朝起きたらウマ耳と尻尾生えとるんやけど...!?!?!? 作:飽之七起
「............お見苦しいところを......お見せして......本当に申し訳ありません............」
「いえ...その...こちらこそ...」
「............」
「............」
「............」
顔を真っ赤に染めてたづなが謝罪する。他の3人もバツの悪そうな顔をしている。
「と、とりあえず、話を進めましょうか...」
「......はい...そうさせてもらいます...」
さすがにこの雰囲気に耐えられなくなってきたので、寝玄がたづなに話を進めるよう促す。
「...まず、あなたのそのウマ耳と尻尾についてですが、全員での確認の結果から見て、両方とも本物で間違いないかと思われます」
「...ですよね...」
「ただ、男性にウマ耳と尻尾が生える事例は、少なくとも私は見た事も聞いた事もありません...」
「うむ...私も一切聞いたことがない。たづなから聞いた時は耳を疑ったものだ」
トレセン学園のツートップがまったく聞いたことのない事例。実際寝玄自身も、今まで勉強の為に様々な資料を読み漁ってきたが、こんなケースが書かれているものは見た事がない。
「そして先程我々が戻ってきた際、ウマ娘2人を制圧していた。しかもただのウマ娘ではない、学園公認の警備ウマ娘を...」
「あの時は...こっちも必死だったもので...」
「...認めたくねぇが...完全に力負けだった。あんな力、人間が出せるもんじゃねぇよ...」
「たとえウマ娘が相手でも、掴まれて動けなくなることなんて、今まで一度も無かったわ...」
「ただウマ耳と尻尾が生えただけではなく、力もウマ娘と同等か、おそらくそれ以上になっていると思われます...」
「ウマ娘と、同じ...なら、あの感覚も...」
歩く際に感じる、世界を置き去りにする感覚...
「今朝起きてから、歩く時の感覚が、なんか、走り終えてランニングマシンを降りた後みたいな、めっちゃ速くなったような感じで、それと...」
そして朝から湧き上がっている、この衝動も、やはり勘違いなどではなかった。
「走りたい衝動が、凄いんです。走りたくて仕方がないというか...」
ウマ娘は、走るために生まれてきた。
もしウマ娘と同じ身体になっているのだとしたら、自分も、同じように走れるのではないか。
試してみたい。どれだけ速く走れるのか。
「そうですか...ウマ娘は人よりも、走ることへの欲求が強いですから...他に、昨日までと変わったところは何かあったりしますか?」
「...あ!そうや耳!!!耳が無くなったんですよ!元の耳が!」
色々と変わった部分はあったが、正直これが一番怖いところだった。
「ウマ耳が生えて、ヒト耳が消える...これは、もう医療機関で調べるしかないでしょうね。もし身体の作りが完全にウマ娘と同じになっているのであれば、それはそれで、問題が起きてもウマ娘と同じ対処はできるはずです」
「あ、でも全部同じってわけでもなくて...性別自体は男で間違いないんですよ。その...アレは付いたままですし...」
「............」ムラッ
「オサエテオサエテ」
「............」
「う〜ん、男性のウマ娘、ずばり、『ウマ息子』だな!!!」
「ウマ...息子...!?」
「............」バァン!
「」ビクッ!
たづなが机を叩く。
「...下ネタは結構です」
「いや...そんなつもりじゃ...」ガクガク
「すみません...ただ、男の特徴のままウマ娘化したとなると、ネーミングとしては確かにそれが一番分かりやすいかと...」
「......とにかく、しっかりと検査しなければ話は進みません。呼び方はその後でもいいでしょう」
「わ、私が直接医療機関に連絡しよう!ある意味緊急事態だ!早い方がいい!」
「それは、非常に助かります。お願いします」
「私が付き添います。その方がスムーズにいくでしょう。1人で行って大騒ぎになったら大変ですから」
「ありがとうございます。念のために財布や保険証とかは持ってきてるので、今からでも大丈夫です」
「では車で移動するので、正門まで向かいましょうか」
「ところでだが...」
やよいが寝玄に尋ねる。
「君の名前を、まだ聞いていなかった気がするのだが...」
「...失念していました...書いていただいた用紙を見せてもらえますか?」
「あ...まだ何も書けてないです...すいません」
「............」チラッ
「............」ガクガク
「............」ガクガク
記入する前に立たされてあの騒動なのでどうしようもない。若干青筋を立てるたづなに警備ウマ娘たちの顔が青ざめる。
「......用紙は道中で書いてもらいましょうか。紹介が遅れましたが、私はトレセン学園理事長秘書の駿川たづなです」
「そして私が理事長、秋川やよいである!」
「寝玄神です。改めて、よろしくお願いします」
「寝玄...!」
「神...!?」
たづなとやよいの顔が、驚愕の色に変わった。