1.2年生の始まり
「こんにちは」
スペンシア校長先生が、教会にやって来た。
今日は私の杖を買いに行く日!!
でも、校長先生が一緒に買い物に来てくれるなんて、意外と言うかスペシャルと言うか。
フットワークが軽いね。
「今日はよろしくお願いします、校長先生!!」
「杖はこの国では珍しいので、少し遠出をします。といっても一瞬で着きますがね」
一瞬で着く、ということは転移魔法かな。
本当に便利だけど、不思議な感覚にまだ慣れない。もうちょっと楽に一瞬で行ける様になったらいいんだけどね......。
「他所の国に行くんですか?」
この国の事は少しずつ分かってきたけど、他の国については全く知らない。
周りまで調べ始めたら、この国の事が覚えられなくなっちゃうからね。私は今、都市を覚えるのに必死だから!
「ええ。杖といえばこの店、と決まっている所が他国にありますので」
杖と言えばの店?1つだけ心当たりがあるけど......。流石に違うよね。
校長先生の差し出した手を取る。
さあ、どんな国に着くのかな?
転移魔法の感覚が収まり、私は目を開ける。
「あの、ここって......」
レンガ造りの建物。ショーケースに浮かぶ箒。ローブを着た人々。
これは......これは!!
「ここはですね、」
「ダイアゴン横丁ですよね!?」
と、思わず叫んでしまう。
歩いていた人たちがみんな私を見たけど、叫ぶしかないよこれは!
「知っているとは驚きです」
校長先生が驚く。確かに他国の商店街を知ってるのは少し不思議かも。
でも驚きが抑えきれなかったから、叫んだのは仕方ない。うん。仕方ないよ!
「うわあ~ダイアゴン横丁って本当にあったんだ!!」
ずっとずっとお話の中に広がる世界だと思っていたのに!
憧れの中のものだと思っていたのに!!今こうして目の前にある!!!
「本当にあったんだ、とは?」
校長先生が私の言葉に首を傾げた。
本当にあったんだ、は、ちょっとまずかったかも。
こんなんだと、誤魔化せないボロをいいそう。
ふう......。一旦冷静に、落ち着こう。
「その、本で読んだことはあったので」
このことが真実なのが恐ろしい!ああもう冷静になってなれるわけがなかった!!
魔法の世界だから、もしかしたらハリー・ポッターと繋がってるかも......なんて考えたことなかった!嬉しいサプライズだ。
ダイアゴン横丁に杖を買いに来た。ということはつまり、
「オリバンダーの店に行くんですか!?」
オリバンダーの店に行くんだ!
あの憧れのオリバンダーの店で杖選び!!
「そこまで知っているとは」
と校長先生が驚く。まあね、原作しっかり読んでましたから!
あの、自分に合う杖が見つかった時のふぁ~って感じのが見られるの!?
ハリー達と同じ経験が出来るの?そして同じ地を踏んでいるの!?
はあー、転生して良かったー!!
いや、全然よくは無いんだけどね。なんで転生したのかもよく分かってないし。
元の世界への帰り方とか分からないし、この世界を楽しむしかないよね!
私達はオリバンダーさんの店に向かって歩き出す。
その途中では、クィディッチの道具の店の前を通った。
ショーケースに箒が置かれている。箒は空中をふよふよと浮いている。
ショーウィンドウには目を輝かせた子供たちが集まっている。私もあれに加わりたい。
ひときわ子供たちが目を輝かせる黒い箒。あれはニンバス2001!!
ルシウスがスリザリンのクィディッチチームに買い与えるやつ!
黒く光るボディが美しい。
などと考えていると、店に到着した。
「ここがオリバンダーの店......」
と看板を見上げる。思ったよりこじんまりとした店構えだ。
「ごめんください」
と校長先生が扉を開けた。
ドアベルが店内に響く。
誰もいないように見えるが、オリバンダーさんはカウンターの内側か倉庫にいるはずだ。
「おお。ミス・スペンシア。お久しぶりで」
とオリバンダーさんがカウンターから顔を出した。
校長先生は会ったことあるんだ。なんで会ったことあるんだろう?そこまで杖はこっちの魔法界でメジャーじゃないらしいのに。
「ええ。今日はこの子の杖を見つけに」
と校長先生が私を示す。
自己紹介だ!
「初めまして!メイベル・ウィステリアと言います!!利き手は右です」
手順は知っているので利き手を出す。
利き手で別の事をしながらの魔法には憧れるけど、うまく制御できないと困るので正直に利き手を出した。
こっちの詠唱魔法は片手でもできるし、そっちを左手ですれば二刀流だ!!
