その高校生は平和を求めている   作:夢見いるか

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第二話 妹

 何か部活にでも入ろうかしらんと思って部活見学に行くも、虐待じみた訓練を彷彿とさせてフラッシュバックでふらついた。こんなことを喜んでやってる人の気が知れない。

 文化部に入ろうかと思ったが熱が入るような部活は見当たらなかった。

 しかし僕は本を読むので、文芸部に入ることにした。

 

 ガラッと音を立てて文芸部の部室に入る。

 そこにはクラスメイトの文学少女と、先輩たち(明らかに垢抜けてない少女)達がいた。

「すみません、見学したいのですが」

 部長らしき人が応える。

「い、いいですが女性しかいませんよ?入るのはお勧めしません」

「それを判断するのはあなたではなく僕です」

「は、はぁ。見学といっても本を読んで感想を言い合ったり小説を書いて発行したりするだけです。見学していてもつまらないと思いますが」

「まぁいいじゃないですか。座る椅子はありますか?」

「あ、どうぞ……」

 そして椅子に座ってクラスメイトがなんの本を読んでいるのか見る。

「ああ、『五十億年の孤独』かぁ」

「え、あっ日向くん、読んだことあるんですか?」

「この前読んだよ、面白かったな。淡々と出来事だけ語られているのが冷たくていいよね」

「え、はい!そうなんですよ!その極限の客観性が面白いんです」

「わかる」

「実はこの本読むの三度目で、この作者のファンなんです」

「へぇ、いい趣味だ」

「にへ、ありがとうございます」

 

「あなた、日向くん?本はちゃんと読んでいるようね」

「まぁ」

「女性だらけで気が引いたりしない?」

「特には」

「問題を起こさなかったり恋愛沙汰にならなければ入部を許可しますけど?」

「わかりました、入部届を今度持ってきます」

「はい、これからよろしくお願いします」

「よ、よろしくね日向くん」

「よろしく、三月さん」

「私は部長の遠藤です」

「私は副部長の川中です、よろしく」

「よろしくお願いします、部長、副部長」

「紅一点ならぬ黒一点ね。地味な部活だけど楽しめるように努力するわ」

「ありがとうございます」

 

 文芸部に入った俺はクラスメイトの三月さんと下校していた。

 ……のだが。

「はぁ……」

「日向くん?」

 またもやリムジンが止まっていた。

「ちょっと用事ができた、先に帰ってて」

「え?まぁいいけど……」

 

 

「嘘、日向くんリムジンに乗って行った……日向くんって何者なんだろう……」

 

「それで、結果は?」

「政府は学生のうちから仕事をさせたいようですな」

「チッ」

「昨年から魔法長家の元から裏切り者が出ております」

「裏切り者?」

「海外のマフィアと結託して、夜中街中で薬を売買しているとか」

「今時薬か、ヘロインか?」

 

「いえ、新しく作られたプロチアゾムというわずかな間魔法が使えない人間でも魔法が使える麻薬です」

「そんなものがあるのか?」

「はい、効果時間はおよそ24時間ほど、初級魔法に該当する魔法が使えるようになっているのが確認されました。そして効果中は高揚感に包まれ、犯罪を犯す人も散見されます。そして効果後は痛み、希死念慮などの副作用もあり、買えなくなった顧客が自殺したり精神病院に入院することもあります」

「クソみたいな薬だな」

「日向様に関しては、井上家を壊滅していただきたい。情報はこちらで回収します」

「……やる気が出んな」

 

「ならば一つ、前報酬として重要なことを教えましょう」

「重要なこと?」

 

「あなたの妹は生きております」

 

「なにを……」

「あなたが妹の亡骸を山の中に埋めたことは報告によって上がっています。しかしそれは複製魔法によって作られたドッペルゲンガーです」

「何を言っている!?」

 

「あなたの父親は井上家と結託して、あなたを最強の魔法士に作り上げるために妹を目の前で殺す、というシナリオを作っていたそうです」

「妹はどこにいる!」

 

「井上家の研究室にいまだに人体実験を受けているはずですよ」

「降ろせ!」

「できません、まだ井上家の研究室の場所も知らないでしょう。場所は秘匿されています」

「だが知っているんだろう?」

「はい。あなたが井上家のものを全て抹殺した後、報酬として教えましょう」

「くっ……」

「期日は3日後、場所と情報員を派遣します。受けていただけますね?」

「……わかった」

「それではちょうど車も着きましたし、これでさようならとしましょう」

 

「あなたの妹と無事に再会できることを祈っていますよ」

 

「くそ……」

 パスタを茹でている。気持ちを落ち着かせるためだ。

 妹が生きている?本当に?

 しかし本当に生きているのならありがたかった。誰も信用できない世界で唯一信用できるのが妹だったからだ。

 同じ苦難を共にした妹なら、もし妹が生きているなら一緒に穏やかに過ごしたい。

 

 パスタを茹で終わり、レトルトのミートソースをかけた。その瞬間父親の脳漿がフラッシュバックした。

「おえ……」

 一気に食欲がなくなるが食べる。実家の虐待では飯が食べられなくなることは日常茶飯事だった。飯は大事だ。食べなくては……食べなくては生きていけない。

 我慢して食べ終わった後には覚悟が決まった。

 

 妹を必ず助ける。そのために井上家の連中を皆殺しにする。

 その中には子供も含まれているだろう。だが殺さなければ復讐心を抱かれる。平穏な生活にヒビが入る。

 冷徹になれ、ミコト。そう父親の言葉を無意識に反芻していた。

 

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