翌日文芸部の部室に行くと、三月さんが泣いていた。
それを部長と副部長が慰めていた。
「どうしたんですか?」
と聞くと、
「あ、日向くん……」
と三月さんが返してくれた。
部長と副部長は暗い顔で心配しているようだった。
「実は……」
どうやら同じクラスのギャル、皐月さんと三月さんは幼馴染だそうで、偶然クスリをやってる皐月さんを見てしまった模様。
それで三月さんが皐月さんを問い詰めると暴れて絶交だと言われてしまったらしい。
それで泣いてるんだとか。
(クスリか……プロチアゾムかな)
部活を続ける雰囲気でもなくなったので、僕たちは帰ることにする。
「ごめんなさい、日向くん、サツキを探してくる。今度こそダメだってはっきり言わないと」
「でも、危ないよ?」
「それでも、幼馴染だから」
へえ、友達を想う心かぁ。尊いな。僕には友達がいないから(できたこともないし)そういうのは好ましく思う。
「僕も行くよ」
「え!?でも、危ないって」
「これでも身を守る手段はあるから、気にしなくていいよ」
翳した手から炎を生み出し、こう言った。
「実は僕は魔法使いなんだ」
「これで私も魔法使いになれるんだ……」
クスリを買うのは高かった。最初は安価だったけれど、段々と値を上げられた。
でも魔法使いになれるクスリは、私の人生を変えてくれるはずだ。効果が切れると魔法は使えなくなるが、その間になんか魔法の仕事をすれば……。
「合計五万円だけど、払える?」
売人にそう言われる。くそ、足元見やがって。
「後で……後で必ず払うから」
「それはできないなぁ。まぁ、払ってくれるのがカラダでもいいよ」
「……!」
「結構タイプだわ。ホテル代かかるの面倒だから、ここで脱いでよ」
「何言ってんだテメェ!」
「お、そんな言葉遣いしてもいいのか?俺だって魔法使いなんだぜ?」
「……」
「服脱がねぇなら脱がしてやるよ!オラ!」
「『その男は燃えている』」
「ぐあぁああ!???」
「え?」
目の前の売人がいきなり燃え始めた。びっくりして後ずさる。
「皐月ちゃん!」
「三月!?なんでここに!」
「魔法使いならこの状況を打破してみろよ、売人風情が」
「『う、ウォーターシャワー!!!』」
燃え盛る売人の体を水の雨がぶち当たる。しかし、その炎は消えない。
「な、なんで……アツイ、アツイイイイイイイ」
そして炎が肺に入ったのか、次第に喋らなくなり、真っ黒焦げになって死んだ。
「死んだ……?」
「嘘、日向くん殺したの?」
「まぁね、薬を売る売人なんか死んだほうがいい。気にしなくても警察は大丈夫だよ、ほら」
売人の死体は黒焦げになっても燃え続け、灰になって風に吹かれて消えた。
「証拠隠滅と」
「ドン引きなんだけど……」
「それで?なんでクスリ買ったの?」
「これさえあれば魔法使いになれる!私も魔法使いとして名を馳せるんだ!」
「そんな薬使ったところで低レベルの魔法しか使えないよ、魔法士として名を馳せようとしても、本当の魔法士には敵わない」
「でも……」
「それはいっときの夢を見させてくれるただの薬物だよ。それでは本当の魔法使いになれないよ」
「く……うるさい!説教するな!いいよな魔法使いは!お金を大量に稼ぎ、悠々自適でさぁ!」
「本当にそう思ってる?」
「え?」
「魔法士になっても稼げるのは上澄みだけ、超エリートしか稼げない。努力しても才能の壁にぶち当たる。優秀な血を混ぜて産まれた子しか祝福されない。努力はスパルタ。みんな楽な人生を送らない」
「そ、そうなの?」
「初級魔法が使える程度で稼げるほど甘くない。魔法士になってもほとんどが国の奴隷だ。良いことなんてないよ」
「そんな……」
「都合のいい夢を見るのは終わり、家に帰るんだね」
ということで僕も家に帰る。メンタルケアは三月さんに任せた。
学校にも魔の手が忍び寄ってるとは思わなかった。売人一人風情殺したところで何も変わらない。
やはり、井上家とその繋がりのあるマフィアを破壊するしかない。
海外マフィアは別駆動の部隊が攻撃するのだろう。僕は裏切り者の井上家の撲滅だ。
あと2日後、僕は……。
売人を殺したことはもう頭には無かった。ただ妹とまた会えるという希望を僕は考えていた。