ここまでのあらすじ:秘宝を守るため、どこに秘宝があるのか怪しい部屋を探すことにした。
4人はとにかく調べた。
授業の合間をぬって怪しい部屋を調べ倒した。
冬休みも跨ぎ、終業式も近づいてきている。
今年の思い出が部屋巡りになっちゃう!!と内心メイベルは焦っていた。
「どうしたの?」
いつもは、今日はここに行きましょう!というはずのメイベルが何も言わないことに、マリーは不思議に思った。
「うーん。昨日先生に見つかりかけちゃったし、昼間の探索は止めにしましょ」
実は昨日の探索で、ダウストラに「君たちの寮はこっちにないだろう?何か用か?用がないなら帰りなさい」と声をかけられてしまったのだ。
「つまり夜に?」
とアリスが言う。
「そうするしかないわね」
とセレステが頷いたが、その表情は険しい。
「でも、夜に出歩くのは校則違反よ」
とアリスが言う。こういう時、校則違反だと指摘するのはアリスしかいない。
「だから何か対策しなくちゃね」
校則違反をしない、という考えはメイベルには思い浮かばないようだ。
「定番は透明になることかしら?」
とこの前読んだ小説を思い出しながらマリーが言った。
「でもどうやって?」
とアリスが言い、皆で頭をひねる。
するとメイベルが、
「そうだ!!私に任せて!」
と言って立ち上がった。
その夜。4人は図書室前の廊下に集まっていた。
「『月よ 認識阻害、消音せよ』ほら、どう?」
メイベルが思いついたのは、妨害や能力低下ができる月魔法を使うことだった。そして自分たちを透明にする、というよりも、相手から見えなくさせる、という方法だった。
「凄い!!」
「メイベル、何か話してみて?」
とアリスが促す。
「私はメイベル・ウィステリア。全属性持ちらしいけど、いまいち使いどころが分からないわ。あと、魔法の使い方も!杖を出力媒体としているイギリス魔法界だったらすぐに馴染めたのに!!!」
もしかしたら魔法が失敗しているかもしれないので、メイベルはこちらの世界の自分の自己紹介をした。
が、反応がない。3人がメイベルがさっきまでいた空間をただ見ているだけだ。実際は見えなくなっているだけだが、傍から見ると消えたようにしか見えない。
3人は顔を見合わせ、
「......。メイベル、本当に話してる?」
とセレステが言った。
「話してるって!!『解除』!」
メイベルが魔法を解除すると、3人の前にメイベルが現れた。
「わあ!!本当にそこにいたのね」
「声も聞こえてなかったみたいだし、完璧ね!」
そして早速探検してみることに。
「ほら、みんな集まって!」
「私、てっきり一人一人にやると思っていたわ」
「そうしたら声が聞こえなくなって困るでしょ?だから、ヴェールみたいな感じでやってみようと思って。ヴェールの中が外から見えないようにすれば完璧でしょう?」
「なるほど。じゃあ早速お願いね」
「『月よ 我らを覆え 認識阻害、消音せよ』」
「この魔法の欠点は、成功したかどうか分からないことね」
「確かに。でも確認する方法もないし、このまま探索へ行きましょう!」
「今日はここ!私的にはここが一番怪しいと思うわ」
と先頭を歩くメイベルが立ち止まった。
「どうして?」
とマリーが聞くと、
「この部屋、周りと馴染み過ぎだなーって思って」
と答えた。
「それなら怪しく無いじゃない」
「でもこれまで言った部屋は扉が赤いとか高級感ある、とか特徴があったでしょ?でも何の特徴もない扉だなーって思っていたの」
確かに何の特徴もない扉だ。
「それで、どうやって入る?開かないみたいよ」
とセレステが言った。
「鍵がかかってるなんて、ますます怪しいわね!」
「『開け』駄目ね。どうしましょうか」
開錠呪文も効かない扉に対してメイベルは、
「『木よ 朽ちよ』」
と扉を腐らせた。
「ちょっと!開いたけど、これ誰かが通ったらすぐばれちゃうわ!」
「直せばいいのよ!ほら、急いで入るわよ」
4人は慌てて部屋の中に入った。部屋の中には何もなかった。真っ白な空間。
「うーん。怪しいには怪しいけど、何にもないわね」
「帰りましょっか」
と4人が踵を返しかけたその時、
「きゃっ」
とマリーが悲鳴を上げた。
「どうしたの?」
「急にここがへこんで......」
見ると、マリーの右足部分のレンガが沈んでいた。
「けがはない?」
「うん。驚いただけだよ。早く出よっか」
メイベルが扉を開けようとしたその時、廊下が騒がしいことに気づいた。
「何かあったのかしら?」
「私達がこの部屋にいるからじゃない?」
「ええっ!でも、そんな装置何処にも......」
