ダンジョンの外で戦技売りをするのは間違っているだろうか   作:ルンルンベア

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 ダンジョン。かつて世界を恐怖のどん底に叩き落としていたというモンスターの発生源であり、今では上に蓋をする事で封印されている。その蓋の上に街ができており、オラリオという名前だ。

 なんで街が出来てんの? という疑問だが、ダンジョンは様々な資源が無限に湧き出してくるのでそれを求めて冒険者という職業の人たちがゾロゾロ集まってくるのだ。そしてその冒険者向けの商売をするために更に人が集まって街になったんだろう。

 こんな説明を何故しているのかと言うと、俺はオラリオに住んでいて、ここで冒険者相手に商売をしているからだ。ただし、売っているのは剣とか防具とか道具とかではない。説明すると怠いので、まあ読み進めてほしい。

 

「えーと……貴方が噂のお方ですか? 武器を魔剣にしてくれるという」

 

 早速今日のお客さんが来た。オラリオの中心、天に向かって聳え立つスカイツリーもかくやという程の白い塔【バベル】の一階、ダンジョンの入り口があるこのフロアで、端っこの方でゴザを敷いて座り込んでいる俺のところへ、身の丈よりでかいリュックを背負った小柄な女の子がやってきた。小人族ってやつかな?

 

「いらっしゃいませ。魔剣……って言うほど強力じゃあないですけど、まあ大体そんな感じですよ。何にどんなものをどんな風につけたいですか?」

 

 俺が尋ねると小人さんは懐から安っぽいダガーを取り出して見せてきた。それを受け取って観察する。

 

「うーん、魔剣じゃないし特別な効果は無し……いいですね。これなら大丈夫ですよ。それじゃあ、どんなのがいいですか?」

「あの、リ……私は初めてでして、質問し返すことになって申し訳ないのですが、どんなことが出来るのですか?」

 

 小人さんが訪ねてくる。まあ俺の商売は実際に体験してもらわないとイマイチ想像しづらいよね。

 

「えーと、そうですね。多分お客さんはサポーターって言われるタイプの冒険者さんですよね? かなり大荷物背負っているし」

「まあ……そうですね」

「それじゃあ同行者さんを文字通りサポートする効果なんてどうです? 遠距離系で風や炎、魔力なんかを飛ばしたりとか、味方を強化する効果の付与なんかできますよ」

 

 小人さんは目をパチクリさせる。

 

「そんな事が、本当にできるのですか?」

「勿論。不安なら神様を連れてきて嘘かどうか確認してもいいですよ。実演して見せれば手っ取り早いんですけど、ここじゃ危なくてできないし」

 

 周囲には他の冒険者たちや職員さんたちがいる。ダンジョンに急ぐ人、俺の店の順番待ちをしている人、許可なんか出してねえここで勝手に商売すんなと睨んでくる人、様々だ。

 

「いえ……わかりました。一旦は信じます。それじゃあその、風を飛ばすと言う効果をください」

「わかりました。えーと、戦技【嵐の刃】で、属性は何にします?」

「属性? 風の魔剣にしてくれるのではないのですか?」

「ちょっと説明が難しいんですけど、風を飛ばす効果の付与とは別に、ダガーその物の属性を変えられるんですよ。重くしたり刃を鋭くしたり、斬りつけると炎とか雷が出たり、あとは出血を強いたり毒に感染させられたり出来るんです」

 

 小人さんは目を丸くしている。そんなことが出来るのかと言いたげだ。しかしこのまま無言でいられると話が進まないので、俺の方から話す事にする。

 

「不躾な質問ですけど、ステイタスは何の値が高いですか? 力が高い人には武器を重くして、器用が高い人には鋭くするのがオススメですけど」

「……まだよくわかっていないので、取り敢えず鋭くしてください」

「毎度ありがとうございます。それじゃあ前払いで5,000ヴァリスください」

 

 注文を受けた俺は横にある箱を指し示す。前は後払いだったんだが、成果物を渡した途端、俺の腹を蹴って金も払わず去っていったクズがいたので前払い制に切り替えた。アイツにはもう仕事しない。

 小人さんは恐る恐ると言った様子で懐から取り出したお金を箱の中に入れる。それを確認した俺は作業にとりかかる。右手には秘文字が刻まれた小刀を出現させ、左手からは【嵐の刃】の記憶が刻まれた灰を溢れさせる。小人さんのダガーに灰を擦り込むように小刀で研ぐ。すると刃が水に濡れたように鋭くなり、柄を握ると風の力を感じるように変質した。

 

「さあどうぞ。しっかり握って精神力を注ぎ込めば戦技【嵐の刃】が使えますからね。普通の魔剣と違って乱用で壊れたりしませんが、くれぐれもマインドダウンにはお気をつけて」

「ええ……ありがとうございます」

 

 小人さんはそう言うと若干疑わしい物を見るような目でチラチラと俺を見ながら去っていった。

 さあ次のお客さんどうぞ、と言いそうになった時。目の前にメガネをかけた茶髪の女の人が仁王立ちしてきた。

 

「また貴方ですか。無許可で怪しげな商売をするのはやめなさいと、何度も言っていますよね?」

 

 まあ、怒られるよね。

 

「仕方がないじゃないですか。通りは激戦区で俺が付け入る隙なんてないし、裏は危ないし。ここが一番いいんですよ」

「ダメです。みんながルールを守って商売をしているんですからね。ここで営業行為は禁止です。あまり言う事を聞かないようなら牢屋に入ってもらうことになりますからね」

 

 有無を言わせない口調。まあ、全面的に俺が悪いわな。言い訳したところで聞いてもらえるわけがないのだ。

 

「はあ。すいません。もう行きますよ」

「今回は稼いだ分の没収は見逃してあげます。貴方もいい加減まともな職に就くか、どこかの派閥に入るなりしなさい」

 

 それが出来たら苦労はしないよ、という言葉は飲み込み、俺はゴザを丸めて背負い、料金入れの箱を抱えてすごすごとバベルの外に出た。取り敢えず、今日の稼ぎでジャガ丸くんなるコロッケのような物で朝飯を済ませて、次に商売する場所を探すとしよう。

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