少し経って、終業の日になった。
座る席が寮ごとに決まっていたので、アリスとマリーは別の机にいる。
「今日で今年度が終わります。様々なことをここで学んだことと思います。ですが、皆さんが気になってるのは禁じられた部屋のことでしょうか」
とスペンシアが言うと、生徒たちはダウストラが....秘宝は......と話し始めた。
「もうみなさんご存じでしょうけれど、ダウストラ先生は退職になりました。禁じられた部屋の秘宝を狙ったのが理由です」
やっぱりそうだったんだ、という空気が生徒の中で流れた。
「ダウストラとの勝負を繰り広げ、秘宝を守ったミス・ウィステリア及びミス・ネアセリニに秘宝を差し上げました」
ええ!!と驚きの声が上がり、一斉にメイベルとセレステを見る。
「皆さんが思っているようなものではないと思いますよ」
とスペンシアは微笑み、
「では来年度もここで会えますよう」
と話を終えた。
その後は最優秀者の発表、学年別の試験1位者の発表などが行われた。
1年生はセレステが総合1位だった。
そして最後に寮の得点が発表され、ゲルミナレスが1位だった。
終業式後、メイベルとセレステは校長室を訪ねた。
スペンシアに願望が何か伝えるためだ。
部屋に入ってすぐ、
「望みは決まっていますね?」
とスペンシアが2人に聞いた。
2人は頷く。
「では、ウィステリアは何を求めますか?」
「私は杖が欲しいです!!」
瞳を輝かせてメイベルが言った。
「杖、ですか?」
予想外の答えだったようで、スペンシアは不思議そうに言った。
「はい!魔法具学のクラス分けで使われたもののような......」
「杖は貴族の中でも上流の者しか持たないものなのです」
「そうだったんですね!!」
メイベルは校長の言葉に衝撃を受けた。杖、欲しかったなあ......。私上級貴族じゃないし、無理かな?と思っていると、
「全属性の魔女ですから、まあ、許されるでしょう。後日杖を作ってもらいに行きましょう」
と校長が言った。
「作ってもらうんですね」
それはイギリス魔法界と同じなんだ、とメイベルは思った。
「人それぞれ魔力が違いますから」
杖が持ち主を選ぶのだ。
「ではネアセリニは?」
「私はフクロウが欲しいです」
「それはどうして?」
スペンシアがまた不思議そうに言った。
「今年一年間、自由に手紙を出せずに困ったので。これは一羽飼うべきだと思いました」
アルフェシアから手紙が届かないとこちらからは送れなかった。それでは今後不便だろうと思い、フクロウを求めることに決めたのだった。
「では、ネアセリニも後日、共に買いに行きましょう」
「先生、寮の得点って、追加しましたか?」
とメイベルが聞く。
「2人とミス・コンスタンシアとミス・アッシュフォードにも得点を差し上げ、追加した結果、ゲルミナレスが優勝でした」
とスペンシアが答えた。
「どうしてそれを聞くのです?」
とスペンシアが不思議そうに首を傾げたので、
「他2つの寮から得点が大量に増え過ぎだ!って言われないか心配だったので」
とメイベルは説明した。
「ああ。4人の点を加える前からゲルミナレスが優勝でしたよ。何か言われたら私が説明してあげます」
「ありがとうございます」
「では、また来年度会いましょうね」
「「はい!」」
2人で返事をして、部屋を後にする。
「はあ、色々あったわね」
とセレステが出来事を思い出しながらため息を吐いた。
2人は今、馬車に乗っている。帰りはドラゴンの牽く空飛ぶ馬車が都市の入り口まで送ってくれる。行きもそうすればいいのに、と新入生たちは皆心の中で思った。行きと帰りで違う理由は誰も知らない。昔からのことだそう。
「でも、楽しかったわ!」
とメイベルが笑顔で言う。
「試練を突破するのは確かに楽しかったわ」
「戦うのも楽しかったわ!」
「それは......。うーん」
とセレステは首を傾げた。
「楽しくなかったの?」
「だって、気を抜いたらやられちゃうじゃない」
メイベルとセレステが強かったから勝てたけれど、もし他の生徒が行っていたら確実に負けていただろう。
「そうだけど、相手がどう動くか考えたり、どう対処すればいいか考えるのが楽しくない?」
「まあ、確かに?でも、実戦はやめて欲しいけど」
「そうね。じゃあ、今度学校でバトル大会をしましょうよ!きっと楽しいわ!!」
「今度って言っても、しばらく後の事だけどね」
「結局、秘宝は賢者の石じゃなかったから、私は悲しかったわ」
とメイベルが言った。
「でも、犯人の予想は当てたじゃない」
「賢者の石じゃなかったことの方がショックだわ。秘宝は鍵だったし」
秘宝と言われるほどのものでは無くないか?とセレステも内心思っていた。賢者の石も秘宝ではないけれど。
「でも、来年からはみんなで部屋でいろいろできるじゃない?楽しみ!」
「勉強会とかね。今年は、まあ、色々忙しかったから仕方なかったけど、全体的にテストの点が低かったから」
セレステの言葉にメイベルが首を傾げた。
「え?私の?セレステの?」
私達はほぼ満点じゃなかった?さらに上を目指すってこと?とメイベルが気を引き締めていると、
「違う違う。他の生徒たちの事。点数が張り出されていたでしょう?それを見たら、平均点が満点の半分未満だったから、驚いて」
とセレステが手を振って言った。
「まるほど。勉強会をして、寮全体の学力の底上げを狙うのね!」
「出来れば学校全体で」
「流石にそんな広さは無いんじゃない?」
詳しいことは知らないけれど、全校生徒を入れるには大広間ほどの広さが必要になる。
「勉強会に参加したい人の募集をして、人を集めましょうよ」
セレステは、きっとセリニスをよく思っていないミューレンの人たちは参加しないだろうし。それなら勉強会でいざこざも起きないでしょうし、と思いながら言った。
「良いわねそれ!早く新学期になって欲しいわ!!」
メイベルは来年度に向けて期待を膨らませた。
しかし、バトル大会も勉強会も、行われるのはもっと先の事となった。
次回、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』未読の方はお気を付けください。ネタバレが大いにあります。