「扉が壊されたら先生たちに連絡が行くようになってたんじゃない?」
「今はどうやって外に出るかが大事よ!今扉が開いたら怪しまれるわ」
「うーん。こういうのはどう?先生たちがここの扉を開けるから、その開いた扉からそーっと外に出るの」
「そうしましょう」
と4人で頷きあう。
「私が開けますから、みなさんは犯人を捕まえられるように構えておいてくださいね。では、いきます」
と扉が開かれた。
教師陣は部屋の中へ入って行く。が、そこには誰もいない。
「誰もいない??」
戸惑っている教師陣を横目に見ながら、
「今よ!行きましょう」
と4人は廊下へ出た。
廊下では警報音が鳴っていた。
なるほど。侵入者は気づかれてないと思って部屋に居続けちゃうってわけね、とメイベルは思った。
「危なかったわね......」
「私は魔法が成功してなくて、捕まるかもと思ってハラハラしたわ」
「捕まらなかったってことは、成功してたってことよね?凄いわ!」
4人が寮へ戻っている時、部屋に校長が呼ばれていた。
教師たちは侵入者の痕跡を探している。
「スペンシア校長。ここの石が沈んでいるようです」
「つまり誤作動ではなくて、侵入者がいたようですね」
「やはり、装置を起動させましょう」
「ええ。生徒たちには再度、教室以外の部屋に入らないように呼びかけましょう」
明日からはこの部屋の奥に“あれ”が置かれるわけだ。明日、決行しよう。そうして主の元へ“あれ”を届けるのだ。早く我が主が“あれ”を手にする光景を見たいものだ......。
そう心の中で考えているのは誰なのか、教師陣の誰一人として知らない。
翌朝、朝食の時間に、校長から教室以外の部屋に入らないよう呼びかけがあった。
その日の放課後、4人は大広間に集まって話し合っていた。
「結局あの部屋に秘宝があるってことは分かったけど、警備は万全ってことしか分からなかったわね」
「そうね。ひとまずは私達が手出しする必要は無さそうね」
「でも、先生が犯人だとしたら、全部の仕掛けを知っているのよ?警備なんて意味を成さないわ」
「かといって部屋に行くわけにはいかないでしょう?」
「そうだよねえ......」
すると突然、大きな音が鳴った。方向的には湖の方。
「何!?」
「学校の裏の方から聞こえたけど!?」
「何かが爆発したみたいな音だったわね」
とセレステが言った。
「どうして爆発が!?」
「きっと、秘宝を狙う犯人の仕業よ」
とメイベルが断言した。
「でも、秘宝を狙っているんでしょう?爆発させる必要なんてあるかしら?」
確かにそうだ、とメイベルは納得したが、それでも秘宝が無事かどうかが気になっていた。
「秘宝が大丈夫かどうか、覗きに......」
「ダメよ!また警報装置が鳴って、先生たちが集まって......」
セレステが言葉を切った。動揺しているのが見て取れる。
「まずいわね」
とメイベルが頷いた。
「どうしたの?」
焦りの表情を浮かべた2人をアリスが不思議そうに見る。
「今が絶好の犯行タイミングだわ!」
「ええ!?どうして?」
マリーが聞く。
「さっきの騒ぎで部屋の前にいる先生がみんなそっちに行ったのよ。警報装置が鳴っても、駆け付けられない。部屋に簡単に近づけるわ!」
「つまり、爆発は気を逸らすためのもの!セレステ、早く部屋に行かないと!!」
とメイベルがセレステを見る。
セレステもメイベルを見て頷き、
「ええそうね!アリス、マリー。校長先生への連絡を頼める?」
と2人に頼んだ。
「勿論よ。本当は2人を止めたいけれど......」
「2人とも、無茶はしないで下さいね!」
「この2人はもうとっくに無茶してるわよ」
とアリスがため息を吐いた。
部屋に向かって走る2人。セレステが話しかける。
「メイベルは、犯人に心当たりがあるみたいね?」
「うん。実はね」
とメイベルは小さく頷いた。
「誰だかは教えてくれないの?」
「心当たりがあるだけで確実じゃないし、人に話せるような根拠なんて何一つないし......」
「そう。でも、レクラース先生ではないと思うのよね?」
「多分、あの人はただ怪しいだけだよ」
スネイプ先生みたいな感じで。とメイベルは心の中で付け足した。
「ややこしいわね」
とセレステがため息を吐いた。
「行くよ、セレステ」
部屋の扉の前に立つ2人。気合を入れるようにメイベルが名前を呼んだ。
「ええ。『木よ 朽ちよ』!!」
前回と同様に木材を腐らせる。
「よし、入りましょう!!」
2人は脆くなった木材をどかして、部屋に入った。
廊下に警報装置の音が鳴り響いた。