
「フードを取る。動くなよ」
「はい」
警備ウマ娘の1人が寝玄の顔を覆っているフードを上げる。隠れていたウマ耳が露わになる。
「......」ピコピコ
「............」
「............」
警備ウマ娘2人が同時に固まる。
「......コートを脱げ」
「え?いいんですかここで」
「脱げ!」
「分かりました」
着ていたコートを脱ぐ。隠れていた尻尾も露わになる。
「......」ブンブン
「............」
「............」
警備ウマ娘2人が顔を見合わせる。
「...耳を触る。いいか、絶対に動くんじゃねぇぞ!」
「...私は尻尾を確認するわ...」
「はい」
警備ウマ娘の手がウマ耳に触れる。
(ッッ!!)ゾクッ!
寝玄の身体に電流が走る。
もう1人の手が尻尾に触れる。
(ッッッ!!!)ゾクゾクッ!!
さらに追加で電流が走る。
警備ウマ娘2人がウマ耳と尻尾を入念にチェックしていく。
(あかんあかんやばいやばいめっっっっっちゃ気持ちいいあかんあかんマジであかん!!!!!!!)
「............」フニフニフニフニ
「............」サワサワサワサワ
「...ッ!......ッァ...ァ...ッッ!!!」ビクビクッッッ!!!
「あ、あの、お二人とも...?」
2人の様子に戸惑い、たづなが声をかける。
「ハッ...!ハッ...!ハァッ...!!」フニフニフニフニ
「ハァ...ハァ...ハァ...」サワサワサワサワ
「...ァ...ァッ!!...ゥ...ァッッ!!!」ガクガクガクッッ!!!
「っ!!ストップ!!!ストップです二人とも!!!」
見かねたたづなが2人を無理矢理止めに入る。
「......ッ!オレは...今...何を...」
「...一瞬、意識が飛んでいたわ...」
「ハァ...ハァ...ァッ...」ガクン!
理性を取り戻し我に帰る警備ウマ娘たち。それとは対照的に寝玄は地面に崩れ落ちた。
(あかん...気持ちよすぎて立てへん...なんやねんこれやばすぎやろ...)
「............」ゾクッ!
「............」ゾクッ!
地面に倒れ身動きの取れない寝玄を、警備ウマ娘たちはまるで獲物を見るような目で見据える。
「お二人とも、少し下がってください」
「...すみません」
「...申し訳ありません」
たづなが圧を飛ばし2人を下がらせる。
「で、どうだったんですか?」
「え?」
「本物だと思いますか?」
「あっ...ええと、多分...」
「多分?????」
「いやっ、その...本...物だと...思います...ハイ...」
「......」コクコク
「...そうですか...」
少し考える素振りを見せる。そして、
「これは...理事長の判断を仰ぐ必要がありそうですね...」
(え?ほんまにどうなんのこれ?てかマジで立てへんねんけど〜!?)
とりあえず書けている2話まで同時投稿です。次回投稿日は未定ですが流れは決めているので気長にお待ちください。