見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります 作:クワ
夜の帳が下りるころに、清香とエイムズが戻って来る。
「姉貴、風呂は沸いてるぞ」
二人と一匹でテレビを見ていた清一が声を掛けた。
清香は三人の周りへ視線を這わす。
(コイツらぁ――)
清香の目にはポテトチップスの空袋やら乾燥肉の空き袋やらが散乱していた。
「姉貴、金が無いから約束の小遣いくれよ」
「アンタねぇ、まずごみを片付けなさい」
「帰ったらくれるって約束だろ」
「お父さんから清一の面倒も見るように言われているから!」
「チェッ、やるよ、やりゃあいいんだろ」
「ほらっ、とっとと済ます」
「おほっ、合点承知」
目の色を変えごみを捨てる清一に、清香は呆れた目を向けた。
「ところで姉貴、あのお札、何かわかったのか?」
「ああ、あれ、これから」
「何だよ、姉貴だって遅いじゃん」
「あのね、私はエイムズさんと一緒に行ってたのよ! 時間を考えなさい」
目を白黒させたエイムズは近くにいるジェームズに耳打ちする。
「いつも、あんな感じなのか」
ジェームズは微笑を浮かべたまま「時々ですかね」と答えた。
「ホントにね、よく飽きないよ」
ジュヌの呆れ声が続く。
そんな兄弟の元に数日逗留するとエイムズも少しづつ慣れて日常的に談笑するくらいには打ち解けた。
「清一さん、お風呂頂きました」
「姉貴、風呂空いたって」
「今、手が離せないからアンタ先に入って」
清香の方を見やると何かしら台所で悪戦苦闘している。
「じゃあ、ジュヌが入るか?」
テレビを見ているジュヌに話を振ると、すくっと立ち上がり「じゃあ、入るよ」と着替えを取りに部屋に向かった。
「清一さんは入らないのか?」
「俺は一番後でいい。女性は男が入った後はイヤだろうし」
目をそらし鼻の頭を掻く清一にエイムズは意外そうな視線を向けた。
(思っている以上に気を遣う人なんだな)
「何か俺にあった?」
清一はその視線に気付いて不思議そうに問いかけた。
「あ、いや、人は見かけによらないなって」
「うーん、そんなに我がままっぽいかな?」
清一は困ったような顔を浮かべる。
「あはは、これは失礼、そのようなつもりでは……」
清一はエイムズを凝視した。
(こうやってみると美人だよな。湯上りは女性の魅力を数倍引き立てるとはいえ……)
湿った金色の髪が蛍光灯の明りを浴びキラキラと光を
(
鼻孔へとフローラルな香りが通り過ぎた。
「ん、どうした?」
「いや、人は初見で判断しちゃだめだなって」
「はは、そうだな」
二人笑いあったちょうどその時、ジュヌが服を持って戻ってきた。
(えっ、何があったんだい? 何であの二人が仲良く話しているんだい?)
ジュヌの顔が少しばかり曇った。
「清一、エイムズさんが風邪をひいては大変だからその位にした方がいいよ」
「ジュヌ――確かにそうだな……。気を遣わせちまって悪いな」
「そうそう、ドライヤー掛けなきゃいけないからね」
ジュヌは少しばかりの後ろめたさを感じながら清一に笑いかけた。
「ジュヌヴィエーヴ、感謝する」
(呼び捨てなのかい)
ジュヌは清一に振り返って笑いかけた。
「お風呂を出たら伝えに行くから部屋で待っていておくれよ」
「ああ、悪いが頼んだぜ」
浴室内
ゴシゴシ
頭を洗う音が響く。
(こういうの良くないよなぁ)
鏡に向かって笑いかけてみる。
(そう、平常心、平常心)
翌日
「今日も勉強しないとな」
教科書を探し出し準備を始めた。
「あ、ルーズリーフがほとんどねぇ」
袋の中に二枚ほどしか入っていない。
「買いに行ってくるか」
玄関にて自分の靴に足を入れる。
「あれ、清一。どこか行くの?」
清香がひょいと頭を出し尋ねる。
「ああ、駅前にルーズルーフ買いに行ってくる」
「あれ、ジュヌは?」
「そう、行ってらっしゃい」
ガチャ
「今日もいい天気だ」
清一は身体を伸ばし、駅前まで歩き出した。
「よし、百均だな」
「来たついでにシャーペンと芯も買っていくか」
清一は会計を終わらせ、
「あっ、そうだ!」
ふとあることを思い出し、その場に立ち止まった。
「あれ5巻まで買ったけど、その後を買ってないから買って帰るか」
来た道を引き返し、前に買った本屋へ足を延ばす。
「あったあった」
残りの6巻~10巻まで手に取りレジに持ってゆく。
「ありがとうございました」
「ただいま」
「あ、清一、おかえり」
「ジュヌ、買ってきちゃった」
「何を?」
興味深げに聞いてきたジュヌに対して清一は喜ぶだろうと笑みを浮かべ答える。
「ボクは
「えっ」
ちょっとばかり困惑した顔をジュヌが浮かべた。
(どうしたんだ? 前はあれだけ買って読んでくれって言ってたのに)
「どうしたの?」
「い、いや、ちょっと……」
明らかに
「あ、でも、マンガの中では違う人が恋人になってるけど、こっちの世界では清一が一番大好きだからね! マンガの中と違うから!」
「えっ!?」
「あっ!?」
二人は顔を真っ赤にして、お互いに顔を背ける。
「……またやっていますね」
「外に出かけたいんだけどなぁ」
「本当によく飽きもせずに行いますね」
ジェームズと清香はため息を深くつき首を振った。