「ふむ」
と私の腕が測られる。メジャーが独りでに長さを測っていく。
はあ~杖選びワクワクするなー!!
「ではまずは、イチイにドラゴンの心臓の琴線。11インチ。しなりやすい」
柳って例のあの人の杖の木材だったっけ?で、ドラゴンは派手な魔法向きだった気がする。
オリバンダーさんから杖を受け取って、私が杖を持った瞬間、火花が上がる。
「わあ」
「違うようですな......。では、トリネコにユニコーンのたてがみ。10.75インチ。少ししなる」
ユニコーンのたてがみは闇の魔術への転用が最も難しい。ユニコーンのたてがみがいいな。不死鳥の尾羽でもいいけど、闇の魔法使いに一番なりにくいのがいいな。
杖を握ると、店内に暴風が吹き荒れた。なんか相性がとても悪いみたい。
「うーむ。これも違う様だ......」
しばらく試すが、中々見つからない。
木材はモミの杖の時が比較的合っているように感じたのでモミになりそうだ。
モミは回復力が高く、耐久性があり、専門分野に集中し断固とした態度で臨むことが出来る所有者を選ぶ。集中力と決断力がある者を選び、変身術に適している。
等々、杖選びをしながらオリバンダーさんが教えてくれた。
私は、マクゴナガル先生もモミだったっけ?と考えていた。
しかし長さやしなりやすさ、芯材と組み合わせを変えるが最適な杖が見つからない。
ここで私は提案をしてみることにした。
「あの、私の髪の毛って芯材として使えたりしませんか?」
フラーの杖は祖母の髪だったし、もしかしたらいけないかな?と思った。
まあ、私の髪の毛に魔力があればの話なんだけどね......。
オリバンダーさんは私の提案に驚いていたが、やがて納得したように頷いた。
「ここまで合わないとなると、髪が適しているのかも知れませんな。ふむ......。一度やってみるとしましょうか」
私は鞄の中から瓶に入れた髪をオリバンダーさんに瓶ごと渡した。
瓶って言っても細長い試験管みたいなやつ。
我ながら綺麗な銀色をしている。
メイベルは控えめに言っても可愛いので、結構鏡を見るのが楽しかったりする。
別に元々の顔が嫌いだったとかは無いんだけどね。
「いつ受け取りにくればいいですか?」
と聞く。
詳しくは知らないけど、杖を一から作るのはかなりの時間がかかるはず。
「2週間で仕上げましょう」
2週間!?速い!......よね?多分。
「ではよろしくお願いしますね」
「お願いします!!」
と校長先生と私はそれぞれ言って、店を出た。
今日の用事は無くなったので、私はまた校長先生に連れられて、教会に戻った。
ダイアゴン横丁観光でも良かったけどね!!
2週間後、私の元に校長先生がやって来て、またダイアゴン横丁へ向かった。
ダイアゴン横丁に何度も来れるなんて幸せ!
付いた後すぐに、
「すみませんが今日は用事があって一緒に行けません。帰る時はこの魔法具に念じれば帰れますので。では」
と言って校長先生は帰ってしまった。
異国の地に置き去りにしないでほしいよ......。
読んだことあるとはいえ、3次元での構造は何も知らないんだから!!
取り敢えずは、店に早く行かないとだよね。
私はダイアゴン横丁を1人で歩き始めた。周りをじっくりと観察しながら。
本当に沢山の魔法使い・魔女がいる。
こっちとは違う感じのローブだったり服装をしている。
何でこんなに変わるんだろう?気候が違うから?それとも杖魔法だから?
気になる。
ここはグリンゴッツ!!白い石で出来ている。
中にはゴブリンが沢山いて、金庫に案内してくれるんだよね。奥に大きな家の金庫があって、そこへは猛スピードで走るトロッコで向かう。
......トロッコには乗りたくないかな。せっかく体験できるのに!とは思うけど、危険すぎるよ、あれは。
私はグリンゴッツの前を通り過ぎようとして、足を止めた。
グリンゴッツの前にウィーズリー家とハーマイオニーを見つけたから。
みな不安そうな顔をしている。
もしかして、ハリーがノクターン横丁に行っちゃったタイミング?このメンバーがグリンゴッツの前に集まるのはそれくらいしか思いつかない。
というか、今の時代はハリー達が生きている時代だったのね!!
