見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります   作:クワ

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清一とジュヌヴィエーヴ

 ジリジリと距離を詰める熊の妖怪たちに清一は刀を構える。

 上手に位置取りをし、天高く上る太陽を背にして相手の攻撃を待つ。

 微妙に伸びた黒髪がそよそよそと風にたなびく。

 

 百貨店の屋上、かつて小さな遊園地が稼働していた場所。今はそれが潰れてそのままの状態でさび付いた状態で放置されていた。

 当然、人通りなどない。

 

「キミ、来るよ!」

「わかってる!」

 

 

 妖怪熊の繰り出す拳を体を傾けて躱すと、勢い余って前のめりになったその背中を一刀に伏す。

 ビシュ

 狩衣(かりぎぬ)に返り血が付着する。

 

 

 視線を一瞬だけ血の汚れに向ける。

「チッ、また洗濯しねぇと!」

 

 

 妖怪熊の突進を飛んでかわす。

焔風花(ほむらかざばな)

 雪のように白い炎の粒が熊に襲い掛かり、その身を燃え上がらせる。

 

 

「アンタ、魔法使いなんだろ! 少しはなんかないのか」

 清一の荒い言葉に反応し、文句を口にした。

 

 

「キミの戦い方は他人と共闘しようとか意識してない自分勝手な戦い方なんだよ! もっと周りを見てくれよ」

 

 

 清一は一歩踏み込み熊を切り下げると、後ろ目で確認し再び視線を戻した。

「そんなに、アイツらがよかったんなら戻ればいいだろ!」

「戻れないのは分かっているだろ! キミが声をかけたんじゃないか」

「ああ、そうだったな」

 そう言って、最後の妖怪熊との間合いを詰める。

 

 

「トネール」

 後ろから中性的な声が聞こえると、紫の帯が熊を包み込む。

 清一が振り返ると、肩ほどの黄金色をした髪をなびかせながら、杖を構えたままで固まっていた。

 

 

「雷の魔法か」

 絶命した妖怪熊は仰向けに倒れ込む。

 

 

「片付いたか」

 清一は血を拭き取ると、刀を鞘に納め振り返った。

 

 

「なあ、アンタ、名前がなんて言うんだ」

 キッと目を見開くと「ボクはフィギュアなんだから知ってるでしょ」とちょっとばかり怒ったような口ぶりで(まく)し立てた。

 

 

「悪いが、そういうのあんまり詳しくないんでね」

「じゃあ、キミの名前は? まず自分から名乗ったらどうなんだい」

「ああ、それは悪かった。俺は中条 清一(なかじょう きよかず)神官(しんかん)陰陽師(おんみょうじ)の一族だ。今度はアンタの番だ」

「ボクはジュヌヴィエーヴだ」

(ジュヌ……なんだっけ? 男か女かわからねぇな)

 

 

 清一はその外国風の名前が覚えられずに曖昧に返事をして歩き出した。

「ちょ、待っておくれよ」

「行く場所無いんだろ。とりあえずウチに来な」

「あ、うっ、うん」

 

 

 清一は重要なことに今さら気付いた。

「そういえば、コイツを元の大きさに戻す方法を聞き忘れた」

 色々と頭を巡らすもわかるはずはなく――。

(まあ、オヤジに聞けば分かるか)

 とまあ、軽い感覚で帰宅した。

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