ウィーズリー家やハーマイオニーをこの目で見られるなんて幸せ......。
凄いなあ......。もう驚き疲れてきたよ。
あ、でも、ヴォルデモートもいるってことだよね?それはちょっと大変だな。
ちょっとというか、とても嫌かも。第二次魔法大戦が将来的には起きることになるだろうし......。
今後の事を今心配しても仕方ないし、今の状況を思い出そう!
確か、この後ハグリッドがノクターン横丁でハリーを見つけるのよね。
煙突飛行粉で行き先を言うときに咽ちゃってダイアゴン横丁から少しずれた場所に行っちゃうんだっけ?
でも、ちょっとぐらいなら、せっかくだし、話してもいいよね?ハリーが見つかるのが少し早くなるだけだし......せっかくなら話してみたいし......。
グリンゴッツの前で困っているみんなに近づいていく。
近づいてくる私に気づいて、皆が私を見た。
私と、目が合った。
「あの、ハリーを探しているなら、ノクターン横丁にいましたよ」
興奮を押し殺して私が声をかけると、
「あら、本当ですか?」
とモリーさんが私を見た。
モリーさんだ!!
「隣の通りに行っちゃってたのか」
とロンが言う。
ロンだ!!この後杖が折れちゃうんだよ......。
「でも、どうして私達がハリーを探しているって知っていたんですか?」
不思議そうに言ったハーマイオニーに、
「だって、貴方たちが探すならハリーでしょう?」
と答える。ハーマイオニーと受け答えできる日が来るなんて思わなかった!ハーマイオニーは......。石になるくらいかな?あ、猫にもなっちゃうね。
「そんなに俺たちとハリーが一緒にいると思われてるのか?」
とフレッドかジョージが笑う。2人とも似すぎていてどっちがどっちか分からない。
小さな違いすら見つけられない。この2人の見分けがつくモリーさんは流石母親と言うべきか。
「そうですね。ハリー・ポッターがロナルド・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーの友人であるということは有名かと」
「そうだったのね」
意外そうにハーマイオニーが言った。意外なことでもないと思うんだけど。結構有名じゃないかな?本人たちに自覚が無いだけ?
「教えていただいてありがとうございます。私はノクターン横丁に行きますけど、貴方たちは絶対にダメですからね!」
「なんでだよ~」
「貴方たちには危なすぎます!!」
モリーさんがフレッドとジョージを注意し始める。
本当に私と同じ世界を生きてるんだ......。
と思いながら私はそっとその場を離れ、オリバンダーの店へ向かった。
「ごめんくださーい」
と扉を開く。
「ウィステリアさん、杖が出来ましたよ。きっと合うはずです」
とオリバンダーさんが1本の杖を差し出す。
これが私の髪でつくられた杖......。
これで合わなかったらとても申し訳ないけど......。
その場合はどうするんだろう?売るのかな?だとしても自分の髪が使われているものを人に渡すのは抵抗があるな......。
そんな心配をしながら杖を持った瞬間、私の守護霊が現れた。
ドラゴンは店内を旋回して、消えていった。
久しぶりの守護霊!もっと手軽に出せたらいいんだけどね。
取り敢えず!!この反応は杖が私に合ってるってことよね?
「この杖、とても私に馴染んでいる感覚があります!!ありがとうございます!」
とオリバンダーさんに言う。
「それはよかった。芯材にはあなたの髪、木材はモミ、13.25インチ、ほどよくしなる。貴方に合う杖が作れてよかったです」
再度お礼を言って代金を払い、店を出る。杖代は校長先生が負担してくれた。なので校長先生から預かったお金で代金を支払った。
一人称でしたがどうだったでしょうか?
ハリー
ハリー・ポッター。生き残った男の子。グリフィンドール寮所属。
ロン
ロナルド・ウィーズリー。ハリーの友人。チェスが得意。
ハーマイオニー
ハーマイオニー・グレンジャー。ハリーの友人で才女。
フラー
フラー・デラクールの事。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』にて初登場。
男性を魅了する力を持つヴィーラを祖母に持っている。
グリンゴッツ
魔法界の銀行。
ノクターン横丁
ダイアゴン横丁の隣にある。闇の魔術品を扱う店が立ち並んでいる。
ドラコ
ドラコ・マルフォイ。ハリー達と敵対しがち。純血思想が強い。スリザリン寮所属。
純血
魔法が使える人のこと。及び魔法が使える人同士の子供を指す。
しかし、親は魔法が使えなくても、子供は使えるというパターンは存在する。例としてハーマイオニー。
ルシウス
ドラコの父親。ウィーズリー家の父であるアーサーと仲が悪い。
ジニー
ジネブラ・ウィーズリー。ロンの妹。今年1年生。